建設業をしている方であれば「期日になったのに元請けから入金がない」という経験を持っている人も多いのではないでしょうか?
建設業界はダークでシビアな側面があるので、元請けが恣意的に期日になっても契約していた代金を払わないということもあるのです。
「請求すればいいのでは?」と考える人も多いでしょうが、下請け先企業は元請けから仕事をもらっている関係上なかなか請求しにくいのが実情です。
また、下請け企業は建設業法によって守られていますが、やはり力関係で法律通りには行動することが難しい側面もあるのです。
元請けから入金がない場合にはファクタリングが活用できます。
元請けから入金がない時の法律的な立ち位置やファクタリングの活用方法を詳しく解説していきます。
下請け企業は立場が弱いですが法律やファクタリングを理解して資金繰りに役立てるようにしましょう。
下請企業は建設業法で守られている
下請け企業に対する支払い関する詳細な決まりは下請法と法律によって定められています。
しかし、建設業者に対しては下請法ではなく建設業法が適用されます。
建設業法では下請け先はどのように守られているのか、まずは解説していきます。
下請先への支払いは1ヶ月以内と決められている
建設業法では下請先への代金支払いは1ヶ月以内に行わなければならないと定められています。
これは、1ヶ月以内であればいつ支払ってもよいという訳ではなく、できるだけ早く支払うような努力義務も課されています。
特定建設会社への支払はさらに厳格化されている
元請けが特定建設会社である場合には上記の決まりはさらに厳しいものになります。
特定建設会社とは下請けに対する発注が3,000万円以上(建築一式工事の場合には4,500万円以上)を超えることができる許可を受けた業者です。
元請けが特定建設会社の場合には下請け企業より工事引き渡しがあってから50日以内に代金を支払わなければならないと決められています。
こちらも50日以内に支払わなければならないという義務に加えて、できるだけ早く支払わなければならない努力義務も課されています。
さらに、50日を経過すると年14.6%の遅延損害金を支払わなければならないと決められています。
遅延損害金の決まりまである点で、特定建設会社の支払義務は建設業法によって厳格になっていると言えるでしょう。
ただし、下請先が資本金4,000万円以上の法人の場合にはこの特例は適用されません。
このように元請先から下請先への支払いは法律によって厳格に決められています。
元請けからの入金がない場合の法的対策
元請先は法律の則って下請先への支払いをしなければなりませんが、実際には法律を無視して払っていない元請先や泣き寝入りになっている下請企業も存在します。
自社で督促などを行なっても元請けから入金がない時には、法的措置を講ずることによって代金回収ができる可能性があります。
具体的には以下の2つの方法によって回収を図ります。
- 支払督促
- 訴訟
元請けからの未入金を法律によって解決する方法を詳しく解説していきます。
支払督促で裁判所から督促してもらう
支払督促とは簡易裁判所に申立を行い、裁判所から元請けに対して督促を行なってもらう方法です。
支払督促のメリットは、元請けが支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申し立てをしない場合には、仮執行を行うことができ、それでも債務の支払いをしない場合には財産を強制執行することができるという点です。
異議申し立てとは、裁判をするということですが、元請けが支払うべき工事代金を払っていないのですから、裁判を行なっても勝てる見込みはありません。
元請けとしても強制執行によって財産を差し押さえられたら、たまったものではありません。
そのため、支払督促を行えば高い確率で代金の支払いを受けることができるでしょう。
訴訟を起こし代金を請求する
元請けが代金を支払わないケースとしてよくあるのが、「工事に不備があった」などと難癖をつけて代金を払わないことです。
このような場合には早めに訴訟手続きに移ったほうがよいかもしれません。
訴訟では勝訴が敗訴か必ず結論が出るので、代金の未入金で長期間揉めているような事例でも必ず結論を得ることができ、勝訴となれば代金支払いを受けることができる可能性が高くなります。
ただし、裁判になれば長い時間とお金がかかりますし、証拠書類なども十分に揃えないと勝つことはできません。
事案によって支払督促で済むのか早めに訴訟を行った方がよいのかは異なりますので、弁護士に早めに相談することをおすすめします。
法に守られている下請けが代金請求できない理由
建設業の下請けは建設業法によって守られており、契約締結をしており工事に不備がないのであれば、支払督促や訴訟によって代金を受け取ることができる可能性はあります。
しかし、下請けは元請けに対してこのような督促を行うことができない事情を抱えているのも事実です。
下請けが元請けに法的措置を取るということは相当な覚悟を持たなければなりません。
なぜ、下請けは元請けに対して法的措置を取ることが難しいのでしょうか?
元請けに仕事をもらう下請けは立場が弱い
下請けが元請けに対して法的措置などの強い態度を取ることができない原因は下請けは元請けに仕事をもらっているからです。
下請けとしては、元請けからの仕事がなくなってしまったら会社を回していくことができない非常に立場の弱い存在です。
だからこそ、建設業法で守られているのですが、立場の弱い下請けは入金がない場合も声を上げることはできません。
ましてや、元請けと裁判沙汰を起こしてしまったら、まず次の仕事をもらうことはできなくなってしまいます。
このように、立場が弱いがために入金がなくても下請けは声を上げることができないのです。
多重請負の場合にはどこで未入金が発生するか分からない
大きな建設工事の場合には5次下請けなどになっている可能性があります。
そのため、自社にお金を支払う元請けも、どこかの下請けになっていれば、その会社も代金を受け取っていない可能性があります。
工事や資金の流れを事前に把握できていないために、入金されない原因はどこにあるのか分からないことがあるのです。
督促することで減額を迫られることも
元請けに入金されない代金の支払いを請求することによって「うちも資金繰りが苦しいから」などと言って減額を迫られることもあります。
元請けの資金繰りの悪化から、支払いができないケースではこのようなことがよく起こります。
そもそも下請け先は立場が弱いため、支払いを請求すると減額を迫られ、次の仕事のために減額を受け入れてしまうということも珍しいことではありません。
このように、下請けは法律によって守られているものの、あまりにも立場が弱いために実際には法的措置によって解決することが難しいのが実情なのです。
では、元請けから入金されない場合、どのように解決すればよいでしょうか?
元請けの未払いはファクタリングで解決できる
元請けから入金されない時はファクタリングが非常に有効です。
ファクタリングを利用することによって元請けから入金されないことによる資金繰りの悪化を防止することができます。
ファクタリングは自社の売掛債権を資金化することですので、未入金の元請けに対する売掛債権をすぐに資金化することができるのです。
この他にも下請けの建設業がファクタリングを活用するメリットは多数あります。
元請けから入金されない場合になぜファクタリングが有効なのか、詳しく解説していきたいと思います。
ファクタリングは即日資金化可能
ファクタリングは即日で資金化することが可能です。
元請けからの入金がなければ、仕入れ先や従業員の給料などへの支払いができません。
このような状態で月末を迎えてしまったら倒産を覚悟しなければならない場面も出てくるかもしれません。
そのような時にファクタリングを利用すれば、申込日当日に売掛債権を資金化することができる可能性があるのです。
元請けから入金されないことによる資金繰りの悪化を補填する方法としては銀行融資も存在しますが、銀行融資には早くても1週間程度の時間がかかってしまうので、急いでいる時には即日資金化も可能なファクタリングがおすすめです。
元請けの信用で審査を受けられる
ファクタリングでは元請けの信用で審査を受けることができます。
ファクタリングでは、売掛債権の期日になった時にファクターに対して代金を支払うのは売掛先企業だからです。
つまりこの場合には自社よりも規模が大きく信頼が厚い元請け企業が審査されるので、自社に信用がなく、お金を借りることができない状態であったとしてもファクタリングであれば審査に通過して必要資金を調達することができる可能性が高いと言えます。
返済の必要がない
ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社へ売却することですので、元請けから支払いを受ける権利はファクターにあります。
そのため、自社はファクターに対して返済する必要はありません。
2社間ファクタリングの場合には元請けから入金があったら代金をファクタリング会社へ支払い、3社間ファクタリングでは元請けが直接ファクタリング会社に支払います。
いずれにせよ、返済のためにどこかからお金を用意しなければならないことはありません。
回収リスクがない
業者が何社も入る建設業界では、1社が経営悪化すると連鎖倒産に陥ってしまう可能性があります。
「元請けから入金されないなぁ」などとのんびり構えているうちに、元請けの親会社が経営破綻して、売掛債権が不良債権になってしまう可能性もあります。
ファクタリングは基本的のノンリコースで行われますので、このような心配はありません。
ノンリコースのファクタリングとは、売掛債権がファクタリング後にデフォルトしても自社には責任が及ばないというものです。
つまり、早めに売掛債権をファクタリングしておけば、工事に関わるどこかの業者が倒産して、工事に関わる業者が連鎖倒産に陥ったとしても自社だけは安全に資金確保をすることができるのです。
連鎖倒産リスクが高い建設業界ではファクタリングは自社を連鎖倒産から守る手段でもあるのです。
下請債権保全事業によって国も建設業のファクタリングを推奨
下請債権保全事業とは、下請け会社を連鎖倒産から守るため、下請け会社がファクタリングを利用する際の保証料を建設振興基金が助成する制度です。
これによって、ファクタリングにかかる保証料の補助を受けながらファクタリングを利用することができるようになります。
しかし、この制度の対象になるファクタリング会社は銀行傘下の大手ファクタリング会社ばかりです。
大手ファクタリング会社は売掛債権数千万円以上など、ある程度の規模がある債権以外とは取引しないことも多いため、小規模の下請け会社が利用することができない場合も多いのです。
規模が大きくない中小事業者は数十万円程度の債権の買取も行ってくれる民間のファクタリング会社と取引した方が無難かもしれません。
下請けが利用すべきファクタリングとは?
建設業が活用できるファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングと保証ファクタリングの3つのパターンがあります。
それぞれのファクタリングにはメリットとデメリットがあり、下請け企業のニーズによって選択すべきファクタリングの形は異なります。
元請けから入金されない場合にはどんなファクタリングを選ぶべきでしょうか?
急ぎの時や元請けにバレたくないなら2社間
2社間ファクタリングは元請けの同意が不要で、元請けに秘密にすることができるファクタリングです。
期日になったら元請けが通常通りに自社に代金を支払い、自社がファクタリング会社へ入金された代金を送金します。
元請けの同意が必要ないので資金化までに最短即日で対応できます。
ただし、売掛債権の代金が自社を経由し、経由した際に使い込みなどのリスクがあるので手数料は高くなります。
手数料を安くしたい場合には3社間
3社間ファクタリングは元請けの同意を得て行い、期日になったら元請けがファクターへ代金を支払います。
元請けから同意を取得する時間がかかるので資金化までには1週間程度かかります。
自社を資金が経由しないので手数料は2社間よりも安くなります。
また、3社間では元請けがファクターに対して支払いを行うので、元請けも「下請だから少しくらい期日に遅れても問題ない」とか「代金の減額を要求しよう」などと安易に考えることはできなくなります。
3社間ファクタリングでは元請けが期日通りに満額支払う可能性が高くなります。
ただし、元請けにファクタリングを使用したことが知られてしまうので「こんな面倒な下請けには仕事を回さない」と判断する元請けが出てくる可能性もゼロではありません。
連鎖倒産が不安なら保証ファクタリング
保証ファクタリングとは売掛債権がデフォルトした場合にはファクタリング会社が売掛債権を保証してくれるものです。
元請けが倒産した場合には保証ファクタリングが発動して代金の未回収を防ぐことができます。
ただし、2社間3社間の買取ファクタリングのように期日前に売掛債権を資金化することができるわけではありません。
保証ファクタリングは連鎖倒産が怖い場合のみ利用しましょう。
なお、前述した下請債権保全事業で助成対象となるのは保証ファクタリングです。
ファクタリングに関するよくある質問
- 元請けは3社間ファクタリングの利用に同意してくれますか?
- 建設業ではファクタリングが利用されることが多いので、一般的には同意してくれるでしょう。同意を得られない場合には2社間ファクタリングを利用する方法もあります。
- 下請け会社がファクタリングの際に必要になる書類はどんな書類ですか?
- 本人確認書類、元請けに対する請求書、代金振込通帳のコピーなどです。そのほか、ファクターが指定する書類があるのであれば忘れず持参しましょう。
- 工期が長くなり元請けに請求書を発行できません。こんな時にファクタリングは利用できますか?
- 請求書がないとファクタリングは実行できません。銀行融資を利用しましょう。
銀行融資は元請けから請負工事契約書があれば比較的簡単に融資してくれます。銀行融資には時間がかかるので早めに申し込むようにしてください。
まとめ
建設業法によって元請けから入金されないされないことがないよう、下請け先企業への支払いに対しては詳細に決まりがあります。
また、それでも払わない場合には支払督促や訴訟によって解決できる可能性があります。
しかし、元請けに対して立場が弱い下請けは、例え元請けが法に反して入金しない場合でも声を上げにくいのが実状です。
円滑にこのような問題を解決するためにはファクタリングが活用できます。
ファクタリングは元請けが入金しないことによる資金繰りの悪化を防ぐことができるだけでなく、回収リスクの回避などの効果もあるので、大きな工事ではありがちな連鎖倒産を防ぐ効果もあります。
元請けから入金されないことが心配な建設業の方はファクタリングの活用を検討するとよいでしょう。