ファクタリングとは売掛金などの売掛債権を期日前にファクタリング会社に売却して早期の資金化を行うことです。
ファクタリングは手元に現金がない時や、銀行融資が出ない時など、資金繰りの補完的な役割として企業経営に寄与するものです。
ファクタリングは様々な企業が利用していますが、業界によってファクタリングを活用する理由や、活用できる場面は異なるようです。
ファクタリングは業界によって具体的にどのように活用することができるのか、詳しく解説していきます。
ファクタリングを使う理由
業界別にファクタリングがどのように活用することができるのか解説する前に、まずは企業がファクタリングをどのような理由で活用しているのか見ていきましょう。
多くは、銀行融資の補完的な役割か、資金繰りの悪化などが主な理由ですが、このようなネガティブな理由だけではなく、ポジティブな理由でファクタリングを活用している場面も存在します。
ファクタリングを企業が使う理由を詳しく解説していきます。
銀行の貸し剥がしが怖い
銀行にとって、最も怖いのは貸しているお金が不良債権になって焦げ付くことです。
そのため、企業の業績が悪くなった時や、融資先企業の取引先や親会社の業績が悪化した場合などは、融資先企業に対して「貸しているお金を返してください」という貸し剥がしを行うことがあります。
銀行から返済を依頼されたからと言って、貸し剥がしには応じなくても法的には何も問題はないのですが、企業とすれば銀行の機嫌を損ねることが怖いので、手元の資金で返済してしまうことがあります。
企業とすれば突然銀行から貸し剥がしにあってしまったら運転資金は枯渇してしまい、資金繰りが苦しくなってしまいます。
銀行融資ばかりに頼っていると、突然銀行から貸し剥がしにあう可能性があるので、銀行融資に依存しない資金繰りを行うためにファクタリングを利用している業者は少なくないようです。
なお、貸し剥がしはバブル崩壊期には盛んに行われましたが、今は金融庁が貸し剥がしを行わないよう銀行に指導していますし、融資もプロパーではなく信用保証協会付きで行われることが多いので、貸し剥がしはほとんど行われていません。
取引先のデフォルトが怖い
取引先が倒産などしてしまうと、予定していた売掛金や手形の入金が無くなってしまいます。
こうなってしまうと、企業の資金繰りは一気に悪化します。
ファクタリングであれば、債権売却後に売掛先企業が倒産したとしても、その倒産リスクを被るのは自社ではなくファクタリング会社になります。
取引先のデフォルトリスクを完全に排除するためにファクタリングを利用しているという会社も多数存在します。
資金ギャップに耐えられない
掛け販売の場合、売上があっても売掛金が現金化するまでには1ヶ月とか2ヶ月の時間がかかってしまいます。
資金が入ってくるまでの時間的なギャップを資金ギャップと言いますが、手元に現金がない企業や、特殊事情によって手元の運転資金が枯渇してしまった企業は売掛金の入金までに会社が資金ショートしてしまうことになります。
また、このような時に銀行融資に申し込みを行なっても、銀行融資が入金になるのは2週間前後の時間がかかってしまうので、すぐに手元に資金を確保することができるわけではありません。
ファクタリングとは売掛金を売却して現金化することですが、早いところであれば最短即日に入金になる会社も存在します。
手元にお金がないとか、銀行融資を待っているだけの余裕がない時に、ファクタリングは資金ギャップを埋めるための非常に有効な手段ということができるのです。
銀行審査に通らない
銀行の事業資金融資において審査されるのは自社の信用です。
融資金を返済するのは自社ですので、自社が赤字や債務超過になっている場合には銀行融資の審査に通過することは非常に難しくなります。
一方、ファクタリングで重視されるのは売掛金企業の与信です。
ファクタリングにおいて、ファクタリング会社に支払いを行うのは自社ではなく売掛先企業です。
そのため、自社の経営状況が悪く、銀行融資の審査に通過することができない場合でも売掛先の与信に問題がなければ、ファクタリング会社にとっては「回収リスク」がないということになり、ファクタリングに応じてもらえる可能性があります。
とは言え、銀行融資が出ないということは、銀行は「これ以上の負担に耐えることが難しい」と判断しているということです。
ファクタリングをすることで短期的には資金繰りは楽になりますが、長期的に見れば何も解決になっていないので、銀行融資が通らない時のファクタリングは慎重に検討する必要があります。
売掛金管理の負担軽減
売掛金の管理には時間と手間がかかります。
取引先ごとに入金をチェックし、売掛金台帳を記帳し、支払ってくれない取引先には督促の電話をかけたり訪問するなどして、その事務コストは膨大です。
ファクタリングであれば、このような売掛金管理にかかる事務をアウトソーシングすることができ、売掛金を売却した後は自社は何もすることがありません。
欧米ではこのような売掛金管理の効率化を図るためにファクタリングが当たり前のように行われています。
売掛金管理の負担を軽減し、余った人員を他の部署に回すことによって経営の効率化を図ることができるという理由でファクタリングを利用している事業者も少なくありません。
業界別のファクタリング活用事例
企業によって、ファクタリングを使う理由は様々です。
業界によって資金繰りの悪化理由やリスクは様々で、ファクタリングも業界の特殊事情に応じた活用方法が存在します。
業界別にファクタリングがどのように活用することができるのか、詳しく見ていきましょう。
建設業はこんな場面で活用できる
建設業や土木業は最もファクタリングを使用している業種と言われています。
建設業の支払いは、元請→下請→孫請というように、資金の流れが複雑です。
さらに、建設業や土木業は工事が完了してから代金全額が支払われるので、仕事を着工してから資金化するまでに時間がかかってしまいます。
工期の長い工事の場合には資金化までに1年以上の時間がかかってしまうことがあり、規模の小さな下請や孫請は資金繰りに窮してしまうことも少なくありません。
このような問題をファクタリングは解決することができるため、建設・土木業界にファクタリングは活用されています。
また、建設業や土木業は発注者が国や地方自治体である公共工事も多いので、ファクタリング会社にとっても回収リスクがないことから積極的にファクタリングに応じています。
建設・土木業界のファクタリングは双方にとってWIN-WINになる取引ということもできるでしょう。
運送業はこんな場面で活用できる
運送業は高額なトラックなどが事故や故障によって壊れるリスクを抱える業種です。
そして、事故や故障は突然起こるので資金も急に必要になります。
このような時に銀行融資よりも資金化が早いファクタリングが活用されています。
また、運転資金などで銀行融資を借りすぎてしまうと、トラックなどを新規導入する際の銀行やリース会社の与信審査に引っかかってしまうことも多いため、運転資金に関しては意図的にファクタリングを利用している経営者も存在します。
貿易業はこんな場面で活用できる
輸出関連企業の売上は外貨で入ることが一般的です。
そして外貨の売掛債権は手形であったとしても手形割引を利用することはできません。
このため、外貨の売掛債権を資金化したい場合には必然的にファクタリングという選択になります。
また、貿易業は海外送金や為替変動によって突発的に大量の資金が必要になる業種ですので、このような急な資金繰りにもファクタリングを活用することができます。
アパレル業はこんな場面で活用できる
アパレル業は季節によって売上の変動が激しい業種です。
そこで、繁忙期の売掛債権を閑散期にファクタリングすることで閑散期の資金繰りが苦しい時期の資金繰りを円滑化することができます。
また、アパレル業界は人件費や光熱費の安い海外に生産工場を所有していることが多く、経営側の目が届かない海外では突発的なトラブルによって急に資金が必要になることもよくあります。
このような時に資金化までに時間がかからないファクタリングは活用することができます。
介護事業はこんな場面で活用できる
ファクタリングには、国保から入金予定の診療・介護報酬を期日前に資金化する「診療・介護報酬ファクタリング」というファクタリングが存在します。
診療・介護報酬ファクタリングは3社間ファクタリングで契約することができ、支払主は国や地方自治体ですので、ファクタリング会社に回収リスクはほぼありません。
このため、手数料が非常に安く10%を切るのが当たり前で、会社によっては3%を切る場合もあります。
介護事業は人件費と施設維持費が膨大かつ毎月定期的に発生する業種です。
このような費用を安価な手数料で賄うことができるので、介護事業においてファクタリングを恒常的に利用している事業所も少なくありません。
不動産経営はこんな場面で活用できる
不動産経営においては、割安な不動産をタイムリーに購入するということは非常に重要です。
せっかく良い物件が出てきたとしても手元にお金がなければ他の人に買われてしまいビジネスチャンスを逃してしまうことになります。
このような場合にもファクタリングを活用することができます。
入居者から入金予定の家賃や管理費は債権としてファクタリング会社に売却することができるので、不動産経営者は入居戸数×家賃という債権を常に保有していることと同じです。
家賃収入債権をファクタリング会社に売却することで、新規投資に必要な資金を確保することができるのです。
銀行から投資資金を借りる場合には審査に非常に時間がかかり、1ヶ月以上の時間がかかってしまうことも珍しくありません。
また、今はスルガ銀行の不正融資以降、投資用不動産購入資金の審査は非常に厳しくなっています。
「手元にお金がないけど、すぐ買いたい物件がある」という場合にもファクタリングは非常に活用することができるのです。
バス会社はこんな場面で活用できる
外国人観光客の増加によって観光バス業界は今非常に忙しくなっています。
しかし、その一方でバス事故の増加によって運転手1人あたりの勤務時間や健康診断の受診義務など、業界に対する締め付けも非常に強くなっています。
このような理由によってバス会社の資金繰りが苦しくなっている所に、燃料費まで高騰しているため、実は資金繰りに苦しんでいるバス会社は多数存在すると言われています。
銀行から運転資金融資を受けるのも有効な方法ですが、やはり新規車両導入の際の融資審査やリース審査で不利になるため、あえてファクタリングを利用している会社は少なくありません。
また、突発的な事故によって補償が必要になった時や、一時的に業務が停止された時にはファクタリングで資金確保するしか方法がありません。
事故などによって営業停止になった時には銀行融資は絶対に受けることができないためです。
ファクタリングであれば事故を起こしていても売掛金の回収リスクが低ければ買取に応じてくれる可能性があります。
ファクタリングの活用事例に関するよくある質問
- 飲食業でもファクタリングを利用することはできますか?
- 可能です。飲食店もキャッシュレス決済やクレジットカードの未入金分があるのであれば、それは売掛債権ですのでファクタリングによって期日前に早期資金化することが可能です。
- お得意様がツケで飲んでいきます。ツケはファクタリングできますか?
- 不可能です。個人に対する債権はファクタリングの対象外ですので、居酒屋やバーなどのツケはファクタリングできません。
- 風俗業はファクタリングを利用できますか?
- クレジットカードでの売上があるのであればファクタリング可能です。しかし、コンプライアンス上、公序良俗に反する風俗業者などとは取引をしないという内規を設けている会社も存在しますので、まずは取り扱い可能かどうか相談してみましょう。
まとめ
資金繰りに窮した時などは、基本的には銀行から運転資金融資を受けるのが王道です。
銀行融資の方が金利も安く、長期的に資金繰りが安定するのは銀行融資の方であるためです。
しかし、銀行融資には以下の問題点があります。
- 資金化までに時間がかかる
- 融資を受けすぎると次の融資を受けることができない
- 審査が厳しい
このような理由によって銀行融資を受けることが適切とは言えないタイミングにはファクタリングを活用することができます。
ファクタリングであれば最短即日で資金化することができ、自社よりも売掛先の信用が重視させるので、銀行から資金を借りることができない企業でも融資を受けることができる可能性があります。
銀行融資とファクタリングを上手に活用することで、必要な資金を最低限のコストで必要なタイミングに調達することができます。
業界によって活用できる場面は様々ですが、自社が所属する業界ではどのような場面でファクタリングを活用することができるのか、理解をしておいて損はないでしょう。