ファクタリングは、企業が保有している売掛債権をファクタリング会社が買い取り、早期に現金化するサービスです。

主に「ファクタリング会社」と呼ばれる専門会社がサービスを提供していますが、メガバンクや都市銀行、地方銀行などの系列会社、グループ会社にもファクタリングサービスを取り扱っている業者があります。

今回は銀行系ファクタリング会社の審査基準や手数料、利用にあたって考えたいメリット・デメリットを解説します。

 

ファクタリング会社の系統3分類

ファクタリング会社の系統3分類

ファクタリング会社は、運営する企業の違いで次の3つに分類されます。

銀行系ファクタリング会社

3大メガバンクをはじめ、都市銀行や地方銀行の系列・グループが運営するファクタリング会社です。

買取ファクタリングの他に、国際ファクタリングや保証ファクタリングなど、さまざまな商品を取り扱っています。

銀行系ファクタリングは銀行の高い信頼性と調達コストの低さ銀行系の大きなメリットですが、債権譲渡は利用者・ファクタリング会社・売掛先の3社間で行われます。

さらに、銀行系のファクタリングは1,000万円以上の大口契約がメインで、審査も銀行のプロパー融資並みに厳しめです。

独立系ファクタリング会社

銀行や証券会社、大手消費者金融会社の系列・グループ会社ではない、完全独立型のファクタリング会社です。

事業規模の小さい会社が多いものの、最短即日の現金化が可能で、数十万円の小口利用から5,000万円を超える大口利用まで対応しています。

顧客の多くは中小企業や個人事業主で、売掛先への通知および同意が不要な2社間ファクタリングに特化しているのも特徴です。

ただし、ファクタリング会社の負担するリスクが大きいため、手数料が20%と高めに設定されています。

ノンバンク系ファクタリング会社

信販会社やリース会社、消費者金融会社など、ノンバンクの系列・グループのファクタリング会社です。

一般の買取ファクタリングのみならず、医療報酬ファクタリングや売掛債権担保融資(ABL)など多彩なサービスを提供しています。

銀行系ファクタリングを利用するメリット

銀行系ファクタリングを利用するメリット

銀行系ファクタリングのメリットは以下のとおりです。

ファクタリング手数料が低い

銀行系ファクタリングは3社間で契約するため、手数料の相場は1~5%と低めに設定されています。

独立系ファクタリング会社が提供する2社間ファクタリングの手数料相場が10~20%ですので、銀行系ファクタリングを利用すれば、かなりの低コストで資金調達ができます。

銀行の高い信頼性がある

独立系ファクタリング業者は業歴が10年未満というところが多く、いわゆる大手でも知名度はあまり高いとは言えません。業界自体が若いために、信頼性に乏しく、悪質なファクタリング業者も少なからず存在します。

一方で、銀行系ファクタリングはメガバンクや都市銀行、地方銀行の系列やグループであるため、知名度、信頼性ともに抜群です。

資産のオフバランス化が高く評価される

銀行系ファクタリングで債権の現金化ができると、その後の融資の審査でも高く評価されます。

売掛債権(=流動資産)を現金に換えることは、バランスシートのオフバランス化につながるからです。

資産の現金化でバランスシート(貸借対照表)の総資産額を減らすことを「資産のオフバランス化」と言い、オフバランス化によって会社の利益はそのままで、利益純資産利益率(ROA)が向上します。

銀行等の金融機関は、同じだけの利益を上げていても総資産が少ない会社のほうが優れた経営をしていると判断する傾向にあります。

銀行系ファクタリングを利用するデメリット

銀行系ファクタリングを利用するデメリット

銀行系ファクタリングにはデメリットもあります。

審査が厳しく時間がかかる

銀行系ファクタリングの審査は、ファクタリング利用会社と取引先の信用状況を重視します。

審査は譲渡対象となる取引先1社ごとに行われ、その結果によって設置された買取限度額の範囲内で、債権の譲渡を実施します。

銀行のプロパー融資並みに厳しめで、結果がわかるまでに2~3週間を要します。

取引先への通知と同意が必須

銀行系ファクタリングの取引は、ファクタリング利用会社・銀行・取引先の3社間で行われます。

3社間ファクタリングは取引先に債権譲渡の事実を通知し、同意を得なければ契約できません。

そもそも、2社間ファクタリングはその仕組み上、貸付に近いものがあり、信用第一の銀行系ファクタリング会社は取り扱いに慎重な姿勢を示しています。

「取引先に債権譲渡の事実を知られたくない」という事業者は、独立系ファクタリング会社の2社間ファクタリングを検討しましょう。

今後の融資に影響を及ぼすリスク

ファクタリングの利用目的が事業の運転資金やつなぎ資金である場合、銀行側からすれば「利用会社は運転資金が無く、経営状況が思わしくない」という見方もできます。

審査の結果によっては、今後の融資の申込のマイナス要因になったり、既に借入れている資金の早期引き上げを検討されたりするリスクがあります。

良好な取引を続けている金融機関であれば、なおさら注意が必要です。

主な銀行系ファクタリング会社

主な銀行系ファクタリング会社をご紹介します。

三菱UFJファクター

三菱UFJ銀行系列のファクタリング会社です。

実績や信頼性の高さは言うまでもありませんが、債権買取は残高合計1億円程度から、審査基準も銀行融資並みの厳しさです。

三菱UFJ銀行と事業融資や法人口座などの取引履歴があれば、柔軟に対応してくれる可能性があります。

みずほファクター

みずほ銀行が100%出資するファクタリング専門会社で、銀行系ファクタリング会社でありながら、最低買取額を設定していません。

下請債権であれば数百万円から利用できるため、小規模事業者でも取引の可能性がありますが、独立系ファクタリング会社よりも審査は厳しめです。

浜銀ファイナンス

浜銀ファイナンスは横浜銀行の子会社で、ファクタリングやリース、代金回収などのサービスを提供しています。

公式サイトでは、審査基準や手数料、買取限度額などが公開されておらず、実際に問い合わせてみる必要があります。

地銀の子会社という特性を活かし、横浜銀行をメインバンクにしている場合や、取引先が神奈川県の企業である場合は、ファクタリングの利用価値が高いと考えられます。

銀行系ファクタリングに関するQ&A

銀行系ファクタリングに関して、よくある質問にQ&A形式でお答えします。

Q.ファクタリングで取引先に資金調達で困っていることを知られたくないのですが……
A.取引先に知られずに売掛債権の現金化ができる2社間ファクタリングをおすすめします。2社間ファクタリングは主に独立系ファクタリング会社が提供しています。
Q.銀行の3社間ファクタリングの手数料が、独立系の2社間ファクタリングよりも低い理由を教えて下さい。
A.ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社が負担するリスクに応じて決められています。ファクタリング会社が負担するリスクとは、売掛金を回収できないことに他なりません。3社間ファクタリングはファクタリング会社が直接お取引先から回収しますが、2社間ファクタリングはいったんご利用会社様の口座に振り込まれます。後者のほうがより売掛金の未回収リスクが大きいため、3社間ファクタリングは手数料が低く、2社間ファクタリングは手数料が高めに設定されます。
Q.クリニックを経営しているのですが、医療報酬債権(レセプト)を現金化するなら銀行と取引したほうが良いですか?
A.銀行系ファクタリング会社への申込みをおすすめします。クリニックや医院、調剤薬局、介護施設などの医療機関は、国保や社保が「売掛先」となります。国保も社保も国の支払機関ですので、未回収リスクがきわめて低く、銀行も積極的に買い取ってくれるでしょう。

中小企業・個人事業主は独立系ファクタリングがおすすめ

銀行系ファクタリングについて、審査基準や手数料についてご理解いただけたでしょうか?

銀行系ファクタリング会社が積極的に売掛債権を買い取るのは、数億円単位の売掛債権を保有する大手企業や医療機関などです。

ファクタリングで事業の運転資金やつなぎ資金を調達する多くの中小企業や個人事業主の方は、決して銀行系ファクタリング会社とは相性が良いとは言えません。

中小企業・個人事業主の方は、実績の豊富な独立系ファクタリング会社をおすすめします。

独立系ファクタリング会社が得意とする2社間ファクタリングは、取引先への通知・承諾が不要で、最短即日~3日以内に債権の現金化が可能です。

2社間ファクタリングは手数料の高さがネックとなりますが、面談を実施しているファクタリング会社であれば手数料交渉の余地があり、債権買取サービスのみならず、資金繰りを改善する財務コンサルティングサービスなども受けられます。

資金調達や資金繰りでお悩みの中小企業・個人事業主の方は、ぜひ2社間ファクタリングのご利用を検討してみてください。