新しく事業を始める際に必要になるのが事業計画書です。

ですが「事業計画書なんて書いたことない」「何を書いたらいいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。

本記事では創業時における事業計画書(創業計画書)の書き方を解説します。

あわせて事業計画書を書く前に考えることや、おさえるポイントも紹介します。

これから事業を始めようと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

記事の内容を実践することで、頭の中のアイデアを事業計画書としてまとめるコツをつかめます。

事業計画書とは

事業計画書とは商品・サービスの展開イメージや、販売戦略などをまとめた書面です。

他にも創業者のプロフィール、売り上げや利益といった数値予想など事業の詳細についても記載します。

作成された事業計画書は、融資・出資を受ける際に事業をプレゼンするための資料としても利用可能です。

実際、日本政策金融公庫や銀行における開業資金・創業資金の融資審査では事業計画書の提出が求められます。

また事業のイメージを客観的に確認できる事業計画書は、リスクや問題点の早期発見にもつながります。

事業計画書を書く前に考える6W2H

事業計画書を書き始める前に考えなければいけないのが「6W2H」です。

6W2Hとは下記の8項目を指します。

  • Who:誰がやるのか
  • What:なにを売るのか
  • Why:なぜその事業をやるのか
  • Whom:事業のターゲットは誰か
  • When:いつから事業を開始するのか
  • How:どのように事業を展開するのか
  • How much:必要資金はいくらか

事業を始めるにあたって6W2Hが考えられていないと、あれもこれもと手を出してしまい事業の軸がぶれることになります。

事業計画にまとまりのないまま事業計画書を書いてしまうと何がしたいのか伝わらず、融資の審査などでも不利になります。

【記入例付き】事業計画書の書き方とテンプレート

事業計画書のテンプレートは下記からダウンロードできます。

以下では日本政策金融公庫より配布されている創業計画書のテンプレートをもとに、事業計画書の書き方を解説します。

事業計画書で記入する項目は下記の9個です。

  1. 創業の動機
  2. 経営者の略歴等
  3. 取扱商品・サービス
  4. 取引先・取引関係等
  5. 従業員
  6. お借入の状況
  7. 必要な資金と調達方法
  8. 事業の見通し
  9. 自由記述欄

1.創業の動機

創業の動機の欄では、創業への熱意・努力・今である必要性をアピールします。

そのためには、下記の3点を中心に記載しましょう。

  • なぜ創業したいのか
  • 創業のために何をしたか
  • なぜこのタイミングなのか

「創業のために何をしたか」では経験・実績を記載します。

同業種での勤務経験や実績、得られたスキルについて記載するのが一般的です。

創業のタイミングについては、例として下記があげられます。

  • 自己資金が目標額に達した
  • 卸業者との話がまとまった
  • 条件のあう物件が見つかった

創業の動機の欄は記載する内容が多いですが、文章が長くなりすぎないように注意してください。

長すぎる文章は読みづらいだけでなく、「文章をまとめる能力がない」という悪い印象を与えます。

200〜300文字程度を目安に、コンパクトな内容となるよう意識しましょう。

2.経営者の略歴等

経営者の略歴等の欄には下記の4つの項目があります。

  • 略歴
  • 過去の事業経験
  • 取得資格
  • 知的財産権等

略歴の項目では、学歴・職歴とあわせて実績を記載しましょう。

履歴書のように、学歴・職歴だけで略歴欄を埋めるのはNGです。

実績を記載する理由は、事業への適正をアピールし「この略歴なら事業を展開できる」と融資の担当者に思ってもらうためです。

実績がない・少ない方は、身につけたスキルやノウハウを記載しましょう。

過去の事業経験・取得資格・知的財産権等は、該当するものがあれば記載します。

ただし取得資格については、事業に必要なものに限定しましょう。

また実績や経験、必要資格を持つビジネスパートナーがいる場合は、その旨も必ず記載してください。

転職が多い場合はストーリー性が重要

「転職が多いと印象が悪くなるのでは」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。

転職経験が多い方は、ストーリー性を意識して伝えると印象がよくなります。

ストーリー性とは「それぞれの会社でどのようなスキルを身につけ創業に至ったのか」です。

下記のようなイメージで、身につけたスキルを簡潔に伝えましょう。

  • A社:営業職としてお客様のニーズ発見とセールス
  • B社:実店舗のマネジメント・従業員の動かし方

略歴にストーリー性を持たせることで「創業に必要なスキルをさまざまな企業で身につけたきた」という印象を与えられます。

3.取扱商品・サービス

取扱商品・サービスの欄には下記の4つの項目があります。

  • 取扱商品・サービスの内容
  • セールスポイント
  • 販売ターゲット・販売戦略
  • 競合・市場など企業を取り巻く状況

取扱商品・サービス欄に書くのは「どのような商品を、誰に、どのような環境で、どうやって売るのか」です。

商品については競合との違いを伝えつつ、主力商品を中心に3つほど紹介しましょう。

また販売ターゲットや環境は、売上予想などの数字の根拠にもなるためとても重要です。

競合の商品や客層、最寄駅の乗降者数など、周辺の環境を徹底的に調査しましょう。

事業計画書を見た人に「この環境でこの商品なら確かに需要があるな」と思わせることが大切です。

4.取引先・取引関係等

取引先・取引関係等の欄には下記の3つの項目があります。

  • 販売先
  • 仕入れ先
  • 外注先

販売先とは事業のターゲットです。

街中で飲食店などを始めるのであれば、来店されるお客様が販売先に該当します。

仕入れ先は話を進めている最中、提案中など未確定の状態でも必ず記載しましょう。

外注先は事業の一部を外注する場合に記載します。

5.従業員

従業員欄は人数を記載するだけであり、簡単に思えますが注意が必要です。

人件費は支出の中でも大きな割合を占めます。

そのため従業員が多すぎると、人件費がかさみ資金繰りの難航につながると判断されかねません。

創業してすぐは人件費を節約するために、創業者ができる限りの業務を行うのも選択肢です。

ただし雇用する人数が少なすぎると、事業の実現性に疑いを持たれます。

扱う商品・サービスや必要なスキル、店舗であれば客席数などから事業に必要な人数を算出しましょう。

事業の展開に合わせて従業員を雇用する予定であれば、その旨も必ず伝えてください。

6.お借入の状況

銀行からの融資やカードローンなど、借入の状況を記載します。

事業融資だけでなく車や家のローン、消費者金融からの借入があれば漏れなく記載しましょう。

お借入の状況欄は空白で提出できるのがベストですが、印象をよくしようと嘘をついてはいけません。

事業融資を行う日本政策金融公庫や、創業の支援を行う信用保証協会では、信用情報が確認されることがあります。

信用情報の確認により嘘が発覚すれば、印象が悪くなり融資の審査に通過するのは難しくなります。

記載漏れを防ぐためにも、自分の信用情報をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

国内にある3つの信用機関に登録されている信用情報は、下記より開示手続きを行えます。

7.必要な資金と調達方法

必要な資金と調達方法の欄には下記の3つの項目があります。

設備資金は事業を始めるために必要な設備を揃えるのに必要な資金です。

創業時に必要な設備の例として下記があります。

  • 物件の取得費・改修費
  • パソコン・OA機器
  • その他備品

設備資金として記載するものには、全て見積もりをつけましょう。

パソコンや文房具など、一般的な備品は通販の商品ページのコピーなどでも代用できます。

運転資金は毎月の事業を継続するために必要な資金です。

運転資金の例として下記があります。

  • 商品の仕入れ代
  • 光熱費
  • ネット回線費

資金の調達方法は自己資金・借入・出資など種別にそれぞれの金額を記載します。

最後に、設備資金・運転資金の合計と調達する資金の合計が一致しているかを必ず確認しましょう。

8.事業の見通し

事業の見通しの欄は事業計画書において最も重要な箇所です。

記入する項目は下記の4つです。

  • 売上高
  • 売上原価(仕入高)
  • 経費(人件費・家賃・支払利息など)
  • 利益

日本政策金融公庫より配布されているテンプレートは、月平均と1年後の数値を書くだけの簡単なものです。

しかしこれだけでは不十分なため、エクセルなどを用いて最低でも1年分は別途用意しましょう。

つまり事業計画書に記載する月平均のベースとなる、12ヶ月分の予想数値を準備するということです。

また市場調査により、記載する数値の全てに根拠を持たせる必要があります。

市場調査の方法:店舗の場合

店舗の開業であれば、出店予定地の人口や最寄駅の利用者数が重要な指標となります。

人口は総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」、駅の利用者数はJRなど各社公式サイトから確認できます。

また実際に競合となる店舗にも訪れ、客層や客単価を確認しましょう。

市場調査の方法:Webサービスの場合

Webサービスの開業であれば、SNSから競合の利用者を探し、アンケートを取る方法がおすすめです。

アンケートでは、下記の内容を必ず確認しましょう。

  • 年齢・性別
  • 競合を利用した理由
  • 競合のメリット・デメリット
  • 付随してあるといいサービス

またクラウドソーシングサイトを利用すれば、多数の回答が簡単に得られます。

9.自由記述欄

自由記述欄は必ず記載しましょう。

テンプレートでは「アピールポイント、事業を行ううえでの悩み、希望するアドバイス等」とあります。

ですが悩み・アドバイスは可能な限り避け、1.〜8.の補足や追加でアピールしたいことを記載しましょう。

自由記述欄に記載する例として下記が挙げられます。

  • 見込み顧客・潜在顧客について
  • 記載しきれなかった実績
  • 事業の進捗

自由記述欄は事業計画書の締めです。

事業への熱意・真剣さが伝わる内容としましょう。

事業計画書を書くメリット

基本的に、事業計画書が必要になるのは融資・出資を受けるときです。

そのため必要資金の全額を自己資金から出すのであれば、事業計画書は必要ありません。

ですが事業計画書を書くことで、確実に得られるメリットが3つあります。

具体的には次の3点です。

  • 事業計画の客観的な確認ができる
  • 第三者と事業計画を共有しやすい
  • 資金調達がしやすくなる

事業計画の客観的な確認

頭の中で考えている事業の構想を紙に書き起こすことで、客観的に見つめ直すことができます。

頭だけで考えているうちは、万全だと思っていた事業でもリスクや矛盾点はあるものです。

また手を動かすことで思考が整理され、新たなアイデアが生まれることもあります。

事業計画書として考えをまとめることは、事業の概要を俯瞰で見ることにつながります。

第三者と共有しやすい

事業計画書があることで、事業の構想を第三者に共有しやすくなります。

いろいろな人と事業の共有をすることは、支援者や協力者を集めるだけでなく、新たな視点で事業を見ることになります。

また従業員との共有であれば、コンセプトや目的の統一ができ組織を固めるうえで役立つでしょう。

第三者との事業の共有をしやすくする事業計画書は、事業そのものや組織を補強する効果があります。

資金調達がしやすくなる

事業計画書を書く大きな目的の1つは、融資・出資を受けることです。

融資・出資の審査では、ほとんどのケースで事業計画書の提出を求められます。

そのため、あらかじめ用意しておくことで、資金調達の手続きがスムーズに進めることが可能です。

また事業計画書があることで、事業の将来性・収益性を伝えることができプレゼンに説得力が生まれます。

事業計画書を書く上で重要な2つのポイント

事業計画書を書く上で重要なポイントは下記の2つです。

  • 数値に客観的な根拠を持たせる
  • いろいろな人に見てもらう

これらのポイントが守れていないと、融資の担当者から質問をされた際にあやふやな回答をしてしまうことになります。

数値に客観的な根拠を持たせる

事業計画書に記載する全ての数値には根拠を持たせましょう。

1つの数値の根拠があやふやだと、他の数値もずれることになります。

数値に根拠を持たせるのに、最も有効な方法は同業他社の実績です。

同業他社の実績は、上場企業と一部の非上場企業であれば金融庁のEDINETに公開されている「有価証券報告書」から確認できます。

EDINETに公開されていない非上場企業の実績は、下記の方法で確認できます。

ただし公開していない企業も多いため、必ず確認できるわけではありません。

いろいろな人に見てもらう

事業計画書を書いたら、いろいろな人に見てもらいフィードバックをもらいましょう。

見せる対象は、事業のジャンルについて全く知らない素人から詳しい人まで幅広く取れるとベストです。

多くの人からフィードバックを得ることで、詰めが甘い箇所・わかりにくい箇所を知ることができます。

フィードバックに沿って内容を修正をすることで、完成度を高めつつ理解しやすい事業計画書ができあがります。

事業計画書の書き方に関してよくあるQ&A

事業計画書の書き方で迷った時に相談できる専門家はいますか?
事業計画書の相談先として、下記が挙げられます。
・税理士
・中小企業診断士
・日本政策金融公庫
・商工会・商工会議所
・銀行などの金融機関
初めての起業では資金繰りや収支など、お金に関する部分の詰めが甘くなりがちです。
専門家からアドバイスを受けることで、難易度の高いお金の部分についても納得いく事業計画書が書けます。
中でも日本政策金融公庫・商工会・商工会議所・金融機関は、無料で具体的な相談が可能です。
事業計画書で迷ったときには、ぜひ利用しましょう。
事業を始めるための自己資金はどれくらい必要ですか?
自己資金は、必要資金の3割を目安に準備しましょう。
日本政策金融公庫の「2021年度新規開業実態調査」では、開業資金の平均が1,177万円、うち自己資金が282万円です。
割合に直すと、開業資金の約24%が自己資金です。
そのため、自己資金が必要資金の3割を占めていれば問題ないと言えるでしょう。

参照:「2021年度新規開業実態調査」

事業計画書を書いてみよう

事業計画書は初めてでも書けるほど簡単ではありません。

フィードバックを受け、試行錯誤しながら段々とできあがっていくものです。

まずは6W2Hを中心に、思いつくことを紙に書き起こすところから始めてみましょう。

また事業計画と同じくらい、経営者が考えなければいけないのが「資金繰り」です。

資金繰りの具体的な方法については、こちらの記事をご覧ください。

資金繰り表の作り方・活用方法を簡単解説!エクセルフォーマット付き