実際のところ、事業資金を即日調達できる方法は限られています。

数少ない方法として挙げられるのが、ビジネスローンとファクタリングです。

どちらも最短即日で事業資金を調達することができる手段ではあるものの、具体的な取引内容やメリット・デメリットはまったく異なります。

判断を間違うと「こんなはずじゃなかった」と落胆する結果にもなりかねないので、状況に応じて適切に使い分けましょう。

今回の記事では、ビジネスローンとファクタリングの違いを踏まえ、状況別にどちらがおすすめかを解説します。

違いをしっかりと理解し、正確な判断に基づき自信を持って資金調達できるようにしましょう。

ビジネスローンとファクタリングの3つの違い

ビジネスローンとファクタリングの違いを大まかにまとめると、以下の3点です。

  1. 事業資金の借入か売掛債権の売買か
  2. 自社と取引先のどちらの支払能力を重視するか
  3. 国や都道府県への登録が必要か不要か

以降において、それぞれの違いに関して細かく説明します。

1.事業資金の借入か売掛債権の売買か

ビジネスローンは、事業資金の借入の一種で、消費者金融や会社など銀行以外の金融機関(ノンバンク)が扱う事業資金用の融資商品のことです。

一般的なカードローンと同じく、あらかじめ設定された利用限度枠の範囲内であれば、自由に借入ができます(極度内貸付)。

借入をした資金は、返済計画に従い、一括もしくは分割で返済していかなくてはいけません。

一方、ファクタリング(厳密には買取ファクタリング)はあくまで売掛債権の売買です。

※以降においては、特段注釈のない場合、ファクタリングを「買取ファクタリング」の意味で用います。

取引先に対する売掛債権を専門の会社(ファクタリング会社、ファクター)に売却し、資金化することを言います。

本来の売掛債権の支払期限が到来したら、ファクターに一括して返済しなくてはいけません。

ウィズリコースとノンリコース

なお、ファクタリングで売却した売掛債権の支払元である取引先が倒産した場合でも、基本的に利用者が返済する必要がありません。

償還請求権(ファクターが取引先に代わって利用者に支払うよう求められる権利)がない状態で契約することが大半だからです。

このような契約形態をノンリコースと言います。

一方、償還請求権を付した形での契約(ウィズリコース)も理論上はあり得ますが、実際に扱えるのは貸金業者として登録を済ませているファクターのみです。

貸金業法に基づく登録を済ませていないファクターでは扱えません。

2.自社と取引先のどちらの支払能力を重視するか

ビジネスローンの審査においては、自社の支払能力が重視されます。

融資である以上、支払能力の乏しい利用希望者に貸すと、延滞・滞納のリスクも大きくなります。

そのリスクは結局債権者(ここではノンバンク)が引き受けることになるため、審査では「利用希望者が相応の支払能力を有しているか」がチェックされると考えましょう。

このような背景があるため、赤字だったり、税金の滞納があったりした場合は、ビジネスローンを使うのはほぼ不可能です。

一方、ファクタリングではどちらかといえば取引先の支払能力が重視されます。

ファクターにとって問題となるのは「買い取った売掛債権の支払可能性」です。

取引先に十分な支払能力があれば、売掛債権の買取額を回収できる可能性は十分にあります。

しかし、取引先の業績が芳しくないなどの理由で支払能力が不十分なら、将来的に回収できない可能性も出てくるでしょう。

そのため、ビジネスローンとは違い、取引先の支払能力に重きを置いた審査が行われます。

自社が赤字だったり、税金の滞納があったりした場合でも、ファクタリングを利用できる可能性があるのは、このあたりに理由があるでしょう。

ただし、実際に利用できるかどうかは、ファクターの判断による部分もあるため、100%利用できるとは限りません。

3.国や都道府県への登録が必要か不要か

ビジネスローンは貸金業者のみが提供できる融資商品です。

そのため、貸金業法に基づき、国もしくは都道府県への登録を済ませた会社でなくては、ビジネスローンは扱えません。

純資産額は5,000万円以上でなくてはいけないなど、他にもクリアすべき条件がたくさんあります。

参照:日本貸金業協会「貸金業を始めるには」

一方、ファクターは基本的に自由に開業できます。

2023年2月現在、銀行(銀行法)や消費者金融(貸金業法)のように、特別法による規制もありません。

十分な資金力のないファクターは避けるべき

実際のところ、十分な資金力のないファクターは避けた方が無難です。

ファクタリングでは、一度に数百万円や数千万円の売掛債権現金化を扱うこともあります。

それに耐えられるだけの資金力がないファクターが、業務を適切に運営できるとは思えません。

ファクターを選ぶ際は、十分な資金力があるか、業務が適切に運営されているかを含め、優良な業者を自分の目で選ぶようにしましょう。

個人事業主はファクタリングもビジネスローンも使える

個人事業主の場合、審査に通過さえすれば、ファクタリングもビジネスローンも利用できます。

この点について、詳しく解説しましょう。

ファクタリングはファクター選びが肝心

ファクターによっても、個人事業主の利用を受け付けているかどうかは異なります。

会社の方針により、法人でないと利用できないケースもあるため注意が必要です。

一方で、個人事業主でも利用でき、用意すべき書類も請求書や通帳だけとハードルの低いファクターもあります。

個人事業主が利用できるファクターと、ファクタリングの利用にあたっての注意点については、以下の記事で解説しているため、参考にしてください。

ビジネスローンは個人事業主でも使いやすい

ビジネスローンは、個人事業主であっても使いやすい資金調達方法となっています。

その理由として指摘できるのが、個人信用情報の信頼性です。

企業の場合(可能性としては低いですが)粉飾決算を行っている可能性もあるため、財務諸表が100%正確とは限りません。

審査において提出された財務諸表上では問題がなかったのものの、後々になって粉飾決算が発覚することもあり得ます。

しかし、個人への融資では決算書ではなく、個人信用情報をもとに審査を行います。

個人信用情報は決算書とは異なり、お金を借りる側が情報を恣意的に書き換えるということができません。

そのため、ビジネスローンでは決算書から審査をしなければならない法人よりも、個人信用情報から審査をすることができる個人の方が早く正確に審査をすることができることになります。

ビジネスローンでは法人よりも個人事業主に特化した商品が多いのはこのような理由です。

もちろん、法人でもビジネクストのように即日融資に対応しているビジネスローンも存在します。

赤字だったり税金の延滞があったりする場合はファクタリング

自社(事業)が赤字だったり、税金の滞納があったりする場合は、ファクタリングによる資金調達を目指しましょう。

すでに触れた通り、ビジネスローンもれっきとした融資です。

そのため、利用希望者の支払能力に不安要素がある場合、債権者(ノンバンク)が融資を見送る判断をするのはしごく当然でしょう。

赤字だったり、税金の延滞があったりする場合もこれにあてはまります。

なぜ、このように自社に信用がない場合にファクタリングを選ぶと良いのか、説明しましょう。

自社に信用がない時はファクタリング

ファクタリングで主に審査されるのは取引先です。

つまり、ファクタリングを利用した場合、最終的には取引先が本来の期日に支払った代金を返済することになります。

そのため、自社に信用がなくても手元に優良企業の売掛金さえあれば資金調達することができる可能性はあるでしょう。

特に、売掛金期日になると売掛先企業が直接ファクタリング会社へ支払いを行う3社間ファクタリングでは自社の信用はほとんど審査で考慮されません。

業況が悪化して、銀行などからお金を借りることができない場合でも、優良企業の売掛金さえ持っていればファクタリングで資金調達することができる可能性は十分にあります。

ビジネスローンは自社の信用が審査される

一方、ビジネスローンで審査されるのはあくまでも自社の業況のみです。

債務超過や赤字は続いているような企業はビジネスローンの審査に通過することができないケースも珍しくありません。

また、借りることができたとしてもそれほど高額を借りることは難しいと考えた方がよいでしょう。

担保がある場合はビジネスローン

不動産など、担保に入れる資産が会社や代表者にある場合にはビジネスローンの方がおすすめです。

無担保では500万円程度までしか融資に対応していないビジネスローンですが、不動産担保融資であれば数千万円〜1億円程度の融資に応じている場合もあるためです。

一方、ファクタリングではいかに高額な不動産を所有していても意味はありません。

担保がある場合にはビジネスローンを選択すべき理由について詳しく解説していきます。

ファクタリングは売掛金以上の資金を調達できない

ファクタリングはには、売掛金の範囲内までしかお金を借りることができないというデメリットがあります。

いかに業況がよくても、有力な担保があってもファクタリングで調達することができるのは、自社が保有している売掛金の範囲内までで、必要資金以上の売掛金を持っていない場合にはファクタリングで必要資金を調達することはできません。

ビジネスローンは担保があれば高額融資可能

ビジネスローンの特徴として、担保があれば高額融資が可能となる点が挙げられます。

特に、不動産担保ローンは業況とは別に不動産担保評価額の50%程度であれば借りることができます。

所有する不動産によっては数千万円から1億円程度の資金を借りることもできます。

担保にできる不動産を所有していれば、ファクタリングよりもビジネスローンの方が借りやすいと言えるでしょう。

ただし、無担保の状態でビジネスローンを組む場合は、500万円〜1,000万円程度までが限度額となります。

銀行の信頼を確保したいならファクタリング

銀行や投資家などの外部の人からの信頼を損ねたくないのであればファクタリングがおすすめです。

ファクタリングは決算書に記録されず、貸借対照表のオフバランス化にも寄与する効果があるので外部からの評価は毀損しにくいと言えます。

一方、ビジネスローンの借入は高い確率で外部からの評価を下げることになります。

なぜファクタリングが評価を下げず、ビジネスローンは評価を下げるのでしょうか?

詳しく見ていきましょう。

決算書に記録されないファクタリングは外部に知られにくい

ファクタリングは借入ではなく売掛金の売却です。

このため、決算書にはファクタリングの内容は記録されません。

また、売掛金という資産を現金という資産に換えているだけですので、借入金のように貸借対象表が大きくなってしまうこともありません。

このため、ファクタリングは貸借対象表のオフバランス化につながり、むしろ決算書の見た目はよくなります。

決算書に記録されるビジネスローンは外部に知られてしまう

ビジネスローンは借入ですので、貸借対象表には「長期借入金」などと記録されます。

そして、借りた分だけ企業の負債は増えることになるので外部からの評価は悪くなります。

一般的に負債が多い企業よりも負債が少ない企業の方が対外的には悪く見られてしまうのでビジネスローンを利用した方がファクタリングよりも自社の外部の評価は下がります。

また、貸借対象表には借入金の明細書が添付されるので、具体的にどこのビジネスローンを利用したのかが知られてしまうことになります。

銀行はビジネスローンを利用している企業に対しては、著しくネガティブな評価を行います。

銀行は「金利の高いビジネスローンを借りているということは相当経営が苦しい」という評価を行うためです。

銀行が融資先企業がビジネスローンを利用していることを知ると、格付けを下げる可能性が高くなり、新規で銀行から融資を受けることが難しくなってしまいます。

このように、ビジネスローンは対外的な信用を落としてしまうというリスクがあります。

安全性の高い企業と取引したいならビジネスローンがベター

運営に問題がある違法業者と接点を持ちたくないなら、ビジネスローンのほうがおすすめです。

理由について詳しく解説します。

ビジネスローンは厳しい規制のもとに提供されている

すでに触れた通り、ビジネスローンは登録済の貸金業者でないと扱えない融資商品です。

サービスの提供においても、貸金業法や出資法、利息制限法など関連する法律に則り厳密に行わないといけません。

業務運営において何らかの不適切な点があれば、行政処分や刑事罰などのペナルティが待っています。

なお、適切に登録を済ませている業者かどうかは、金融庁のWebサイトから簡単に調べることが可能です。

違法業者がまったくいないわけではありませんが、ファクタリングに比べるとその数ははるかに少ないのが、ビジネスローンの大きな強みでしょう。

ファクタリングは特別法による規制がない

ファクタリングには、ビジネスローンのように特別法による規制が現状ありません。

国や都道府県への登録・許認可も必要ないため、どんな業者であってもファクターは開業できます。

その中に、法律に照らし合わせてあきらかに問題がある業者が混じる可能性はゼロではありません。

実際のところ、トラブルが起きた場合は「経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものについては、貸金業に該当する」という前提で判断されます。

参照:金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」

しかし、トラブルが起きる前に、あきらかに法律上問題があるファクターには近づない方が無難です。

ビジネスローンとファクタリングに関するよくある質問

明日お金が必要なのですが、ビジネスローンとファクタリングのどちらに申し込むべきでしょうか?
どちらにも申し込んでみましょう。どちらか一方だけであれば審査に落ちることや手続きが間に合わないこともあるので、どちらにも申し込み、確実に明日資金が手に入る方法で資金調達しましょう。
銀行融資が降りてくるまでのつなぎ資金が必要な場合はビジネスローンとファクタリングのどちらを使用すべきでしょうか?
数日程度の短期間の利用であれば金利の低いビジネスローンがおすすめです。ビジネスローンは自由に返済することができるので、たった1日の利用であれば1日分の利息しか取られません。数日程度の利用であればビジネスローンにメリットがあります。
売掛先の同意を得られる場合にはビジネスローンとファクタリングのどちらにメリットがありますか?
手数料と金利の比較で言えば、やはりビジネスローンにメリットがあります。3社間ファクタリングでも手数料は5%程度発生し、1ヶ月の利用で5%なら年利は60%です。金利15%のビジネスローンを1ヶ月利用しても、1ヶ月分の金利は1.25%ですのでコスト負担はビジネスローンの方が軽くなります。

状況に適した使い分けを

ビジネスローンもファクタリングも即日資金調達が可能な手段です。

ただし、ビジネスローンが資金の借入であるのに対し、ファクタリングは売掛債権の売却という大きな違いがあります。

当然、メリットとデメリットもまるで違うのがわかるでしょう。

どちらの手段が適しているかは、自社のニーズや状況によって異なります。

自社のニーズや状況を冷静に分析し、ビジネスローンとファクタリングを上手に使い分けましょう。