個人事業主が融資を受けるためにクリアすべき2つの条件
個人事業主が融資を受けるためには、最低でも以下2つの条件を満たしている必要があります。
- 開業届を提出している
- 確定申告を行っている
上記はあくまでも最低条件で、融資では事業計画書の提出や担保の設定など別途手続きを求められる場合が多いです。銀行によって申請条件は異なるため、融資を申し込む前に窓口等で事前に確認しておきましょう。
①開業届を提出している
事業を正式に開始した証明として、開業届を税務署に提出していることが融資審査において必要です。開業届を提出していないと金融機関は「本当に事業をやっているのか」を判断しづらく、審査段階でマイナス評価になりやすいためです。開業届は事業開始から1か月以内の提出が推奨されているため、速やかに税務署での手続きを済ませておきましょう。
②確定申告を行っている
金融機関が個人事業主への融資審査で重視するのが、確定申告書による過去の実績と納税状況です。特に、開業から2年目以降の申し込みでは直近1〜2年分の確定申告書がほぼ必須になります。
確定申告書が必要な理由は、「安定した収益構造があるか」「納税義務を果たしているか」などを判断するためです。たとえば、日本政策金融公庫の創業融資でも、開業1年未満以外は原則として確定申告書が求められます。
個人事業主が事業・運転資金を調達できる6種類の融資
個人事業主が事業・運転資金を調達できる融資には、以下の6種類が存在します。
- 銀行融資
- 信用金庫
- 日本政策金融公庫
- 貸金業者のローン商品
- 法人カードのキャッシング枠
- 地方自治体の制度融資
同じ融資でも入金されるまでの期間や金利などに違いがあるため、自身の目的にあった方法を利用しましょう。
銀行融資
銀行融資は個人事業主にとって最もメジャーな調達手段で審査基準が厳格ですが、高額かつ低金利で資金を確保できます。融資の審査では決算書・確定申告書を中心とした財務実績が重視され、収益性や経営の安定性、納税履歴等が精査されます。
また、担保・保証人の有無は融資額・金利に大きく影響し、物件担保を提供できる場合には利用条件が良くなるケースが多いです。ただし、規模の小さい個人事業主は回収リスクが法人より高く、審査に通過できないケースが多くあります。さらに審査から入金されるまでに時間がかかるため、すぐに資金が欲しい場合には注意が必要です。
信用金庫
信用金庫は地域密着型の金融機関として中小規模の事業者や個人事業主を対象とし、銀行よりもやや柔軟な審査体制である点が特徴です。地域貢献や地元経済活性化を目的としているため、担保・保証人なしで比較的審査に通りやすい傾向があります。
金利は銀行より若干高くなる傾向がありますが、審査基準も緩和されて創業間もない個人事業主でも柔軟に相談に乗ってくれる点が魅力です。さらに、融資後の経営相談や資金管理支援なども行っているため、個人事業主にとって心強いパートナーとなります。
日本政策金融公庫
政府100%出資の日本政策金融公庫は、中小規模事業者の強い味方となる公的融資機関です。個人事業主を対象に多彩な融資サービスを提供しており、金利が抑えられて長期での返済が可能なメリットがあります。
たとえば、「新規開業・スタートアップ支援資金」での融資限度額は7,200万円で、最長20年の返済期間が設定可能です。審査では事業計画の具体性や自己資金の有無、信用情報などが重点的にチェックされるため、事前に十分な準備が求められます。なお、申し込みから審査・融資実行まで1か月〜2か月程度かかるのが一般的で資金をすぐに調達したい方には向いていません。
貸金業者のローン商品
貸金業者とは、消費者金融・信販会社など貸金業法の枠内で資金提供を行う事業者で、個人事業主向けにもビジネスローンを用意しています。ビジネスローンの特徴は審査スピードが早く融資まで最短即日で、担保・保証人不要のケースも多く手続きの負担が少ない点です。
しかし、金利は日本政策金融公庫・銀行に比べてかなり高めであり、返済計画を誤ると高い返済負担に陥るリスクがあります。消費者金融系のビジネスローンではカードローンと異なり使いみちが事業に限定されるため、資金管理の徹底も重要です。急な運転資金のニーズや担保なしで借りたい場合には有力ですが、金利・返済期間を十分に比較検討した上で申し込みしましょう。
法人カードのキャッシング枠
法人カードにはキャッシング枠が付帯しているものもあり、日常の資金ニーズに短期で応える資金調達手段です。キャッシング枠とはクレジットカードで現金を借入できる利用可能枠を指し、ATM・口座振込などで引き出せます。
法人カードのキャッシングは審査が簡略かつ手続きがスムーズで、クレジットカードに紐づく枠内で即借入可能な利便性があります。使途が限定されず副業や資金の臨時補填にも使いやすい反面、金利は高めで短期返済が前提とはいえ返済負担が増えやすい点に要注意です。
法人カードを複数社使い分けると資金調達できる金額も増えますが、各社の返済期日・利率の違いを整理しておく必要があります。また、カード会社によってはキャッシング利用分は口座引き落としできず振込となる場合もあるため、事前の確認は欠かせません。
地方自治体の制度融資
地方自治体の制度融資は、自治体・信用保証協会・指定金融機関による3者連携型の公的融資制度です。制度融資の目的は地元企業支援や雇用・地域活性化であり、金利・保証料の補助がある点が大きな特徴です。
自治体によっては利率のうち半分を自治体が補助するケースもあり、低コストで融資を受けられる可能性があります。保証協会が保証人を代行する点も安心で、銀行より審査に通りやすく信用力の低い創業直後や小規模事業者にもチャンスがあります。
ただし、申し込みから融資実行までに2週間〜4週間程度要するケースが多く、審査・面談などの手続きもやや煩雑です。自治体独自の制度によって名称・条件は異なるため、まずは都道府県・市区町村の公式サイトや窓口で制度融資に関して問い合わせましょう。
個人事業主が利用できる融資以外の6つの資金調達方法
個人事業主が利用できる融資以外の資金調達方法として、以下の6つを紹介します。
- ファクタリング
- クラウドファンディング
- 補助金・助成金
- 生命保険の解約
- リースバック
- 親戚・知人からの借入
融資審査に通らない場合には、上記の資金調達方法も検討しましょう。
ファクタリング
ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に売却し、即座に資金化する資金調達手法です。個人事業主が取引先からの請求書をもっていれば、所定の手数料を差し引いて買い取ってもらい、最短即日で資金を得られます。担保・保証人も必要なくオンライン手続きが可能で手間がかからない点からも、早期に資金が欲しい場合に有効な手段です。
ただし、ファクタリングで得られる金額は売掛金の額面までに限定されるため、売掛債権以上の調達はできません。また、審査では売掛債権の信用力が重要視され、経営状態が悪い取引先の場合には審査に通りにくい傾向があります。ファクタリングの手数料は年利換算すると融資の金利と比較して高めであり、コストを考えると短期的・スポット的な資金調達に向いています。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは個人事業主のビジネスアイデアを広く社会に提示し、支援者から資金を募る革新的な資金調達方法です。クラウドファンディングは以下のように複数の種類があり、各手法で資金を調達する過程が異なります。
種類 |
概要 |
購入型(リワード型) |
支援者が製品・サービスを「先行予約」や「返礼品」として受け取る形式 |
寄付型 |
見返りなしで社会貢献・チャリティ目的で資金を集める方式 |
融資型(ソーシャルレンディング) |
投資者から資金を借り、利子をつけて返済する方式 |
株式型(エクイティ型) |
支援者が企業の株式・持分を得るなど将来的なリターンを共有して資金を調達する方式 |
ファンド型(収益分配型) |
不動産・再生可能エネルギーなどを対象に、収益の分配を目的とした共同出資方式 |
最も一般的な購入型クラウドファンディングは、資金提供の代わりに自社製品・サービスを出資者へ提供する形式です。商品・サービスを販売する前に消費者へ提供できるため、実際の市場検証や事前のテストマーケティングとしても使われます。
認知度拡大・ファンづくりで、作成したプロジェクトページがLPの代替としてPR効果があるのがメリットです。また、支援者との交流を通してフィードバックを得られるため、商品・サービスのブラッシュアップにも活用が可能です。
一方、成功率は事前準備とプロジェクト設計の緻密さに左右され、準備・広報に相当の労力が必要な点がデメリットです。また、目標金額を達成できなければ資金は得られない形式のクラウドファンディングもあるため、訴求力のある企画構築が必要となります。
補助金・助成金
補助金・助成金は公的に提供される返済不要の資金支援であり、個人事業主にとって非常に魅力的な資金調達手段です。2025年に展開されている補助金・助成金制度の例として、以下のものがあげられます。
補助金・助成金の例 |
概要 |
小規模事業者持続化補助金 |
販路開拓・設備導入など経営発展を目的に最大250万円を補助 |
ものづくり補助金 |
新技術・試作品開発や業務改善を目指す事業者を支援 |
IT導入補助金 |
ITツール導入費用の一部を補助し、経営効率化を促進 |
多くの補助金・助成金では申請書類に事業計画を記載し、交付後に事業の実績を報告する義務があります。事前準備・資料作成に時間・手間がかかりますが返済不要であるため、資金負担を抑えながら計画的に事業を進められます。ただし、公募期間が短い補助金・助成金も多く、受給するためにはスケジュール管理と迅速な申請が鍵です。
生命保険の解約
生命保険を解約して得られる解約返戻金は、一時的な資金の調達手段として活用できます。契約から一定期間が経過した終身保険・養老保険は、手続きすればまとまった返戻金が受け取れるからです。
しかし、生命保険を解約すると保障が消滅するため、再加入には再度の審査が必要となって保険料の負担が増えるのが予想されます。さらに、契約期間が短い場合には返戻率が低く、解約しても払込保険料の一部しか戻らないケースもあります。
リースバック
リースバックは自宅・事務所などを売却しつつ、同じ場所を賃貸して使い続ける資金調達手法です。通常の不動産売却よりもスピーディにまとまった資金が得られ、早ければ1週間〜1か月以内に現金化できる点は魅力的です。また、場所を移転せずに事業継続ができるため、営業上の混乱を最小限に抑えつつ資金を確保できる安心感もあります。
ただし、売却価格は市場価格の60%〜70%程度になりやすく購入時の金額よりも調達できる額面が低くなる可能性があります。売却後は新たにリース料を支払うため、毎月の固定費が増加して長期間でみるとコスト負担が大きくなりやすい点も注意が必要です。
親戚・知人からの借入
親戚・知人からの借入は親しい関係を活かした資金調達法であり、柔軟な借入条件と迅速な対応が期待できます。金利・返済期限は自由に設定できるため、自分の返済計画に合わせて無理のない条項を組めるケースも多いです。
しかし、公私のどちらとも解釈できる関係のため、契約条件が曖昧だと贈与とみなされるリスクがあります。特に、返済期限が設定されずに延滞がある場合には、税務上「贈与」と認定されて贈与税が課される可能性もあるため注意が必要です。上記のトラブルを回避するには借用書・金銭消費貸借契約書を作成し、利息・返済期日・返済手段を明記するのが必須です。
個人事業主が資金調達を行うべきシーン
個人事業主が資金調達を行うべきシーンとして、主に以下の3つがあげられます。
- 起業直後で自己資金が少ない時
- 事業を拡大するために多額の資金が必要な時
- 複数の支出が突然重なった時
自己資金で支出をまかないきれない場合は、早めに資金調達を行いましょう。
起業直後で自己資金が少ない時
起業直後で自己資金が少ない時は、資金調達を検討すべき場面です。起業直後は設備投資や運転資金を一気に用意する難度が高く、自己資金が十分でない場合に資金繰りが難しくなります。
たとえば、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」なら自己資金ゼロでも申請が可能です。ただし、融資額は自己資金の3倍までが一般的な目安となるため、少ない場合は調達できる金額も低額になる点に注意が必要となります。特に、起業後の最初の3か月〜6か月は資金ショートが起こりやすいため、早い段階での融資申請が重要です。
事業を拡大するために多額の資金が必要な時
事業拡大フェーズでは設備の導入や販路拡張に向けて一度にまとまった資金が必要となるため、資金調達を行いましょう。事業拡大の段階ではある程度の事業実績もあるため、銀行・信用金庫などからの融資に加え、中小企業向けの制度融資も活用が可能です。
設備資金を伴う長期借入では低金利かつ長期での返済が可能となるケースが多いですが、審査基準も厳しくなる点に注意が必要です。なお、IT導入補助金やものづくり補助金などの補助金・助成金を併用すれば返済負担の軽減が期待できます。
複数の支出が突然重なった時
個人事業主にとって最も怖いのは予期しない支出が重なるタイミングで、資金が枯渇しそうな場合はすぐに資金調達を行う必要があります。税金の納付や機材の修理、取引先の支払いなどが一度に重なると資金が一気に目減りして資金ショートのリスクが急上昇します。
上記のような急場ではビジネスローンや法人カードのキャッシング枠など、審査が早くて即日対応可能な資金調達方法が有力です。他にも、ファクタリングで売掛債権を売却して即時資金化し、借入せずにキャッシュフローを保つ方法もあります。すぐ実行可能な資金調達手段を常にリストアップしておけば、突然の支出にも冷静に対応できて事業継続への影響を最小限に留められます。
個人事業主が資金調達方法を選ぶ際に確認すべきポイント
個人事業主が資金調達方法を選ぶ際に確認すべきポイントは、以下の5点です。
- 金利・手数料
- 入金されるまでのスピード
- 資金調達できる金額の上限・下限
- 審査の難易度
- 担保・保証人の有無
上記のような利用条件は資金調達方法によって大きく異なるため、自社の希望条件にあった手段を選びましょう。
金利・手数料
資金調達において最も重視したい指標が金利・手数料で、融資の場合は金利を比較します。たとえば、銀行融資とビジネスローンの金利相場を比較すると、以下の通りです。
資金調達手段 |
金利 |
銀行融資 |
1%〜3% |
ビジネスローン |
2%〜18% |
なお、ビジネスローンの場合は担保・信用保証があれば低金利が期待できますが無担保では金利が比較的高めにかかる傾向があります。ファクタリングは手数料相場が2%〜20%で、手続きの簡便さや即日資金化が可能である点と引き換えに高めのコストがかかります。
したがって、資金調達手段ごとの金利・手数料の構造と自身の返済力や資金の使いみちに応じて最適な手段を選ぶのが重要です。「金利・手数料が低い」だけではなく、「どれくらいの期間で金額を借りて返せるか」の視点から総コストを評価しましょう。
入金されるまでのスピード
特に短期的に資金ショートを避けるために調達方法を検討する際は、入金スピードが非常に重要です。ファクタリングは申し込みから最短30分〜1日で入金完了する業者もあり、すぐに資金を確保できる点が大きなメリットです。また、手形割引も最短即日〜3営業日程度で資金が得られ、資金をすぐに確保しやすい手段と言えます。
一方、銀行・信用金庫などの融資は、審査・面談・契約を経て1週間〜2週間以上かかるケースが一般的です。いつまでに資金が必要かを判断した上で「入金スピードを優先」「条件を優先」を整理し、目的に合った資金調達法を選びましょう。
資金調達できる金額の上限・下限
資金調達できる金額の上限・下限が調達先によって異なるため、必要な資金規模に応じて調達手段を使い分けるのも重要です。融資は数百万円〜数千万円規模の高額調達が可能ですが、下限は数十万円〜100万円程度となるケースが多く少額の調達には向きません。
一方、ファクタリング・ビジネスローンは1万円からでも対応可能なサービスが多数あり、個人事業主も利用しやすいです。「必要資金が小口なのか大口なのか」を軸に、調達可能な金額幅と自社の目的をすり合わせて資金調達方法を選びましょう。
審査の難易度
資金調達の選択時には、審査の難易度を把握しておくのもおすすめです。たとえば、銀行・信用金庫・日本政策金融公庫の融資は、決算書・収益性・納税状況などの財務実績を厳しくチェックされます。そのため、個人事業主では収益が安定しないと判断され、通過が難しい傾向があります。
一方、ノンバンク系のビジネスローンは信用情報・納税状況に問題がなければ、通常の融資と比較して審査に通りやすいです。ファクタリングは売掛先の信用力が審査で重視されるため、健全な売掛債権さえあればスムーズに資金を調達できます。自身の資金調達目的に応じて、利用条件と審査の柔軟性を比較しながら最適な手段を選びましょう。
担保・保証人の有無
資金調達において「担保・保証人が必要かどうか」は、利用条件を左右する重要なチェックポイントです。一般的に融資では担保・保証人を提供すると金利は引き下がり、融資額が上がる傾向にあります。一方で、無担保・無保証での融資は条件が厳しくなる場合があるため、審査を通過できないケースも多いです。
ノンバンク系のビジネスローンでは原則として担保・保証人も不要な商品が多いですが、金利がやや高くなる傾向があります。したがって、担保・保証人の有無を確認した上で、自分の事業規模やリスク許容度に合った資金調達手段を選びましょう。
個人事業主が融資で資金調達する際の注意点
個人事業主が融資で資金調達する際の注意点として、以下の5点があげられます。
- 自己資金をある程度用意する
- 入金されるまでに時間がかかる
- 返済計画を明確に示す
- 事業計画を作成して収益性を示す
- 複数の資金調達手段でリスクを分散する
個人事業主は法人と比較して融資を受けられる可能性が低い傾向にあるため、上記のポイントを中心に綿密に準備しましょう。
自己資金をある程度用意する
融資審査では自己資金の有無が非常に重要であるため、可能な限り多くの金額を用意しておきましょう。たとえば、日本政策金融公庫の調査によると創業融資を受けた事業者の自己資金比率は平均24.5%でした。
そのため、必要資金が1,000万円なら自己資金として200万円〜300万円を用意するのが望ましいです。なお、公庫の融資制度では創業資金の1/10以上の用意が申請条件となり、自己資金ゼロだと審査落ちする可能性が上がります。
参考:「2024年度新規開業実態調査」|日本政策金融公庫
参考:創業の手引き+|日本政策金融公庫
入金されるまでに時間がかかる
銀行・日本政策金融公庫などを利用した融資は、申し込みから実際の入金までに時間がかかる点に注意が必要です。公庫の公式FAQでは申し込みから平均3週間程度とされており、提出書類や審査内容によってはもっと長引くケースもあります。
また、銀行・信用金庫での融資においても面談・契約・担保評価などの過程があり、最低でも1週間〜2週間以上は見込んでおきましょう。余裕をもって申し込みを行い、緊急時には即日資金化が可能なビジネスローン・ファクタリングなどと使い分けるのも有効です。
参考:よくあるご質問 創業をお考えの方|日本政策金融公庫
返済計画を明確に示す
融資審査で重視されるのが資金を借りた後の返済可能性であるため、返済計画を明確に示しましょう。金融機関・公庫に提出する事業計画書には、売上予測とともに返済原資を根拠とした返済計画が必要です。
特に、起業初期では利益が安定しにくいため、余裕をもって月々の返済額が賄えると具体的に示す必要があります。また、具体的な返済方法に関して返済期間などを複数パターンに分けてシミュレーションを見せると担当者への説得力が増します。
事業計画を作成して収益性を示す
融資による資金調達を成功させるためには、事業計画書で収益性を明確に示しましょう。金融機関は事業の再現性と実現可能性を重視し、収支予測が現実的であるかどうかを厳しくチェックします。
たとえば、日本政策金融公庫の「創業の手引き」では事業の強み・弱みを明確にして計画書を作成するよう推奨しています。そのため、上記のポイントが日本政策金融公庫の融資審査における重要なポイントとなっている可能性が高いです。
事業計画書は具体性が求められるため、売上見込みは市場規模・客単価・競合調査をもとに数字で示しましょう。費用項目も原価・経費・人件費など細かく分けて記録し、利益率・現金収支がどのように推移するかを表・グラフで視覚化します。なお、事業計画書の構成としては、以下の流れで10分〜15分で読み切れる量にまとめると金融機関への説得力が増します。
- 事業概要
- 市場環境
- 販売戦略
- 収支見通し
- 資金使途と返済計画
- 事業上のリスクと対応策
参考:創業の手引き|日本政策金融公庫
複数の資金調達手段でリスクを分散する
資金調達は複数の手段を用いて、資金ショートなどの問題が発生するリスクを回避しましょう。たとえば、銀行融資とファクタリングを組み合わせれば長期資金と短期キャッシュを同時に確保できます。また、クラウドファンディング・補助金などの併用により、金利・手数料をバランス良く調整してコストの最適化も図れます。
各資金調達手段にはメリット・デメリットがあるため、状況に応じて使い分けるのが肝要です。たとえば、緊急の支払い原資を確保するには即日対応のファクタリング、長期投資には低金利の公庫融資といった使い分けが可能です。さらに、資金調達ごとの審査期間・入金タイミングを一覧化しておくと、「どの手段をいつ利用すべきか」を素早く判断できます。
個人事業主が資金繰りに悩んだ場合の相談先
個人事業主が資金繰りに悩んだ場合の相談先として、以下の3つがあげられます。
- 銀行・信用金庫などの金融機関
- 商工会議所
- 各自治体の担当窓口
相談先によって相談できる内容が異なるため、自身の目的にあった場所を選んで利用しましょう。
銀行・信用金庫などの金融機関
個人事業主が資金繰りに悩んだ時の定番の相談先は銀行・信用金庫で、事業資金を扱うプロとして豊富な融資サービスを提供しています。特に、信用金庫は地域密着型の金融機関として地元の個人事業者に寄り添った審査スタンスと相談対応が強みです。口座を開設し、定期的に同機関と取引していると資金繰りの相談に乗ってもらいやすくなります。
銀行・信用金庫には融資相談窓口やプロパー融資担当者がおり、審査のポイントや必要書類など融資の流れについて説明してくれます。また、信用保証協会との連携融資や自治体制度とも連動しやすいため、複数の選択肢を組み合わせて資金調達も検討が可能です。信頼関係を築くと条件交渉もしやすくなるため、何か困った時は早めに普段利用している金融機関の窓口へ相談しましょう。
商工会議所
商工会議所は中小規模の事業者に対して経営相談から融資支援、補助金案内まで幅広いサポートを提供する相談機関です。専門の経営指導員が在籍しており、資金繰り悪化時にはマル経融資(小規模事業者経営改善資金融資)を日本政策金融公庫と連携して紹介してくれます。
創業ゼミなどの無料セミナーも充実しており、事業計画の作成や市場分析、資金調達の戦略まで総合的に学ぶことが可能です。また、弁護士・税理士などの専門家による法律相談・税務相談などの窓口もあり、複合的な課題にも対応できます。地域経済と強く連携しているため、公的融資・補助金に関する情報をスムーズに収集できる点もメリットです。
各自治体の担当窓口
都道府県・市区町村の商工課・産業振興センター・中小企業支援センターも、個人事業主にとって便利な資金繰りの相談先です。上記の窓口では自治体独自の制度融資や補助金、利子補給制度に関する情報提供・申請支援を受けられるのが特徴です。
多くの自治体は無料・低額で経営相談に応じており、必要に応じて補助金や制度融資の専門家、金融機関・保証協会の紹介もしてくれます。たとえば、東京都江東区では月1回、商工会議所と連携した小規模事業者向けの資金繰り相談会が開催されています。特定の業種・売上規模での要件確認、公的制度との連携情報など民間の相談先では得られない情報・支援がある点も魅力です。
参考:東京商工会議所江東支部による小規模事業者向け資金繰り相談|江東区
個人事業主が資金調達先に悩んだ場合はファクタリングがおすすめ
個人事業主が資金調達先に迷った時にファクタリングは有力な選択肢で、売掛債権を売却して資金化する形で資金を得られます。融資のような借入ではなく債権の譲渡・売買取引であるため、信用情報に記録されず今後の融資枠に影響を与えない点がメリットです。
ファクタリングは審査も柔軟かつスピーディな点が魅力で、最短即日に入金されるケースも多く急な資金ニーズにも十分対応できます。また、ファクタリングは主に売掛先の信用力を審査項目としており、融資のように利用企業の経営状況・信用情報をチェックされません。
そのため、赤字経営や税金滞納など経営状況が悪く融資審査に通らない個人事業主でも健全な売掛債権があれば資金調達が可能です。「融資審査に通らない」「短期の資金繰り改善が必要」などの場面では、ファクタリングでの資金調達を検討しましょう。
個人事業主が利用できるおすすめのファクタリング会社5選
以下では、個人事業主が利用できるおすすめのファクタリング会社を5つピックアップして紹介します。
- ビートレーディング
- QuQuMo(ククモ)
- 日本中小企業金融サポート機構
- ベストファクター
- ペイトナーファクタリング
手数料・入金スピードなど利用条件が異なるため、自身の資金調達目的に合致したファクタリング会社を選びましょう。
ビートレーディング

種類 |
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
- 診療報酬ファクタリング
- 注文書ファクタリング
|
手数料 |
- 2社間ファクタリング:4%〜12%
- 3社間ファクタリング:2%〜9%
|
入金スピード |
最短2時間 |
買取可能額 |
下限・上限なし |
手続き方法 |
オンライン・LINE・訪問 |
公式サイト |
https://betrading.jp/ |
ビートレーディングは個人事業主・フリーランスにも利用しやすく、業界内でも実績件数が多いファクタリング会社です。2社間ファクタリングでは手数料が4%〜12%程度、3社間では2%〜9%程度と相場と比較して良心的な設定となっています。手続きはオンラインと対面の両方に対応し、東京・大阪・福岡など全国主要都市に支店がありサポート対応が早い点も特徴です。
申し込みから最短2時間で入金されるスピードと、注文書ファクタリングなど多様なラインナップによって幅広いニーズに対応できます。必要書類は請求書・通帳コピーのみと手軽であり、手続きの準備に時間もかからないため事業が忙しい個人事業主でも問題なく利用できます。
QuQuMo(ククモ)

QuQuMo(ククモ)は、買取金額の下限・上限なしで利用できるオンライン完結のファクタリングサービスとして人気です。売掛金さえあれば個人事業主でも利用でき、業界でも低水準の手数料1%〜で設定されていてコスト面で大きな強みがあります。
QuQuMoの大きな魅力はスマホ・PCから10分程度で手続きが完結し、最短2時間で入金されるスピーディな資金調達のフローです。書類は請求書・通帳・本人確認書類のみで、取引先への通知が不要な2社間ファクタリングのため、周囲に知られず手軽に資金化できます。ただし、手数料は1%〜14.8%と幅があり、売掛先の信用度や金額・支払期日などで変動するため事前に必ず見積りをとりましょう。
日本中小企業金融サポート機構

日本中小企業金融サポート機構が運営するファクタリングは、法人・個人事業主を問わず申し込み可能なサービスです。非営利団体としてファクタリングサービスを運営しているため、手数料は1.5%〜10%と低水準を実現しています。
審査は最短30分で終了し、平日15時までの契約完了で最短3時間以内に即日入金というスピード対応が可能です。必要書類は請求書・通帳3か月分・本人確認書類のみで、来社不要かつ郵送・メール対応が可能なため、スマホ1つで手続きが完了します。
さらに、中小企業支援の専門家として国から認定を受けた経営革新等支援機関である点も大きな特徴です。ファクタリングに加え、資金調達全般やM&A、補助金申請など幅広い経営支援が行える点も大きな特徴です。
ベストファクター

種類 |
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
- 注文書ファクタリング
|
手数料 |
2%〜20% |
入金スピード |
最短即日 |
買取可能額 |
30万円〜1億円 |
手続き方法 |
オンライン・電話・メール |
公式サイト |
https://bestfactor.jp/ |
ベストファクターは、低水準の手数料2%から利用できる2社間・3社間ファクタリングを提供するサービスです。審査通過率は92.2%と高く、継続利用者には無料の財務コンサルティングが提供されるため経営改善支援にもつながります。
入金スピードも最短即日対応であり、実際には約6割の申し込みが当日振込に成功している実績があります。契約はオンライン手続きで完結できますが、東京・大阪・福岡に支店があるため対面での対応も可能です。
売掛債権30万円〜1億円まで対応し、建設・物流業など支払いサイトの長い業種にも強く柔軟な買取基準を持つため安心して利用できます。必要書類は請求書・通帳・本人確認書類と少なめで利用ハードルも低く、初めてファクタリングを検討する個人事業主におすすめです。
ペイトナーファクタリング

ペイトナーファクタリングは、フリーランス・個人事業主向けに特化したオンライン完結型のファクタリングサービスです。累計申し込み件数40万件超、リピート率70%超と豊富な実績をもっており、最短10分で入金されるスピードも特徴です。手数料は一律10%固定で請求額に応じて変動しないため、見積りをとらなくても調達できる金額を把握できます。
審査もAI活用でスピーディかつ精密で、提出書類は請求書と本人確認書類のみと非常にシンプルです。入金期限が70日以内の売掛債権から利用が可能で、初回1万円からOKと低額の案件に対応できる点も強みです。freee会計ともAPI連携し、請求書情報をそのまま申し込みフォームに使える設計でスムーズに利用できます。
個人事業主の資金調達に関してよくある質問
個人事業主の資金調達に関してよくある質問として、以下の7点があげられます。
- 個人事業主が必ず借りられる審査が甘いビジネスローンはある?
- 個人事業主が審査に通りやすい融資は?
- 日本政策金融公庫の運転資金はいくらまで?金利は?
- 日本政策金融公庫の審査基準は?
- 個人事業主は資金ゼロで起業できる?
- 低金利で即日資金が手に入るおすすめのビジネスローンはある?
- 個人事業主が融資に通らない原因は?
個人事業主で資金調達する際に疑問点がある場合は、上記の質問への回答を参考にしてください。
個人事業主が必ず借りられる審査が甘いビジネスローンはある?
「絶対に借りられる」「審査が甘い」ビジネスローンは、残念ながら存在しません。なぜなら、すべての貸し手は貸倒を避けるため、基本的に回収リスクを判断する審査を設けているからです。
消費者金融などノンバンク系のビジネスローンは、銀行系より申し込み条件が柔軟で審査が比較的通りやすいケースもあります。ただし、審査に通るかどうかは信用情報・納税状況次第であり、過度に甘い審査を期待すると落とされる可能性が高い点に注意が必要です。
個人事業主が審査に通りやすい融資は?
個人事業主が比較的審査に通りやすい融資としては、信用保証協会付き融資や日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金などがあげられます。信用保証協会付き融資は金融機関と保証協会の両審査が必要ですが、保証があるため個人事業主でも借りやすくなっています。
また、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は開業7年以内が対象で、運転資金は最大4,800万円まで借入が可能です。金利は無担保で2.70〜4.30%、担保ありで1.70〜3.88%と比較的低く、特別利率も適用されやすい仕組みです。
参考:国民生活事業(主要利率一覧表)|日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の運転資金はいくらまで?金利は?
日本政策金融公庫の一般貸付では運転資金の融資限度額は最大4,800万円、設備資金は7,200万円までと設定されています。返済期間は運転資金が最長10年以内(据置1年以内)、設備資金が最長20年以内(据置2年以内)です。金利は「基準利率」と「担保・保証の有無」で変動し、無担保で2.7%〜4.3%、担保ありで1.7%〜3.88%となっています。
参考:一般貸付|日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の審査基準は?
日本政策金融公庫の審査は、事業の現実性と返済能力を重視する厳格な基準があります。まず、自己資金の準備状況や返済原資が利益や減価償却費などから確保できているかが重要視されます。加えて、事業計画書に根拠ある収益予測と返済計画が盛り込まれているか、申し込み者本人の業務経験や過去実績も判断材料です。
また、延滞記録の有無などの信用情報や税金・公共料金の滞納・未納も審査に大きく影響し、審査落ちの大きな要因になります。日本政策金融公庫の審査は書類提出後の面談も含めて行われ、初回融資では2週間程度を要します。
個人事業主は資金ゼロで起業できる?
開業届の提出に費用はかからないため、初期投資が不要なビジネスモデルなら資金ゼロでも起業して個人事業主となれます。一方、店舗運営や設備を要するビジネスでは最初に家賃・導入費用などの初期費用が必要になります。なお、自己資金がゼロだと想定外の出費に対応できない可能性もあるため、少額でも蓄えておくのが望ましいです。
低金利で即日資金が手に入るおすすめのビジネスローンはある?
低金利と即日融資の両立は少し難しく、多くの即日対応ビジネスローンはノンバンクが提供していて金利相場は2%〜18%程度です。たとえば、「ドコモファイナンス BUSINESS LOAN」は最短即日で借入でき、金利4.8%〜17.6%と低い金利が設定されています。
さらに、「キャレント(Carent)」は1万〜500万円の融資枠があり、平日14時までに手続きすれば即日振込対応が可能です。金利も7.8%〜18%と相場の範囲内であり、バランスが良い点が利用者から評価されています。
個人事業主が融資に通らない原因は?
個人事業主が融資に通らない原因には、主に以下の7つがあげられます。
- 信用情報に延滞・金融事故歴がある
- 税金・公共料金の未納や滞納がある
- 自己資金が不足していて事業への本気度が伝わらない
- 事業計画書の内容が不明瞭で収支根拠が欠落している
- 返済原資が確保できていない
- 申し込み金額や資金使途に不整合がある
- 面談でのコミュニケーション不足で事業経験の説明が不十分
また、昨今の審査では連続した融資申し込みも信用情報にマイナス評価となるため、複数社で申請する際は注意が必要です。
個人事業主の資金調達をスムーズに行って事業の安定化を図ろう
個人事業主が事業を継続・発展させる上で、資金調達は避けて通れない重要な課題です。自己資金の乏しい創業直後や突発的な支出が重なった際には、日本政策金融公庫やファクタリングなど状況に応じた選択が求められます。
資金調達方法を選ぶ際は金利・手数料や入金スピードなどを確認して、自身の資金調達目的にあった手段を選びましょう。最近では、オンライン完結・即日入金対応のファクタリング・ビジネスローンも増え、柔軟な資金繰りが可能になっています。
資金繰りに悩んだ際は早めに銀行・商工会議所・自治体窓口へ相談し、複数の手段を組み合わせて資金を調達しましょう。個人事業主の資金調達をスムーズに行って、事業の安定化を図ってください。