事業規模が法人と比べて小さい個人事業主は資金が足りずに外部から資金調達をしなければならないケースは多数あります。
しかし「個人事業主はお金を外部から調達することが難しい」と考えている人も多いのではないでしょうか?
たしかに個人事業主は法人と比較してお金を調達しにくいことは間違いありません。
しかし、ポイントさえ抑えれば審査に通過することができますし、個人事業主が審査に通りにくいとされるファクタリングも、審査通過できる可能性は十二分にあります。
個人事業主が外部から資金調達する方法と審査のポイントについて詳しく解説していきます。
個人事業主の3つの資金調達方法
個人事業主が外部から資金調達する方法として主に以下の3つの方法があります。
- 銀行融資
- ビジネスローン
- ファクタリング
それぞれの資金調達方法について、概要を詳しく解説していきましょう。
銀行融資
銀行から事業に必要な資金を借りる方法です。
銀行は事業者に必要な資金を融資して、事業を拡大させ、地域経済の発展を図るという公共的な使命を負っています。
そのため、銀行の事業資金融資は2%前後の低金利で借りることができ、個人事業主でも利用可能です。
主に銀行が個人事業主に事業資金融資を行う時には、信用保証協会の保証をつけて融資をすることが一般的です。
同じく、国の金融機関である日本政策金融公庫も個人事業主に対する事業資金融資を行なっています。
金利も審査難易度も銀行融資と同じ程度ですが、日本政策金融公庫の方が創業時の融資は充実している傾向があります。
ビジネスローン
消費者金融などのノンバンクが個人事業主や法人などの事業者に対して行う融資がビジネスローンです。
ビジネスローンは申込日当日に融資を受けることができる即日融資に対応していますが、金利は法律上の上限金利ギリギリに設定されていることが一般的で、100万円未満18%、100万円以上15%というのが相場です。
審査は銀行融資よりも甘くなっていますが、金利が非常に高いという点が難点です。
また、ビジネスローンは決算書はまだ作成することができない開業から1年目の事業者や開業前の事業者は利用することができません。
ファクタリング
ファクタリングは事業者が保有する売掛債権をファクターに対して売却して資金調達する方法です。
売掛債権さえ手元に持っていれば資金調達することができます。
また、自社に支払義務はなく売掛先に支払義務があるので、自社に信用がなくても売掛先に信用があれば資金調達ができる可能性があります。
また、売掛先の同意が不要な2社間ファクタリングであれば最短即日で売掛債権を資金化することもできます。
ファクタリングは売掛債権の回収コストも売却する行為ですので、ファクターにとっては融資よりもリスクが高いことになります。
手数料はこのリスクプレミアムとして設定されているので、ファクタリングの手数料は銀行融資はもちろん、ビジネスローンよりも高く設定されることもあります。
個人事業主が銀行融資の審査に通りにくい理由
個人事業主は銀行融資の審査に通りにくいと言われています。
その理由としては、主に以下の3つの理由をあげることができます。
- 小規模で不安定
- 事業と生活が混同している
- 確定申告書の所得が低い
- 貸借対照表を作成していない
それぞれのポイントを理解しておくことで、個人事業主でも審査に通過できる可能性は十二分にあります。
個人事業主はなぜ審査に通過しにくいと言われるのでしょうか?
小規模で不安定
まず、個人事業主の事業規模が小規模で不安定であるということが挙げられます。
個人事業主は個人で商売をしているため、実働しているのが経営者1人という人も少なくありません。
また、個人事業主は仕事を発注してくれるのが1社か2社しかないというケースも多く、このような場合には取引先から仕事を切られてしまったら収入源を絶たれてしまうこともあります。
こよような理由から個人事業主に対して多額の融資を行うことは銀行にとってはリスクの高い行為であるため、審査に通過することは簡単ではありません。
事業と生活が混同している
個人事業主は事業と生活が一体化しているケースが少なくありません。
自宅で事業を営んでいる人の自宅兼事務所の家賃は、どこまでが事業用でどこまでが生活費なのかの区分は曖昧です。
事業資金は事業に必要な資金を融資するものであって、借りたお金を生活費に使用することはできません。
しかし、そもそも事業と生活が一体化している個人事業主においては、事業資金として借りたお金を結果的に生活費として流用してしまうリスクが高くなります。
しっかりと生活と事業の区別ができていないと審査に通過することが難しいのです。
確定申告書の所得が低い
多くの個人事業主の所得は意図的に低くされています。
これは、個人事業主の多くが生活のために使用している飲食代なども経費として計上して節税を図っているためです。
銀行融資では確定申告書の決算内容をもとに審査を行います。
そして「返済可能かどうか」を判断するための基準が、確定申告書の所得です。
節税のために所得を低くすれば、審査では「返済していくだけのお金がない」という判断になります。
節税のために所得を低くしすぎてしまうと銀行融資の審査に通過することが難しくなってしまうので十分に注意しましょう。
貸借対照表を作成していない
個人事業主は確定申告の際に必ずしも貸借対照表を作成する必要がありません。
個人事業主は65万円の青色申告控除を受ける場合以外には貸借対照表を作成する必要がありません。
そもそもあまり利益が出ていない個人事業主は65万円の控除を受ける必要がないので貸借対照表は作成していないことが多いのです。
貸借対照表は、事業者の総資産の内訳を示したもので、銀行が企業を分析する上では欠かすことができない財務書類です。
貸借対照表がなければ、銀行は個人事業主の財務分析をすることができず、安全な事業者か否かを知ることができません。
一般的には貸借対照表がなければ、銀行で格付けを得ることができません。
格付けを得ることができなれば、銀行から借りることができる資金は著しく範囲が限られることになります。
個人事業主は貸借対照表を作成していない事業者が非常に多いことも銀行から融資を受けることが難しい理由の大きな1つです。
ビジネスローンは個人事業主が借りやすい
銀行融資は個人事業主が借りることが難しい資金調達手段です。
しかし、同じ借入でもノンバンクのビジネスローンは個人事業主でも借りることができる可能性が高いと言えるでしょう。
ビジネスローンは審査のポイントが銀行とは異なるので、個人事業主でも審査に通過できることが多いためです。
なぜ、ビジネスローンは個人事業主でも借りることができるのでしょうか?
個人事業主は個人信用情報で審査できるため
ビジネスローンの個人事業主に対する審査の視点は個人信用情報が主になります。
銀行のプロパー融資や信用保証協会付融資では個人信用情報はチェックしませんが、ビジネスローンは個人信用情報をもとに審査を行います。
個人信用情報は、確定申告書と異なり本人が恣意的に手を加えることが一切できない情報です。
早く正確な審査を行うために、ビジネスローンでは事業内容とは無関係の個人信用情報をメインに審査を行なっています。
そのため、事業内容に関わらず個人信用情報に問題がない個人事業主はビジネスローンを借りることができます。
法人には個人信用情報がないため、個人事業主に対してしか融資を行なっていないビジネスローンも多数存在します。
個人信用情報が良好であれば、個人事業主はビジネスローンで比較的簡単に資金調達できるでしょう。
個人事業主はファクタリング利用は難しい?
個人事業主が資金調達できるもう一つの方法として、ファクタリングをあげることができます。
しかし、ファクタリングも個人事業主は利用しにくいと言えるでしょう。
特に2社間ファクタリングを個人事業主に対して行うと、ファクターにとってリスクが高くなりすぎるのです。
個人事業主がファクタリングを利用することが難しい理由について見ていきましょう。
原則2社間ファクタリングは難しい
2社間ファクタリングを個人事業主が利用することは難しいのが実情です。
売掛先への同意が必要ない2社間ファクタリングには、納入企業がファクタリングによって売却した債権を他のファクターへ二重で譲渡してしまうリスクがあります。
売掛金には形がありません。
そのため、すでにファクターAに売却している売掛金を、別のファクターBに対して「すでにA社に売却済み」であることを隠して二重に譲渡してしまう可能性があります。
このようなことがないように、ファクターは対抗要件というものを備える必要があります。
対抗要件とは、例えばファクターBに対して二重譲渡された売掛債権を「それはすでに当社が譲渡を受けたものだ」と主張できることです。
この対抗要件を得るための登記が債権譲渡登記です。
売掛金への同意が必要ない2社間ファクタリングでは基本的に債権譲渡登記が必須になります。
債権譲渡登記がないと、ファクターは二重譲渡に対抗することができなくなってしまうためです。
しかし、債権譲渡登記は法人しか行うことができません。
つまり個人事業主に対して2社間ファクタリングをすることは、対抗要件なしで債権の買取をしなければならない、ファクターにとってはリスクの大きすぎる行為です。
個人事業主は債権譲渡登記をすることができないので、2社間ファクタリングでの資金調達が難しくなっています。
最近は増えている
最近は個人事業主に対しても2社間ファクタリングによって即日資金化に対応している業者も増えてきています。
債権譲渡登記がなくても、二重譲渡の心配がないと判断できる個人事業主であれば審査に通過できることもあります。
審査は厳しく、手数料も債権譲渡登記ができない分高くなる傾向にありますが、個人事業主が2社間ファクタリングを利用したい時にはまず相談してみるとよいでしょう。
3社間であれば利用できる
3社間ファクタリングであれば個人事業主でも利用することができます。
3社間ファクタリングは売掛先の同意が必要なファクタリングです。
売掛先がファクターに債権を譲渡したということを把握しているため、3社間ファクタリングには二重譲渡のリスクはありません。
そのため債権譲渡登記をすることができない個人事業主でもファクタリングを利用することが可能になります。
ただし、売掛先には「債権をファクタリングした」ということを知られてしまいます。
売掛先との立場が弱い個人事業主は売掛先にファクタリングをしたことを知られてしまうと、「資金繰りが危ない企業」などと判断され、今後の取引に悪影響してしまうリスクがあることに注意しましょう。
また、売掛先の同意を取得するまでに時間がかかるので、急ぎの場合には対応することができません。
手数料は2社間よりも安くなるのはメリットと言えるでしょう。
個人事業主がファクタリングで資金調達するポイント
個人事業主でも2社間ファクタリングの審査に通過できる場合もあります。
そのためには以下のポイントを抑えておく必要があります。
- まとまった金額の債権があること
- 売掛先が優良先であること
- 事業内容が良好であること
これらのポイントを抑えることで、債権譲渡登記ができない個人事業主でも売掛先に秘密に最即日で資金化することができる2社間ファクタリングの審査に通過できる可能性が高くなります。
審査の通過のポイントについて、詳しく理解しておきましょう。
まとまった金額の債権があること
ある程度まとまった金額の売掛債権があると審査には通過しやすくなります。
まとまった債権があるということは、それなりに規模の大きな仕事ができる証拠ですので、企業の安定感に繋がるためです。
また、まとまった金額の債権はファクターにとっても大きな手数料収入かま見込めるためメリットがあります。
個人事業主でも100万円を超えるような債権がある場合には審査に通過できる可能性も大きくなるでしょう。
売掛先が優良先であること
ファクタリングにおいて審査されるのは自社よりも売掛先です。
そのため、売掛先が上場企業などの大企業であれば納入企業が個人事業主でもファクターにとってはリスクが低くなり、審査には通過しやすくなります。
事業内容が良好であること
そして、個人事業主が2社間ファクタリングを利用するにあたって最も重要な点は自社の事業内容です。
債権譲渡登記ができない2社間ファクタリングにおいては、自社の事業内容が良好でない限りは売掛債権の二重譲渡のリスクを排除することができないためです。
決算書などから「この個人事業主は資金繰りがそれほど苦しいようには見えないから二重譲渡のリスクはない」と判断することができなければ、いくら売掛先が優良企業であってとしてもファクターは安心できません。
個人事業主が2社間ファクタリングをするためには、何よりも個人事業主自身の与信状況が重要になり、赤字が継続している状態などでは審査に通過することは難しいでしょう。
ある程度安定して利益を出しており、売掛金の規模も大きく、優良売掛金を保有しているのであれば、個人事業主でも2社間ファクタリングの審査に通過できる可能性があります。
最終的にはファクターの判断次第ですので、まずは相談してみるとよいでしょう。
- 個人事業主は絶対に2社間ファクタリングを利用することができませんか?
- 絶対に利用できないとまでは言い切れません。ファクターによっては債権譲渡登記なしで2社間ファクタリングを取り扱うこともあります。このような会社では個人事業主でも2社間ファクタリングを利用することができます。
- 個人事業主はビジネスローンとファクタリングをどちらが利用するのがよいでしょうか?
- どちらも最短即日で資金調達でき調達コストも大きいので、「どのように支払っていくか」という観点で選択するとよいでしょう。ビジネスローンは分割での返済が可能ですが、ファクタリングは一括払いのみとなります。一括での支払いが難しい場合にはビジネスローンを利用することがおすすめです。
- 個人事業主はファクタリングで調達したお金を生活費に回すことはできますか?
- ファクタリングによって得た資金に資金使途は特に決まっていないので生活費に回すことも可能です。
まとめ
個人事業主は資金調達手段が限られます。
銀行融資は審査に通過しにくく、ビジネスローンは個人信用情報に問題がなければ資金調達可能ですが、過去の金融事故などの問題があれば借りることはできません。
個人事業主はファクタリングでも資金調達することができますが、取引先に秘密で資金調達することができる2社間ファクタリングは債権譲渡登記をすることができない個人事業主では借りることが難しいのが実情です。
しかし、今は個人事業主の資金調達に対応しているファクターも増えています。
自社の信用度を向上させていけば個人事業主でも2社間ファクタリングに応じてもらえる可能性は決して低くありません。
2社間ファクタリングで資金調達したい場合には、まずはファクターへ相談してみましょう。