商品在庫ファクタリングについて解説します。
「ファクタリングは売掛債権を持っていないと利用できない。現金商売のウチはファクタリングを利用することができない」とファクタリングを諦めている人も多いのではないでしょうか?
商品在庫ファクタリングであれば、売掛債権を持っていない企業や現金商売の企業でも利用することができます。
さらに、審査は実質的に行われないので、赤字や債務超過の企業はもちろん資金ショート寸前の企業でも利用することができます。
資金繰り以外にも商品在庫ファクタリングには様々なメリットがあります。
商品在庫ファクタリングの概要なメリット・デメリットについて詳しく解説します。
商品在庫ファクタリングを利用すれば、現金商売の企業でもファクタリングによって資金繰りを安定化させることができます。
商品在庫ファクタリングの活用法を理解しておきましょう。
商品在庫ファクタリングとは
商品在庫ファクタリンとは、企業が持っている在庫商品をファクタリングすることです。
ファクタリングとは売掛債権をファクターに売却して資金化することですが、商品在庫ファクタリングとは、商品在庫をファクターに売却して資金化することです。
簡単に言えば、在庫を売るということと同じです。
商品在庫ファクタリングの概要について詳しく解説します。
在庫の商品をファクタリングする
商品在庫ファクタリングとは、企業が持っている商品在庫をファクタリングするということです。
在庫商品を抱えていれば基本的にどんな企業でも利用することができ、審査も実質的にはほとんどありません。
商品在庫ファクタリングは融資以外で外部から資金調達することができる方法の1つです。
在庫を売るということと同じ
商品在庫ファクタリングとは、基本的に在庫を売却するということと同じです。
ファクタリングというネーミングから仰々しく感じるかもしれませんが、やっていることは企業が保有する在庫をファクターへ売却して資金化しているだけです。
ただし、ロットが大きくて市場でさばけない、販路を見つけることができないという理由で売却することが難しい商品でも、商品在庫ファクタリングであれば売却できる可能性が高いと言えます。
手数料は商品によって大きく異なる
商品在庫ファクタリングには買取ファクタリングと同じように手数料がかかります。
ただし、買取ファクタリングのように手数料の相場が決まっているわけではありません。
商品在庫ファクタリングの手数料は、在庫をいくらで買い取るかに左右されます。
1万円で仕入れた商品が6,000円で売却できれば4,000万円が手数料になりますし、3,000円にしかならないのであれば手数料として7,000円も発生していまします。
商品がいくらで売れるのかは、商品の状態やニーズや希少性などによって異なるので、商品によっては手数料が高いこともあれば低いこともあります。
商品在庫ファクタリングで解消できる3つの企業課題
商品在庫ファクタリングを利用することによって、企業が抱えている以下の3つの課題を解決することができます。
- 在庫の品質劣化を防ぐことができる
- 在庫管理コストを削減できる
- 資金繰りの悪化を回避できる
商品在庫ファクタリングが企業経営に寄与できる3つの方法について詳しく解説していきます。
在庫の品質劣化を防ぐことができる
売れない在庫を長期間抱えていることは商品の品質劣化を招きます。
品質劣化した商品を顧客に販売することによって企業価値が下がったりクレームにつながることも少なくありません。
定期的に商品在庫ファクタリングを利用して在庫を入れ替えることで、会社の在庫を新しい状態に保つことが可能になります。
在庫管理コストを削減できる
商品在庫ファクタリングを利用して、不要な在庫を現金化することで在庫管理コストを削減することができます。
たくさんの不要な在庫を抱えることには以下のようなデメリットがあります。
- 在庫管理のためにスペースが必要になる
- 倉庫の賃料などが必要になる
- 棚卸の人件費や時間の負担が大きくなる
商品在庫ファクタリングを利用して不要な在庫を処分することによって、企業が抱える在庫管理コストを削減することが可能です。
資金繰りの悪化を回避できる
商品在庫ファクタリングを利用することによって、資金繰りの悪化を回避することができます。
多くを抱えることによってコストが増大する不要な在庫を現金化すれば、企業の管理コストは削減され、ファクタリングによって得た現金分だけは、企業の資金が潤沢になります。
急にお金に困った時だけでなくとも、不要な在庫を抱えていると思った時に利用することで、資金繰りがよくなり、企業経営は円滑になります。
商品在庫ファクタリングとABLの違い
商品在庫を利用して融資を受ける方法としてABLがあります。
在庫商品を担保にするという視点では商品在庫ファクタリングとABLはに似ているようにも感じますが、商品在庫ファクタリングとABLは全く異なる資金調達方法です。
商品在庫ファクタリングとABLの違いについて詳しく見ていきましょう。
ABLとは在庫を担保に融資を受けること
ABLと企業が抱える在庫を担保にして融資を受ける方法です。
ABLとは動産担保融資の略称で、商品在庫や売掛債権などの流動資産を担保にして銀行が企業に融資する方法で、不動産などを持っていない企業でも、抱える流動資産の評価額の一定範囲で融資を受けることができます。
ABLは在庫を抱えたまま営業でき在庫の販売も可能
ABLは動産を担保にする融資ですが、担保になった在庫などは普通に販売することができます。
ABLでは特定の在庫を担保にするわけではなく、企業が抱える平均の在庫額などから担保評価額を設定するだけです。
そのため、ABLで担保に入っている商品は普通に販売することができますし、新しく仕入れた商品は自動的に担保になる仕組みになります。
ABLは企業の業況もチェックされる
ABLでは企業の業況についても審査されます。
いくら、価値のある在庫を持っていても、その商品の販売状況が悪いような場合には審査に通過することができない場合もあります。
商品在庫ファクタリングは在庫を売却する
商品ファクタリングは融資ではありません。
在庫をファクターに売却して資金化する方法ですので、不要な在庫を処分することができます。
また、ファクタリングした在庫はファクターに売却してしまうのでABLのように、資金調達後もその在庫で商売を継続できるわけではありません。
商品在庫ファクタリングとABLの違いをまとめると以下のようになります。
種類 | 担保の商品 | 適した商品 | 審査 | |
---|---|---|---|---|
ABL | 商品を担保した融資 | そのまま販売できる | 販路を持っており、流動性の高い商品 | 在庫の価値および企業の業況 |
商品在庫ファクタリング | 商品の売却 | 売却してしまうので販売は不可能 | 流動性が低く不要な商品 | 在庫の価値 |
商品在庫ファクタリングの審査
商品在庫ファクタリングには一応審査はあります。
しかしそれは一般的な企業の業況をチェックするような審査ではなく、在庫の価格や数量をチェックするという買取屋さんのような審査を行うだけです。
そのため、商品在庫ファクタリングは「実質的な審査なしで資金調達することができる可能性のある方法」ということができるのです。
商品在庫ファクタリングの審査内容について詳しく解説します。
在庫の価格や個数を実地で査定
商品在庫ファクタリングの審査は、審査担当者が実際に会社へ訪問し、ファクタリングする商品を査定します。
商品の質や流動性などから価格を見極め、数量などとともに買取価格を査定します。
リサイクルショップが出張査定を行うことと同じイメージを持っておけばよいでしょう。
そのため、近くに商品買取ファクタリングをしている企業がない場合には、出張費が発生したり、ファクタリング自体を断られてしまうこともあります。
商品買取ファクタリングの審査基準は「買取を希望する商品がいくらなのか」「買取を希望する商品の買取ができるかどうか」という点に絞られるので、通常のファクタリングのように、決算書のチェックなどは行われないのが一般的です。
価値のある在庫さえ持っていれば、どんな企業でも資金調達することができます。
商品在庫ファクタリングの4つのメリット
商品在庫ファクタリングには以下の4つのメリットがあります。
- 売掛債権を持っていない企業でもファクタリング可能
- 自社の与信審査がない
- 節税効果がある
- オフバランス化に繋がる
在庫さえあればどんな企業でも利用することができ、さらに節税やバランスシートの改善にも繋がります。
商品在庫ファクタリングの4つのメリットについて詳しく解説します。
売掛債権を持っていない企業でもファクタリング可能
買取ファクタリングは売掛債権を保有していない企業でも、在庫さえ持っていれば資金調達可能です。
そのため、以下のような企業でも利用することができます。
- 現金商売で売掛債権を持っていない
- すでに手持ちの売掛債権はファクタリングによって売却してしまった
ファクタリングというと売掛債権を持っている企業しか利用することができないイメージがありますが、商品在庫ファクタリングであれば、売掛債権を持っていない企業や銀行融資を受けることができない企業でも利用することができます。
自社の与信審査がない
自社の与信審査がないというのも商品在庫ファクタリングの大きなメリットです。
商品在庫ファクタリングの審査基準は、在庫商品の価値のみです。
買取価格に見合った商品であれば、その企業が倒産しようが、資金繰りが悪化しようがファクターには無関係です。
繰り返しになりますが、商品在庫ファクタリングは在庫をファクターに売却しているだけで、ファクターは買い取った在庫でファクタリング代金の回収を行うので、申し込んだ企業が明日倒産するような企業でも、在庫の価値さえあれば買い取ってもらうことができます。
古物商に会社のモノを買い取ってもらう時に会社の業況まではチェックされないことと同じです。
どこからも資金調達することができない、業況が悪化した企業においては、商品在庫ファクタリングはメリットが大きな資金調達手段ということができるでしょう。
節税効果がある
商品在庫ファクタリングには節税効果もあります。
商品在庫ファクタリングを利用して、在庫を減らすことによって売上原価が大きくなるためです。
売上原価は期首商品残高+仕入額−期末商品残高で計算します。
期末商品残高が大きくなれば売上原価が大きくなります。
例えば、以下のケースで粗利益を考えてみましょう。
例:期首商品残高100万円、 当期商品仕入高800万円、期末商品残高200万円、当期売上高2,000万円
売上原価=期首商品残高100万円+当期商品仕入高800万円ー期末商品残高200万円=700万円
粗利益=当期売上高2,000万円ー売上原価700万円=1,300万円
商品在庫ファクタリングで在庫の半分を売却した場合には、期末商品残高は100万円になります。
この場合の売上原価と粗利益は以下の通りです。
売上原価=期首商品残高100万円+当期商品仕入高800万円ー期末商品残高100万円=800万円
粗利益=当期売上高2,000万円ー売上原価800万円=1,200万円
このように、在庫を少なくした方が、粗利益が小さくなるので、利益にかかる税金は少なくなります。
商品在庫ファクタリングは節税を行いたい時にも有効な方法です。
オフバランス化に繋がる
ファクタリングは債務を伴わない資金調達ですので、貸借対照表のオフバランス化に繋がります。
これは商品在庫ファクタリングでも同じです。
商品という資産を現金という資産に交換しているだけですので、貸借対照表の総額は変わりません。
一方、借入によって現金を調達した場合には、現金という資産と借入金という負債の両方が増えるので、借りた分だけ貸借対照表は大きくなります。
できる限り不要な資産も持たない貸借対照表のオフバランスが好ましいというのが、企業評価のトレンドになっています。
商品在庫ファクタリングをすることによって貸借対照表のオフバランス化を図ることができ、外部からの企業評価が向上するかもしれません。
商品在庫ファクタリングの4つのデメリット
どんな企業でも在庫さえあれば資金調達できる可能性が非常に高い商品在庫ファクタリングですが、以下のようなデメリットもあります。
- 取り扱う業者が少ない
- 自社でさばいた方ば高額になる
- 資金化までに時間がかかる
- 悪徳業者も混在している
取り扱う業者が少なく、買取金額が少額で時間もかかってしまうという点、さらには悪徳業者も多いという点には注意が必要です。
商品在庫ファクタリング4つのデメリットについても頭に入れておきましょう。
取り扱う業者が少ない
商品在庫ファクタリングを扱う業者は多くはありません。
また、一般の買取ファクタリングを行うファクターは商品在庫ファクタリングを取り扱っていないケースがほとんどです。
そして、商品在庫ファクタリングは実地査定が必須になるので、近くに商品在庫ファクタリングを扱うファクターが存在していないと利用することは難しいでしょう。
地方に所在する会社は近くに対応できるファクターがいないことが多いので、商品在庫ファクタリングを利用することは難しいかもしれません。
自社でさばいた方ば高額になる
商品在庫ファクタリングは商品をファクターへ売却して資金化する方法です。
しかし買取率はそれほど高額にならないことがほとんどです。
もしも自分でネットなどで商品をさばくことができるのであれば、商品在庫ファクタリングよりも高額で売却できる可能性が高くなるでしょう。
商品在庫ファクタリングは高い確率で不要な在庫を売却することはできますが、自社で商品を捌けるのであれば自社で捌いてしまった方が高額で売却することができます。
資金化までに時間がかかる
商品在庫ファクタリングは、資金化までに1週間から3週間程度の時間がかかります。
ファクタリングというと「早期資金化できる」というイメージがあります。
しかし商品在庫ファクタリングは、ファクターが実地査定を行い買取価格を決定し、商品の引き取りを行うので、現金化までには時間がかかってしまいます。
申し込みから3週間もかかってしまったら、緊急の資金繰りに対応するのは難しいので、商品在庫ファクタリングは急ぎの資金繰りに寄与しないというデメリットもあります。
悪徳業者も混在している
ファクターの中には悪徳業者も混在しています。
悪徳業者は在庫商品を異常に安い値段で買い叩いたり、違法金利での融資を勧めてくるような可能性も否定できません。
商品在庫ファクタリング業を営むためには古物営業法許可を得る必要があります。
取引をしている業者が古物営業法許可を得ているかどうかは、都道府県の公安委員会のホームページで確認できます。
古物営業法許可一覧に業者の名前があるかどうかを取引の前に確認するようにして下さい。
商品在庫ファクタリングのよくある質問
- どんな商品でも買い取ってももらえますか?
- 基本的に売却できる余地がある商品であればどんな商品でもファクタリング可能です。
ただし、業者によっては販路を持っていない商品や、価値があるとは認めてもらうことができない商品もありますので、実地査定を受けてみないと買取可能かどうかは分からないのが実情です。
- 事前にいくらの調達ができるか知ることはできますか?
- ファクターに問い合わせた段階で商品名と数量を伝えることで凡その価格を知ることができる場合もあります。
しかし、実地査定で商品の状態を確認した結果、事前に想定した金額よりも買取価格が下がってしまう可能性もあります。
売掛債権のファクタリングのように事前に調達できる金額を知ることは困難だといえます。
- 近くに商品在庫ファクタリングをしてくれる業者がなくても利用できますか?
- 近くにファクターがなくても、出張してくれる業者も存在します。
ただし、その場合には出張経費がかかるので、買取率が下がってしまうことが想定されます。
また、あまりにも業者から遠方の場合には買取自体を断られてしまうこともあります。
商品在庫ファクタリングは商品の受け渡しが伴うので、基本的には近くの会社と近くのファクターが取引を行うものと理解しておいたほうがよいでしょう。
- 商品在庫ファクタリングは銀行にバレますか?
- 急に在庫が激減した場合には、銀行にバレる可能性があります。
しかし銀行に「不要な在庫を売却した」と伝えることは銀行からの評価が下がるものではありません。
銀行は、不要な在庫を持たずに多くの現金を持つ企業を是としていますので、銀行に対して商品在庫ファクタリングを利用したことをことさら隠す必要もないでしょう。
- 商品在庫ファクタリング以外で在庫を利用して資金調達する方法はありますか?
- 商品在庫ファクタリング以外で在庫を利用して資金調達する方法としてはABLやネットオークションなどの方法が考えられます。
ただし、ABLは自社に対する預金審査もしっかり行われるので業況が悪い企業は利用できません。
また、ネットオークションも確実に商品を売却できる保証はありません。
業況が悪い企業が商品在庫を利用して確実に資金調達できる方法は商品在庫ファクタリングです。
- 悪徳業者の見極め方法を教えてください。
- 古物営業法許可を得ているかどうかの確認を行うのと同時に、複数の業者へ見積もりを依頼することも大切です。
複数の業者へ見積もりを依頼して、最も買取率が高い業者と取引をすれば、悪徳業者を避けることができます。
まとめ
商品在庫ファクタリングとは、商品在庫をファクターへ売却して資金化する方法です。
商品在庫ファクタリングを利用することによって、銀行から借入ができない企業や、売掛債権を持っていない企業でもファクタリングで資金調達可能です。
ただし、商品在庫ファクタリングは資金化までに時間がかかり、取り扱い業者も少ないので、急ぎの資金化には利用額できません。
お金が必要になるタイミングから逆算して、資金が必要な時に資金を確保できるようにしましょう。
また、商品在庫ファクタリング業者の中にも悪徳業者は存在するので、取引の前には十分に注意するようにしましょう。