流通業・卸売業は資金繰りの問題に直面することが多い業種の1つです。
流通業・卸売業は景気の波を最も大きく受けやすい業種の1つですので、新型コロナウイルスやリーマンショック時のような社会的不況の際には他の業種よりも早く深刻に経営悪化してしまうこともあります。
このような時には、ファクタリングで必要資金を調達できるとともに、流通業・卸売業が抱える経営課題も解決することができる場合もあります。
流通業・卸売業の経営課題や解決法、そして資金調達方法について詳しく解説していきます。
流通業・卸売業の資金繰りのリスク
流通業・卸売業は社会的な不況を直接的に受けやすい業種です。
それに加え、流通業・卸売業には以下の3つの特殊事情があるので、経営悪化に陥りがちです。
- 在庫のコントロールを失敗した(過剰在庫)
- 卸先の経営リスク
- 利益が取れなくなっている
まずは、流通業・卸売業が抱えることの多い3つの経営課題について詳しく解説していきます。
在庫管理を失敗した(過剰・死蔵在庫)
流通業・卸売業は最初に顧客に販売する在庫を抱える必要がある業種です。
買い付けに来た顧客に対して販売する在庫を抱えているからこそ、商品を販売できるためです。
通常の経済状態であれば「毎月これくらいは販売できるだろう」と考えて仕入れた在庫が、社会的な不況になると売れない可能性があります。
このように、在庫のコントロールを失敗して、過剰な在庫を抱えてしまうのが、流通業・卸売業に最もありがちな経営リスクです。
流通業・卸売業は先に大量の仕入れをしなければならず、その代金の支払いは商品が販売できない限りは不可能ですので、在庫の仕入れを失敗し過剰在庫を抱えてしまうと資金繰りに困窮してしまう可能性があります。
卸先の倒産リスク
流通業・卸売業は顧客である卸先の経営リスクにも直面しています。
卸先は小売店などであることが一般的です。
小売店などは流通業・卸売業よりも早く景気の影響を直接的に受ける業種ですので、リーマンショック時や新型コロナウイルス感染拡大時などはどの業界よりも真っ先に景気悪化の影響を受けるようになります。
流通業・卸売業がいくら商品を仕入れても、卸先の経営が悪化してしまうと在庫を販売することができません。
また、卸先に対しては掛け販売を行なっているのが一般的です。
そのため、販売後に卸先が倒産してしまい、売掛債権がデフォルトし多額の損失を背負い、最悪の場合連鎖倒産になってしまうというリスクも流通業・卸売業は抱えています。
利益率の逓減
流通業・卸売業は年々利益が取りにくい業種になっています。
ほとんどの流通業・卸売業は特別な商品を販売しているわけではありません。
メーカーなどが製造した商品を仕入れているだけですので、多くの流通業・卸売業でも同じ商品を販売しています。
このような業界では価格競争が起こりがちになってしまいます。
販売している商品で付加価値をつけることができないので、価格競争によって顧客を獲得せざるを得ない状況になってしまうのです。
このような理由によって流通業・卸売業は年々利益が出せない業種となりつつあります。
販売している商品や顧客サービスにおいて、他社とは異なる付加価値を見いだすことができないのであれば、流通業・卸売業は経営的に決して楽ではありません。
流通業・卸売業の資金繰りの改善方法
流通業・卸売業の資金繰りを改善する方法としては以下の方法が考えられます。
- 仕入れと在庫の適正化
- ロット単位縮小の打診
- 倉庫の縮小を検討
- 支払いサイトを短縮
- 与信管理を徹底
流通業・卸売業の資金繰りを改善し、経営を良化させていくための方法を詳しく解説します。
仕入れと在庫の適正化
流通業・卸売業が仕入れと在庫の適正化を図ることが非常に重要になります。
経験から「毎月これくらい仕入れておけば問題ない」と安易に考えてざっくり仕入れるのではなく、景気動向などから需要に動向を見極め「今月は多く仕入れよう」「今月は少なく仕入れておいた方がよい」などと、統計と予測に基づき、毎月適正な仕入れを行い、在庫の量を常に適正な状態にコントロールしておくことが重要になります。
流通業・卸売業にとって仕入れは命と言っても過言ではありません。
在庫がなければ顧客が逃げてしまいますし、不要な在庫を抱えると古い在庫は劣化し、仕入れコストも膨大になります。
常に在庫の状態を最適化しておくということを心がけましょう。
ロット単位縮小の打診
仕入先とロット単位を調整するということも非常に重要です。
メーカーは一度に一定数以上の仕入れを行なって欲しいため、仕入れの最小ロットが大量になっているケースも少なくありません。
しかし、メーカーに言われるがままに高ロットの商品を仕入れても流通業・卸売業がその在庫を販売することができなければ不要な在庫を抱えるだけになってしまい、確実に経営は悪化されます。
例えば1つ1万円の商品の仕入れロットが1万個であれば、その商品の仕入れに1億円必要になりますが、ロットを1,000個にできれば仕入れに必要なお金は1千万円になります。
売れても売れなくても1億円仕入れなければならない状況と、売れない時には1,000万円の仕入れで済む状況とでは経営的なリスクが全く異なります。
メーカーに言われるがままに仕入れるのではなく、「最小ロットをもう少し縮小できないか?」と交渉してみましょう。
倉庫の縮小を検討
倉庫が大きすぎるのであれば、倉庫の縮小を検討するのもよいでしょう。
「以前よりも商品が販売できなくなった」という状況になっているのであれば、これまでと同じような大きな倉庫を抱えていることはコストでしかありません。
思い切って、身の丈にあった倉庫へ縮小してしまうのも有効な方法でしょう。
倉庫の賃料や光熱費は倉庫が大きくなればなるほどコストが大きくなってしまいます。
不要に大きな倉庫を抱えているのであれば倉庫の縮小を行い、固定費を削減しましょう。
売掛債権の支払いサイトを短縮
取引先と交渉して売掛債権のサイトを短縮しましょう。
売掛債権のサイトは長くなればなるほど自社の資金繰りが悪化します。
これまで販売してから2ヶ月後に入金という会社であれば、今後は1ヶ月後にできないかと交渉することで、自社は1ヶ月分の運転資金を余計に持つ必要がなくなり、資金繰りは1ヶ月の運転資金分だけ楽になります。
販売先に交渉できる会社がないか検討し、交渉の余地がある取引先があるのであれば売掛債権のサイト短縮を交渉してみましょう。
また、仕入先に対しては仕入債務のサイト延長を交渉することで、同じように資金繰りは楽になります。
このように、販売先に対しても仕入先に対しても自社の資金繰りが楽になるように交渉することが流通業・卸売業には重要になります。
販売先の与信管理を徹底
流通業・卸売業は他の業種よりも取引先の与信管理を徹底しなければなりません。
流通業・卸売業の販売先は小さな小売店や飲食店であることが多く、そうした事業は経営の失敗や景気動向の影響を受けやすく比較的簡単に倒産してしまうことが多いからです。
例えば飲食店の平均的な営業期間は1年半程度と言われています。
多くの飲食店が1年半程度をお店を畳んでいるのが現実で、その中には仕入先の卸売業者へ代金を支払わずに倒産・廃業してしまうケースも多いでしょう。
流通業・卸売業はメーカーは細かな小売店や飲食店まで販売することができないために存在している業種です。
そのため、小売店や飲食店の倒産リスクも多く抱えていることも事実です。
販売先が倒産し、売掛債権がデフォルトしてしまったら、それは全て自社の損失になってしまいます。
突然の倒産によって損失を被ることがないよう、日頃から取引先に対する与信管理を徹底し、「取引先がある日突然倒産した」という自体を防止する必要があります。
流通業・卸売業の資金調達にファクタリングを活用できる5つの理由
流通業・卸売業にはファクタリングが有効な資金調達方法です。
単純に、必要な資金を用意することができるというだけでなく、ファクタリングは流通業・卸売業の経営課題を解決することができます。
流通業・卸売業にファクタリングが向いているのには以下のような理由があります。
- 流通業・卸売業の売掛債権の多さ
- 売掛債権のデフォルトリスクを回避
- 回収サイトの短縮化
- 与信管理の厳格化
- バックオフィス業務の効率化
流通業・卸売業にファクタリングが適している理由について詳しく見ていきましょう。
流通業・卸売業の売掛債権の多さ
流通業・卸売業は売掛債権が非常に多い業種です。
流通業・卸売業は販売先である小売店などから月に何回も発注を受け納品します。
販売の際にその都度現金を受け取っていたら、現金の管理も売上の管理も大変になります。
また、従業員によってはお金を横領してしまう可能性もあるので、現金を集金することにはリスクも付きまといます。
そこで、流通業・卸売業は通常1か月分の売上を締めた後にまとめて請求を出すという方法で販売しているのが一般的です。
原則として流通業・卸売業の売上はすべて売掛債権と言っても過言ではないほど、流通業・卸売業は売掛債権が多い業種です。
売掛債権が多いので売掛債権を売却して資金化するファクタリングに向いている業種と言えるのです。
売掛債権のデフォルトリスクを回避
ファクタリングで売却した売掛債権は、売却時に売掛債権の回収リスクも売却することになるの、ファクタリングによって売掛債権のデフォルトリスクを排除することができます。
例えば、小売店に販売した100万円分の代金が未入金のまま当該小売店が倒産したとしても、すでにその売掛債権をファクタリングしているのであれば、損失を被るのはファクターで、自社には全く影響がありません。
流通業・卸売業は販売先が小規模の小売店や飲食店であるケースが少なくありません。
小規模は小売店や飲食店は大企業よりも倒産のリスクが高いので、流通業・卸売業は常に売掛債権のデフォルトリスクに晒されています。
しかし、ファクタリングを利用することによって、流通業・卸売業特有のデフォルトリスクを排除することができるので、流通業・卸売業にファクタリングは非常に有効な資金調達手段ということができるでしょう。
回収サイトの短縮化
ファクタリングを利用することで回収サイトの短縮を行うことができます。
ファクターの中には最短即日でファクタリングに応じてくれる所も存在します。
ファクタリングを利用すれば1か月とか3か月先だった入金が最短で当日になりますので、流通業・卸売業の資金繰りは非常に楽になります。
ファクタリングで資金調達することによって、流通業・卸売業が抱える資金ギャップの問題を解決することができます。
与信管理の厳格化
ファクタリングを利用すると売掛先の与信管理をかなりしっかりと行うことができるようになります。
ファクタリングで審査されるのは売掛先企業です。
ファクターは「売掛先が期日通りに代金を払うことができるかどうか」ということを審査するため、売掛先の業況が悪ければ審査に通過できません。
自社で売掛先の与信管理を行うことは当たり前ですが、ファクタリングを利用することによって、ファクターという審査のプロが売掛先に対してプロの目線で審査を行なってくれます。
資金調達だけでなく、ファクタリングを利用することによって売掛先の与信管理の精度が大きく上昇するという効果も得ることができます。
バックオフィス業務の効率化
ファクタリングを利用することによって、経理などのバックオフィス業務を効率化することができます。
流通業・卸売業は販売と同時に仕入れが非常に大切になる他の業種とは異なる業種です。
そのため、出来る限りバックオフィス業務担当者の人的資源を仕入れ管理、在庫の効率化などの分野に充てる必要があります。
ファクタリングを利用すれば売掛債権の入金管理などをアウトソーシングすることができます。
これによって、自社の経営資源を仕入れや販売といった収益に直結する分野へ注力することができるので、経営の効率化に繋がります。
ファクタリングと銀行融資の使い分け
最後にファクタリングと銀行融資の使い分けにについても解説します。
以下の4つの場面では銀行融資とファクタリングはどちらが向いているのでしょうか?
- 仕入れ資金
- 設備投資
- サイトの圧縮
- 売掛先の与信管理
状況別に流通業・卸売業にとって最適な資金調達方法を解説していきます。
長期仕入れ資金は銀行融資を使う
数ヶ月分の仕入れに使用する長期資金は行融資を利用した方がよいでしょう。
そもそも、ファクタリングは売掛債権の金額以上を資金調達をすることはできません。
また、2社間ファクタリングになると10%以上もの高い手数料が設定されるので、高額の資金調達を外部から行うことにも適していません。
そのため、仕入れに必要な長期の資金を借りる場合には、ファクタリングよりも銀行借入を利用した方がよいでしょう。
設備資金は銀行融資を使う
同じく設備資金も銀行融資を利用すべきです。
年商や月商の何倍もの金額が必要になる設備投資資金を、売掛債権金額の範囲内でしか資金調達することができないファクタリングで賄うのはさすがに現実的ではありません。
金利が低く、高額の借入が可能で、長期間かけて分割返済することができる銀行借入で資金調達するのが最も現実的でしょう。
設備資金を調達したいのであれば、ファクタリングではなく銀行借入を利用するようにしましょう。
支払いサイトの圧縮はファクタリングを使う
売掛債権の入金サイトの圧縮をしたいのであればファクタリングを利用しましょう。
ファクタリングであれば、数週間から1か月以上待たないと資金化することができない売掛債権を最短即日で資金化することができます。
毎月利用すればファクターからの信頼度も向上し、手数料が下がっていく傾向にあります。
また、毎月利用することによってバックオフォス業務を効率化でき、自社では売掛債権の回収事務などに人手を取られることもなくなります。
売掛債権の入金サイトを圧縮し、資金繰りを円滑化したいのであればファクタリングの方が向いているでしょう。
ただし、2社間ファクタリングは手数料が高いので、手数料負担によって企業経営が圧迫されてしまう可能性があります。
そのため、できる限り手数料の低い3社間ファクタリングを利用した方がよいでしょう。
売掛先の与信調査はファクタリングを使う
売掛先の与信状態を知りたいのであればファクタリング一択になります。
ファクタリングに申し込みを行うと、ファクターがリスク管理のために売掛先の与信状況を審査します。
審査のプロが決算状況などを調べて審査を行うので、自社が調べるよりもよほど効率的な審査を行うことができ、「この取引先は大丈夫か?」と心配になった時には非常に有効です。
新規で取引する企業の売掛債権だけファクタリングすることによって、海のものか山のものかも分からない新規取引先の与信状況を知ることができ安心です。
「売掛先の与信状況を知りたい」という時にはファクタリングを利用するようにしましょう。
流通業・卸売業の資金調達についてよくある質問
- 流通業・卸売業は3社間ファクタリングも活用できるでしょうか?
- 3社間ファクタリングを利用することができます。
むしろ、小規模の小売店や飲食店に対しては、多くの流通業・卸売業が集金代行会社で3社間ファクリングを利用しています。
取引先に対して「今後は集金代行会社に支払ってくれ」と伝えるだけで、手数料の低い3社間ファクタリングを利用することができます。
小規模の小売店・飲食店に対しては交渉しやすいかと思いますので、積極的に交渉してみましょう。
- 急いで資金調達したい時にはビジネスローンの方がいいですか?
- 確実に即日で資金調達したい場合にはビジネスローンの方がよいでしょう。
2社間ファクタリングも即日資金化に対応してはいるものの、多くのファクターで契約時には面談が必要になります。
この場合、近くにファクターの事務所がないと当日中に面談することができないので、即日資金化することはできません。
この点、ビジネスローンは原則的に非対面で契約ができるので、2社間ファクタリングよりも高い確率で即日資金調達が可能です。
より確実に即日で資金調達したいのであれば、ファクタリングよりもビジネスローンをおすすめします。
- 倉庫に眠っている商品在庫を活用して資金調達できないでしょうか?
- 商品在庫ファクタリングという方法で資金調達することができます。
商品在庫ファクタリングとは、簡単に言えば在庫を業者に買い取ってもらい資金化する方法です。
一定の価値があるものであれば、どんなに業況の悪い企業でも買取に応じてもらうことができます。
また、銀行からはABLという融資の方法によって在庫を担保に入れることでお金を借りることが可能です。
ただし、ABLで担保としての価値が認められるためには倉庫に眠っている在庫では難しいでしょう。
また、ABLでは自社の業況が悪い場合には融資を受けることはできません。
- 取引先が個人でもファクタリングできますか?
- ファクターによって対応は異なりますが、基本的には個人に対する売掛債権をファクタリングすることは難しいと考えた方がよいでしょう。
ファクタリングは原則として法人に対する売掛債権を売却して資金化することです。
そのため、流通業・卸売業が個人に対して販売した売掛債権をファクタリングによって資金化することは基本的に不可能だと考えておいた方がよいでしょう。
- 銀行から断られてもファクタリングで資金調達できるでしょうか?
- 銀行から融資を断られてもファクタリングによって資金調達することができます。
ファクタリングでは自社ではなく売掛先の業況を審査するので、自社の業況が銀行からお金を借りることができないほどに悪化していたとしても、売掛先が支払能力に問題のない企業であれば十分に審査に通過できる可能性があります。
流通業・卸売業は在庫管理が悪く採算が取れない経営状態である場合には銀行から融資を断られてしまう可能性がありますが、そのような時でもファクタリングであれば審査に通過して資金調達できるでしょう。
- デフォルトした売掛債権はファクタリングで買い取ってもらえませんか?
- 期日になっても入金にならない不良債権はファクタリングでは買い取ってもらうことはできません。
ファクタリングで買取対象となるのは、あくまでも期日前の正常な債権だけです。
この債権がデフォルトした場合には、ファクターが損失を負ってくれますが、すでにデフォルトした債権をファクタリングすることは不可能です。
「この取引先怪しいな」という支払いが心配な債権があるのであれば、期日になる前に早めにファクタリングしてしまった方がよいでしょう。
流通業・卸売業の資金調達まとめ
流通業・卸売業の資金調達にはファクタリングが非常に有効です。
流通業・卸売業には以下のような経営課題があります。
- 売上のほとんどが売掛債権
- 入金までのサイトが長い
- 取引先が小規模でデフォルトリスクがある
- 売掛先の与信管理が非常に重要
ファクタリングを利用することによって、必要な資金調達ができる上に、これらの経営課題を一括で解決することができます。
景気の波に左右されやすい流通業・卸売業にとってファクタリングは有効な資金調達手段ということができます。
ただし、手数料が高いので、無計画に利用するのではなく、ファクタリングの利用は計画的かつ必要最小限に留めるようにしましょう。