ファクタリングにはノンリコースとウィズリコースという2つの形態があります。

ノンリコースのファクタリングでは売掛先が倒産した場合で、自社に責任は及びません。

まだファクタリングに慣れてしない企業の方は「必ずノンリコースでファクタリングをした方がいいの?」と疑問に思う方もいるでしょう。

ノンリコースは売掛先の倒産リスクを排除できますが、デメリットもあります。

ノンリコースのメリットとデメリットをよく理解して、損をしないファクタリングをしていきましょう。

 

ノンリコースとは?

ノンリコースとは?

ノンリコースとは、「債権求償権なし」という契約です。

債権求償権とは売掛先が倒産した場合にファクタリング会社が請求する権利です。

取引先がある日突然倒産しても、ノンリコースであれば自社は1円もファクタリング会社に支払う必要がないので安心です。

ノンリコースのファクタリングにはその他にも特徴があります。

ノンリコースの特徴について詳しく説明していきます。

売掛債権がデフォルトしても責任が発生しないこと

ノンリコースのファクタリングでは、売掛先企業がお金を支払わなかった場合や突然倒産した場合に自社に責任が及びません。

ノンリコースのファクタリングとはファクタリング会社が全責任を負う契約であるためです。

銀行で手形の割引などを行うと、ある日突然手形振出人の企業が倒産したり、手形が不渡りになった場合には、自社が銀行に対して手形の額面金額を支払わなければなりません。

しかし、ノンリコースのファクタリングでは売掛先企業の経営不振や経営破綻によって手形がデファルトしても、自社には一切責任が及びません

ノンリコースのファクタリングを使用すれば、取引成立後には確実に資金化でき、取引先が破綻しても自社にはダメージがないので、安心して取引をすることができます

資金化までに時間がかからない

ノンリコースのファクタリングには資金化までに時間がかからないという特徴があります。

一般的にウィズリコース(償還請求権あり)のファクタリングは3社間ファクタリングで行われます。

3社間ファクタリングの売掛先の同意なしに行うことができないので、同意を得るために1週間以上の時間がかかってしまうこともあります。

一方、ノンリコースのファクタリングは売掛先への同意が不要な2社間で行われるので、資金化までに時間がかかりません。

ノンリコースのファクタリングを扱う会社の中には最短即日で資金化に対応してくれる場合もあります。

ノンリコースだから銀行融資とは大きく異なる

売掛債権を資金化する手形割引などの銀行融資とファクタリングは似ているように感じます。

しかし、ノンリコースのファクタリングは銀行融資とは全くの別物です。

そもそもファクタリングは借入ではなく売掛債権の売却という行為です。

また、何よりもノンリコースのファクタリングでは売掛債権の回収リスクもファクタリング会社に売却するので、自社に回収リスクが及びません。

銀行融資は売掛先がデフォルトした場合のリスクは自社に及び、ノンリコースでは回収リスクがないという点が銀行融資との大きな違いです。

ウィズリコースとは?

ウィズリーコースとは?

ノンリコースの反対の言葉がウィズリコースです。ウィズリコースとは「債権求償権あり」ということで、売掛先が倒産した場合に自社に責任が及びます。

売掛金が期日になる前に取引先が倒産したり、期日になっても取引先が支払いをしない場合には自社がファクタリング会社に賠償しなければなりません。

また、資金化までの時間もノンリコースとは異なります。

ウィズリコースの特徴を詳しく解説していきます。

売掛債権がデフォルトしたら責任が及ぶ

ウィズリコースは売掛債権がデフォルトした場合のリスクが自社に及びます。

売掛先が期日になっても売掛金の入金をしない場合や、倒産した場合には自社が責任を負わなければならないのです。

ウィズリコースのファクタリングでは、売掛金の期日前に入金になるというメリットはありますが、売掛先の回収リスクは自社で負わなければなりません。

資金化までに1〜2週間かかる

ウィズリコースのファクタリングは売掛先の債務者の同意なしに行うことはできません。

ウィズリコースのファクタリングは債務者の同意を得る手続きなどに時間がかかるので、ノンリコースのファクタリングのように即日資金化などを行うことはできません。

資金化までに1週間〜2週間程度の時間がかかるので、急ぎの資金繰りには向いていません。

実質銀行融資と変わらない

ウィズリコースのファクタリングは実質的には銀行融資と変わりません。

銀行融資のウィズリコースのファクタリングも、自社が売掛債権の回収リスクを負わなければならないので、ファクタリングと銀行融資の最大の違いである「売掛債権の回収リスクを排除することができる」というメリットがありません。

ノンリコースのメリットとは?

ノンリコースのメリットとは?

ノンリコースのメリットとしては以下の点をあげることができます。

  • 売掛先の倒産を気にする必要がない
  • 連鎖倒産のリスクを排除できる
  • 新規取引先に最適

ノンリコースのこれらのメリットについて詳しく解説していきます。

売掛先の倒産を気にする必要がない

ノンリコースのファクタリングは売掛先の倒産を気にする必要がありません。そのため、売掛債権の回収管理の事務コストを軽減することができます

取引先の倒産を気にする必要がないので、売掛先の管理に使っていた会社の人的資源を営業活動などに回すことができます。

ある日突然取引先が倒産した場合にも、急にファクタリング会社から請求が来ることも会社の損失になることもないので安全です。

連鎖倒産のリスクを排除できる

売掛金や手形などの売掛債権がデフォルトすると、連鎖倒産に陥る可能性があります。

取引先からの売掛金が入金にならなければ、自社も自社の取引先に支払うことができません。

すると、自社の取引先もその取引先に対して支払いを行うことができません。

このように、1つの売掛債権のデフォルトによって、数多くの会社が連鎖倒産することがありますが、これらの会社のどれか1社がファクタリングを利用することによって、連鎖倒産を防ぐことができます。

新規取引先に向いている

新しい取引先と取引する際には、ファクタリングが有効活用できます。

新規取引先がどのような企業なのか企業にとっては把握することが非常に重要です。

もしかしたら、取引先への未払いによって契約を切られてしまったような危ない企業が新規取引を依頼している可能性もあるためです。

海のものとも山のものとも分からない企業と新しく取引する場合には、ファクタリングを利用すれば仮に新規取引先が危ない企業だとしてもデフォルトを心配することなくどんどん新規取引先を開拓していくことができます。

ノンリコースのデメリットとは?

ノンリコースのデメリットとは?

ノンリコースにはメリットも大きいですが、以下のようなデメリットがあります。

  • 手数料が高い
  • 悪徳業者が混じっていることがある
  • 債権譲渡登記を設定しなければならない

ノンリコースのファクタリングは金銭面で高額になり、業者選びにも注意が必要です。

ノンリコースのデメリットについて詳しく見ていきましょう。

手数料が高い

ノンリコースのファクタリングの手数料は10%から高い場合には30%程度発生します。

ノンリコースのファクタリングでは売掛金の回収リスクをファクタリング会社が負っています。

そのため、回収リスクを補うことができる程度の高い手数料を設定しないとファクタリング会社も収益を得ることができないのです。

売掛先が国や公共団体や上場企業であれば回収リスクが低いので手数料が低く設定されることもありますが、中小企業が売掛先の売掛債権は回収リスクが高いので手数料が高くなってしまいます。

ファクタリングによって確かに資金繰りは短期的に楽になりますが、手数料だけコストが増えて利益を圧迫してしまいます。

ウィズリコースの手数料が5%程度になることと比較すれば大きなデメリットです。

悪徳業者が混じっていることがある

ノンリコースのファクタリングは悪徳業者に注意する必要があります。

「ノンリコースのファクタリングは手数料が高いもの」という認識は一般的に広がっています。

このような認識を悪く利用して、ファクタリング会社の中には悪徳業者が不当に高い手数料を要求してくる場合があります

例えば、優良なファクタリング会社であれば10%程度の手数料で買い取ってもらうことができる債権だったのに、悪徳業者は30%程度の高額手数料を要求するようなことは珍しいことではありません。

手数料はファクタリング会社によって異なります。新規のファクタリング会社と取引する時には、必ず2社以上のファクタリング会社から相見積もりをとるようにしてください。

債権譲渡登記を設定しなければならない

ノンリコースのファクタリングは2者間ファクタリングで行われることが一般的です。

そして2者間ファクタリングでは債権譲渡登記という権利を設定します。

債権譲渡登記とは、ファクタリングをした企業がファクタリング会社に売却した債権を勝手に他社に売却した場合、売却された人に対して「その債権は自分のものだ」と対抗することができる登記です。

2社間ファクタリングでは、ファクタリングをしている債権の回収義務も自社が負います。

ファクタリング会社とすれば、勝手に売掛債権を他社に譲渡されても第3者に対抗することができるように債権譲渡登記という登記を設定するのです。

なお、債権譲渡登記には登録免許税が5,000円と司法書士へ支払う報酬が1〜2万円程度かかります。

これらの費用を負担しなければならないというのはノンリコースのファクタリングのデメリットと言えます。

ノンリコースとウィズリコースどちらを選ぶべき?

ノンリコースとウィズリコースどちらを選ぶべき?

ノンリコースはメリットが大きいですが、金銭的な負担が少なくありません。

ノンリコースとウィズリコースは使い分けることがとても重要です。

ノンリコースとウィズリコースはどのような場面で使い分けるべきでしょう?

オススメの使い分け方法をご紹介していきます。

新規取引先はノンリコース

新規取引先に初めて商品やサービスを販売した時のファクタリングはノンリコースがよいでしょう。

ノンリコースは売掛債権がデフォルトしても自社には責任が及ばないためです。

財務状況や業況が分からず、信頼して取引することができない新規取引先に対してノンリコースのファクタリングをしておけば、仮に新規取引先が経営危機の企業でも安心です。

付き合いが浅い取引先への売掛債権をファクタリングする場合にはウィズリコースよりもノンリコースの方が適しています。

絶対安心な売掛先はウィズリコース

売掛先が国や地方自治体などの公共団体、上場企業、付き合いが長く支払いに関して安心できる企業の売掛債権はウィリコースの方がメリットがあります。

わざわざノンリコースにして回収リスクをファクタリング会社に負わせなくても、支払いは絶対安心な企業であればデフォルトの心配がないためです。

また、ノンリコースな手数料が高いので、回収リスクのない売掛債権に対してノンリコースを選択してしまえば不要に高い手数料を払わなければならないことになってしまいます。

売掛先にデフォルトリスクがなく、単に自社が期日前に売掛債権を資金化したいだけの時は、ノンリコースではなくウィズリコースのファクタリングを選択したほうがよいでしょう。

ただし、ウィズリコースのファクタリングは3社間で行われることが多く、3社間では売掛先にファクタリングを知られてしまうことになるという点に注意しましょう。

急ぎの場合はノンリコース

急ぎで資金が必要な場合にはノンリコースを選択すべきです。

売掛先に同意が不要なノンリコースは最短即日で資金化できます。しかしウィズリコースが3社間で行われると売掛先に同意が必要になるので資金化までに時間がかかるためです。

  • 取引先から予定された入金が遅れるという連絡が入り急に資金が必要になった
  • 予定されていた銀行融資が審査の都合上翌週になるとの連絡が入った

このように、急にお金が必要になった場面ではウィズリコースでは間に合いません

ノンリコースを利用するようにしましょう。

ファクタリングのノンリコースに関するよくある質問

ノンリコースの審査に落ちる売掛債権はどのようなものですか?
すでに期日を経過している債権、破産申請を行なっている会社など、回収が極めて難しい債権はファクタリングしてもらうことはできません。
ウィズリコースの審査に落ちることはありますか?
ウィズリコースであっても、売掛先の信用力が乏しい場合には審査に落ちる可能性は十分にあります。原則は売掛先が支払いをするのがファクタリングですので、いくらウィズリコースでファクターには損害が及ばないとしても業況の悪い企業の売掛債権は買い取ってもらえないことが一般的です。
ウィズリコースと手形割引どちらを選ぶべきでしょうか?
手形を保有しているのであれば、手形割引を選ぶべきです。手形割引もウィズリコースで行われるので、手数料の高く資金化までに時間がかかるウィズリコースのファクタリングをあえて選択するメリットはあまりありません。

まとめ

ノンリコースのファクタリングとは、売掛債権がデフォルトした場合には自社には責任が及ばないファクタリングです。

ノンリコースのファクタリングのメリットとしては以下のようなものがあります。

  • 取引先のデフォルトリスクを気にせず営業できる
  • 与信管理をファクタリング会社に任せられる
  • 連鎖倒産を防止できる
  • 資金化までに時間がかからない

メリットの大きなノンリコースですが、手数料が高額になるのがデメリットです。

また悪徳業者も混じっていることが多いのでファクタリング会社選びは慎重に行いましょう。

デフォルトの心配がない売掛債権であればウィズリコースの方がメリットがあることもあります。

ノンリコースとウィズリコースを適切に使い分け、できる限り少ないコストで効率的にファクタリングを活用しましょう。