ファクタリングというと「会社が保有している売掛金を早期に資金化するもの」というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか?
確かにファクタリングは、事業者が保有する売掛債権をファクタリング会社へ売却することによる資金調達方法です。
しかし一方で、ファクタリングの普及に便乗して「個人の給料を対象としたファクタリング」が登場しています。
どんなにお金に困っていても、個人向けの給料ファクタリングは違法性が高いため、絶対に利用してはなりません。
個人向けファクタリングに関する違法と合法の違いについて詳しく解説していきます。
ファクタリングとは?ファクタリングの5つの特徴
ファクタリングとは売掛債権を早期資金化するサービスです。事業者が保有する売掛債権をファクタリング業者が手数料を控除したうえで買い取り、入金日より早い段階で資金を調達できます。
ファクタリングの特徴には、おもに以下の5つが挙げられます。
- 売掛債権を期日前に資金化できる
- 売掛債権のデフォルトリスクを排除できる
- 売掛先企業の与信で審査を受けられる
- バランスシートの改善に寄与できる
- 手数料が発生する
売却時に売掛債権のデフォルトリスクも一緒に売却しているため、万が一、売掛債権が回収不能になったとしても、納入企業に損失は及びません。
また、審査されるのは売掛先企業であるため、支払企業に信用があれば資金調達が可能です。借入金ではないので、バランスシートが悪化しない点も大きな特徴と言えるでしょう。
ファクタリングとは「事業者が保有する売掛債権を早期に資金化する方法」と理解しておきましょう。
個人向けファクタリングの2つの意味
「個人向けファクタリング」は、おもに以下の2つに分けられます。
- 個人事業主が利用するファクタリング
- 個人の利用を目的とした給料ファクタリング
言葉は似ていますが、この2つの意味は非常に大きく異なります。まずは両者の違いについて理解しておきましょう。
個人事業主が利用するファクタリング
個人事業主が、取引先から商品・製品・サービスの提供の対価として受け取った売掛債権を早期資金化するファクタリングは、法人が利用するファクタリングと同じです。
利用対象が法人のみのファクタリング会社も存在しますが、個人事業主に対する取り扱いを行っているファクタリング会社も多数あります。
個人事業主のファクタリングは、法人が利用するファクタリングと同じように合法的に利用できる安全なサービスです。
個人の利用を目的とした給料ファクタリング
一方、ファクタリングの中には、給与所得者の個人の利用を目的としたファクタリングも存在します。
すでに働いた分で給料日前の未払いの給料は、いわゆる個人が会社に対して保有している債権です。
個人給料ファクタリングは、この個人が保有する給料債権をファクタリング会社へ売却することによって給料日前に資金化するサービスです。
ファクタリングである以上、審査対象になるのは勤務先という名目になるので「ブラックOK」などと謳い、銀行や消費者金融からお金を借りることが困難な人を勧誘しています。
このような給料ファクタリングは違法ですから、絶対に手を出してはいけません。
個人事業主が事業活動によって生じた売掛債権を売却する通常の「個人向けファクタリング」は合法ですが、個人給料ファクタリングは違法ですので注意しましょう。
個人向け給料ファクタリングは違法|絶対に利用してはいけない理由
個人向けファクタリングは違法行為です。どんなにお金に困っていても絶対に利用してはいけません。
個人給料ファクタリングの危険性として、以下4つの理由が挙げられます。
- 給料債権は譲渡できない
- 給料ファクタリングは無登録業者による実質的な貸付
- 利息制限法を違反した手数料設定
- 違法業者が運営しているケースが多い
給料ファクタリングの危険性について詳しく解説していきます。
給料債権は譲渡できない
そもそも給料債権は譲渡できません。
給料には「直接払の原則」という決まりがあり、労働基準法第24条には以下のように明記されています。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない
参考:労働基準法第24条
上記の法律に基づき、給料債権を譲渡したとしても、給料債権の譲受人は会社から給料を受け取ることはできません。このことから、給料債権は譲渡することが不可能な債権だと解されています。
給料ファクタリングの前提である「給料債権の譲渡」という行為自体が労働基準法に違反したものだと理解しておきましょう。
給料ファクタリングは無登録業者による実質的な貸付
給料債権は労働基準法の観点からそもそも譲渡することができず、また、給料日を迎えると利用者はファクタリング会社に返済しなければなりません。これは、実質的な貸付と同じ仕組みです。
民間業者が貸付業務を行う場合には、国や都道府県に対して貸金業登録する必要がありますが、給料ファクタリング業者は貸金業登録など行っていません。
つまり、給料ファクタリングは無登録営業となり、貸金業法にも違反しているというわけです。
給料ファクタリングは数々の法律に違反している違法サービスであることを理解しておきましょう。
利息制限法を違反した手数料設定
給料ファクタリングの手数料相場は、20%程度が一般的とされています。
給料ファクタリングは前回の給料日から次の給料日まで、最大1ヶ月間の資金調達を行うものです。
実質的な貸付である給料ファクタリングは1ヶ月間で20%もの手数料を取っているのですから、年利換算で240%にもなります。
この金利は言うまでもなく、利息制限法に規定されている上限金利を遥かにオーバーした違法金利です。
給料ファクタリングは利息制限法もオーバーしている違法サービスであることを覚えておいてください。
違法業者が運営しているケースが多い
給料ファクタリングは、違法業者が運営している可能性が非常に高いサービスです。
実際に「給料ファクタリングに申し込んだ後に違法業者から営業が来るようになった」という話は珍しくありません。
給料ファクタリングを利用することは違法業者からの借金と同じであると考えて、絶対に利用しないよう心がけましょう。
事実、給料ファクタリング会社としては比較的有名だった「Dライン」を運営していた会社の経営者は、2020年に逮捕されています。
参考:sankeibiz|「給与ファクタリング」首謀者の男を貸金業法違反容疑で逮捕
コロナ禍によって経済的に困窮している人を狙った給料ファクタリングも急増していると言われています。経済的窮地に追い込まれても、給料ファクタリングには絶対に手を出してはいけません。
個人事業主や法人が利用するファクタリングは合法
個人事業主や法人企業などの事業者が保有する売掛債権を早期に資金化するファクタリングは合法です。
2社間ファクタリングは民法第555条に規定された合法な売買契約ですし、3社間ファクタリングは民法446条に定められた債権の譲渡に基づいて行われています。
そもそも譲渡できない債権である給料債権を売買している給料ファクタリングと、正規のファクタリングは根本的に異なります。
ファクタリングの合法性については以下の記事をご参照ください。
個人向けファクタリングに関するよくある質問
個人向けファクタリングに関するよくある質問とその回答をQ&A形式でまとめました。
- Q.通帳なし・審査緩い・審査なしという条件の個人向けのファクタリングがある?
- A.一般的に、審査なしの個人向けファクタリングはありません。どのファクタリング会社も、手数料の設定や二重譲渡・偽造債権によるリスクを回避するために審査を行います。審査なしのファクタリング会社があれば、それは違法業者の可能性が高いので、利用は控えましょう。また、取引形態やファクタリング会社の審査基準によって、審査緩いか厳しいかは異なります。通帳なしでOKの場合は、代わりに手数料が上がったり、売掛金の確実性を証明するための必要書類が増えたりするでしょう。
個人向け給料ファクタリングの利用は避けましょう
個人向けファクタリングで、個人の給与所得者を対象としたサービスは違法行為です。
ファクタリングで合法なのは法人や個人事業主を対象とした事業者向けサービスだけであり、個人向け給料ファクタリングは実質的な貸付とみなされます。
給料ファクタリングは以下の理由によって、絶対に利用すべきではありません。
- 給料債権は譲渡できない
- 給料ファクタリングは無登録業者による実質的な貸付
- 利息制限法を違反した手数料設定
- 違法業者が運営しているケースが多い
上記の理由から、個人向けの給料ファクタリングは労働基準法・貸金業法に違反しているサービスです。
給料の前払いを希望するのであれば、会社が決済業者などと提携して導入している給料前払いサービスを利用しましょう。
どんなにお金に困っても、個人向けの給料ファクタリングは絶対に利用しないでください。