最近話題のファクタリング。上手に活用すれば中小企業の資金繰りには寄与します。
しかし「気になっているけど仕組みがよくわからない」「今さら人に聞けない」という人も多いのではないでしょうか?
ファクタリングは仕組みをよく理解することで企業の資金調達手段を1つ増やすことができますし、よく理解せずに利用すると金銭的な損失を負うことにもなってしまいます。
初めてファクタリングをする人向けにファクタリングの特徴やメリットとデメリットを解説します。
ファクタリングの特徴をよく理解して、企業の資金調達に有効活用できるようになりましょう。
ファクタリングの仕組み
ファクタリングの仕組みを借入との比較で挙げると以下のようになります。
- 売掛債権を売却する
- 決済は売掛先の支払いで行う
- 売掛金のデフォルトリスクも売却できる
外部から資金調達するという点は同じですが、ファクタリングと借入は全く異なります。
まずは基本的なファクタリングの仕組みを理解していきましょう。
売掛債権をファクターへ売却する
ファクタリングは売掛金などの売掛債権を売却して資金化する方法です。
売掛金は期日になるまで現金にすることはできません。
そこでファクタリング会社に売却することによって、期日を待たずに現金に換えることができます。
例えば100万円の売掛金を手数料10万円を支払ってファクタリングしたとすると、90万円が売掛金の期日前に自社に入金される仕組みになります。
売掛先の支払いで決済する
ファクタリングは売掛債権を売却する行為です。
そのため、売掛金期日になって売掛先企業が支払う代金を受け取る権利はファクタリング会社にあります。
ファクタリング会社が売掛金期日に売掛金の支払いを受ける方法は「売掛先が直接ファクタリング会社に代金を支払う」方法と「売掛先が自社へ代金を支払い自社がファクタリング会社へ支払う」方法に分かれます。
それぞれの方法を3社間ファクタリングと2社間ファクタリングと言います。
3社間ファクタリングは売掛先が直接ファクタリング会社へ代金を支払うので、ファクタリング会社のリスクは低い取引です。
お金が自社を経由しないので、自社の流用や持ち逃げのリスクがないためです。
一方、2社間ファクタリングは一度売掛金代金が自社を経由するので、自社が売掛金代金を流用したり持ち逃げしてしまうリスクがあります。
このため、リスクの低い3社間ファクタリングは手数料が低く、2社間ファクタリングは手数料が高くなってしまう傾向があります。
ただし、2社間ファクタリングは売掛先企業に秘密で売掛債権を売却することができます。
売掛金のデフォルトリスクも売却できる
ファクタリングでは売掛債権売却後にもしも売掛先が倒産などによって代金を払わない場合でも自社に責任は及びません。
ファクタリングの手数料が高いのは、売掛金の回収リスクもファクタリング会社が買い取っているためだからです。
売掛債権を担保にお金を借りる手形割引などは、手形がデフォルトした場合には自社が銀行などの金融機関に保証をしなければなりませんが、ファクタリングにはこのような責任は生じません。
売掛金を期日前に資金化することができると同時に売掛金のデフォルトリスクまで売却することができるのがファクタリングの大きな特徴です。
ファクタリング4つのメリット
ファクタリングには、借入にはないメリットが主に4つあります。
- 最短即日で資金化できる
- 売掛先に秘密で資金調達できる
- 売掛先の信用で審査を受けられる
- 決算書の見た目がよくなる
メリットを活用すれば、銀行借入が間に合わない時にも資金調達することができるようになりますし、自社の業況が悪くお金を借りることができない場合にも資金調達可能です。
これらファクタリングのメリットについて詳しく解説していきます。
最短即日で資金化できる
ファクタリングは最短即日で資金化することができます。
優良企業の売掛金を持っていれば、審査に時間はかかりません。
このような場合には申込日当日に買い取ってもらうことが可能です。
銀行融資であればいくら早くても1週間程度の時間がかかってしまうことを鑑みれば、急いでお金が必要な時にファクタリングは重宝します。
ただし、売掛先への同意が必要になる3社間ファクタリングでは即日資金化は不可能ですので、急ぎの時は2社間ファクタリングを利用するようにしましょう。
売掛先に秘密で資金調達できる
2社間ファクタリングであれば、売掛先に秘密で資金化することができます。
2社間ファクタリングでは売掛先の同意が必要ないためです。
ファクタリングを利用していることが売掛先企業などの取引先に知られてしまうと「売掛金の期日を待つこともできないほど資金繰りが厳しい」などと判断され、今後の取引に悪影響してしまうこともあります。
しかし、2社間ファクタリングであれば取引先に知られることなく現金化することができるので、ファクタリングを行ったことによって風評被害を受ける心配はありません。
売掛先の信用で審査を受けられる
ファクタリングでは、ファクターへの支払いは売掛先の売掛金代金を原資として行われます。
このため、ファクターにとって「資金を払うことができるかどうか」は売掛先の業況が非常に重要な判断基準になります。
逆に言えば、自社に信用がなくても売掛先企業に信用があれば売掛先の信用で資金調達ができる可能性があります。
銀行などから「業況が悪くて融資できない」などと言われている企業でも、優良な売掛金さえあれば審査に通過して資金化することができます。
決算書の見た目がよくなる
ファクタリングは借入よりも決算書の見た目がよくなります。
借入ではないので、貸借対象表で負債が増えることはないためです。
借入の場合には借りた分だけは負債が増えてしまうので、自己資本比率などが低下してしまいます。
ファクタリングは売掛金という資産を、現金という資産を交換するだけなので、貸借対象表の見た目は変わりません。
このため、ファクタリングは外部から資金調達したということが分かりにくいというメリットがあります。
決算書の見た目を資金調達前と同じような状態を維持することができ、さらに外部から資金調達をしたことを知られにくいのもファクタリングの隠れたメリットということができるでしょう。
ファクタリング2つのデメリット
ネット上にはファクタリングのメリットばかり強調した記事が多数あります。
しかし、ファクタリングにはデメリットも多いのも事実です。
むしろメリットではなくデメリットを理解しておかないとファクタリングを有効活用することはできないでしょう。
ファクタリングのデメリットとしては以下の2つをあげることができます。
- 手数料が高く収益を圧迫する
- 悪徳業者が多い
ファクタリングのデメリットについても詳しく解説します。
デメリットもよく理解して、できる限りメリットだけを得られるようにファクタリングを活用しましょう。
手数料が高く収益を圧迫する
ファクタリング最大のデメリットは手数料の高さです。
- 2社間ファクタリング:10%~20%
- 3社間ファクタリング:5%~10%
銀行の事業資金融資の手数料が2% 前後であることを考えれば、ファクタリングの手数料は2社間でも3社間でも高額になってしまいます。
また、2社間ファクタリングの手数料は利息制限法の上限金利を超えることも珍しくないので、ノンバンクのビジネスローンを借りるよりも手数料は高額になります。
ファクタリングの手数料は営業外費用です。
そのため、あまりもファクタリングを多用して手数料負担が大きくなると、経常利益を圧迫します。
せっかく本業を頑張って営業黒字になっても、営業外費用の増大によって経常赤字になってしまう可能性もあります。
売掛金の期日前に資金化することができるファクタリングは、短期的には資金繰りにとってプラスになります。
しかし長期的に見れば、手数料分の現金が入ってこないことになるので資金繰りは悪化しますし、収益も悪化するデメリットがあるということは理解しておいた方がよいでしょう。
悪徳業者が多い
ファクタリングのもう1つのデメリットが悪徳業者の多さです。
悪徳業者は売掛債権のリスクをはるかに超えた高い手数料を設定しますし、中には闇金も混じっています。
ファクタリングは貸金業者のように、国や都道府県への登録や許認可を受ける必要がないので、「どの業者が優良業社でどの業者が悪徳業者なのか」ということを見分けるための客観的な指標がありません。
優良業者かどうかは自分の目で見極めるしかないという点もファクタリングのデメリットです。
では、どのような視点で優良業者か悪徳業者かを見分ければよいのでしょうか?
悪徳業者を見分ける3つのポイント
前述したように、法規制がないファクタリングは悪徳業者が入りやすい業界で、実際にファクタリング会社を名乗る業者の中には悪徳業者も相当数混じっています。
ファクタリングは業者選びが非常に重要になり、悪徳業者を見極めるためには以下の3つのポイントが重要です。
- 契約書が作成されているかどうか
- 手数料は相場の範囲内か
- ファクターが回収リスクを負っているか
悪徳業者を見分ける3つのポイントを最後に解説していきたいと思います。
契約書作成されているかどうか
契約書がない業者は悪徳業者と考えた方がよいでしょう。
法律のルールがないファクタリングは契約書の内容が非常に重要ですが、そのような契約書を作成しない業者は悪徳業者と考えた方がよいかもしれません。
申し込みや契約当初には説明がなかった様々な費用を要求され、結果的に手数料負担が非常に大きくなってしまう可能性があります。
契約書をしっかりと作成する業者と取引するようにしましょう。
手数料は相場の範囲内か
ファクタリングが貸付を超えるような高額な手数料を設定できるのは、ファクタリングが売掛債権のデフォルトリスクまで買い取っていることに対するリスクプレミアムです。
つまり、高い手数料を設定することができるのは、リスクの高い売掛債権だけということになります。
ほぼ100%支払いには問題がない上場企業や官公庁の売掛債権なのに手数料が20%を超えるような場合には、リスクに見合わない手数料を設定している可能性が高いと考えられます。
また、通常の企業でも30%を超えるような手数料を設定する業者は「悪徳業者」と疑った方がよいでしょう。
手数料が非常に高い業者も悪徳業者の可能性が高いと言えます。
「少し手数料が高い気がする」と感じたら他の業者からも見積もりをとった方が無難です。
ファクターが回収リスクを負っているか
ファクタリングは売掛債権の回収リスクをファクタリング会社が負うからこそ、リスクプレミアムが生じて借入よりも手数料が高くなります。
以下のようなファクタリングは回収リスクを負っていないと判断できるので、利息制限法を超えるような高い手数料を設定することはできません。
- 売掛債権がデフォルトした場合の責任が自社にある(償還請求権あり)
- 1つの売掛債権の一部金額しか買い取らない
- 契約時には内金を入金し、残りは代金回収後に支払う
このような取引は、ファクターがリスクを負っていない(債権の保全を行なっている)と判断できるので、実質的には貸付と同じと判断されて利息制限法を超えるような手数料を設定することはできません。
上記のような取引であるにも関わらず、手数料が18%(100万円以上の場合には15%)を超える場合には悪徳業者と判断した方がよいでしょう。
ファクタリングに関するよくある質問
- 赤字や債務超過でも審査に通りますか?
- ファクタリング審査で重要になるのは売掛先企業の与信です。自社が赤字や債務超過であっても売掛先企業に問題さえなければ審査に通過できる可能性は高いと言えます。
- 土日でも即日資金調達できますか?
- 多くのファクターが平日しか審査を行なっていないので、土日の資金調達は難しいと考えた方がよいでしょう。
- どんな債権でも買い取ってもらうことはできますか?
- 法律で譲渡が禁止されている債権以外は基本的にどのような債権でも資金化することは可能です。
ただし、支払期日をすぎた債権を資金化することは不可能です。
- 手数料以外でファクタリングにかかる費用はありますか?
- ファクタリングの手数料には全ての経費やリスクプレミアムが含まれていると解されているので、手数料以外に費用を請求されることはありません。請求してくる業者は悪徳業者ですので取引をしないほうが無難です。
まとめ
ファクタリングについてのまとめです。
- ファクタリングは売掛債権を売却して売掛金期日前に資金化する
- 自社ではなく売掛先企業の信用で審査を受けることができる
- 最短即日資金化も可能
- 取引先にバレずに資金化できる
- 借入よりも決算書の見た目がよくなる
- 手数料が高い
- 国などへの登録や許認可が必要ないので悪徳業者が多いので注意が必要
ファクタリングは悪徳業者にさえ注意すれば安全に利用できますので、初めてファクタリングを利用する場合には、ご紹介した方法で悪徳業者を見分けられるようにしておきましょう。
銀行融資よりも手数料は高いですが、急いで資金が必要な時には重宝します。
使いすぎると収益を圧迫するので、メリットとデメリットをよく理解して非常時だけに利用するなど適切なタイミングで活用するようにしましょう。