ファクタリングの登場から現状までを解説、さらに今後の業界の動向について解説します。

中小企業や個人事業者にとっての新たな資金調達のスキームとして、ファクタリングに注目が集まり始めて約10年です。

しかし、債権を現金化するという資金調達の手法には長い歴史があります。

ファクタリング400年の歴史を振り返りつつ、今後どのようなサービスへと進化していくのでしょうか?

資金調達のスキームとしてファクタリングをご検討の方は、ぜひご覧ください。

現在の「ファクタリング」の資金調達スキーム

欧米におけるファクタリングは、融資と並ぶメジャーな資金調達スキームの1つです。

しかし、日本ではまだまだ馴染みが薄く、ファクタリングという言葉すら知らないという経営者も少なくありません。

ファクタリングさえ知っていれば、事業の継続・発展に必要な資金調達のチャンスが増え、大きな機会損失を回避することができます。

ここでは、現在のファクタリングのスキームについて解説していきます。

ファクタリングの仕組み

ファクタリングの仕組みには、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 利用者とファクタリング会社(以下、ファクター)の2社間のみで契約する「2社間ファクタリング」
  • 利用者・売掛先・ファクターの3社間で契約する「3社間ファクタリング」

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いを以下の表にまとめました。

ファクタリングの仕組み 2社間ファクタリング 3社間ファクタリング
売掛先の関与 一切関与しない 売掛先の承諾が必要
手数料の目安 5%~20% 2%~9%
入金までの早さ 最短2時間 3日~2週間
売掛金の回収 利用者が代行する ファクターが直接回収する
審査の難易度 やや難しい 簡単

両者の大きな違いは売掛先の関与、手数料、そして入金までの早さです。

最短即日で資金調達したい場合や、売掛先にファクタリングの利用を知られたくない場合は、2社間ファクタリングをおすすめします。

一方、高額な売掛金をリーズナブルな手数料で現金化したい場合は、3社間ファクタリングを選ぶと良いでしょう。

なお、日本の中小企業や個人事業者には、売掛先への通知および承諾が不要な2社間ファクタリングが支持されています。

ファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)との違い

売掛金を活用した資金調達方法に、売掛債権担保融資(ABL)があります。

ABLは不動産の代わりに売掛債権(=売掛金)や在庫などの流動資産を担保とする融資です。

ファクタリングとABLを比較した表を以下にまとめました。

資金調達スキーム 2社間ファクタリング ABL
担保・保証人 不要
償還請求権 なし あり
手数料・金利 売却額の5%~20% 実質年率15%以下
入金までの早さ 最短2時間 1~2ヶ月
返済方法 期日一括払い 分割返済
信用情報への影響 なし あり

ファクタリングは融資と異なる資金調達スキームですので、契約するにあたり担保や保証人が不要です。

さらに、ファクタリングには償還請求権(リコース)がありません。

償還請求権とは、売掛先が倒産した場合に、ファクターや金融機関が利用者に対してお金を請求できる権利です。

ファクタリングは償還請求権がない「ノンリコース契約」となるため、売掛先が倒産しても利用者に請求が行きません。

一方のABLは償還請求権がある「ウィズリコース契約」です。売掛先が倒産すれば利用者に買い戻しが請求されます。

審査においても、利用者の返済能力よりも売掛先の信用力が重視されます。

赤字・債務超過・税金滞納といった状態でも、資金調達できるのがファクタリングの強みです。

ファクタリングの利用をおすすめする経営状況

ご自身の現在の経営状況が以下にあてはまっている場合は、ファクタリングの利用を検討してみましょう。

  1. 赤字・債務超過・税金滞納である
  2. 銀行の借り入れをリスケ中である
  3. 支払い待ちの売掛金が多い
  4. 売掛先の支払い能力に不安がある
  5. 信用ブラックである
  6. 創業間もないため営業実績がない
  7. 銀行の融資枠を温存しておきたい
  8. 担保・保証人を用意できない

ファクタリングはあくまで売掛金の買い取りですので、経営状態やバランスシートの内容に関わらず利用できます。

信用情報にも一切影響がないため、信用ブラックの方はもちろん、将来的に銀行融資を検討している方にもおすすめです。

また売掛先の支払い能力に不安があったり、倒産の兆候が見られたりする場合、一定の売掛金を確保する保険としての使い方もできます。

ファクタリングの歴史

ファクタリングの歴史

ファクタリングの起原には諸説あります。

一説には1600年代に植民地主義の拡大に一役を買った、請求書を信用の担保としたインボイスファクタリングが元祖です。

当時のファクタリングは「ファクター」と呼ばれる債権買取の営業組織が、貿易商たちに現金の前貸しを提供していました。

一方、信用による資金提供を購入者にまで広げ、購入者の信用力を保証するサービスを行っていたようです。

さらに時代が下り、19世紀になると現代的な「債権の早期現金化」サービスのファクタリングが欧米で発展します。

当時のイギリスはアメリカに対して大量の毛織物製品を輸出しており、その請求書を活用して早期現金化のサービスを提供していたようです。

ファクタリングは産業革命によって欧米圏に瞬く間に広まり、高い信用力を有する企業が活用する金融サービスとして普及していきました。

現在では欧米圏を中心にメジャーな資金調達方法として活用されており、日本でも経済産業省が推奨しているように、徐々に注目を集めています。

ファクタリングが日本で活用されるようになった経緯

現代のファクタリング取引が本格的に開始されたのは1900年頃で、欧米の普及率が高く、日本の5~10倍の市場規模があるようです。

日本でファクタリングが取り扱われるようになったのは1970年代初め頃で、都市銀行系列の子会社が主に行っていましたが、まだまだ普及するまでは至りませんでした。

当時はまだ商取引に手形取引が活用されており、早期の資金調達は手形割引で行うという考えが一般的でした。

手形割引の減少によりファクタリングが注目

1990年代になると、バブル崩壊により景気が後退、商取引で手形が利用される機会が徐々に減少していきます。

ピーク時に4,797兆円あった手形交換高は、2018年には261兆2,755億円と、前年比30.1%減の2年連続で前年を下回り、過去最低となっています。

手形割引に代わり、新たな資金調達方法として注目を集めたのがファクタリングです。

1998年には債権の譲渡について、民法の対抗要件の特例を定めた法律が施行され、ファクタリングの法整備が進んだことも要因として挙げられます。

インターネットの普及がファクタリングを後押し

2000年頃からは日本でもインターネットが普及し、簡単に電子決済が可能となったため、この時期より多くのファクタリング会社が開業しています。

インターネットの普及がファクタリングを後押ししたと言っても過言ではないでしょう。

経済産業省もファクタリングを推奨

経済産業省は、中小企業や個人事業者の多くが事業資金の調達として借入に過度に依存せざるを得ず、一方で、70兆円を超える売掛債権が活用されないままとなっている状況を鑑み、2001年には売掛債権担保融資保障制度を導入しました。

さらに、ファクタリングによって売掛債権を早期現金化することで、従来の借入に代わる新たな資金調達方法として推奨しています。

ファクタリングは、借入によって負債を増やすのではなく、企業の資産である売掛債権を早期に現金化する方法であるため、経済発展を促すことにつながると考えられるからです。

今後のファクタリング業界の動向

日本にファクタリングが導入されたのは昭和47年頃ですが、そのスキームがほとんど定着しないまま半世紀以上が経ちました。

2010年代頃より、銀行やノンバンク等の後ろ盾を持たない独立したファクターが次々と創業、中小事業者を相手に買取実績を重ねています。

今後、ファクタリング市場はどのような成長曲線を描いていくのか、現在の状況から整理してみましょう。

ファクタリングは「オンライン完結」がメインになる傾向あり

従来のファクタリングは、利用者とファクターの担当者が面談をして契約を結ぶ対面型が主流でした。

現在はインターネットの発達、およびコロナ禍におけるソーシャルディスタンスの観点から、「オンライン完結型」に注目が集まっています。

オンライン完結型のファクタリングは、オフィスや事務所に居ながら、インターネットの手続きだけで売掛金を売却することが可能です。

従来どおりの対面型のファクターもオンライン面談を取り入れるなどして、より取引の利便性を高めています。

「注文書ファクタリング」の利用率が増加する可能性あり

ファクタリングで売掛金を買い取ってもらうには、エビデンスとして請求書が必要です。

請求書を発行できるタイミングは仕事が完了してからですので、本当に資金が必要なタイミングで利用できないケースも少なくありません。

このような背景を受け、2020年頃より「注文書ファクタリング」というサービスが新たに登場しています。

注文書ファクタリングとは、仕事を受注した時点で発行される注文書・受注書をエビデンスとして売掛金を買い取るサービスです。

従来のファクタリングが最大90日以内の売掛金を対象としているのに対し、注文書ファクタリングは最大180日以内の売掛金を対象としています。

注文書ファクタリングが周知され、取り入れるファクターが増えれば、より多くのビジネスチャンスに活用されることでしょう。

ファクタリング業界に関するQ&A

ファクタリング業界に関するよくある質問について、Q&A形式でお答えします。

Q.ファクタリング業を開始するのに免許や登録は必要ですか?
A.必要ありません。金融庁はファクタリングについて、「ファクタリングの法定性質は、売買契約に基づく指名債権の譲渡であり、金銭の貸し借りではないので、貸金業の登録は必要ない」との見解を示しています。
Q.ファクタリング業界には、貸金業者の金利を制限する利息制限法のように、手数料を制限する法律はありますか?
A.ありません。ファクタリング業界には手数料の限度額を制限する法律はなく、各業者が負担するリスクに応じて設定しています。したがって、ファクタリング会社を選ぶ際は、手数料だけでなく、信用力や過去の実績が重要となるのです。
Q.2020年4月の民法改正でファクタリングの取引は変わりますか?
A.改正民法でファクタリングの大きな変更点は、売掛債権に「債権譲渡禁止特約」が付与されていても、債権譲渡できると民法に明記されたことです。改正前は、債務者(売掛先)に債権譲渡に反対する意思があれば不可との内容が記載されていましたが、改正後は、債権譲渡を禁止または制限されていたとしても、債権譲渡は可能となります。

売掛金を活かすならファクタリングがおすすめ

ファクタリングの現在やその歴史、将来的な動向について解説しました。

まだまだ認知度が低いというだけで、ファクタリングはさまざまなビジネスシーンで活用できる資金調達スキームです。

売掛金の支払い遅れが資金繰りに影響を及ぼしているケースや、事業融資が受けられないケースでは、ファクタリングが救いの一手となるでしょう。

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はじめてファクタリングを利用する方や、他社に乗り換えを検討されている方は、ぜひご活用ください。