中小企業や個人事業者にとっての新たな資金調達方法として、ファクタリングに注目が集まり始めたのは、ここ5年ほどのことです。

それまでは借入や手形割引が主流だった中小事業者の資金調達方法に、売掛債権の資金化というスキームが広まったきっかけは何だったのでしょうか?

今回はファクタリング業界の歴史から現状までを解説、さらに今後の業界の動向についても考えます。

ファクタリングの歴史

ファクタリングの歴史

ファクタリングの起原には諸説ありますが、一説には1600年代に植民地主義の拡大に一役を買った、請求書を信用の担保としたインボイスファクタリングが挙げられます。

当時のファクタリングは「ファクター」と呼ばれる債権買取の営業組織が、貿易商たちに現金の前貸しを提供する一方、信用による資金提供を購入者にまで広げ、購入者の信用力を保証するサービスを行っていたようです。

さらに時代が下り、19世紀になると現代的な「債権の早期資金化」サービスのファクタリングが欧米で発展します。

当時のイギリスはアメリカに対して大量の毛織物製品を輸出しており、その請求書を活用して早期資金化のサービスを提供していたようです。

ファクタリングは産業革命によって欧米圏に瞬く間に広まり、高い信用力を有する企業が活用する金融サービスとして普及していきました。

現在では欧米圏を中心にメジャーな資金調達方法として活用されており、日本でも経済産業省が推奨しているように、徐々に注目を集めています。

ファクタリングが日本で活用されるようになった経緯

現代のファクタリング取引が本格的に開始されたのは1900年頃で、欧米の普及率が高く、日本の5~10倍の市場規模があるようです。

日本でファクタリングが取り扱われるようになったのは1970年代初め頃で、都市銀行系列の子会社が主に行っていましたが、まだまだ普及するまでは至りませんでした。

当時はまだ商取引に手形取引が活用されており、早期の資金調達は手形割引で行うという考えが一般的でした。

手形割引の減少によりファクタリングが注目

1990年代になると、バブル崩壊により景気が後退、商取引で手形が利用される機会が徐々に減少していきます。

ピーク時に4,797兆円あった手形交換高は、2018年には261兆2,755億円と、前年比30.1%減の2年連続で前年を下回り、過去最低となっています。

手形割引に代わり、新たな資金調達方法として注目を集めたのがファクタリングです。

1998年には債権の譲渡について、民法の対抗要件の特例を定めた法律が施行され、ファクタリングの法整備が進んだことも要因として挙げられます。

インターネットの普及がファクタリングを後押し

2000年頃からは日本でもインターネットが普及し、簡単に電子決済が可能となったため、この時期より多くのファクタリング会社が開業しています。

インターネットの普及がファクタリングを後押ししたと言っても過言ではないでしょう。

経済産業省もファクタリングを推奨

経済産業省は、中小企業や個人事業者の多くが事業資金の調達として借入に過度に依存せざるを得ず、一方で、70兆円を超える売掛債権が活用されないままとなっている状況を鑑み、2001年には売掛債権担保融資保障制度を導入しました。

さらに、ファクタリングによって売掛債権を早期資金化することで、従来の借入に代わる新たな資金調達方法として推奨しています。

ファクタリングは、借入によって負債を増やすのではなく、企業の資産である売掛債権を早期に資金化する方法であるため、経済発展を促すことにつながると考えられるからです。

ファクタリング業界には悪質業者の流入も

悪徳業者に要注意!こんなケースでは貸付に当たる

ファクタリング業界の発展に伴い、貸金業者からファクタリング業者へシフトする悪質業者、闇金業者も増加しています。

2003年のヤミ金融対策法施行、2006年にグレーゾーン金利を撤廃した貸金業法の適正化により、それまで高利の貸付を行っていた闇金業者が、より自由度の高いファクタリング業へと参入してきたことが発端と考えられます。

しかし、闇金業者が行っているのは債権買取ではなく、ファクタリングを装った実質的な高利の貸付です。

業者側は何らリスクを負担することなく、資金調達に困った利用者に高利の貸付をして利益を得ているため、金融庁や日本ファクタリング協会などが「偽装ファクタリング」と見て注意を呼びかけています。

 

さらに、ファクタリング利用者を事業者ではなく、個人にまで拡大した給料ファクタリングも登場しています。

給料ファクタリングは、個人が働いた分の賃金をファクタリング業者が買い取り、給料日前に現金化するサービスです。

ファクタリングの新たなサービスとして業界内でも注目が集まっていましたが、買取代金を返済できない利用者と業者との間でトラブルが頻発する事態となっています。

2020年3月には、金融庁が「給料ファクタリングは貸金業登録が必須」との見解を示し、今後の動向が注目されています。

ファクタリング業界に関するQ&A

ファクタリング業界に関するよくある質問について、Q&A形式でお答えします。

Q.ファクタリング業を開始するのに免許や登録は必要ですか?
A.必要ありません。金融庁はファクタリングについて、「ファクタリングの法定性質は、売買契約に基づく指名債権の譲渡であり、金銭の貸し借りではないので、貸金業の登録は必要ない」との見解を示しています。
Q.ファクタリング業界には、貸金業者の金利を制限する利息制限法のように、手数料を制限する法律はありますか?
A.ありません。ファクタリング業界には手数料の限度額を制限する法律はなく、各業者が負担するリスクに応じて設定しています。したがって、ファクタリング会社を選ぶ際は、手数料だけでなく、信用力や過去の実績が重要となるのです。
Q.2020年4月の民法改正でファクタリングの取引は変わりますか?
A.改正民法でファクタリングの大きな変更点は、売掛債権に「債権譲渡禁止特約」が付与されていても、債権譲渡できると民法に明記されたことです。改正前は、債務者(売掛先)に債権譲渡に反対する意思があれば不可との内容が記載されていましたが、改正後は、債権譲渡を禁止または制限されていたとしても、債権譲渡は可能となります。

今後のファクタリング業界の動向

ファクタリングは2015年頃から中小企業や個人事業者にも普及し始め、経済産業省中小企業庁が「債権の積極活用」を呼びかけたことも後押しとなり、2017~2018年にかけてファクタリング業界は大きく成長しました。

今後のファクタリング業界はさらなる市場規模の拡大が見込まれる一方で、乱立したファクタリング業者のなかで、優良業者とそうでない業者の二極化も進んでいます。

さらに、金融庁が「給料ファクタリングは貸金業登録が必須」との見解を示したことを皮切りに、一般のファクタリング業者も何らかの免許や登録が必要となる可能性も考えられるでしょう。

利用者の方にとっても、ファクタリング業界の動向はスムーズな資金調達に関わる重要事項であるため、注目していく必要があるといえるでしょう。