資金繰りとは?良い・悪い状態を簡単に解説
資金繰りとは企業が将来に向けて必要な資金を予測し、計画的に集める管理活動です。資金繰りが良い状態とは予測通りに収入と支出のタイミングが一致し、手元資金が不足しない経営ができている状況を指します。一方、資金繰りが悪い状態は入金が遅れたり、支出が先行したりして手元資金が枯渇しそうになっている状況です。
資金繰りを適切に管理すれば、「いつ・どのくらいの手元資金が必要か」を把握でき、融資や支払い条件の見直しなどの対策が可能になります。資金繰りが安定すると企業は突発的な支出にも対応でき、倒産リスクを低減できる点がメリットです。
キャッシュフローとはどう違う?
キャッシュフローは、過去の一定期間において現金の出入りを記録した実績を指します。一方、資金繰りは現金の出入りを踏まえて未来の入出金を予測し、手元資金が不足しないように管理する活動です。なお、キャッシュフローと資金繰りは以下のように別々の書類を作成して管理するのが一般的です。
書類名 |
主な目的 |
時間的な対象 |
法的扱い・利用シーン |
キャッシュフロー計算書 |
過去の現金の流れを把握し、企業の支払い能力や収益構造を評価する |
年度ごとなどの決算期間における実績 |
財務諸表の一部であり、上場企業などは作成義務がある |
資金繰り表 |
未来の資金不足リスクを事前に察知し、対策や融資判断に活用する |
日・週・月など必要に応じて任意に設定 |
主に社内資料として活用され、銀行との融資交渉でも利用できる |
資金繰りの悪化・ショートは倒産につながるケースもある
資金繰りの悪化とは入金タイミングが遅れて支出が先行し、手元資金が不足してくる状態です。資金繰りの悪化が極度に進むと手元資金が枯渇すると資金ショートに至り、必要な支払いができなくなる危機に陥ります。たとえ黒字で利益が出ていても、資金ショートすれば支払いが間に合わず黒字倒産に陥るケースが少なくありません。
資金ショートすると税金・人件費などの支払いが不能になり、従業員の離職や業務停止などが連鎖して経営が立ち行かなくなる可能性が高いです。資金繰り表で資金不足になりうる時期を把握し、融資や支払い条件の見直しなどの対策を瞬時に実行できる体制を整えましょう。
資金繰りがやばい・悪化する・回らない原因
資金繰りがやばい・悪化する・回らない原因として、以下の6つがあげられます。
- 売掛金の入金が遅い
- 事業急拡大による支出の増大
- 売上の減少など販売不振
- 過剰在庫
- 内部統制の不備
- 金利・為替の変動による影響
上記の原因を把握して、資金繰りが悪化する前に適切な対策を講じましょう。
売掛金の入金が遅い
売掛金の入金が遅いと、資金繰りが悪化しやすいです。例えば、取引先の経営状況が悪化し、請求書の期日までに売掛金が入金されないなどのケースがあげられます。
売掛金の回収が遅れると自社の人件費・仕入れ費用を先行して負担する形となり、資金が手元から流出してしまいます。売掛金の回収が遅れるほど支出が先行する期間が長くなり、手元資金が枯渇しやすくなって倒産につながりかねません。
事業急拡大による支出の増大
事業の急速な拡大は一見すると成功しているようにも思えますが、実は資金繰りが悪化するリスク要因です。例えば、掛け売り中心の業態では売上が増えても入金は後ろ倒しになりやすく、仕入れ代金・人件費などの支出は先に発生します。その結果、売上が増えたにも関わらず手元現金が不足して資金ショートが起きやすいです。
事業の急拡大はキャッシュフローと実態のズレを生み、特に在庫や設備、採用コストが増加すると資金が枯渇しやすくなります。さらに、売上増を見越して借入を膨らませていた場合、返済負担が一層重くのしかかって資金繰りが行き詰まる原因となり得ます。対応策としては資金調達のタイミング調整や支払いサイトの見直し、キャッシュフロー予測精度の向上などが重要です。
売上の減少など販売不振
売上の急激な減少は資金繰り悪化の典型的な原因の1つです。事業規模を問わず予期せぬ売上の減少は、家賃・人件費などの固定費や変動費の支払いに影響が出ます。
仮に月商500万円の工場で300万円の売上が減少した場合、減収分を補う資金がなければ資金ショートする可能性が高まります。販売不振による資金繰り悪化の対策としては、販促強化やコスト構造の見直し、過剰在庫の圧縮などが必要です。
過剰在庫
過剰在庫も資金繰りが悪化する要因の1つです。過剰在庫とは販売見込みを上回って在庫を抱えすぎた状態を指し、安易な仕入れや発注ミス、需要予測のズレなどが原因で発生します。
在庫が多いほど保管スペースの確保や棚卸し、人件費などの維持コストが高くなり、見えない経費がじわじわと資金を圧迫してきます。過剰在庫で資金が目減りして仕入れや借入返済、給与支払いが滞ると業務停止や取引先からの信頼低下につながるでしょう。過剰在庫を解消するためには、適正在庫の維持と在庫の回転率を重視した管理体制の導入が不可欠です。
内部統制の不備
内部統制とは、企業が健全に事業活動を続けて経営目標を達成するためのルール・仕組みです。財務面での内部統制に不備があると資金繰り状況がすぐ把握できず、計画と実績のズレに気付けないまま資金不足に陥るリスクが高まります。
例えば、購買・支払いの承認ルールが曖昧な場合は必要以上の支出が発生し、財務報告の信頼性も失われます。特に、成長期の企業では急ぎの業務で様々な手続きを省略しがちになり、取引条件や予算の確認が甘くなるケースも多いです。また、外部監査において「開示すべき重大な不備」と認定され、外部からの信用不安や資金調達力の低下につながる懸念もあります。
金利・為替の変動による影響
金利・為替レートの変動は、特に変動金利の借入がある場合に金利上昇で利払いが増加して返済負担が重くなります。例えば、1億円の借入があると金利1%の上昇で年間100万円以上の負担増となり、継続的に自己資金を大きく圧迫します。
また、国際取引を行う企業では円安・円高によって仕入れ・売上の実質収支が変動し、為替差損益が発生するケースも多いです。特に、円安が進めば輸入コストが増え、急な円高進行なら輸出企業の収益が減少する恐れもあります。金利・為替の変動に対応するためには金利固定型の借入検討や為替予約、通貨分散などの対策が不可欠です。
資金繰りを良くする方法11選
資金繰りを良くする方法を、以下の11個に焦点をあてて紹介します。
- 売掛債権の早期回収を行う
- 資金繰り表を作成・管理する
- 無駄な経費を削減する
- 不要な在庫・資産を処分する
- フリーキャッシュフローをプラスに保つ
- 回収・支払いサイトを交渉して条件を改善する
- 借入金の金利・返済条件の交渉
- 貸付金・仮払金があればすぐに処理する
- 少人数私募債を発行する
- 新たな資金調達で資金を増やす
- 政府の資金繰り支援策を活用する
上記のなかから、自社の財務課題にあった方法を選んで実行しましょう。
売掛債権の早期回収を行う
売掛債権の早期回収を進めるのは、資金繰りの即効策として非常に有効です。まず、取引先との契約段階で売掛債権の回収ルールを明確にして社内で共有し、未回収状態を防げる体制を整えましょう。
また、「請求書発行のタイミングを早める」「電子請求を導入する」など社内業務の効率化も重要です。さらに、回収が期日より遅れ始めた時点で迅速に取引先へ通知を送る運用を明文化し、毎週・毎月の進捗報告を行う体制を構築します。
なお、後述するファクタリングを使えば、売掛債権を回収期日前に現金化できて資金ショートを回避できます。ファクタリングには売掛債権額に応じた手数料負担が伴いますが、キャッシュフローの安定とリスク軽減には有効です。
資金繰り表を作成・管理する
資金繰り対策に不可欠な資金繰り表は、日・週・月単位で入出金予定を反映し、支払いサイトや売掛金の回収予定も含めて作成・管理します。資金繰り表の定期的な更新により、資金不足に陥りそうな時期を早期に察知できるようになります。
ある程度先の資金状況まで見通せるように最低3か月程度の予測を用意すれば、資金ショートの兆候を事前に把握しやすいです。また、支出が膨らむ項目や回収の遅延傾向を数字で把握すれば、無駄な出費削減や取引先との支払いに関する交渉も進めやすくなります。資金繰り表は銀行を中心とした金融機関への説明資料としても有効で、融資交渉や取引条件見直し時にも説得力を増します。
無駄な経費を削減する
コスト削減は資金繰りを健全に保つための基盤となる施策で、まずは固定費・変動費を見直して無駄な支出を洗い出しましょう。例えば、「契約している外部サービスが利用実態に合っているか」「保険・光熱費のプランが見直せるか」などの見直しが必要です。
さらに、購買条件の交渉によって仕入れ先との支払いサイト延長や単価引き下げも実施しましょう。不要なサービスや購買契約を見直し、毎月の支出を数%削減するだけでも年間を通して大きな資金余力につながります。加えて、経費精算システムの導入など業務のデジタル化を進めれば、業務効率があがるだけでなく人的コストの無駄も減ります。
不要な在庫・資産を処分する
不要な在庫・資産を処分するのも、資金繰りを良くする方法として有効です。不要在庫とは売れる見込みが低い商品や長期間滞留している資産を指し、放置すると管理コスト・保管スペースが無駄に圧迫されます。
まずは、棚卸しによって現在庫を見える化し、半年以上売れていない商品などを不動在庫として分類しましょう。その上で、値引きセールやクリアランス販売、または買取業者への一括売却などによって早急に現金化を図ります。
不要資産は単なる倉庫費用だけでなく劣化・陳腐化リスクも抱えるため、早めの処分が資金繰り改善の第一歩です。さらに、廃棄による評価損の計上は節税効果もあり、コスト削減と同時に税負担軽減にもつながります。
フリーキャッシュフローをプラスに保つ
資金繰り改善のためには、フリーキャッシュフローをプラスに保つよう意識しましょう。フリーキャッシュフローは、本業で稼いだキャッシュから投資支出を差し引いた「自由に使えるお金」を意味します。
まず、営業キャッシュをしっかり確保し、無駄な投資や過剰設備への支出を抑えるのが重要なポイントです。加えて、借入返済にフリーキャッシュフローをあてれば、利息負担を抑えて自己資本比率の改善にもつながります。
フリーキャッシュフローがプラスだと金融機関からの信頼性も高まり、将来的な融資・投資の選択肢も広がります。逆にマイナスが続く場合は、売上拡大・経費削減など営業キャッシュフローの増加策や設備投資の見直しが必要です。
回収・支払いサイトを交渉して条件を改善する
資金繰り改善には、売掛金入金までの期間を示す回収サイトの短縮と仕入れ代金を支払うまでの期間を表す支払いサイトの延長が有効です。回収・支払いサイトの交渉時は取引先との信頼関係を壊さないよう丁寧に理由を説明し、約束した期日などを書面化する必要があります。回収・支払いサイトの交渉がうまくいけば、手元資金を効率的に維持できて資金繰りの圧迫が緩和されます。
なお、回収サイトの短縮と支払いサイトの延長はどちらも取引先にとって不利益を被る条件です。そのため、「支払いサイトを延長する代わりに、1度の購入金額を数%増やす」など双方にメリットのある提案を行いましょう。
借入金の金利・返済条件の交渉
借入金返済が重荷となって資金繰りを圧迫している場合、金融機関と交渉して返済条件の見直しを行いましょう。借入金返済で具体的に見直す項目としては金利の引き下げや返済元金の猶予、返済期間の延長などがあげられます。
「1年は利息のみ支払い、元金は据え置き」などの条件変更が認められれば、キャッシュアウトを減らして立て直しやすいです。借入金返済に関する見直しの交渉を成功させる鍵は、銀行が納得する具体的な経営改善計画の提出にあります。ただし、返済の延長期間中は新たな融資が制限される可能性もあるため、将来の再融資や信用回復も視野に入れて戦略を立てましょう。
貸付金・仮払金があればすぐに処理する
貸付金・仮払金があればすぐに処理しましょう。企業が保有する貸付金・仮払金は、融資審査の際にマイナス項目として扱われるためです。
特に、役員・関係会社への長期未回収の貸付がある場合は資金繰りの不透明さを示すものとして金融機関から厳しく審査されます。仮払金も同様に、本来は1〜2か月で処理すべきものを放置すると資金計画に懸念を抱かれて新規融資を受けられない可能性が高いです。
まずは貸付金・仮払金に関する制度の整備と精算ルールを徹底し、発生直後に処理される体制を全社員に共有します。加えて、長期未回収の貸付金については賞与との相殺や返済計画を明確化し、年次決算時までに残高をゼロに近づけるよう運用しましょう。
少人数私募債を発行する
少人数私募債の発行も、資金繰りを良くする方法として検討したい手法です。少人数私募債とは50人未満の特定少数へ向けて社債を発行し資金調達する手法で、銀行融資に頼らずに資金を得られる代替手段です。
公募債に比べて手続きが簡素で証券取引法上の開示義務も限定されており、時間・手間をあまりかけずに実施できます。少人数私募債の運用は縁故者や取引先、社員などに直接販売して利息のみを定期的に支払い、償還時に元本を一括返済する形が一般的です。
少人数私募債の発行は融資ではなく社債であるため、株主構成を変えず経営権を維持できて資金調達コストを抑えられます。一方、少人数私募債の発行には以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。
- 財務状態が悪い企業は発行が困難である
- 償還負担が集中する可能性がある
- 事業計画の提示が不可欠である
新たな資金調達で資金を増やす
新たな資金調達は資金ショートを回避し、事業拡大・経営改善を図るのに不可欠な手段です。資金調達には以下のように複数の種類があり、自社の目的にあった手法を選ぶ必要があります。
調達手段 |
内容と仕組み |
特徴・メリット |
注意点・デメリット |
デットファイナンス |
銀行借入・社債発行・リース・売掛債権担保借入など借金による資金調達 |
- 経営権を維持しつつ資金を調達できる
- 金利は税務上の損金算入が可能
- 返済スケジュールで資金見通しが立てやすい
|
- 返済・利息負担が発生し、資金繰りへのプレッシャーとなる
- 信用・担保力が求められ、審査に時間がかかる
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エクイティファイナンス |
株式・出資持分を発行し、投資家から資金を得る方式 |
- 返済義務がなく支払い負担がない
- 投資家から専門的知見や人脈の支援を得られる可能性あり
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- 株式の希薄化により経営権の一部喪失が起こる
- 将来配当や株価向上による利回り要求で経営圧力が生じる
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アセットファイナンス |
機械・設備・在庫・売掛金などの資産を担保にして調達する方式 |
- 導入費用を分割で負担でき、少額から資産取得が可能
- 融資と比較して審査が通りやすい
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- 担保資産の所有権が制限され、契約違反時には資産差し押さえリスクあり
- 契約期間の継続支払いが必要
|
銀行融資を中心としたデットファイナンスは比較的低金利で安定した調達手段ですが、審査が厳しく時間を要する点がネックです。エクイティファイナンスは返済義務がなく、赤字期でも投資家の判断次第では資金を得られるメリットがあります。なお、ファクタリング・リースバックなどのアセットファイナンスは在庫・設備・売掛債権などの流動化を通じて迅速な資金調達が可能です。
政府の資金繰り支援策を活用する
中小企業や地域事業者の場合は、政府の資金繰り支援策を活用するのもおすすめです。2025年1月以降は経営改善・再生支援強化型保証などの制度が設立され、事業安定と成長をテーマに据えた支援が拡充されています。
他にも、「危機対応後経営安定貸付」「セーフティネット貸付」は経営困難な企業に対して通常よりも低い特別利率での融資が可能です。また、「経営改善サポート保証」を利用すれば、金融機関からの借入に対して最大2.8億円までの保証を得られます。上記の制度を活用するためには事前に政策の最新動向を把握し、申請要件を正確に確認して手続きしなければなりません。
参考:物価高や人手不足等の影響を受けている中小企業者に向けた新しい保証制度の取扱いを開始します|中小企業庁
資金繰り表を用いた資金繰り予測・管理で主にチェックすべきポイント
資金繰り表を用いた資金繰り予測・管理で主にチェックすべきポイントとして、以下の4点があげられます。
上記のポイントを確認し、資金繰り表を効果的に管理しましょう。
前月繰越金額
前月繰越金額は資金繰り表の起点となる数値で、前月末時点で手元にある現金と預金の合計額を示します。前月繰越金額が正確でないと以降の入出金予測が狂ってしまうため、現金出納帳・預金通帳での記録と照合する作業が不可欠です。
前月繰越金額がマイナスの場合は早期に資金ショートする可能性があるため、対策を講じて事業継続の危機を回避しなければなりません。また、前月繰越金額と当月の資金繰り予測を比較検討すれば、計画に誤差がないかの検証も可能です。
経常収支
経常収支とは、本業における収入と支出の差額を指します。経常収支は資金繰り表における日常収支の中心指標で、経常収入と経常支出の例は以下の通りです。
経常収入の具体例 |
経常支出の具体例 |
- 現金売上
- 売掛金回収
- 受取手形入金
- 受取利息
- 雑収入
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- 現金仕入れ
- 買掛金支払い
- 手形払い
- 人件費
- 販管費
- 支払い利息
- 手形割引料
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経常収支が連続赤字であれば、本業が資金を生まない構造であるため、販売施策の見直しやコスト削減による構造改革が必要です。逆に、経常収支が安定した黒字であると事業の収益性を証明でき、投資家・金融機関からの資金調達を実施しやすくなります。
財務収支
財務収支は資金繰り表における資金調達と返済の項目をまとめたもので、具体的には以下の2通りにわけられます。
- 銀行などからの借入による「財務収入」
- 借入金元本の返済や配当金支払いなどによる「財務支出」
財務収支が意味するのは、企業が本業ではなく資金調達手段を通じて現金を得たり返したりする活動です。例えば、新規借入をした場合は財務収入に計上し、月々の元本返済がある場合には財務支出に区分します。
また、株主配当や株式による増資も財務収支に計上され、本業とは切り離した資金の動きを可視化する重要な指標となります。財務収支欄を注視すると、「借入で補填しているだけではないか」「返済負担は適正か」などの判断が可能です。
特に、返済が収入を上回って財務収支が継続的にマイナスであれば、元本負担が本業の余力を超えているおそれがあります。逆に、調達ばかり増えている場合は返済負担が蓄積しているため、将来的な支払いの負担に備えなければなりません。
翌月繰越金額
翌月繰越金額とは当月が終わった時点での現金残高にあたり、翌月に引き継がれる手元資金の額です。算出方法は以下の通りで、実質的な手元資金の月末残高を示します。
- 翌月繰越金額=前月繰越金額+当月の収入−当月の支出
翌月繰越金額がプラスであれば翌月も資金繰りを継続できる余裕がある状態を示し、逆にマイナスなら資金ショートの危険性を意味します。なお、翌月繰越金額がギリギリの残高だと取引先への入金遅れなどの突発的な事態が起きた場合に支払い遅延・未払いが発生しかねません。
そのため、資金繰り予測では翌月繰越金額にある程度の余裕を持たせた上での運用が大切です。また、3か月先・半年先の繰越金も予測可能なフォーマットを活用し、将来のキャッシュフロー悪化リスクを事前に察知する必要もあります。
資金繰り悪化の再発防止対策には「経営セーフティ共済」の活用がおすすめ
資金繰りの悪化を繰り返さないためには、事業継続の保険として経営セーフティ共済を活用するのがおすすめです。経営セーフティ共済は毎月一定の掛金を積み立て、取引先が倒産した際に最大8,000万円まで無担保・無保証で借入できる制度です。中小企業の連鎖倒産防止を目的に設立された制度で、利用すれば取引先倒産による売掛債権の回収不能リスクを回避できます。
また、経営セーフティ共済で支払った掛金は損金扱いとなり、法人税の節税にも貢献します。ただし、12か月未満の解約では掛金が返らず、40か月未満では元本割れとなるため注意が必要です。2024年10月以降は解約後の再加入制限も加わり、経営セーフティ共済を利用する場合は中長期目線の継続加入が求められます。
制度名 |
経営セーフティ共済(正式名:中小企業倒産防止共済制度) |
加入対象 |
- 中小企業・個人事業主などで継続1年以上の事業者
- 資本金・従業員数など条件あり
|
掛金 |
月額5千円~20万円まで自由に設定・変更可 |
貸付条件 |
- 無担保・無保証人・無利子
- 倒産した取引先の未回収売掛金または掛金の10倍以内(最大8,000万円)
|
貸付期間・返済条件 |
- 据置期間6か月を含む5〜7年以内に毎月均等返済
- 借入額の1/10を掛金から控除
|
一時貸付制度 |
倒産以外でも解約手当金の範囲内で一時的な資金借入が可能 |
解約返戻金 |
12か月以上納付で掛金総額の80%以上、40か月以上で全額返戻(12か月未満は返戻なし) |
再加入制限 |
令和6年10月1日以降、解約後2年間は再加入しても掛金の損金算入不可 |
参考:共済サポート navi | 中小企業基盤整備機構
資金繰り改善のための資金調達には「ファクタリング」がおすすめ
資金繰り改善のための資金調達には様々な手段がありますが、最もおすすめなのは「ファクタリング」です。ファクタリングとは売掛債権を回収期日前にファクタリング会社へ売却し、即座に現金化する方法です。
ファクタリングの利点は借入ではないため返済不要かつ信用情報に影響せず、審査も柔軟で最短即日での資金調達が可能となります。また、売掛債権の回収義務は利用者ではなくファクタリング会社が負うため、債権の未回収リスクも回避できます。
ファクタリングはスタートアップ・赤字企業でも審査に通りやすく、融資が難しい場合の資金ショート防止策として有効です。売掛債権を売却・譲渡する資金調達手法ですが、2社間ファクタリングであれば取引先に知られずに利用できるメリットもあります。「融資審査が通らない」「今すぐに資金を調達したい」などの悩みを抱える企業は、積極的にファクタリングの利用を検討しましょう。
資金繰りの改善に役立つおすすめのファクタリング会社5選
資金繰りの改善に役立つおすすめのファクタリング会社として、以下の5社を紹介します。
- ベストファクター
- ビートレーディング
- アクセルファクター
- QuQuMo(ククモ)
- OLTA(オルタ)
上記のなかから、自社の条件にあったファクタリング会社を選び、資金繰りを良くするのに活用しましょう。
ベストファクター

種類 |
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
- 注文書ファクタリング
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手数料 |
2%〜20% |
入金スピード |
最短即日 |
買取可能額 |
30万円〜1億円 |
手続き方法 |
オンライン・電話・メール |
公式サイト |
https://bestfactor.jp/ |
ベストファクターは手数料の安さに定評があり、2社間・3社間ファクタリングのいずれにも対応が可能です。ベストファクターは利用者の多くが手数料1%〜3%と低水準で利用できており、審査通過率92.25%と高い資金調達率を誇ります。
全体の59.5%が申し込み当日に入金が完了しているため、直近の支払い原資がないなど急な資金需要にも十分対応が可能です。ベストファクターは30万円以上の売掛債権からと比較的少額にも対応しており、新設法人・個人事業主でも問題なく利用できます。ベストファクターの手続きは対面面談・オンラインのどちらにも対応していて、きめ細やかなサポート体制も評価されています。
ビートレーディング

種類 |
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
- 診療報酬買取ファクタリング
- 注文書買取ファクタリング
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買取可能額 |
下限・上限なし |
手数料 |
- 2社間ファクタリング:4%〜12%
- 3社間ファクタリング:2%〜9%
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入金スピード |
最短2時間 |
手続き方法 |
オンライン・LINE |
公式サイト |
https://betrading.jp/ |
ビートレーディングは、累計取引社数7万1,000社・買取額1,550億円と業界トップクラスの実績を持つ信頼性が高いファクタリング会社です。手数料は2社間ファクタリングで4%〜12%、3社間ファクタリングで2%〜9%で設定されており、比較的低水準で利用できます。
必要書類は請求書・通帳コピーの2点だけで、申し込みから最短2時間で入金が可能であるスピード感も強みです。また、注文書ファクタリングと呼ばれる注文書の買取による資金調達にも対応しており、受注後・請求前段階から資金化できる点も魅力です。東京・仙台・名古屋・大阪・福岡と全国5拠点に展開しているため、対面・オンラインのいずれも迅速に手続きが可能だと高い評価を得ています。
アクセルファクター

アクセルファクターは審査通過率が約93%と非常に高く、「簡易10秒診断」など利用者に配慮した仕組みが揃っています。手数料は1%からと低水準で設定されているため、コストを抑えてなるべく多くの資金を調達したい企業におすすめです。
また、各業界に精通したアドバイザーが在籍しており、建設・ITなど業種ごとの相談にも柔軟に対応できる体制が整っています。最短即日入金に対応し、2社間ファクタリングで取引先に通知せずに資金化が可能で、取引関係へ悪影響を与えずに資金調達が可能です。申し込み手続きはオンラインで簡単に完結して来店などの手間を省けるため、忙しい経営者でもスキマ時間で利用できます。
QuQuMo(ククモ)

QuQuMo(ククモ)はオンライン完結型のファクタリングで、請求書をアップロードすれば最短2時間で資金化できるスピードが最大の強みです。手数料は1%からと低水準を実現し、買取上限額・下限額がなく少額・高額債権の両方に対応しています。
また、クラウドサインによるオンライン契約で対面手続きがなく債権譲渡登記も不要なため、手間・時間がかからない点も魅力です。必要書類は請求書・通帳コピーの2点のみで書類の準備も時間がかからず、個人事業主から法人まで幅広く利用できる点も評価されています。
OLTA(オルタ)

OLTA(オルタ)はオンライン完結型クラウドファクタリングを提供する企業で、累計申込額は1,000億円超と多くの実績を有しています。ファクタリングの手数料は2%〜9%と低水準で利用でき、手続きはAI審査でスピーディかつWeb完結できるのが特徴です。
2社間ファクタリングに対応しており、債権譲渡登記も原則不要なので取引先にファクタリング利用を知られる心配もありません。また、銀行を通じたサービス提供も進んでいて、小松川信用金庫・佐賀銀行など地方銀行を通してのファクタリング利用も可能です。利用者の声では「手数料が安い」「書類・審査の手間が少ない」「オンライン完結でラク」などの評価が多く見られます。
資金繰りを良くする方法に関連した質問
資金繰りを良くする方法に関連した質問として、以下の4つを紹介します。
- 資金繰りの改善に役立つアプリはある?
- 資金繰り表をエクセルで作成するやり方は?
- 資金繰りが苦しい会社の特徴とは?
- 個人事業主が資金繰りを改善する方法は?
資金繰りに関して疑問点がある場合は、上記質問への回答を参考にしてください。
資金繰りの改善に役立つアプリはある?
現在では、スマホを中心としたオンライン環境で資金繰りを効率化できるアプリが多数存在します。なかでも利用者が多いアプリとして、以下のものがあげられます。
上記のアプリは「日別・月別に入出金予定を入力」「グラフやカレンダーで視覚化」などが可能で、簡単に資金繰り状況を把握できます。さらに、スマホ経由でいつでもどこでも資金状況を確認できて事務作業を最小限に抑えられるため、担当者の負担軽減にもつながります。
また、入力内容がクラウドに保存されて定期バックアップされる仕組みも多く、入力ミスや記録漏れの防止にも有効です。ただし、会計ソフトとは別管理になってズレが生じやすく細かな財務分析には向かない点もあるため、使用目的・業務体制に応じた選定が重要です。初めて導入する場合は無料トライアルを使いながら、自社に合ったアプリ選びを進めていきましょう。
資金繰り表をエクセルで作成するやり方は?
エクセルで資金繰り表を作成する際は、以下の手順で作成しましょう。
ステップ |
内容 |
①準備資料を集める |
月次試算表・現金出納帳・預金通帳・売掛金台帳・買掛金台帳・借入金返済予定表などが必要 |
②フォーマットの設計 |
経常収支・財務収支・前月繰越残高・翌月繰越残高など資金繰り表に必要な項目をシート上に作成 |
③前月繰越残高の入力 |
前月末の現金・預金残高を前月繰越として記入 |
④経常収支の入力 |
売上回収や利息などの収入と仕入れ・給与・経費などの支出を記入し、差額を計算 |
⑤財務収支の入力 |
借入や返済、配当など本業以外の収支を入力 |
⑥翌月繰越残高を計算 |
「前月繰越+経常収支+財務収支=翌月繰越」で数式を設定 |
⑦実績と予測の併記 |
実績と予算を並べて比較できる形式にすると差異分析や将来予測に役立つ |
⑧定期更新と見直し |
毎月試算表と照合し、予測内容は現況を反映してアップデート |
資金繰りが苦しい会社の特徴とは?
資金繰りが苦しくなる企業には、以下のような共通の特徴があります。
資金繰りが苦しい会社の特徴 |
詳細 |
入金遅延・売掛金回収の遅れ |
顧客の請求書支払いが長引き、常に現金不足である状態 |
買掛金・支払いの延滞 |
支払いを先延ばしにしている状態では、長期的に取引先の信用悪化を招く |
過剰在庫 |
売れ残りや過剰仕入れにより在庫が膨らみ、保管費や陳腐化リスクも増加 |
赤字体質・利益率低下 |
売上高に比べてコストが過大で利益が出ず、資金の余裕がない |
固定費負担の重さ |
家賃・人件費など定額の支払いが多く売上低下時に資金が圧迫される |
経理・資金管理体制の不備 |
資金繰り表が整備されておらず実績把握が遅れており、資金ショートを察知できない状況 |
社長や経営層の財務理解不足 |
経営者が財務・資金繰りに苦手意識を持ち、異常を速やかに察知できず手遅れになる |
上記の傾向が複数重なるほど、資金繰り危機は深刻化する傾向にあります。
個人事業主が資金繰りを改善する方法は?
個人事業主にとって資金繰り改善は、収入と支出のバランスを把握するのが最初の一歩です。まず、現在の現預金と負債を正確に整理し、借入があれば毎月いくら返済が必要かを明確にしましょう。次に家賃・通信・保険などの固定費と変動費を見直し、不要な支出は削減して支払いサイトの調整も行います。
収入面では受注単価の交渉、顧客との信頼強化によるリピート増加などの販売施策を実施すると効果的です。また、制度融資・補助金・クラウドファンディングなどの資金調達方法も検討し、幅広い手段で迅速に自己資金を確保できるようにしましょう。資金繰り表の作成で資金状況の見える化と予測を実施すれば、資金ショートを未然に防げる確率が格段にあがります。
資金繰りを改善できるよう幅広い手段を実行できるようにしよう
資金繰りは、事業を安定して継続する上で欠かせない経営の土台です。売掛金の入金遅延や在庫過多、過剰投資などにより資金が不足すると黒字でも倒産に至るリスクがあります。
そのため、資金繰り表の作成や回収・支払いサイトの見直しなど日々の管理体制の強化が重要です。また、経営セーフティ共済やファクタリングなどを活用すれば緊急時でも資金を確保しやすくなります。
特に、ファクタリングは売掛債権を売却して最短即日で資金を調達できるため、今すぐに資金繰りを改善したい場合に有効です。資金繰りを改善できるよう幅広い手段を実行できる体制を整え、経営の安定化を目指しましょう。