企業経営者の中には「いくら売上がある」「いくら利益がある」と、売上や利益にばかり目を奪われてしまう人が多いようです。

確かに、企業経営において売上や収益管理は非常に重要です。

しかし、売上や収益以上に重要になるのが実は資金繰りです。

資金繰りが上手くいっていないということは、企業の手元にキャッシュが少ないということですので、放置すると資金ショートして倒産してしまう可能性もあります。

企業の資金繰りを改善することができる20の方法を詳しくご紹介していきます。

今や資金繰りは収益管理と同じくらい重要なものとして企業評価の重要ポイントになっています。

資金繰りを改善する方法を把握して、自社でもすぐにできることがないかどうか確認しましょう。

売上が増加時の支出に注意

売上が増加した時こそ、支出の増大に注意する必要があります。

売上が増加した時には、増加した分の仕入れ資金や人件費などのコストが増えることは珍しくありません。

このように売上増加に伴い増える経費を「増加運転資金」と言います。

増加運転資金に考慮せずに売上拡大に邁進すると、いざ仕入れや製造を行う段階になって、資金が思った以上に多く流出して資金ショートしてしまうことがあります。

売上が増加した時には、売上増加に伴い増加する増加運転資金を把握した上で、「資金繰りに問題ない」という状態を確保して営業活動を行いましょう。

資金繰り表の作成

資金繰り表を作成し、日々、自社の資金繰りを管理することは非常に重要です。

資金繰り表とは、資金の入金と流出を日々管理して、「現在の残高はいくらか」「月末の資金の残高はどの程度」なのかということを把握するものです。

売上や仕入を行なっても、その場で現金が動くわけではないので、収支管理と資金の動きは一体ではありません。

そのため、売上や経費を計上する損益計算とは別に資金繰り管理を行わなければなりませんが、多くの企業で資金繰り管理までは詳細に行なっていないのが実情です。

面倒でも日々資金繰り表を作成し資金繰り管理を行なっておくことで、資金の流れや月末に予想される残高をあらかじめ知ることができます。

資金が足りないことを早く知ることができれば、借入などの手当を行うこともでき、資金ショートを防ぐこともできるので資金繰り表はできる限り日次で作成するようにしてください。

税金対策のための支出をやめる

税金対策で車を買ったり、社員旅行に行ったりしている企業も多いのではないでしょうか?

確かに、車両購入や福利厚生費への支出を行うことによって利益を圧縮することができるので、節税対策になることは間違いありません。

しかし、資金によほど余裕がある状態を除いて、このような税金対策はあまり推奨できません。

このような支出は税金対策にはなっても、確実に資金繰りは圧迫されるためです。

例えば車両購入のために500万円支出した場合には、車両の耐用年数が5年の場合、毎年車両代金の20%の100万円は減価償却費として経費計上することは可能です。

しかし、車両を購入した年に500万円の現金は会社から流出し、その500万円を節税によって回収することができるまでには車両の耐用年数である5年間かかってしまいます。

これは資金繰り的に見れば明らかにマイナスになるので、よほど手元に資金が潤沢にある場合意外には、安易に取るべき方法ではありません。

売掛金の回収管理の厳格化とサイトの交渉

売掛金の回収管理を厳格に行うことも重要です。

売掛金の管理は以下のように厳格に行なってください。

  • 期日通りに必ず入金を受ける
  • もしも遅れた場合には厳しく督促する
  • 支払いに遅れた取引先との取引の継続を検討する

得意先だから「遅れてもまあ仕方ない」という態度であれば、その取引先からの遅れが慢性的なものになり、結果的に自社の資金繰りを大きく棄損する可能性があります。

また、入金までの期間が長い売掛先に対しては、「もう少し早く支払ってほしい」など、入金サイトの短縮を交渉するようにしましょう。

例えば2ヶ月先に入金になる売掛先のサイトを1ヶ月先へ変更することができれば、1ヶ月分自社に資金が早く入金になるので、資金繰りは大きく改善することになります。

売掛先に中で、サイトの長い取引先に対しては交渉を行なってみましょう。

売掛債権にはファクタリングを利用する

売掛債権を手元に保有しているのであれば、ファクタリングを利用することを検討しましょう。

ファクタリングとは、期日前の売掛債権をファクタリング会社へ売却して早期に資金化することです。

ファクタリング会社の中には、申込日当日に資金化に応じてくれる会社も存在するので、資金繰りが苦しい時には大いに活用することができます。

また、自社の信用ではなく売掛先の信用で審査を受けることができるので、自社の業況が悪く銀行融資の審査などに通過することができない場合でも活用することが可能です。

ファクタリングについて詳しくは以下の記事をご覧ください。

受取手形には手形割引を活用する

取引先から受取手型で代金を受け取っている場合には、手形割引を活用しましょう。

手形割引とは企業が保有する受取手形を銀行で割り引いて資金化する方法です。

簡単に言えば、受取手形を担保に銀行からお金を借りるイメージです。

金利が1%〜5%程度と安く、手形発行企業の信用で融資を受けることができるので、業況の悪い企業でも銀行から融資を受けることができる方法です。

事前に銀行へ手形割引枠を作成しておけば申込日当日に資金化することができます。

手形は期日が3ヶ月後とか6ヶ月後など、かなり長いサイトが設定されることが多い売掛債権です。

期日まで待っていると資金繰りは圧迫されるので手形割引を積極的に活用しましょう。

支払サイトの長期化交渉

自社の仕入先に対して支払いサイトの長期化を交渉するのも資金繰り改善のために有効な方法です。

例えば「1ヶ月先の支払い」と決まっている仕入先に対する支払いを「2ヶ月先」とすることができれば、自社には資金が1ヶ月長く滞留することとなります。

資金繰り円滑化のポイントは「1日でも長く自社に資金を確保する」ということです。

あまりにも支払サイトが短い買掛先に対しては「もう少し支払サイトを長くできないか」などと交渉してみるとよいでしょう。

買掛先に対しては自社は「お客様」ですので、無理のない範囲で多少強気に交渉するのも1つの方法です。

法人クレジットカードでの経費の支払い

経費をクレジットカードで支払うことで資金繰りは改善します。

クレジットカードの支払いは月末締め翌月末払いなどとなっています。

経費を現金でを支払うよりもクレジットカードでの支払いの方が1ヶ月〜2ヶ月間支払いが後になるため、その分資金繰りは楽になります。

また、クレジットカードで支払った方が、使った経費が一覧化されるので、無駄な経費の支出がないかどうかの管理が容易になりますし、会計処理も簡易にすることが可能です。また、最近では会計ソフトと連動して自動的に会計処理をしてくれるソフトもあります。

年会費はかかるものの費用対効果は高いので、経費の支払いはクレジットカードで行うとよいでしょう。

複数の借入金を一本化する

複数の借入金があるのであれば、当該借入金を一本化しましょう。

借入金を一本化することによって、借入残高の少ない借入金も多い借入金も1つにまとめることができます。

これによって、毎月の返済額が低減することが多いので、その分資金繰りは楽になります。

ただし、借入金の一本化は銀行などに相談し、一本化の審査に通過できなければ利用することができません。

まずは、銀行などに「借入金を1つにまとめたい」などと相談しましょう。

不要在庫の管理や廃棄

不要な在庫を抱えていると、管理コストなどで資金が流出してしまいます。

そのため不要な在庫を抱えているのはあれば廃棄するか、売却してしまいましょう。

処分することによって倉庫などの管理コストは削減できますし、売却することができれば多少なりとも現金が入ってくるので資金繰りには寄与します。

また、できる限り不要な在庫を抱えないように、日常から在庫管理を厳格に行い、仕入は必要最小限に留めるようにしてください。

予算と実績の比較を毎月実施

経費に関して、予算と実績の比較を毎月行いましょう。

「1年間の経費は〇〇万円」と決めておきながら、細かく管理をしていないことによって予算を超えてしまうということは珍しいことではありません。

「経費は〇〇万円」と決めたら、それを1ヶ月あたりの予算として割り振り、実績が予算を超えていないかどうかを月次で管理しましょう。

もしも超えていたら「翌月分の予算は削る」などの対処をすることができるので、結果的に1年間を通じて経費の支出を予算内に抑えることができます。

従業員のコスト意識も向上するので、売上だけでなく経費でも月次で予算と実績の管理を行うようにしてください。

費用対効果のない経費を削減する

費用対効果の少ないと思われる経費は削減することを検討しましょう。

節税目的だけの車両の購入や、不必要な保険、新聞広告など「昔から続けてきたから」というような理由だけで支出しているような経費は見直しを検討する必要があります。

経費とは、基本的に収益を向上させるために必要な支出であるべきですので、経費1つ1つについて「どの程度の費用対効果があるのか」という視点で確認し、費用対効果が認められないのであれば削減を検討するようにしましょう。

外注やアウトソーシングを活用し効率化する

外注やアウトソーシング活用して、業務を効率化することも重要です。

外注やアウトソーシングに依頼することによって、自社で当該業務に係る人件費をかける必要がなくなります。

人を雇ってしまうと簡単に解雇することはできなくなりますし、福利厚生費なども必要になるので、固定費は一気に増大します。

外注やアウトソーシングであれば必要な時だけ支出すればよいので固定費にはならず収益的にも資金繰りも楽になります。

自社の業務の中で「社員が行う必要がない」と判断できるような業務については外注やアウトソーシングに回し、自社の人的資源は営業活動など売上拡大に注力することで、収益力が高く資金繰り円滑な企業体質を作ることができます。

利益率の高い製品の販売や製造だけに特化する

自社の商材の絞り込みを行うということでも収益力の強化と、資金繰りの円滑化につながります。

収益力の高い商材販売に特化しましょう。

反対に、利益率の低い商材を販売することによって、販売コストの分だけ支出は増え、現金の流出も増大するので、同じコストをかけるのであれば利益率の高い商材を販売した方がよいでしょう。

自社の商材の利益率を洗い出し、利益率の低い商材の販売から利益率の高い商材の販売へと転換を図ることで収益も資金繰りも向上します。

営業マンの評価基準を売上から利益へ変更する

自社の営業マンの評価基準を売上ベースから利益ベースへと変更することで収益と資金繰りが改善することがあります。

売上ベースの評価基準になると、営業マンが自分の評価を上げるために収益力の低い商材を販売したり、大幅な値引きをすることがあり、結果的に「コストの割には利益が出ない」ということになってしまいがちです。

営業マンの頑張りが会社の利益につながらないことはよくあります。

利益ベースの評価基準へと変更することによって営業マンは評価を得るために利益獲得を目指すようになるので、収益も資金繰りも向上します。

営業マンの評価基準を利益ベースへと変えるだけで、自動的に営業マンが収益が上がるように動いてくれるので、売上ベースの評価基準を敷いている会社は変更を検討するとよいでしょう。

売掛債権回転機関が早い製品や取引先への販売に特化する

売掛債権回転期間とは、売掛債権が資金化するまでどのくらいの時間がかかっているのかという考えで「売掛債権残高÷売上高×365日」で算出します。

回転期間が短い方が早く資金化するということで、資金繰りには回転期間が短い方がプラスになります。

取引先ごとの売掛債権回転期間を算出し、回転期間が短い取引先との取引を特化することによって資金繰りが改善することになります。

また、製品や商品ごとの回転期間を計算し、回転期間の短い製品や商品の販売に特化することでも企業の資金繰りは改善します。

まずは、「取引先ごと」「商品ごと」の売掛債権回転期間を算出し、特化すべき取引先や製品を特定してみるとよいでしょう。

前年度より業績悪化時に仮決算をして中間納税額を減額させる

前年度に一定程度の税金を支払った企業は翌年に税金の中間納付(前払い)が必要になります。

中間納付をする方法は「仮決算して中間納税額を算出」と「前年度の支払額を基準として中間納付額」する方法の2つありますが、当年度の業績が昨年よりも悪化していた場合には、前年度の納付額を基準として中間納付するよりも、仮決算を行なって中間納付した方が納税額が少なくなります。

中間納付の際には「仮決算」と「前年度の支払額」のどちらが得になるのかを検討し、納付する金額が少なくなる方法で納税することで資金繰りの悪化を防ぐことができます。

営業キャッシュ・フローの範囲内で投資を行う

投資を行う際には、営業キャッシュフローの範囲とした方が投資が失敗した場合のリスクを最小限に抑えることができます。

営業キャッシュフローとは、会社の「モノを売った」「仕入れた」の営業活動の中から生み出された現金のことです。

営業活動から得られるキャッシュから投資を行うことによって、借入に頼る必要がないので、例え投資が失敗しても企業の財務状態へ与えるリスクは最小限に留めることができます。

「無理のない範囲の投資」に留めることができるのが、営業キャッシュフローの範囲内の投資です。

投資をする際には「営業キャッシュフローで賄うことができるか」という点を1つの基準とするとよいでしょう。

リースを活用する

資産を購入するのではなく、リースを活用することによって資金繰りの大幅な悪化を防ぐことができます。

リースを活用することによって利息の支払いは確かに増えます。

しかし、資産の一括購入をすることによる数百万円・数千万円の現金の流出は防ぐことができるので、資金繰りの悪化を防ぐことが可能です。

「資産を購入したら手元の資金が枯渇してしまう」という場合には、リースを活用して資金の流出を防ぐようにしてください。

不要な資産を処分する

不要な資産を処分するのは資金繰り円滑化の基礎的な方法です。

資産を保有することによって管理コストが必要になります。

例えば車であれば、保険料や車検代や自動車税などが必要で、これらのコストによって経費は増大し、資金も流出します。

不動産も同様に固定資産税などの管理コストによって現金を流出させることになります。

そのため、企業の営業活動にとって必要ない資産はできる限り処分しましょう。

処分することによって管理コストはかからなくなりますし、処分することによって売却代金を手にすることができるので資金繰りは楽になります。

会社の資産目録から本当に必要な資産だけを洗い出し、不要な資産は処分することを検討してください。

資金繰り改善に関するよくある質問

短期資金よりも長期借入金の方が資金繰りが悪化すると言われる理由はなぜですか?
短期借入金とは、短期間の運転資金の穴だけを埋めるもので、例えば「A社の売上が入金になるまでA社からの受注分の経費の支払資金を借りる」というように、該当する支払い先を限定した借入金です。
そのため、A社からの入金があった時点で一括返済するので金額的にも借入期間的にも無駄な借入が一切ありません。
しかし、長期借入金は借入金の返済を分割で長期間かけて行なっていくので、借入金が手元から枯渇した後は返済金の分だけ確実に手元から資金が流出してしまいます。そしてまた資金繰りのために借入をすると返済金がさらに増えて資金繰りはより苦しくなる・・というような悪循環になるリスクもあります。
銀行は長期借入金を勧誘する傾向がありますが、長期借入金は長期的に企業の資金繰りを悪化させるため、できれば運転資金は短期で借りておいた方がよいでしょう。
手元の資金に余裕がある時でも資金繰りの改善には注意する必要がありますか?
資金繰りは手元の資金に余裕がある時ほど改善のために努力する必要があります。
資金的に余裕がなくなった後になって、改善しようとしてもすでに現金がないのですから外部からの資金調達を行うくらいしか取るべき方法がありません。
常に手元の資金に余裕を持たせておくことが資金繰りのポイントですので、手元の資金に余裕がある時も不要な資金流出がないように、資金繰り管理を徹底するとともに改善を検討してください。
資金繰り改善を相談できる専門家を教えてください
資金繰りの改善は資金繰り改善の専門家である資金繰りコンサルなどへ相談するとよいでしょう。
ただし、資金繰りコンサルに相談すると顧問料などがかかるので、最初から資金繰りコンサルを利用することは慎重に検討する必要があります。
メインバンクや顧問税理士やファクタリング会社など、日常から取引のある専門家へ相談することで無料で財務分析や資金繰り改善のためのアドバイスを受けることができる場合もあるので、まずはこれらの無料相談できる専門家を活用するとよいでしょう。

まとめ

資金繰り改善の方法は多数ありますが、いずれの方法も基本的には「経営にとって無駄なものを省いていく」「取引先からは早く現金を受け取る」などの方法です。

これらを意識して経営改善をすることによって資金繰りは円滑になります。

長く企業経営を続けていけばいくほど企業経営には無駄なものが増えていくことは事実です。

資金繰りを円滑にするため、不要な資産は売却するとともに、取引先との関係も「1日でも長く自社に資金が留まるように」入金や支払いの交渉をすることを心がけましょう。