利息制限法とは、文字通り借金の利息を制限し、消費者を高金利や多重債務から守る法律です。

クレジットカード会社・消費者金融などのキャッシングやカードローンには利息制限法が適用されており、上限金利を超えた利息や遅延損害金は無効となります。

一方で、ファクタリングには利息制限法が適用されません。つまり、手数料を制限する法律がなく、消費者を法外な手数料から守るものが何もないということです。

それでも、ファクタリング業者は摘発されることなく営業を続けており、利用者も納得のうえで債権を売買しています。

今回は、なぜファクタリングには利息制限法が適用されないのか、ファクタリングの手数料は何を根拠に設定されているのかについて解説します。

ファクタリングと利息制限法の関係は、優良業者と違法業者を見分けることにも繋がりますので、ぜひご参考になさってください。

 

利息制限法とは

利息制限法とは

利息制限法とは、金銭消費貸借における利息や遅延損害金の利率の上限を規定し、上限を超えた分の利率を無効とする法律です。

まずは、利息制限法に関する基本的な知識を押さえておきましょう。

利息制限法における上限金利

金銭消費貸借における借金の利息と遅延損害金の上限は、元本額に応じて以下のように制限されています。

元本額 利息の上限(遅延損害金の上限)
10万円未満 年率20%まで(年率29.2%まで)
100万円未満 年率18%まで(年率26.28%まで)
100万円以上 年率15%まで(年率21.9%まで)

借主と貸主が納得のうえで設定していたとしても、この上限を超えた金利は無効です。

また、金銭消費貸借において、元本以外の金銭は原則名目を問わず利息とみなされます。たとえば、手数料や調査料といった名目の金銭も「利息」として扱われ、利息制限法の適用内とされます。

利息制限法による引き直し計算

過去にグレーゾーン金利の利息として支払った金額は、元本を支払ったこととして計算し直せます。

さらに、元本分の支払いを終えてもなお支払いが続いている場合は、その分を「過払い金」として貸金業者に返還請求することが可能です。

グレーゾーン金利で借りたお金をすでに完済している場合には、必ず過払い金が発生していますので、返還請求すると臨時収入を得られるでしょう。

グレーゾーン金利についての詳細は、次に解説しています。

グレーゾーン金利とは

グレーゾーン金利とは、利息制限法で制限されている利息の上限15~20%と、出資法という法律で制限されている利息の上限29.2%の間の金利を指します。

かつての出資法では、29.2%を超える金利を刑事罰の対象としていました。

一方で、利息制限法には罰則がなく、たとえ上限金利15~20%を超えていても、出資法の上限を超えてさえいなければ刑事罰の対象となりません。

この罰則の対象とならないギリギリの金利が「グレーゾーン金利」となっていたのです。

大手の消費者金融会社をはじめとして、貸金業者の多くがこの「グレーゾーン金利」にあたる金利を設定し、消費者から違法な金利を取っていました。

しかし、2006年に貸金業法が改正され、出資法の上限金利が利息制限法の上限金利15~20%まで引き下げられます。

これにより、グレーゾーン金利が撤廃され、改正法が施行された2010年6月18日から、貸金業者は全て利息制限法の上限金利の範囲内で金利を設定しています。

過去にグレーゾーン金利で借入を行い、支払い過ぎていた消費者は、利息制限法の上限金利を超えた分を「過払い金」として返還請求することが可能です。

法定金利(法定利率)とは

法低金利(法定利率)とは、民法に定められた利率を意味します。類似する「約定利率」は、個人間・企業間など、当事者の合意のもとで定められた利率のことです。

銀行や消費者金融には一般的に約定利率が定められていますが、約定理率が定められていない契約・取引においては、法定金利(法定利率)が適用されます。

法定金利(法定利率)が適用されるのは、主に以下のような場面です。

  • 個人間の金銭の貸し借り(貸金債権)
  • BtoB取引(商事債権)
  • 遅延損害金 など

ファクタリングは金銭消費貸借ではなく、債権売買(債権譲渡)であるため、法定金利は適用されません。

なお、2020年の民法改正に伴い、法定金利(法定利率)は年3%と定められ、3年に一度は見直しが実施されることになりました。

ファクタリングの手数料は利息制限法の適用外

ファクタリング業者が20%を超える手数料を設定するのは違法?

ファクタリングの手数料は、利息制限法の適用外です。

なぜなら、ファクタリングは金銭消費貸借ではなく、債権売買であるからです。

ファクタリングと似た資金調達方法として挙げられる手形割引や売掛債権担保融資(ABL)は、金銭消費貸借契約なので、当然ながら利息制限法が適用されます。

では、ファクタリングの手数料はどのようにして決まるのでしょうか?ファクタリングの手数料が決まる仕組みについて解説します。

ファクタリングを規定する法律はない

クレジットカード会社や消費者金融会社など、キャッシングを提供する貸金業者には、貸金業法が適用されます。

一方で、ファクタリング会社は貸金業を営んでいるわけではないので、貸金業登録の必要がなく、貸金業法も適用されません。

金融庁はファクタリングについて、以下のような見解を示しています。

「ファクタリング」とは、一般に、企業が取引先に対し有する売掛債権をファクタリング会社が買い取り、買い取った債権の管理・回収を自ら行う金融業務をいいます。このようなファクタリングの法定性質は、売買契約に基づく指名債権の譲渡であり、金銭の貸し借りではないので、貸金業の登録は必要ありません。

引用:貸金等に関する相談事例等及びアドバイス等

したがって、ファクタリングの業務を規定する法律はなく、利息制限法のようにファクタリングの手数料を制限する法律もありません。

ファクタリングの手数料の設定は、ファクタリング会社の裁量に委ねられています。

ファクタリングの手数料は業者が負うリスクに応じて決まる

ファクタリングの手数料は、3社間ファクタリングと2社間ファクタリングで以下のような相場となっています。

  • 3社間ファクタリング:1~5%
  • 2社間ファクタリング:10~20%

ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社が引き受けるリスクに応じて決められています。

3社間と2社間に共通してファクタリング会社が引き受けるリスクとは、 債務者や取引先の業績不振・倒産によって債権の回収ができない「貸し倒れリスク」です。

ファクタリングで売掛債権を譲渡すれば、貸し倒れリスクは譲渡人(ファクタリング利用者)から譲受人(ファクタリング会社)へと移行します。

取引先が期日通りに売掛金の満額、あるいは1円も支払えない場合でも、利用者は手形割引のように買い戻す必要がなく、貸し倒れリスクはファクタリング会社が請け負います。

そのリスクを引き受ける代わりに、ファクタリングの手数料が設定されているのです。

さらに、2社間ファクタリングは取引先への通知および同意が不要な代わりに、売掛債権を譲渡した後も、利用者が通常どおり取引先から債権を回収して(回収代行業務委託契約)、ファクタリング会社に支払います。

万が一、取引先から期日通りに売掛金が振り込まれても、利用者が持ち逃げしたり、口座に入金された直後に自動で引き落としたりすると、ファクタリング会社は売掛金を受け取れない可能性があります。

2社間ファクタリングは3社間ファクタリングに比べ、貸し倒れリスクが大きいことから、高めの手数料が設定されているのです。

ファクタリングに利息制限法が適用された事例

実質的な融資と判断されれば利息制限法が適用される

ファクタリングには利息制限法が適用されないと説明しましたが、過去の判例では、法外な手数料を請求したファクタリング会社に対し、利息制限法が適用されています。

大阪地方裁判所の平成29年3月3日判決の判例では、2社間ファクタリングの利用者である原告が、ファクタリング業者である被告からの過払い金返還請求を認められました。

判決のポイントは、ファクタリング利用者に債権の買戻義務ファクタリング業者に償還請求権がある)があり、ファクタリング業者は実質的な貸付を行っていたと判断されたことです。

ファクタリング業者は貸金業登録が不要で、手数料には利息制限法が適用されません。その代わり、手数料に相当するリスク(=貸し倒れリスク)を負う必要があります。

上記の判例では、被告であるファクタリング業者は手数料相応のリスクを負っておらず、実質的な貸付を行なっていると判断されました。

したがって、ファクタリング業者が利用者に支払わせた金銭のうち、利息制限法の上限金利を超えた分については過払い金約491万円)の返還が命じられたのです。

ファクタリングと利息制限法に関するQ&A

ファクタリングと利息制限法に関する疑問に、Q&A形式でお答えします。

Q.ファクタリングの取引はどのような法律に基づいているのでしょうか?
A.2社間ファクタリングは、売買契約について定めた民法第555条を法的根拠としており、3社間ファクタリングは、債権の譲渡性について定めた民法第466条と447条を法的根拠としています。
Q.ファクタリング会社が直接利用者から売掛金を回収する2社間ファクタリングは、違法ではありませんか?
A.ファクタリング会社が貸し倒れリスクを引き受け、なおかつ売掛金を一括で回収していれば、民法第555条違法とはならず、また利息制限法の適用も受けません。これが売掛金を複数回に分割し、なおかつ分割手数料を付けて回収する場合は、実質的な貸付と見なされるため、貸金業の登録をしていない業者として罰則が課されます。
Q.万が一、ファクタリングを装った高利の貸付を利用してしまったら、どこに相談すれば良いですか?
A.日本ファクタリング業協会が相談対応・苦情対応・紛争解決の窓口となっています。相場を遥かに超える手数料でファクタリングを利用してしまった場合は、専門の弁護士に相談しましょう。いずれも守秘義務があるため、債権譲渡の事実を売掛先に知られることはありません。
Q.貸金業登録をしているファクタリング会社はありますか?
A.銀行やノンバンク系列のファクタリング会社の多くは、貸金業登録をしています。現時点では、ファクタリング業を営むにあたり貸金業登録は不要です。しかし、社会問題化している「給料ファクタリング」をきっかけに、ファクタリング業者にも免許や登録を義務付ける動きがあります。
Q.ファクタリングと売掛債権担保融資(ABL)の違いを教えてください。
A.いずれも回収前の売掛債権を活用して、早期に資金化するという点では共通していますが、ファクタリングは債権売買、ABLは金銭消費貸借です。両者の大きな違いとしては、審査の対象が挙げられます。ファクタリングは売掛先の信用状況が重視されますが、ABLはあくまでも融資ですので、審査の対象が利用会社の信用状況となります。また、ファクタリングは最短即日の資金化も可能ですが、ABLは融資実行まで2~3週間の時間を要するので、資金化のスピードも大きな違いです。

違法なファクタリングは償還請求権の所在に注目

現時点では、ファクタリングに貸金業法は適用されず、言ってしまえば違法業者であっても簡単にファクタリングを開業できてしまいます。

違法なファクタリングについては、手数料だけでなく、償還請求権の所在にも注意しましょう。

たとえば、手数料は相場並であるのに対し、利用者に償還請求権のあるファクタリングを提案する場合は、違法業者の可能性が高くなります。

実際に、資金繰りに困っている経営者を狙って、ファクタリングを装った高利の貸付を行う「偽装ファクタリング」が横行しています。

ファクタリングを利用する際は、手数料のみならず、過去の実績・口コミ情報・利用者に対する注意喚起などもチェックして、安全に取引できるファクタリング会社を選びましょう