ファクタリングの会計処理は、売掛金譲渡に関する経理処理の経験がないと、どのように仕訳するのかわからず戸惑ってしまうことも少なくありません。

中小企業や個人事業主が資金調達でよく利用する融資とファクタリングとは会計処理が異なるため、仕訳や勘定科目が異なります。

借入に依存しない第二、第三の資金調達としてファクタリングを活用するためにも、仕訳・勘定科目や会計処理について理解を深めましょう。

 

売掛金発生~ファクタリングを利用したときの仕訳方法

売掛金が発生してから、ファクタリングで売掛金を現金化するまでの流れに沿って、仕訳方法を解説します。

例として挙げる取引は、「売掛金の金額1,000万円」、2社間ファクタリングを利用して、「ファクタリング手数料10%」で現金化したケースです。

売掛金が発生した時の仕訳

取引先と通常の掛取引で売掛金(売上)と消費税が発生の仕訳方法です。なお、売掛金となった売上(本業の収益)は、課税対象です。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
売掛金 1,000万円 売上 1,000万円

ファクタリングの契約を結んだ時の仕訳

ファクタリング会社と売掛債権譲渡契約を結んだときの仕訳方法です。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
未収金 1,000万円 売掛金 1,000万円

ファクタリングの契約を結んでから、取引先から売掛金が入金されるまでの間は、未収金として扱います。

未収金、あるいは未収入金とは、通常の営業取引以外から金銭債権が発生した場合に、その代金を後から受け取るときに使う勘定科目です。

売掛金の買取代金が入金された時の仕訳

ファクタリング契約後、売掛金の買取代金が利用者の指定口座に振り込まれたときの仕訳方法です。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
普通預金 900万円 未収金 1,000万円
売上債権売却損 100万円

ファクタリングで売掛債権を買い取ってもらった際に発生するファクタリング手数料は、売上債権売却損として扱います。

売上債権売却損、あるいは売掛債権売却損とは、ファクタリングなどにより債権を譲渡した際に生じた損失を処理する勘定科目です。

また、ファクタリングの手数料は課税対象外となっています。

国税庁公式サイトの「金銭債権の買取り等に対する課税関係」というページでは、ファクタリングの手数料の取り扱いについて以下のように回答しています。

【照会要旨】
売掛金、貸付金等の金銭債権に関する次の取引は、どのように取り扱われるのでしょうか。

(1) 省略

(2) 相手方から金銭債権を譲り受け、債務者から回収できるかどうかにかかわらず、金銭債権額から割引料、保証料又は手数料を控除して現金又は手形で支払います。

【回答要旨】
(1)省略

(2)においては、金銭債権の譲り受けの際に債権者から徴収する割引料、保証料又は手数料は、その名目の如何にかかわらず、金銭債権の譲受対価として非課税となります。

参考:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/06/03.htm

さらに、ファクタリング会社に売却した売掛金の買取代金も、手数料と同様に「金銭債権の譲受対価」となるため非課税です。

ファクタリング契約と同時に買取代金が入金された時の仕訳方法

2社間ファクタリングは最短即日で債権の買取代金が振り込まれます。契約と同時に代金が振り込まれた場合、以下のような仕訳方法となります。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
普通預金 900万円 売掛金 1,000万円
売上債権売却損 100万円

ファクタリング契約と買取代金振込にタイムラグがあった場合、後から代金を受け取ることになるため、未収金扱いとしていました。

契約と同時に代金が振り込まれた場合は、未収金扱いする必要がないため、売掛金として計上します。

オフバランス化効果と企業価値について

オフバランス化とは?

ファクタリングで売掛債権を現金化すると、オフバランス化につながります。

オフバランス化とは、バランスシート(貸借対照表)から資産をオフすること、つまり、企業の不動産や債権などの資産を会計から外すことを意味しています。

オフバランス化の最大の目的は、企業価値を高めることです。

資産を売却してバランスシートから外すと「資産の圧縮」となり、総資産に対してどれだけの利益が生み出されたのかを示す「総資産利益率(ROA)」が向上します。

ROAの数値が高い企業は、資産に対し効率良く利益を上げていると見なされ、企業価値が高まります。

銀行等の金融機関では、同じだけの利益を上げていても総資産が少ない(=ROAが高い)企業のほうが優れた経営をしていると判断される傾向にあります。

すなわち、ファクタリングで請求書を現金化することは、経営指標の向上つながるのです。

ファクタリングの仕訳に関するQ&A

ファクタリングの仕訳について、よくある質問にQ&A形式でお答えします。

Q.ファクタリング利用時に消費税は発生しますか?
A.債権譲渡登記で司法書士を利用した場合、その報酬に消費税がかかります。登録免許税や印紙代に消費税はかかりません。
Q.ファクタリング会社から、消費税を含む手数料を請求されたましたが、これは正しいのでしょうか?
A.ファクタリングの手数料は課税対象外(非課税)です。どのような形であれ、利用者の方に消費税を求めることはありません。質問のケースは悪質な業者である可能性が非常に高いので、即刻申込を中止してください。
Q.使用している会計ソフトに「売上債権売却損」の勘定科目がないのですが、どうしたらいいですか?
A.ファクタリングの手数料は営業外費用となるため、「雑損失」「支払い手数料」などを使って計上しても問題ありません。

ファクタリング会社によっては仕訳のサポートが利用できる

ここまで見てきたように、ファクタリングの仕訳は仕組みを理解すれば難しいものではありませんが、初めて利用する方にとっては戸惑うことがあるかもしれません。

ファクタリング会社によっては、会計処理をサポートするサービスを提供しているところもあります。

緊急の資金調達として利用されることの多いファクタリングですが、上手く活用すればオフバランス化によって企業価値を高めることも可能です。

ファクタリングを利用する際は、手数料やスピードと合わせて、自社の資金繰り改善と企業価値の向上をサポートしてくれるような会社選びをおすすめします。