個人名で事業を営んでいる自営業者は資金繰りが厳しい属性の1つです。
自営業者は事業規模が小さいので、親会社の業況や景気変動などの影響を受けやすく、資金的な体力もないので少しのダメージで資金繰りが早期に行き詰まる傾向があります。
特に新型コロナウイルスの影響などをモロに受け「資金繰りが本当に苦しい」「自己破産するしかない」「事業を畳むしかない」などと精神的にかなり追い込まれてしまっている自営業者の方も多いのではないでしょうか?
資金繰りが厳しい時には外部から資金調達することもできますが、自営業者は事業規模や小さく、事業と生活が一体化しているため、外部から資金調達することが難しいと言われている属性の1つです。
しかし、自営業者のために資金調達する方法はしっかりと用意されているので、適切な方法で申し込みを行えば必要資金を調達することができます。
また、普段から資金繰りに備えておくことも非常に重要です。
自営業者の資金調達方法や注意点について詳しく解説していきます。
自営業者の資金調達方法一覧
自営業者が外部から資金調達することができる方法として考えられるのが以下の7つの方法です。
お金を借りる方法や、返済不要なものまで様々です。
それぞれの資金調達方法の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは国が出資する公的な金融機関で、中小事業者への融資を行っています。
もちろん、自営業者の方も日本政策金融公庫から借入をすることが可能です。
通常の運転資金融資だけでなく、創業資金や売上が下がった時のセーフティネット貸付、さらにはコロナ禍によって売上が減少した方への「新型コロナウイルス感染症特別貸付」なども取り扱っています。
日本政策金融公庫のメリット
自営業者が日本政策金融公庫を利用するメリットは以下の通りです。
- 金利が低い
- 無担保・無保証で借りられる
- 信用保証協会とは別枠
公的な金融機関である日本政策金融公庫は金利が低いというのが大きなメリットです。
商品や審査によって異なるものの、概ね2%前後の金利が適用され、1%台で借りられることも珍しくありません。
また、無担保・無保証の融資を得意としているので、担保を提供することができない自営業者の方や、有力な保証人を用意することができない人でも決算内容に応じて融資を受けることができます。
信用保証協会の保証を付けるわけではないので、銀行や信用金庫などの民間金融機関の融資とは完全に別枠で借入をすることが可能です。
したがって銀行などから「融資枠がいっぱいで融資できない」と断られた自営業者の方も、日本政策金融公庫であれば融資を受けることができる可能性があります。
日本政策金融公庫のデメリット
自営業者が日本政策金融公庫から融資を受ける際のデメリットは以下の通りです。
- 審査が厳しい
- 税金の滞納があると融資を受けられない
- 審査が面倒で時間がかかる
低金利で融資を行う日本政策金融公庫の審査は決して甘くはありません。
確定申告書や資金繰り表や事業計画書などから厳格に審査を行い、「必要資金」「返済に問題ない」「事業に成長性がある」と判断されない限りは融資を受けることが不可能です。
成長性のある事業計画を立て、「返済の問題がない」と判断できる資金繰り表を作成しないと融資を受けることは難しいでしょう。
また、国が出資する金融機関である日本政策金融公庫からお金を借りるには、税金の滞納がないことが条件です。
税金をしっかりと納付した上で日本政策金融公庫へ申し込みを行ってください。
日本政策金融公庫の審査では必ず一度は面談が必要です。
銀行のように至る所に支店があるわけではないので、場合によっては数時間かけて日本政策金融公庫まで訪問しなければならない可能性もあります。
書類も郵送によってやりとりをしなければならないものも多く、時間と手間がかかるので、申込から融資までに2週間〜4週間程度の時間がかかってしまうものと理解しておきましょう。
銀行や信用金庫などの民間金融機関
銀行や信用金庫などの民間の金融機関も自営業者に対する融資を行っています。
民間金融機関は自営業や中小企業の資金繰りを融資によって支え、地域経済の活性化を図るという公共的使命を負っているので、地域の金融機関へ相談することで自営業者も融資を受けることができるでしょう。
創業資金・運転資金・設備資金など、自営業者が必要な様々な資金を融資しています。
ここでは、金融機関が保証協会などの保証を付けずに融資を行うプロパー融資に関する説明を行っていきます。
民間金融機関のメリット
自営業者が民間金融機関からプロパー融資を受ける際のメリットは以下の通りです。
- 金利が低い
- 企業の信頼の証になる
- 融資の種類が多い
- 経営のアドバイスを受けられる
民間金融機関も「企業に融資して地域経済の活性化を図る」という公共的使命を負っています。
そのため、2%〜3%程度の低金利で融資を受けることができ、格付けによっては1%前後の借入も可能です。
また、保証協会の保証を付けないプロパー融資で融資を受けることができれば自営業者にとっては信頼の証になります。
保証の付かないプロパー融資は金融機関にとってリスクが高いので、よほど信用できる企業でないと融資を実行しないためです。
さらに銀行などの金融機関は、証書貸付・手形貸付・当座貸越・手形割引・ABLなど、融資の種類が多いのも大きな特徴だと言えるでしょう。
事業形態や資金が必要なタイミングなどに合わせて適切な資金調達を行うことが可能です。
一度銀行や信用金庫と事業融資の取引をすると、毎年決算書を提出し、プロの目線で財務分析や経営分析を受けることができます。
無料でコンサルティングを受けることができるというのも、民間金融機関から融資を受けるメリットです。
民間金融機関のデメリット
自営業者が民間金融機関から融資を受けることにはデメリットもあります。
- 審査が非常に厳しい
- 担保がないと借入が難しい
- 審査に時間がかかる
金融機関のプロパー融資は、万が一、借入金を返済することができなかった場合には銀行が全ての損失を追わなければなりません。
そのため、事業規模の小さい自営業者が最初からプロパー融資を受けることは不可能で、一定以上の取引を行い、財務状況も良好という人だけしか審査に通過することができません。
金融機関が万が一の場合に回収に充てることができるよう、担保がないと審査に通過することはできないでしょう。
また、プロパー融資においては、支店レベルの決済では完結しない金融機関がほとんどです。
本部の審査部などの決済が必要になるケースも多いため、審査に時間がかかってしまいます。
急いでお金が必要な時には金融機関のプロパー融資で対応することは難しいでしょう。
地方自治体の制度融資
地方自治体には制度融資という融資制度があります。
この融資制度は、地方自治体が地元金融機関へ預託金を貯蓄し、地元金融機関が預託金の数倍程度の範囲内で信用保証協会の保証を付けた上で融資を行うというものです。
地域の中小事業者が借りやすいように、金利は低金利で設定され、地方自治体が税金から利息や保証料の補助を行います。
地域の中小法人の他、自営業者も利用することができ、創業資金・運転資金・売上減少時のセーフティネット貸付・設備資金・その他地域ごとの課題を解決するための資金など、様々な融資制度の取り扱いがあります。
制度融資のメリット
制度融資を自営業者が利用するメリットは以下の通りです。
- 金利が低い
- どんな事業者でも同じ条件で融資を受けられる
- 利息や保証料の補助を受けられる
制度融資は地方自治体が地域の事業者の資金繰り円滑化のために用意している制度ですので、金利が非常に低いという点がメリットです。
1%台〜2%台で融資を受けることができ、そもそも金利などの融資条件があらかじめ決まったパッケージ商品となっているので、審査に通過できれば規模の大きな企業も、個人経営の自営業者も同じ条件で融資を受けることができます。
また、税金から利息や保証料の補填を行っている自治体も多く、場合によっては利息負担ゼロで融資を受けることできることもあります。
規模の小さな自営業者が銀行や信用金庫から融資を受ける場合には、まず制度融資を利用するのが一般的です。
制度融資のデメリット
自営業者が制度融資を利用するデメリットとしては以下のようなものをあげることができます。
- 信用保証協会の枠を使う
- 審査が煩雑で時間がかかる
- 税金の滞納があると融資を受けられない
制度融資では信用保証協会の保証が必須となっているので、信用保証協会の枠をすでに使い切っている人は制度融資を借りることはできません。
地域には信用保証協会は1つだけですので、A銀行から融資を断られたからといってB信用金庫へ申し込んだとしても融資を受けることはできないので注意しましょう。
制度融資は信用保証協会が保証をするかどうかの審査を行い、金融機関が融資をするかどうかの審査を行い、地方自治体が制度の条件に合致しているかどうかの審査を行うという3段階の審査となっています。
そして、最低限、銀行と地方自治体の担当者とは自営業の代表者自らが面談をしなければなりません。
そのため審査には時間がかかり、最短でも2週間程度、長い場合には3週間以上の時間がかかってしまうことも覚悟しておきましょう。
また、制度融資は税金を原資とした融資ですので税金の滞納があると融資を受けることができないので注意してください。
ビジネスローン
ビジネスローンとは消費者金融などのノンバンクが融資を行う事業資金です。
主に法人ではなく自営業者に運転資金の融資を行っている商品が多くなっています。
ビジネスローンのメリット
自営業者がビジネスローンを利用して資金調達するメリットは以下の通りです。
- すぐにお金を借りられる
- 赤字や債務超過でも借入可能
- 税金の滞納があっても借入可能
多くのビジネスローンで最短で即日の融資に対応しています。
申込日当日に融資を受けることができるので「すぐにお金が必要」という場合に活用できます。
また、審査が銀行や信用金庫や日本政策金融公庫よりもかなり甘いので、赤字や債務超過などで審査に落ちてしまった自営業者や法人でも、ビジネスローンであれば審査に通過できる可能性があるでしょう。
さらに、ビジネスローンにおいては税金の滞納があっても借りることができるので、税金の滞納が理由で銀行や日本政策金融公庫から融資を断られた自営業者の方でも審査に通過できる可能性があります。
ビジネスローンのデメリット
自営業者がビジネスローンを利用する際には以下のデメリットに十分注意してください。
- 金利が高い
- 返済計画は自己責任で管理する必要がある
- 外部からの評価が下落する
ビジネスローンの金利は15%〜18%程度と、法定上限金利ギリギリの設定になっています。
100万円を15%で1年間借りた場合の利息負担は15万円ですので、利息負担は日本政策金融公庫や銀行から借りた場合、圧倒的に高くなります。
また、ビジネスローンの審査担当は銀行や日本政策金融公庫のように「融資によって企業経営を向上させる」などととは考えていません。
「回収できれば良い」という投資的な目線でしか審査を行っていないので、「借りたお金を返済していくことができるかどうか」ということは自己責任でしっかりと計画を立ててから借入を行ってください。
また、ビジネスローンを利用していることが取引銀行などにバレてしまうと、「資金繰りが非常に厳しい企業」などとネガティブに評価されてしまいます。
利用するのは短期間だけにとどめ、恒常的に利用することはおすすめしません。
補助金や助成金の活用
自営業者は補助金や助成金を活用することでも資金調達できます。
創業の補助金、ITツールを導入する際の補助金など、補助金は様々です。
タイミングや自治体によって様々な補助金があるので、常にアンテナを張って情報収集をしておくことが非常に重要になります。
補助金・助成金のメリット
補助金・助成金を活用するメリットは以下の通りです。
- 返済が必要ない
- 事業計画を策定できる
補助金や助成金を受けることができれば返済の必要がないという点が最大のメリットです。
補助を受けたお金は自己資金になるので、借入によって資金調達すことと比較して資金繰りは圧倒的に楽になります。
また、ほとんどの補助金・助成金の申請で事業計画書の提出が必要になります。
多くの自営業者が事業計画書など策定せずに業務運営を行っていますが、補助金や助成金を獲得するために真剣に事業計画書を策定するようになります。
補助金や助成金の獲得を通じて、客観的かつ合理的な事業計画書を策定できるようになるというのは隠れたメリットです。
補助金・助成金のデメリット
補助金や助成金を活用して資金調達を行うことには実はデメリットもあります。
- 自己資金が必要
- 申請手続が煩雑
- 受給後の報告が煩雑
ほとんどの補助金・助成金は後払いです。
例えば「創業にかかる経費のうち100万円を補助する」というものであったとしても、先に100万円を支出して、後から補助を受けるという形になります。
そのため、必要な資金は補助や助成を受ける前にあらかじめ手元に用意しておかなければなりません。
また、補助金や助成金は申請手続きが面倒で、事業計画書の他にも様々な書類の提出が必要です。
さらに、受給を終えた後も、報告書の提出などが必要になるのが一般的ですので、補助や助成を受ける前も受けた後も手続きが煩雑になってしまうのはデメリットだと言えるでしょう。
クラウドファンディング
自営業者はクラウドファンディングで資金調達を行うことが可能です。
クラウドファンディングとは、「〜をしたい」という事業をインターネット上で公開し、その事業内容に共感してくれた人から資金を集める方法です。
人から共感を得られる事業であればあるほど資金を集めやすく、夢のある事業や社会課題を解決するための事業であれば事業に必要な資金を集めることが可能です。
法人も自営業者も利用することができますし、事業を営んでいない一般個人もクラウドファンディングで資金調達することもできます。
クラウドファンディングのメリット
クラウドファンディングのメリットは以下の通りです。
- 返済不要
- 事業の仲間を集められる
- 決算内容は無関係
クラウドファンディングには「寄付型クラウドファンディング」「購入型クラウドファンディング」「貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)」などの形がありますが、日本において主流になっているのは購入型クラウドファンディングです。
購入型クラウドファンディングでは提供を受けた資金を返済する必要がないので、調達したお金は全て自己資金となります。
借入と比較して、資金繰りが圧倒的に楽になります。
出資する人が出資する基準は様々ですが、基本的には「事業を応援したい」「一緒にその事業を成功させたい」という共感で出資するため、決算内容とは無関係に資金調達ができますし、事業の仲間もクラウドファンディングを利用することによって集めることが可能です。
クラウドファンディングのデメリット
クラウドファンディングのデメリットは以下の通りです。
- 事業の内容に夢や社会課題の解決がないと資金が集まらない
- 「資金繰りが辛い」というだけでは事業の公開すらできない
クラウドファンディングの趣旨は「賛同する事業を資金提供を通じて応援する」というものです。
そのため、事業の内容に夢や社会課題の解決がないと資金を集めることはできません。
自営業者の方が単純に「資金繰りが辛いからクラウドファンディングで助けてほしい」とクラウドファンディングサイトに事業を応募しても、サイト側の審査で引っ掛かり事業の公開すらできない可能性が高いでしょう。
資金繰りが苦しいのであれば「百年続いてきた老舗の味を守りたい」などのストーリー性がある方が資金調達しやすいでしょうが、単純に「経営が苦しい」「資金繰りが大変」というだけでは資金調達は難しくなります。
誰でも資金調達できる方法ではないというのがクラウドファンディングのデメリットです。
ファクタリング
ファクタリングとは自営業者が保有する売掛金などの売掛債権をファクタリング会社へ売却して資金調達する方法です。
本来であれば期日が到来しないと資金化できない売掛債権ですが、ファクタリングを利用することによって期日前に早期資金化することができます。
以前は法人しか利用することができないファクタリング会社が多かったものの、最近では多くのファクタリング会社が自営業者の売掛債権も買い取っています。
自営業者の資金調達方法として今やファクタリングはメジャーな方法になりつつあると言えるでしょう。
ファクタリングのメリット
自営業者がファクタリングを利用して資金調達するメリットは以下の通りです。
- 最短即日で資金調達できる
- 売掛先企業の信用で審査を受けられる
- 売掛先に秘密で資金調達できる
- 売掛債権の回収リスクも売却できる
- 借入ではないので貸借対照表が悪化しない
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがありますが、2社間ファクタリングであれば自営業者とファクタリング会社だけの契約であるため、売掛先に秘密でファクタリングすることができ、申込日当日に資金調達できるファクタリング会社も多数存在します。
また、ファクタリングにおいて売掛債権の期日にファクタリング会社へ返済するのは売掛先企業です。
そのため、審査で重視されるのは売掛先企業の信用で、自営業者の業況はそれほど重要視されません。
赤字や債務超過であってもファクタリングであれば審査に通過できる可能性があります。
また、ファクタリングでは売掛債権売却時に売掛債権の回収リスクも売却します。
そのため、万が一ファクタリング後に売掛債権が回収不能になったとしても、損失を被るのはファクタリング会社で、売掛債権の回収リスクをファクタリングによって排除することも可能です。
ファクタリングは借入ではなく資産の売却ですので、貸借対照表の負債が増えてしまう懸念もありません。
ファクタリングのデメリット
ファクタリングのデメリットは以下の通りです。
- 手数料が高い
- 業者選びは自己責任
ファクタリング最大のデメリットが手数料です。
ファクタリングの手数料は5%〜10%程度と、銀行融資などと比較すると明らかに高くなります。
たった1ヶ月ファクタリングを利用しただけでも5%〜10%程度も手数料がかかるので、ビジネスローンよりもコスト高になります。
例えば100万円の売掛債権を手数料10%でファクタリングした場合の手数料は10万円です。
ビジネスローンで100万円を金利15%で1ヶ月間借りた際の利息は100万円×15%÷365日×30日=12,329円です。
年利で適用されるビジネスローンの方が明らかに資金調達コストは低くなります。
ファクタリングは手数料負担が収益を圧迫するというのが非常に大きなデメリットです。
また、ファクタリング会社は国への登録や許可などが必要ありません。
そのため、ファクタリング業者の中には様々な会社が混在しています。
消費者金融における登録貸金業者のような公的かつ客観的な指標がないので、安全に取引できる業者は自己責任で探さなければなりません。
クチコミサイトなどで優良業者をしっかりと見極めてから申し込みを行うようにしましょう。
自営業者が融資を受ける際の3つの注意点
自営業者が外部から資金調達する際にメインとなる手段が日本政策金融公庫と制度融資を利用する方法です。
これらの方法で資金調達をするのであれば、最低限以下の3点だけは押さえておかなければなりません。
- 開業届を提出していること
- 確定申告をしていること
- 税金を滞納していないこと
自営業者が融資を受ける前に、絶対に外すことのできない3つのポイントについて詳しく解説していきます。
開業届を提出していること
自営業者の方は税務署へ開業届を提出していなければ事業資金融資を受けることはできません。
開業届とは個人事業の開業を税務署に知らせる書類です。
基本的には事業を開始してから1ヶ月以内に提出すること推奨されているので、事業を開始したらすぐに届け出るようにしましょう。
まだ提出していない人は、提出が遅れたとしても特に罰則はないので、融資に申し込む前には届けるようにしてください。
- 住所
- 氏名
- 生年月日
- 屋号
- 業種
などの項目を記載するだけの非常に簡単な書類となっています。
開業届は銀行や日本政策金融公庫に対して「確かに個人事業主として開業していますよ」という客観的な証明書類となるものです。
開業届を提出すると、税務署が受領印を押印して写しを交付してくれるので、写しを金融機関へ提出しましょう。
確定申告をしていること
すでに事業開始から1年以上経過している人は、確定申告を行いましょう。
創業者に対する融資以外の全ての融資は、過去の確定申告書を元に審査を行うので、確定申告をしていない人は事業資金融資を受けることはできません。
「確定申告をこれまでしてこなかった」という人は、過去に遡って確定申告を行うことも可能です。
事業資金の融資に申し込む前に過去3年分の確定申告書(開業後3年未満の人はあるだけ)は提出することができるようにしましょう。
税金を滞納していないこと
日本政策金融公庫や制度融資・信用保証協会の保証付融資は税金を原資としている融資です。
そのため、税金の滞納があれば融資を受けることはできません。
必ず、これらの公的融資を受ける前には税金の滞納を解消するようにしてください。
万が一、「自己資金では支払うことができないほどの税金の滞納がある」という場合には、ファクタリングやビジネスローンなどの税金の滞納があっても資金調達できる方法で資金調達を行い、税金の滞納を解消してから金利の低い公的融資の申し込みをするとよいでしょう。
自営業者の資金繰り悪化防止|普段からできる3つのこと
事業規模が小さく、事業と生活が一体化している個人事業主は、不景気の際などは一気に資金繰りが悪化してしまう属性です。
いざという時に資金繰りを悪化させないためには、普段から以下の3つのことを意識して経営していくことが重要です。
- 個人の支出と事業の支出を混ぜない
- 節税対策のために所得を低くしすぎない
- 資金繰り表を作成する
自営業者の資金繰り円滑化のために普段からできる3つのポイントについて詳しく解説していきます。
個人の支出と事業の支出を混ぜない
自営業者は個人の生活と事業が一体化した存在です。
そのため、多くの自営業者の方が生活費としての支出を事業の経費として混ぜ込んでいるのではないでしょうか?
確かに、この方法で経費を膨らませることができれば節税対策にはなります。
しかし、個人の支出が事業の支出に混ざってしまっている自営業者の方は「公私混同している」「事業の実態が分からない」などと金融機関の審査担当者からネガティブに判断されるので、審査では明らかに不利になります。
いざという時に円滑に資金調達ができるよう、生活費の経費計上はほどほどにして、できる限り事業と生活費の区分を明確にすることを心がけましょう。
節税対策のために所得を低くしすぎない
節税対策として、様々な支出を経費に混ぜ込んで所得を限りなくゼロに近づけている自営業者の方は多いのではないでしょうか?
しかし、所得を低くすると融資は受けにくくなります。
自営業者の償還財源は「当期利益+減価償却費」で計算します。
この際、所得がゼロであれば償還財源はほとんど存在しないことになり、審査側からすると「融資をしても返済をしていくお金がない」と判断せざるを得ません。
所得をゼロにすれば確かに所得税や住民税の大きな節約になり、自営業者はそれができる属性あることは間違いありません。
しかし、これはいざという時に資金調達をすることが難しい、非常にリスクの高い行為であるということをよく認識しておきましょう。
資金繰り表を作成する
自営業者が資金繰りに困らないように準備すべき、最も基本的なことは資金繰り表を作成し、資金繰り管理を厳格に行うということです。
資金繰り表とは、予定されている入金と支出を明記し、資金の残高を詳細に予測するものです。
資金繰り表さえしっかりと作成できていれば『「いつ」「いくら」お金が足りなくなる』ということを明確に知ることができるので、あらかじめ資金の準備をすることが可能になります。
急に「お金が足りない。どうしよう」と慌てることもないので、資金繰り表の作成は最も重要な資金繰り対策です。
最低限3ヶ月先までの資金繰り表を作成し、詳細に資金繰りを管理し、足りないのであれば早めに準備をするようにしてください。
自営業者の資金繰りに関するよくある質問
- 自営業者の資金繰りのために個人向けカードローンを利用するのは間違いでしょうか?
- 個人向けカードローンを事業の用途で利用することはやめた方がよいでしょう。
そもそも個人向けカードローンは事業の用途だけには利用することができないものですので、事業の用途に利用したことが債権者にバレてしまうと一括返済を求められる可能性があります。
また、個人向けカードローンは金利が高いので、先に日本政策金融公庫や銀行などの融資を利用すべきです。
資金繰りが厳しいからと言って個人向けカードローンに手を出すのは何も解決にはなりません。
事業の用途には絶対に使用しないようにしてください。
- 自営業者が個人向けのクレジットカードで経費を支払うのは問題ありませんか?
- 問題ありません。
事業の用途専用に利用することができるビジネスクレジットカードも存在しますが、年会費がかかります。
そのため、自営業者1人であれば年会費無料の個人向けクレジットカードを事業の経費支払用としても全く問題はありません。
ただし、個人の支出に使用するクレジットカードとは分けて、別のクレジットカードを作成した方が経費の管理上は利用しやすいでしょう。
- 事業と生活が一体化している場合、どこまでを事業の経費として計上すべきでしょうか?
- 税務署に指摘された時に説明できることが重要です。
例えば、自宅を事業の事務所として兼務している場合には、家賃や光熱費は「1日の中でどの程度仕事に充てているいるか」を基準に経費計上します。
24時間のうち、8時間仕事に充てているのであれば、家賃や光熱費のうちの3分の1を経費計上するという方法です。
「どこからどこまでが事業の用途に使用しているから、経費計上した」ということを説明できるように、適切に経費の計上を行うようにしてください。
資金繰りに窮した自営業者の方へ
自営業者の方は景気後退などの影響をもろに受けやすい、資金繰りが厳しくなる可能性が高い属性です。
しかし、自営業者も外部から様々な資金調達を行うことができ、具体的には以下の方法で資金を調達することが可能です。
- 日本政策金融公庫
- 銀行や信用金庫などの民間金融機関
- 地方自治体の制度融資
- ビジネスローン
- 補助金や助成金の活用
- クラウドファンディング
- ファクタリング
それぞれの方法のメリット・デメリットを理解して適切な方法で資金調達してください。
急に資金繰りに窮した際に慌てることがないよう、普段から資金繰り管理を徹底するとともに、融資を受けやすい確定申告の内容にしておくことも重要です。
日頃から資金繰りを意識した経営を心がけましょう。