でんさいについて解説します。

でんさいは2012年9月にサービスをスタートした、比較的新しい決済制度です。

そのため「でんさいについて耳にしたことがあるけどよく分からない」という経営者の方も多いのではないでしょうか?

でんさいはまだまだ普及していませんが、今後本格的に普及を始めるとファクタリングが不要になる可能性もあります。

今はファクタリングで売掛債権を早期資金化している企業も、今後はでんさいだけの利用で事足りるようになるかもしれません。

でんさいの概要や手形とファクタリングとの違いについて詳しく解説していきます。

でんさいは企業の決済手段や資金調達手段、さらには自社の支払いについても大きく変化を及ぼす可能性を持っています。

自社の資金繰り円滑化のためにもでんさいについて理解を深めておきまそう。

でんさいネットとは

でんさいとは

でんさいネットとは、従来の売掛債権を電子化し、オンライン上で売掛債権の発行、譲渡、管理、決済を行うシステムです。

全銀電子債権ネットワークに加盟している金融機関で利用することができ、でんさいネットに登録しないとでんさいを利用することはできません。

でんさいネットの概要や登録者数などについて詳しく解説していきます。

「株式会社 全銀電子債権ネットワーク」の通称

でんさいとは「株式会社 全銀電子債権ネットワーク」の通称です。

株式会社 全銀電子債権ネットワークとは電子記録債権を記録・流通させるための新たな決済を行う会社として全国銀行協会が100%出資して設立した会社で、でんさいネットを提供しています。

全国銀行協会が始めた新たな決済システムが「でんさい」であると理解しておきましょう。

電子記録債権を記録・流通させる新たな決済

でんさいネットとは、電子記録債権を記録・流通させる新たな決済方法です。

電子記録債権とは、簡単に言えば売掛金を電子化したもので、でんさいによって決済することによって、でんさいネット上に債権の記録が残り、その債権をオンライン上で支払手段に変えたり、でんさいネット上に保管することができるものです。

オンライン上で資産を管理でき、決済することができる電子マネーをイメージすれば分かりやすいのではないでしょうか?

でんさいネットは企業の売掛債権を電子化したものです。

でんさいネットに登録している企業で電子記録債権での決済や譲渡ができる

でんさいネットはでんさいネットに登録している企業でなければ利用することができません。

でんさいネットへはでんさいネットに加盟している金融機関から申し込みをすることで登録することができます。

でんさいネットに登録している企業同士であれば、電子記録債権で支払うことができます。

同じ電子マネーを持っている人同士が電子マネー上で送金ができることをイメージすれば分かりやすいのではないでしょうか?

例えばLINE PayはLINE Payユーザー同士で簡単に送金が可能です。

でんさいもこれと同じイメージで、登録している事業者同士がオンライン上で電子記録債権での支払いが可能になります。

でんさいの利用者は12%

でんさいに登録している事業者数は456,230件となっています。

日本全体の事業者数は382万件と言われていますので、でんさいを利用している事業者は全体の12%程度です。

参考:でんさいネット|でんさいネット権請求等取扱高

でんさいは日本の決済システムや企業の資金繰りを大きく変革する可能性を秘めています。

しかし、でんさいはでんさいに登録している企業間でないと決済することはできません。

でんさいが本格的に普及して、決済システム全体を変えるためには、まだまだ登録事業者を拡大していく必要がありそうです。

便利なでんさいですが、登録している企業間でしか利用することができないことをまずは理解しておきましょう。

でんさいネットでできること

でんさいネットでできること

でんさいネットでできることは主に以下の3つです。

  • 電子記録債権での支払い
  • 電子記録債権で他社への支払い
  • でんさい割引での借入

これまでは手形で行なっていたことをオンライン上でできるようになったと考えれば分かりやすいと思います。

でんさいネットでできることについて詳しく見ていきましょう。

電子記録債権での支払い

でんさいでは、でんさいに登録している事業者が、同じくでんさいに登録している事業者に対して電子記録債権で支払いをすることができます。

電子記録債権には支払期日を設定するため、手元に現金がなくても取引先への支払いが可能です。

この場合のでんさいは、手形を電子化して振り出すイメージを持っていれば分かりやすいのでしょうか?

でんさいの基本的な機能は、電子化された債権を振り出し、決済することができるというものです。

電子記録債権で他社への支払い

自社が販売先から受け取った電子記録債権は、でんさいネット上で保管されます。

自社はその電子記録債権を、自社の支払先に対して支払手段として利用することができます。

取引先A社から受け取った電子記録債権を、自社の支払先B社へ支払うことができるのです。

要するに手形の裏書譲渡と同じ方法で利用することができます。

でんさいの期日になると、A社口座からB社口座へ決済代金が支払われます。

ただし、でんさいは分割できるというのが、手形との大きな違いです。

例えば取引先から100万円の手形を受け取った場合、100万円を他社への支払いのためにそのまま裏書譲渡することは可能です。

しかし、100万円のうち、50万円だけを裏書譲渡するなど、手形の一部だけを支払手段として譲渡することはできません。

でんさいであれば、保有する電子記録債権の一部だけを支払手段として利用することができます。

100万円のでんさいのうち、50万円だけを取引先へ支払うということも可能になるので、でんさいの方が自社の支払手段として利便性が高くなります。

でんさい割引での借入

でんさいは借入手段としても利用することが可能です。

この借入方法をでんさい割引といいます。

でんさい割引とは企業が保有する電子記録債権を担保に銀行やノンバンクからお金を借りる方法で、でんさいの期日前でも、でんさいの残高を現金に換えることができす。

でんさいの期日になると、でんさいの決済によって銀行やノンバンクなどの債権者へ返済を行います。

こちらも手形割引のイメージと同じです。

手形も期日になるまでの間に手形を担保にして銀行から借り入れができましたが、でんさいも期日までの期間、銀行から借入をすることができます。

でんさいと手形の違い

でんさいと手形の違い

でんさいはこれまで手形でできることがオンライン上でできるようになったというイメージです。

これだけ聞くと「だったらこれまで通り手形で決済すればいいのでは?」と思ってしまう人も多いと思います。

しかし、でんさいと手形には主に以下の3つの違いがあります。

  • でんさいは分割可能
  • でんさいは紛失・盗難のリスクがない
  • でんさいは発行コストがかからない|印紙税がかからない

決定的な違いはでんさいは分割することができるという点です。

手形とでんさいの主な3つの違いについて詳しく解説していきます。

でんさいは分割可能

でんさいは分割することが可能です。

手形は証書になっているので、例えば100万円の手形のうちの一部を裏書きしたり、割り引いたりすることはできません。

しかし、でんさいは保有するでんさいのうちの一部だけを分割して、割引をしたり他社へ譲渡することができます。

でんさいは分割ができるので、支払手段や資金調達手段として手形より利便性が高いと言えます。

でんさいは紛失・盗難のリスクがない

でんさいはでんさいネットのオンライン上で管理が行われます。

そのため、紛失したり盗難されるリスクがありません。

手形は盗難されて、後ろに印鑑を押されてしまったらそれで譲渡が成立してしまうことがありますが、でんさいにはそのようなリスクはありません。

仮にでんさいネットのシステムがハッキングされても、補償を受けることができるので、手形を自社で保管しておくよりも安心です。

でんさいは発行コストがかからない|印紙税がかからない

でんさいの発行にはコストがかかりません。

でんさいは収入印紙が必要ありませんし、手形の用紙代もかからないためです。

手形を発行するためには手形用紙代がかかりますし、収入印紙を貼付する必要があるなど、所定の様式を具備するためには面倒です。

ちなみに100万円の手形には200円、500万円の手形には1,000円の収入印紙が必要になります。

さらに、手形は取引先に対して郵送や手渡しで渡さなければならないので、手形を渡す手続きも面倒です。

でんさいであれば発行手続もかからず、契約成立の場で顧客の面前で支払手続を行うことも可能です。

でんさいは発行にかかる手続きやコストが手形よりも節約できるというメリットがあります。

でんさいの流れ

でんさいの流れは基本的に、支払企業が発生記録請求を行なって、納入企業がでんさい期日に資金の入金を受けるというものです。

しかし、でんさいは、受け取ったでんさいを自社の支払い先へ譲渡することで支払手段に変えることができるという非常に大きな特徴があります。

この取引は以下のような流れで行われます。

  1. 支払企業がでんさいに発生記録請求
  2. 納入企業が取引先に譲渡し、でんさいへ譲渡記録請求
  3. 電子記録債権期日に銀行が支払企業口座から譲渡先へ送金

ここでは、でんさいを受け取り、支払手段として譲渡するまでの流れについて詳しく解説していきます。

支払企業がでんさいに発生記録請求

支払企業A会社は取引が成立し、取引先B会社に対して支払義務が生じると、でんさいネットで取引先に対して支払いを行います。

これを発生記録請求と言います。

発生記録請求を行うと、納入企業B会社にでんさいネットから通知が行われるので、納入企業B会社も「でんさいネットで支払われた」ということが分かります。

納入企業が取引先に譲渡し、でんさいへ譲渡記録請求

納入企業B会社は保有するでんさいで自社の支払先C会社に対して支払うことができます。

この場合は納入企業Bがでんさいネットに譲渡記録請求という請求を行います。

譲渡記録請求を行うと、納入企業B会社が保有しているでんさいは販売先C会社へ譲渡され、これによって支払いが完了します。

販売先C会社は、B会社の持っているでんさいの債権者となり、支払期日にA会社から支払いを受ける権利を得ることになります。

これが、でんさいの手形における裏書譲渡と同じ仕組です。

前述したように、でんさいの譲渡は一部だけ行うこともできるので、全額の裏書譲渡しかできない手形よりもメリットがあります。

でんさい期日に銀行が支払企業口座から譲渡先へ送金

でんさいの期日になると、支払企業A会社の口座からでんさいの金額が引き落とされ、譲渡先C会社の口座へ振り込まれます。

これででんさいの決済は完了します。

手形であれば、手形の所有者が銀行へ手形の取立てを出さなければなりません。

しかし、でんさいの場合には自動的に決済が行われるので、手形のように現金化するために銀行へ赴く手間がかからないというメリットもあります。

でんさいは、支払い、譲渡、取立てなどの一連の手続きを全てオンライン上で完結できるので、一度登録してしまえば銀行に行く必要はありません。

でんさいとファクタリングの違い

でんさいとファクタリングの違い

でんさいは期日を待たずに借入によって資金化することができたり、期日前に支払手段として譲渡することができるなどの特徴があります。

期日前に資金繰りに寄与させることができるという点で、ファクタリングと共通しているようにも思えますが、でんさいとファクタリングでは以下の5つの点で大きな違いがあります。

  • でんさいは期日前に現金化することはできない
  • でんさいは納入企業と支払企業がでんさいネットに加入していないと利用できない
  • ファクタリングには手数料がかかる
  • でんさいはデフォルトリスクを自社が背負う
  • でんさい割引は銀行にバレる

でんさいとファクタリングの5つの違いについて詳しく解説していきます。

でんさいは期日前に現金化することはできない

でんさいは、でんさい割引という手段で借入をしない限りは現金化することはできません。

借入には当然ながら審査があるので、企業の業況が悪い場合には審査に落ちてしまうこともあります。

一方、ファクタリングは期日前にファクターに売却することによって現金化可能です。

借入ではないので、貸借対照表の借入金が増えることはありませんし、自社の与信状況が悪くても売掛先の業況に問題がなければ資金化することも可能です。

でんさいは納入企業と支払企業がでんさいネットに加入していないと利用できない

でんさいは納入企業と支払企業双方がでんさいネットに加入していないと利用することができません。

自社が「でんさいで払いたい」と申し出たとしても、取引先がでんさいネットに登録していない場合や、でんさいでの支払いを拒否した場合にはでんさいでの決済は利用することが不可能です。

でんさいは非常に便利な決済方法ですが、でんさいネットに加入している企業双方が「でんさいで決済しましょう」ということに合意していない場合には利用できません。

どんな売掛先に対しても秘密で利用することができるファクタリングとは大きく異なります。

ファクタリングには手数料がかかる

でんさいの利用には銀行ごとに異なる手数料がかかります。

しかし、その手数料は数百円程度ですので、振込手数料程度のコストしかかかりません。

一方、ファクタリングの場合には、2社間ファクタリングであれば10%〜20%程度、3社間ファクタリングであれば3%〜10%程度という非常に高額な手数料が発生します。

自社に信用がなくても最短即日で資金調達できるファクタリングですが、コスト負担はでんさいよりも非常に大きくなるので、利用するのは必要最低限の金額とするようにしましょう。

でんさいはデフォルトリスクを自社が背負う

でんさいとファクタリングの最も大きな違いは、売掛債権のデフォルトリスクです。

ファクタリングはノンリコースで行われるので、もしも売掛債権がデフォルトした場合にはファクターが損失を被り自社には責任は及びません。

一方、でんさいの場合にはでんさい割引や譲渡の後に売掛先が倒産などによってデフォルトした場合には、その損失補填義務は自社に生じてしまいます。

売掛債権がデフォルトした場合のリスクまで売却することができるのがファクタリングで、でんさいは売掛債権がデフォルトした場合のリスクは自社が背負わなければなりません。

これがでんさいとファクタリングの最大の違いです。

でんさい割引は銀行にバレる

でんさい割引を民間のノンバンクなどに行なった場合には、銀行にでんさい割引がバレてしまいます。

でんさいの譲渡は銀行を経由して行うので、でんさいの割引を行いでんさいをノンバンクなどに譲渡した場合には、その旨が確実に銀行へ知られてしまうと考えた方がよいでしょう。

銀行はノンバンクからの借入がある企業をネガティブに評価する傾向があるので、でんさい割引を利用したことによって銀行からの自社の評価が下落してしまう可能性があるのです。

一方、ファクタリングは銀行にバレる可能性はまずありません。

2社間ファクタリングであればファクターと自社だけの契約になるので、銀行はおろか取引先にすらファクタリングを知られる心配はありません。

一方、3社間ファクタリングは銀行とファクターと売掛先だけの契約ですので銀行は一切契約に感知しません。

「銀行に外部のノンバンクから資金調達することを知られたくない」という事業者の方は、でんさい割引を利用するよりもファクタリングを利用した方がよいでしょう。

でんさいについてよくある質問

でんさいは誰でも加入することができますか?
でんさいはでんさいネットに登録した事業者であれば誰でも加入することができます。
ただし、加入には銀行の一定の審査があるので、銀行取引停止処分中の人などはでんさいネットへの登録を断られてしまうかもしれません。
なお、事業者ではない一般個人の人はでんさいに登録することはできません。
資金不足によってでんさいの決済ができなかった場合はどうなりますか?
半年の間に2回でんさいが決済不能になった場合には、銀行取引停止処分となります。
これは手形の不渡りを出した場合と同じです。
銀行取引停止処分になると、銀行を経由した決済などは一切不可能になってしまうので、実質的には企業活動は継続不能になってしまいます。
分割払いの電子記録債権を発生させることはできますか?
分割払いの電子記録債権を発生させることはできません。
でんさいは、一括払いのみとなっています。
これは手形と同じです。
分割払いを希望する場合には、支払先に対して分割払いを交渉して、売掛金にて分割払いを認めてもらうしか方法がないでしょう。
休日にでんさいでの支払いは可能ですか?
休日にでんさいで支払いをすることは可能です。
銀行によって営業時間は異なりますが、例えばみずほ銀行のでんさい利用日時は以下のようになっています。
平日 :午前8時00分から午後11時45 分
土曜日:午前8時00分から午後10時00 分
日曜日:午前9時00分から午後5時00 分
(毎月第2土曜日、祝日、振替休日、年末年始)
でんさいであれば、銀行が営業していない土日でも支払うことが可能ですので、土日に営業しているサービス業でもでんさいでの支払いを行うことができます。
銀行ででんさい割引は扱っているのでしょうか?
銀行でもでんさい割引を扱っています。
でんさいネットを提供している多くの銀行で取り扱いを行なっており、金利は格付けによって決定することが一般的ですが、ほとんどの場合でノンバンクよりは金利が低くなっています。
ノンバンクに申し込みをする前に銀行でのでんさい割引へ申し込みをした方がよいでしょう。
でんさい割引にかかる時間を教えてください
でんさい割引には審査があります。
審査にかかる時間はそれほど長くはかかりません。
例えば三井住友銀行では、前日の15時までにでんさい割引に申し込みを行えば翌日には現金を受け取ることが可能です。
最初に申し込む場合には審査が必要ですが、一度審査に通過してしまえば短い時間で資金調達することが可能です。
銀行にでんさい割引枠を作成しておけば、必要な時に最短1営業日で資金調達することが可能です。
でんさいをファクタリングすることはできますか?
でんさいをファクターへ譲渡するということはでんさい割引と同じです。
この場合、売掛債権の回収リスクは残ってしまいますので、売掛債権がデフォルトした場合のリスクは自社で背負わなければなりません。
でんさい割引を扱っている会社はファクターではなく銀行やノンバンクで、ファクタリングとでんさい割引は異なるものです。
ファクタリングとでんさいは使い分けるようにしましょう。

まとめ

でんさいは、手形をオンライン上で管理して決済するというイメージです。

でんさい割引という手段で現金を調達することはできますが、審査に通過できない限りは資金調達することはできません。

また、でんさいはでんさいネットを利用している企業間でないとやりとりを行うことができないので、全ての取引先に対してでんさいでの決済ができるわけではありません。

でんさいネットを利用している企業間であれば決済や譲渡を行うことができますが、でんさいネットを利用していなければこの利便性を享受することはできないので、ファクタリングと併用して利用するとよいでしょう。

ファクタリングとでんさいネットを併用することによって、でんさいネットが利用できる取引先に対しては低コストかつ便利に決済することができ、ファクタリングを利用することででんさいを利用していない企業に対する売掛債権も最短即日で資金化することができます。

でんさいにはファクタリングよりもメリットが大きな部分もあるので、まだ登録していないという人は銀行ででんさいネットに登録した方がよいでしょう。