新たなビジネスモデルを開発する企業で、市場を開拓する段階にあるもの企業の新しい資金調達手段としてファクタリングが大きく注目されています。
ファクタリングがこれほどまでに注目されるようになったのはなぜでしょうか?
ファクタリングは世界ではスタンダードな資金調達手段ですが、これまで日本ではあまり普及しませんでした。
しかし近年になって技術面、法律面、環境面でファクタリングが流通するだけの土壌が整ってきたため、ファクタリングが急速に普及しています。
ファクタリングが社会にこれだけ広がり、多くの経営者から必要とされている理由や、借入金との違いについて詳しく解説していきます。
ファクタリングが注目される5つの理由
手形が多くの企業にとっての決済手段だった数年前は日本では今ほどファクタリングは普及していませんでした。
しかし、ここ数年で急速にファクタリングは普及し、今や企業にとっても主要な資金調達手段の1つになったと言っても過言ではありません。
ファクタリングが注目されるようになった背景には以下の5つの理由をあげることができます。
- IT技術の発展
- 信用リスクに応じた資金供給の必要性
- 間接金融から直接金融への流れ
- 手形の流通量低下
- 債権譲渡に関する法整備
なぜファクタリングが注目されるのか、その理由について詳しく解説します。
IT技術の発展
ファクタリングが近年になって発展してきた背景には、IT技術の発展があります。
以前は、契約は面前自書というのが基本で、契約のために数時間かけてファクタリング会社の事務所まで訪問しなければなりませんでした。
また審査も審査担当者が人間の目線で行うため数日かかり、申し込みから資金化まで2週間以上の時間がかかってしまうことは当たり前でした。
しかし、近年のIT化によって、審査はAIやコンピューターが担うようになり数時間程度で終了。契約手続や書類の提出もオンライン上で完結(電子契約)することができるようになり、ファクタリングは「最短即日資金化」が当たり前にようになっています。
IT技術の発展により、審査時間、契約手続などが圧倒的に簡素化することができるようになりました。
これによって最短即日資金化が実現可能になり、急な資金繰りニーズに対応することができるようになったことがファクタリングが普及した大きな理由だと言われています。
信用リスクに応じた資金供給の必要性
近年になってベンチャー企業やスタートアップ企業の登場によって創業間もない企業に対しても資金供給をしなければならない社会的なニーズが高まっています。
しかし、銀行融資だけに頼っていては、経営実績がないベンチャー企業やスタートアップなどは資金調達が難しくなってしまいます。
ファクタリングであれば売掛債権の信用で審査を受けることができるので、信用力を評価できないベンチャーやスタートアップなども比較的簡単に資金調達可能です。
時代の変化とともに銀行融資では対応することができない事業者に対しても資金供給する必要性が大きくなったため、それとともにファクタリングが普及したものと考えられています。
用語解説
ベンチャー企業とは、革新的なアイデアや技術をもとにして、新しいサービスやビジネスを展開する企業を指す。
スタートアップ企業とは、ベンチャー企業の中でも特に新たなビジネスモデルを開発し、短期間で静養している企業を指す。
間接金融から直接金融への流れ
ファクタリングが普及した理由の1つとして、金融政策の転換を挙げることができます。
従来、資金供給のメインはメガバンクを中心とした間接金融でしたが、近年、市場を通じた直接金融への金融政策の転換が行われています。
これによって銀行借入に依存しない資金調達の方法としてファクタリングが注目を集めることになり、売掛債権の譲渡を伴う流動化や証券化が一般的になりました。
ファクタリングのような資金調達手段を政府が後押ししているのも、ファクタリングが普及している大きな理由の1つです。
用語説明
間接金融とは、銀行融資など「お金を借りる人」と「お金を貸す人」の間に、第三者が存在する取引のこと。
直接金融とは、株式や債券の発行など「お金を借りたい人」と「お金を貸したい人」の間に、第三者が存在しない取引のこと。
手形の流通量低下
ファクタリングが普及する以前に、売掛債権を資金化する方法として最もメジャーな方法が手形割引でした。
しかし、バブル崩壊以降、手形の流通量は劇的に減少しています。
手形の流通量のピークは1990年で4,797兆2,906億円を記録しています。
しかし2018年の手形流通量はピーク時の5%である261兆2,755億円。
手形の減少とともに売掛金の割合が増えたため、手形割引に代わる資金調達手段として必然的にファクタリングが普及することになりました。
債権譲渡に関する法整備
ファクタリングが普及している理由として、ファクタリングを取り巻く法整備が進んでいることも挙げることができるでしょう。
- 債権譲渡登記制度の整備
- 債権法改正により将来債権譲渡が明文で認められたこと
- 譲渡制限の効力が整理されたこと
- ファクタリングの適法性に関する判例が蓄積されたこと
- 譲渡制限がついた売掛債権の譲渡も認められたこと
参考:http://www.moj.go.jp/MINJI/public_minji08_pub_minji08-01.html
近年、ファクタリングに関する法整備や判例などが蓄積され、ルールが明確になってきたこともファクタリングが普及している大きな原因として挙げることができるでしょう。
融資とファクタリングの違い
企業にとっての主要な資金調達手段は、銀行からの事業資金の借入です。
ファクタリングと事業資金融資では主に以下の4つの点で異なります。
- 審査対象
- バランスシート上の表示
- 資金化までの速度
- 償還請求権の有無
ファクタリングが普及した背景には銀行の事業資金融資との違いについても知る必要があります。
以下、ファクタリングと事業資金融資の4つの違いについて理解していきましょう。
審査対象の違い
ファクタリングと融資では審査対象が異なります。
- ファクタリング:売掛先企業
- 融資:自社
ファクタリングで審査されるのは売掛先企業です。
ファクタリングは売掛債権の売却で、ファクタリング会社へ代金を支払うのは自社ではなく売掛先企業です。
そのため、審査でも売掛先企業の与信状況が最も重視されます。
一方、融資では返済をしていくのは自社ですので、自社の与信状況が最重要です。
ファクタリングと融資では審査対象が売掛先企業か自社かという大きな違いがあります。
バランスシート上の表示の違い
ファクタリングと融資ではバランスシート上の表示も全く異なります。
ファクタリングは売掛債権を売却しているだけですので、資産と資産の交換です。
そのため、ファクタリングをしてもバランスシートには何も反映されません。
一方、融資は借入金という負債を増やして現金という資産を増やすことになるので、融資によって資金調達することによって資産も負債も増え、バランスシートは大きくなってしまいます。
ファクタリングはバランスシートを小さくする「オフバランス化」することが可能です。
資金化までの速度の違い
ファクタリングと融資では資金化までの速度が大きく異なります。
- ファクタリング:最短即日資金化
- 銀行融資:2週間程度
ファクタリングは早いところでは最短即日資金化に対応しています。
早いファクタリング会社では審査をコンピューターが行い、契約は非対面で可能になるので、早ければ申込日当日に資金化可能です。
一方、銀行や日本政策金融公庫の融資は、審査を人間の目で行い、契約は対面で行う必要があるので申込から融資までに2週間程度の時間が必要になってしまいます。
融資までの時間もファクタリングと融資では大きく異なります。
償還請求権の有無の違い
ファクタリングと融資では償還請求権の有無の違いもあります。
- ファクタリング:償還請求権なし
- 手形割引やABLなどの銀行融資:償還請求権あり
償還請求権とは、ファクタリングしたり割引したり担保にした売掛債権がデフォルト(債務不履行)した場合に、債権者自社に代金を請求する権利です。
例えば償還請求権ありの手形割引で、割引いた手形が不渡りになった場合には自社が手形代金を銀行へ支払わなければなりません。
一方、償還請求権なしのファクタリングでは、ファクタリング後に売却した売掛債権がデフォルトしたとしても自社には一切責任が生じません。
売掛債権がデフォルトした場合のリスクは全てファクタリング会社で背負います。
売掛債権がデフォルトした場合の自社の責任について、ファクタリングは自社に責任は及びませんが、融資は自社に責任が及んでしまいます。
経営者がファクタリングを選ぶ理由
会社経営者にとって、ファクタリングには数多くのメリットがあります。
- 銀行融資を断られても資金調達可能
- 最短即日で資金調達可能
- 外部に秘密で資金調達可能
- 売掛債権の入金サイトの圧縮
銀行の事業資金融資では対応できない資金調達ニーズにファクタリングでは対応できる可能性があります。
経営者にとってのファクタリングのメリットについて解説します。
銀行融資を断られても資金調達可能
ファクタリングは銀行融資の審査に落ちてしまったとしても資金調達することができる可能性があります。
ファクタリングの審査対象は自社ではなく売掛先企業です。
そのため自社に信用がなく銀行融資の審査に落ちてしまったとしても、ファクタリングであれば売掛先企業に信用さえあれば審査に通過することができる可能性があります。
「銀行から融資を断られてしまって資金繰りをどうしよう」と追い込まれている企業でも、ファクタリングなら必要資金を調達することができるかもしれません。
最短即日で資金調達可能
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがありますが、2社間ファクタリングであれば最短即日で資金調達することができます。
2社間ファクタリングは自社とファクタリング会社だけの契約であるため、審査に通過すればすぐに資金調達することができます。
「銀行融資が間に合わない」
「急に取引先からの入金がなくなってしまった」
このように急に資金が必要になった時には銀行融資では間に合いません。
銀行融資は申込から入金まで2週間程度の時間がかかってしまうためです。
このような時には最短即日で資金化することができる2社間ファクタリングに申し込むことで、必要なタイミングに資金を間に合わせることができる可能性があります。
外部に秘密で資金調達可能
ファクタリングは外部に秘密で資金調達することができます。
ファクタリングを利用しても貸借対照表には何も証拠は残りません。
ビジネスローンなどのノンバンクからの借入を利用すると、債権者名が貸借対照表に記載されるので、決算書を見た銀行担当者などにビジネスローンを利用したことを知られてしまいます。
ビジネスローンを利用している企業は銀行から低く評価される傾向があるので、これによって格付けが下がってしまうかもしれません。
ファクタリングであればビジネスローンのように決算書の証拠が残らないのでこのような心配は無用です。
また、2社間ファクタリングであればファクタリングを利用したことを売掛先に知られる心配もありません。
銀行などの外部の人にも取引先にも秘密で資金調達することができるのがファクタリングの大きなメリットです。
売掛債権の入金サイトの圧縮
ファクタリングは売掛債権の入金サイトを圧縮することができます。
ファクタリングは売掛債権を早期に資金化するものであるためです。
例えば、1ヶ月先が期日である売掛債権をファクタリングによって資金化すれば入金サイトは1ヶ月早まることになり資金繰りはその分楽になります。
売掛債権は入金にならなければ自社の支払いに充てることができません。
そのため入金サイトが長ければ長いほど資金繰りは厳しくなります。
ファクタリングを利用することによって入金サイトの長い売掛債権のサイトを短縮し、自社の資金繰りを円滑にすることができるというメリットがあります。
ファクタリングのデメリットは手数料
このように経営者にっては良いことづくめのように見えるファクタリングですが、デメリットもあるので注意が必要です。
ファクタリングは手数料が非常に高くなっています。
- 2社間ファクタリング:2%〜20%
- 3社間ファクタリング:2%〜10%
1回のファクタリングで売掛債権の金額からこれだけの手数料が控除されてしまいます。
1ヶ月先が期日である売掛債権を手数料10%でファクタリングした場合には、年利換算では120%もの手数料です。
ファクタリングは借入金と比較して圧倒的に高いコストになってしまいます。
ファクタリングは恒常的に利用するのではなく、緊急で資金が必要な際に計画的に利用することが望ましいでしょう。
ファクタリング検討されている方へ
世界ではスタンダートな資金調達手段であるファクタリングは日本ではこれまでそこまで普及してきませんでした。
しかし、近年はファクタリングが普及するための以下の土壌が整ってきたためファクタリングが急速に普及しています。
- IT技術の発展
- 信用リスクに応じた資金供給の必要性
- 間接金融から直接金融への流れ
- 手形の流通量低下
- 債権譲渡に関する法整備
経営者にとっても、審査が甘く最短即日で資金化することができるファクタリングは「銀行融資よりも活用できる」と考えられる場面が多々あるでしょう。
しかし、ファクタリングは手数料という課題があるため資金調達手段のひとつとして上手に付き合うようにしましょう。