「ファクタリングは売掛先の信用があれば、誰でも審査に通るくらい甘いんじゃない?」と思っている人も多いのではないでしょうか?
確かに、売掛先の信用は大切なポイントですが、審査で重視されるのはここだけではありません。
ファクタリングは緊急時に利用されることが一般的なので、審査に落ちたら支払いまでに資金繰りが間に合わず、資金ショートして倒産してしまう可能性は高くなるでしょう。
そのため、ファクタリング審査において信用以外に重要とされるポイントを把握しておくことが大切です。
この記事ではファクタリング審査のポイントと審査落ちを防ぐ方法について解説します。
審査ポイントを理解して、より確実にファクタリングで必要な資金を調達できるようにしましょう。
債権や契約によって異なるファクタリングの審査基準とは?
ファクタリング審査の基準は、債権やファクタリングの契約によって異なります。なぜなら、債権の種類やファクタリングの形によって、ファクターが背負うリスクの大きさが変わるからです。
例えば、大企業や小規模企業では倒産リスクが大きく違うので、ファクタリング審査の基準も異なります。
ファクタリングの形や債権によって審査難易度はどれくらい異なるのか、詳しく見ていきましょう。
2社間と3社間で審査基準は異なる
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという2つの形があり、3社間ファクタリングの方が審査は緩い傾向にあります。
両者の違いは以下の通りです。
手数料 | ファクターへの支払い | 売掛先の同意 | |
---|---|---|---|
2社間ファクタリング | 10〜20% | 納入企業(自社) | 不要 |
3社間ファクタリング | 5〜10% | 売掛先企業 | 必要 |
2社間ファクタリングは売掛先への同意が不要で、売掛先から自社へ支払われた売掛債権代金を自社からファクターへ送金します。
この際、ファクターは「納入企業(自社)が代金を持ち逃げしたり、債権を二重譲渡するかもしれない」というリスクに晒されます。
一方、3社間ファクタリングは、売掛債権期日になると売掛先がファクターへ直接支払いをするものです。そのため、3社間ファクタリングでは自社に対するリスクがありません。
2社間ファクタリングの方が、自社に対するリスクがあるので審査は厳しくなります。反対に、3社間ファクタリングは自社に対するリスクがほとんどないため審査は緩くなります。
ただし、3社間ファクタリングでは売掛先の同意が必要なので、売掛先にファクタリングがバレてしまうという点がデメリットです。
売掛債権によって審査難易度が異なる
売掛債権によっても、審査難易度は大きく異なります。
売掛先が医療・介護報酬のような公的団体で確実に支払われる債権については、ほぼ確実に審査に通過します。
しかし、売掛先が中小企業などの場合は審査難易度が高くなり、審査落ちすることも。
つまり、どんな種類の債権を売却するのかによって、ファクタリング審査での見られ方は大きく異なるというわけです。
2社間ファクタリングでは売掛先・自社の双方に審査が行われる
2社間ファクタリングにおいては、売掛先・自社の両方に対して審査が行われます。
ファクターにとっては、売掛先にも自社にもそれぞれ以下のようなリスクを抱えているからです。
- 売掛先:債権のデフォルトリスク
- 自社:資金流用・二重譲渡リスク
詳しくは後述しますが、ファクタリング審査においては売掛先と自社に対して、多角的な視点から厳しく審査が行われることになります。
個人信用情報はチェックされない
ファクタリング審査で、個人事業主本人や法人代表者の個人信用情報はチェックされません。
ビジネスローンなどでは必ずチェックされる個人信用情報の確認も、借入ではないことを理由に、ファクタリングでは審査されないのです。
2社間ファクタリングにおいては自社の審査も行われますが、あくまでも審査されるのは自社の業況や資金繰りであり、個人信用情報までは確認されません。
そのため、納入企業代表者や個人事業主が信用情報ブラックでも資金調達できる可能性は大いにあります。
ファクタリング審査|売掛先に対する5つのポイント
ファクタリングでは、自社よりも売掛先に対する審査が重視されます。
ファクターにとって売掛先は債務者となる存在であり、審査では「債務者がお金を払えるか、払えないか」が最も重要だからです。
売掛先に対する主な審査ポイントとして、以下5つの点が挙げられます。
- 売掛先の与信状況
- 売掛債権の金額
- 売掛債権の期間
- 差し押さえのリスク
- 譲渡できる債権か否か
それぞれのポイントについて、さらに深掘りして解説していきます。
売掛先の業況に問題ないか
売掛先企業の与信は審査で最も重要です。
やはり、ファクタリングにおいて債務者となるのは売掛先企業ですので、審査では債務者が「代金を支払うことができるかどうか」が最も重視されます。
例えば、債務超過になっている企業や連続で赤字が続いている企業は、審査通過が難しくなるでしょう。
ファクターはファクタリングの申し込みがあると、売掛先企業の情報を帝国データバンクや東京商工リサーチなどの情報から「支払能力がある企業か」を細かく入念に審査します。
審査基準はさまざまですが、ここで支払能力に問題があると判断された売掛債権については、審査に通過することが非常に困難です。
売掛債権の金額はどの程度か
売掛債権の規模も審査では重要です。
業況がそれほどよくない企業でも、売掛債権の金額が小さければ「支払いに問題ないだろう」と判断され、ファクタリング審査に通過できる場合があります。
一方、業況がそれほど良好でなく、規模も小さいにも関わらず売掛債権の規模が大きければ「支払いに問題がある」と判断されて審査落ちする可能性があります。
確実に審査に通過したいのであれば、金額が小さな必要最小限の売掛債権をファクタリングした方がよいでしょう。ただし、一般的には金額が少額であれば手数料は高くなります。
売掛債権の期間はどのくらいか
売掛債権の期間が長ければ審査は厳しくなり、短い方が審査は緩くなります。これは、期間の長い売掛債権の方がファクターにとってはリスクが大きいからです。
私たち個人で例えると「1日だけお金を貸して」と言われた場合「まぁ1日だったら返ってくるか」と思う方がほとんどでしょう。
しかし「1年後に返済するから貸して」と言われたら「本当に大丈夫?きちんと借りた分返してくれる?」と不安になります。
このように、先のことは誰にもわからないので、ファクターにとっても期間が長い売掛債権はリスクが高くなり、審査は厳しくなるのです。
ちなみに、期間の長い売掛債権はリスクが高くなることからリスクプレミアムが上昇し、手数料が高くなってしまいます。
差し押さえのリスクはないか
ファクタリング審査では、売掛債権が差し押さえられないかどうかも重視されます。
というのも、売掛先企業が税金を滞納しているような場合には、売掛債権も差し押さえられてしまう可能性があるためです。
ファクターは、売掛先企業の資金繰りや不動産の抵当権の設定状況から「税金の滞納がないかどうか」を確認しており、滞納している可能性が高い場合には審査への通過が難しくなります。
ただし、仮差し押さえが行われていないような軽微な滞納であれば、問題なく審査に通過できます。
譲渡できる債権か否か
ファクタリング審査では、ファクタリングを希望する売掛債権がそもそも「譲渡可能な債権かどうか」ということも重要です。
以下のような債権は、法律的な事情によって譲渡できません。
- 個人に対する債権
- 売掛先に対する売掛金の額よりも、売掛先に対する買掛金の額の方が大きい場合
なお、譲渡制限特約付債権(譲渡禁止特約付債権)に関しては、2020年4月1日に施行された民法改正によって、ファクタリングが可能となりました。
いずれにせよ、この点についてはファクタリングに申し込む前に自社で確認できることですので、あらかじめ「譲渡可能な債権かどうか」を確認しておくようにしましょう。
ファクタリング審査|納入企業(自社)に対する4つのポイント
売掛先の審査が重視されるファクタリングですが、2社間ファクタリングにおいては自社もある程度の信用がないと審査に通過できません。
自社が二重譲渡したり、虚偽申込をしたりする可能性があるためです。
2社間ファクタリングの審査では、自社に対して主に以下4つの点が審査されます。
- 二重譲渡の危険性
- 自社の資金繰り
- 虚偽申込
- 人間性や人柄
ほとんどの審査ポイントが事前に配慮することでクリアできるものばかりです。2社間ファクタリングにおける自社への審査ポイントについて、詳しく見ていきましょう。
二重譲渡の危険性はないか
2社間ファクタリングにおける自社への審査では「納入企業(自社)が二重譲渡する危険がないか」ということが最も重視されます。
なぜなら、売掛債権には証書や手形のような形がなく、納入企業が悪意をもって売却済みの債権を他のファクターに対して二重に譲渡してしまう危険性を孕んでいるからです。
- 資金繰りがあまりにも悪い
- 債権譲渡登記を拒否した
- 過去にファクターとトラブルを起こした
上記に当てはまる企業は「二重譲渡の危険性がある」と判断され、審査落ちする可能性があるでしょう。
自社の資金繰りに問題はないか
2社間ファクタリングでは、自社の資金繰りも審査において重視されるポイントです。
資金が一度自社を経由する2社間ファクタリングでは、売掛先企業から代金が支払われたときに、資金を自社が使い込んだり持ち逃げしたりしてしまうリスクがあります。
そのため、あまりにも資金繰りが悪い企業は審査落ちする可能性もあるのです。
どうやっても「ファクタリングによって資金繰りが円滑になる」と判断できない企業は、審査通過が難しくなる傾向にあります。
虚偽申込をしていないか
虚偽申込が発覚した場合、審査通過は非常に厳しくなると考えておいた方がよいでしょう。
基本的にファクタリングは、ファクターと納入企業の信頼関係で成り立っているので、虚偽申込があると「代金を持ち逃げするかもしれない」「二重譲渡されるかもしれない」などと疑われてしまうのです。
もっとも、意図的な虚偽は間違いなくバレてしまいます。
また、意図的に虚偽を行なったわけでなく、申込内容を間違えただけでも「虚偽」と判断されて審査落ちする可能性もあるので、申込時にはよく内容を確認したうえで手続きをするようにしてください。
人間性や人柄に問題はないか
納入企業とファクターの関係は信頼関係で成り立っているので、ファクターから「この人なら大丈夫だ」と人間性や人柄を信頼されることも重要です。
ファクターからの質問には丁寧かつ親切に答えて、できる限りファクターとの信頼関係を構築するように努めましょう。
逆に、ファクターの質問にしっかりと答えなかったり、要求された書類の提出が遅れたりするような人は、審査落ちする可能性があります。
ファクタリング審査落ちを防ぐ5つの方法
ファクタリング審査の通過率を上げるためには、以下5つの方法があります。
- できるだけ大企業の債権を売却する
- 期間の短い債権をファクタリングする
- 申込内容に間違いがないかを確認する
- 妥当性のある金額でファクタリングを申し込む
- 有効的な資料で債権の存在を証明する
緊急でお金が必要になったとき「ファクタリングの審査に落ちた…」と困らないよう、審査落ちを防ぐ方法をしっかりと理解しておきましょう。
できるだけ大企業の債権を売却する
審査通過のためには、できる限りファクターにとってリスクの低い債権を売却する方がよいでしょう。
手元に大企業や官公庁への売掛債権がある場合には、先にそちらを売却する方が審査通過の可能性は高くなります。
期間の短い債権をファクタリングする
期間の短い売掛債権の方が審査に通過しやすくなります。
前述したように、期間が長ければファクターのリスクは高くなり、期間が短い方がファクターのリスクが低くなるためです。
手元に月末支払いの売掛債権と、翌月末支払いの売掛債権があるなら、月末支払いの売掛債権をファクタリングした方が審査に通過しやすくなります。
審査に落ちたくないのであれば、期間の短い売掛債権を先にファクタリングしましょう。
申込内容に間違いがないかを確認する
申込時、申込内容に間違いがないかをよく確認することも大切です。
申込内容を間違えただけでも「虚偽申込」と判断されて審査落ちするケースはよくありますし、審査落ちまでいかなくとも申込内容に不備があった場合は、ほぼ確実に審査時間が長引いてしまいます。
どんなに時間がなく焦っているときでも、申込内容が正しいかどうかをしっかりと確認してから申し込むようにしてください。
妥当性のある金額でファクタリングを申し込む
ファクタリングを申し込む際は、妥当性のある金額を提示することが重要です。
自社の規模や年商にそぐわない膨大な希望金額を提示すると、資金の持ち逃げや事業以外での利用を疑われて、審査落ちするリスクが高まります。
目安として、年商の半分以内の金額で申し込むとよいでしょう。
有効的な資料で債権の存在を証明する
債権の存在を証明すれば虚偽申告の疑いが薄くなるため、ファクタリング審査に通りやすくなります。
債権の存在を証明するために有効的な資料すなわち成因資料は、以下のような書類です。
- 請求書
- 発注書
- 納品書
- 契約書
- 受注書 など
ファクターは上記の成因資料から、取引内容・売掛債権額・入金日などを確認します。
申込内容ばかりに気を取られず、成因資料をはじめとした必要書類が全て揃っているかどうかも再確認しておきましょう。
ファクタリング審査に関するよくある質問
- 「即日OK」「審査甘い」「審査なし」のファクタリングは危険ですか?
- 最短即日の資金化に対応しているファクタリングはたくさんあるので、特に大きな危険はありません。審査が甘いファクタリング会社については、危険こそなくても、手数料が高くなる傾向にあります。当然、審査が甘いというのはファクターにとって貸倒れリスクが高まるため、そのリスクに相応する高い手数料を設定するのです。審査なしのファクタリングに関しては、違法業者の可能性が高いと言えるでしょう。正規のファクタリング会社は、あらゆるリスクを回避するために必ず審査を設けています。一方、審査なしのファクタリング会社は法外な手数料を設定していたり、後になって買い戻しを求めたりするリスクがあり、とても危険です。
- 個人事業主のファクタリング審査は緩いですか?
- そもそもファクタリング審査は、融資と比べて緩いと言えるでしょう。ただ、ファクターの中には個人事業主へのファクタリングを扱っていない会社も数多く存在します。また、債権譲渡登記ができない個人事業主は、どうしても審査で厳しく見られます。法人よりは個人事業主の方が審査が厳しくなると考えておいた方がよいでしょう。参考までに、個人事業主を対象としている中小・独立系のファクタリング会社なら、比較的審査は緩い傾向にあります。
- ファクタリング審査に通らない原因は何ですか?
- ファクタリング審査に通らない原因にはさまざまな理由が考えられますが、主に債権・売掛先・納入企業(自社)のどれかに問題がある可能性が高いでしょう。例えば、未回収リスクの高い債権だったり、売掛先が法人ではなく個人だったり、自社が必要書類を揃えられなかったりなどです。本記事で解説した、ファクタリング審査のポイントと審査落ちを防ぐ方法を参考にして対処すれば、ファクタリング審査の成功率も上がるでしょう。
- 自社の与信を向上させる方法を教えてください。
- 自社が何の業務を営んでいて、外部からどんな評価を得ているかを客観的に証明することが大切です。自社のパンフレット・商品案内・マスコミから取り上げられた記事などをファクターへ提出することで、ファクターから信頼を獲得できる可能性があります。
- 借金が多いとファクタリングの審査には通りませんか?
- 借金が多くてもファクタリングの審査に通過できる可能性はあります。ファクタリングはあくまでも売掛債権の売却ですので、自社の財務状況はそれほど重視されません。しかし、今日にも明日にも資金ショートしそうなほど資金繰りが悪化している場合には、ファクタリング審査に通過できない場合があります。
まとめ
ファクタリング審査で最も重視されるのは売掛先の業況です。
2社間ファクタリングでは自社も審査されますが、基本的には正しい内容で申し込んで、ファクターと信頼関係を構築できていることが最も重要になります。
審査に通過しやすい債権と、審査落ちしやすい債権があるので、ファクタリングに申し込むときには審査に通過しやすい債権を選択するようにしてください。
少しの配慮で、審査通過の可能性は上げられます。ファクタリング審査で失敗することがないよう、審査のポイントをしっかりと理解しておきましょう。