ファクタリングの歴史について解説します。
私たち日本人にとっては比較的新しい資金調達方法と思えるファクタリングですが、実はその歴史は深く、古典的なファクタリングは紀元前に登場し、現在の「支払保証」を行う現代的なファクタリングは今から700年以上前に登場しており、だファクタリングは歴史のある資金調達手段だといえます。
国際的なファクタリングの歴史と、日本におけるファクタリングの歴史について解説していきます。
ファクタリングが誕生したのはイギリス
現代的なファクタリングが誕生したのはイギリスだと言われています。
ファクタリングは当初イギリスからヨーロッパに派生し、さらにはアメリカ大陸に渡り世界的な決済手段として普及します。
まずは現代的なファクタリングが請求書を買い取る今の形になるまでの歴史について詳しく解説していきます。
1300年代にイギリスで登場
現代的なファクタリングは1300年代でイギリスで誕生したと言われています。
ファクタリングは衣料商品のための資金調達方法で、当時のイギリスには「ファクター」と呼ばれる売掛債権の買取を行う組織が存在しました。
また、同時期にはユダヤ商人が輸出品の請求書を使用して、輸出を行う業者に対して資金を貸し付けるという現代のファクタリングに近いサービスも提供していたと言われています。
これが現代的なファクタリングの始まりではないかと言われています。
1600年代にアメリカに上陸
そして、1600年代にファクタリングはアメリカ大陸に上陸します。
イギリスの銀行商業家がアメリカの植民地で交易を行う商人に対して、前払いに対応するためにファクタリングが利用されました。
アメリカからイギリスに輸出されるたばこ・綿・木材等の原材料の前払いに対応するためには請求書に信用力を補完するファクタリングが活用されたのです。
ファクタリングはイギリスによるアメリカの植民地化が進められた大きな原因の1つとまで考えられています。
ただし、この頃のファクタリングはあくまでも「支払いの保証を行う」というものでした。
1900年代初頭に請求書を早期に資金化するファクタリングが誕生
これまでのファクタリングがあくまでも「支払いの保証をする」というのがメインでした。
1900年代初頭にファクタリングは現在の形である「請求書の支払い期日よりも先に早期資金化する」という役割を果たすようになります。
これまではファクターは主に繊維商品の商品在庫を仕入れて輸出を行うという商社の役割を果たしていましたが、20世紀には繊維産業が停滞します。
そのため、ファクターは商社の役割から、資金提供と信用調査を行う金融機関の役割へと変遷します。
これが現在のファクターの形です。
アメリカの衣料品・繊維会社が原材料を購入し続けるために請求書を早期資金化する現在のファクタリングを利用するようになり、繊維産業や縫製産業は急速に成長したと言われています。
1940年代に銀行に登場
1940年代になると、銀行にファクタリングが登場します。
アメリカの銀行は繊維産業や縫製産業でファクタリングの需要が高まったため、ファクタリングサービスの提供を開始しました。
銀行は現物を保有するのではなく、請求書を買い取るインボイスファイナンスを提供しました。
ここにおいて現代のファクタリングの形が完成したと言ってもよいでしょう。
1948年には買取額は25億ドルに達します。
1970年代になると金利上昇と銀行の規制によって借入のハードルが上がったため、ファクタリングはあらゆる産業で利用されるようになりました。
しかし、この頃にはまだ日本ではファクタリングは登場していません。
ファクタリングが日本で登場するのは1970年代以降になります。
日本で登場したのは1970年代
日本でファクタリングが登場したのは1970年代と、国際的なファクタリングの歴史に比べるとかなり遅くなります。
日本は海外と比較して商決済の形が独特だったことからファクタリングが普及しにくかったことがその理由としてあげられます。
日本におけるファクタリングの歴史について詳しく見ていきましょう。
当時は手形が主流
当時の日本は手形が商取引の主要な決済手段でした。
手形は3ヶ月先とか6ヶ月先に期日になるのが一般的ですが、期日前に決済したい場合には銀行の手形割引を利用することができます。
つまり、当時の日本において「売掛債権を早期資金化する」といった時の手段はファクタリングではなく手形割引でした。
当時は「売掛金よりも手形の方が信用がある」という時代で、多くの企業が手形を発行していたため、ファクタリングは日本では普及していなかったのです。
バブル崩壊によって手形が下火になってからファクタリングが普及
1990年代になると、バブルが崩壊します。
バブル崩壊によって多くの企業が倒産するようになると、その企業が発行していた手形も不渡りになります。
手形が不渡りになると、銀行で当該手形を割り引いていた企業は銀行から支払いを求められ、決済する資金がなければ当該企業も倒産します。
このように、手形の不渡りを介して企業の連鎖倒産が相次ぐようになると、手形の発行は一気に下火になります。
ピーク時の手形好感高は1990年の4,797兆2,906億円です。
しかし2018年の手形交換高は261兆2,755億円と、ピーク時の20分の1まで落ち込んでいます。
企業の決済手段は手形から現金や売掛金へと大きくシフトし、売掛金が増えることによってファクタリングが普及する土壌が出来上がったといえます。
2000年ころからファクタリングが普及を始める
日本においてファクタリングが爆発的に普及を始めるのは2000年代からです。
- インターネットが普及したこと
- 貸金業法が改正されたこと
- 商工ローンが社会問題化したこと
などが、日本におけるファクタリング普及の理由に大きく関係しています。
日本においてファクタリングが今のように普及した理由を解説します。
インターネットの普及
2000年代になるとインターネットが爆発的に普及します。
企業間の支払いや契約もオンライン上でできるようになったこと、ファクタリングサービスもネット上での申し込みなどができるようになったことから、現在のようなオンライン上で申し込みから契約まで行うというファクタリングの仕組みが成立します。
日本においては、マイナーな資金調達手段であるファクタリングが普及する背景には、インターネットが普及し、決済手段が多様化したこと、オンラインで問い合わせができるようになったことは大きな原因の1つだと言えるでしょう。
貸金業法の改正
貸金業法が改正されたこともファクタリングが普及した大きな理由の1つです。
貸金業法改正によってノンバンクからの借入には以下の大きな変化が生じることとなりました。
- 総量規制の導入
- グレーゾーン金利の撤廃
貸金業法は個人向けの消費資金を対象にしたものですが、実際には事業が厳しくなった事業者がノンバンクから個人向けカードローンを借りて事業資金に充てるということはよくありました。
総量規制が導入されたことによって、起業経営に苦しむ経営者が安易にノンバンクに手を出すことができなくなりました。
また、ノンバンクもグレーゾーン金利によって利益が出なくなったため、貸金業務からファクタリング業務へと転換する業者が多くなりました。
商工ローン問題
2000年代初頭は商工ローン問題が社会問題化していました。
商工ローンとは、今でもいうノンバンクのビジネスローンです。
経営が苦しい事業者に対して、破格の金利で融資を行い、結果的に倒産に追い込んでしまうというような問題です。
経営者個人まで自己破産に陥ったり、歌劇が取り立てが行われたことなどから社会問題になりました。
これによって一般的に「ノンバンクからお金を借りることは怖い」という認識が広がり、その代わりの資金調達方法としてファクタリングが普及しました。
このように、事業資金を高金利で借りることが時代の変遷とともに衰退してきました。
その代わりの資金調達手段としてファクタリングが利用されるようになっています。
政府もファクタリングを推奨
政府も企業の資金調達手段としてファクタリングを推奨しています。
経済産業省の「中小企業における資金調達の課題」というレポートには、『流動資産による資金調達を活性化していく必要があり、この課題に早急に取り組まなければならない。』と記載されています。
つまり、ファクタリングによる資金調達は国も推奨しており、膨大な金額の売掛債権が資金調達手段として有効利用されていない現状に対して、国も問題意識も持っていることが分かります。
ファクタリングの歴史についてよくある質問
- 以前はファクタリングの手数料は高かったのでしょうか?
- ファクタリングの手数料はファクタリングの形やファクター、売掛債権のリスクによって異なります。
ただし、一般的にリスク判定が難しかった昔の時代の方がファクタリング手数料は高く設定される傾向にありました。
近年になり売掛債権のリスク判定の技術が向上してきたことから手数料も低くなっている傾向があります。
- 最近流行りの2社間ファクタリングに歴史はあるのでしょうか?
- 2社間ファクタリングの歴史はそれほど古くありません。
歴史的なファクタリングは3社間で行われており、2社間ファクタリングが登場したのは2000年代にファクタリングが広く普及して以降だと言われています。
歴史の浅い2社間ファクタリングですが、「資金化までの時間がかからず」「売掛先に秘密にすることができる」という特徴があることから、今は3社間ファクタリングよりも2社間ファクタリングの方が多く利用されています。
- ファクタリングはこれからも普及していきますか?
- ファクタリングはこれからも普及していくことが予想されます。
銀行融資よりも手続きが手軽ですし、AIの普及によって与信審査の精度も大きく向上することが予想されるためです。
2020年から民法が改正され、譲渡禁止特約付きの売掛債権もファクタリングできるようになりました。
このように、法律的にもファクタリングはどんどん利用しやすくなっているので、今後は融資に代わるメジャーな資金調達手段になる可能性もあるでしょう。
まとめ
ファクタリングの歴史は古く、現代のファクタリングの形は700年以上前から始まっています。
このことから、700年以上前の人にとってもファクタリングは便利な資金調達手段だったと言えるでしょう。
便利な資金調達手段であるファクタリングは現代の日本でも利用者を大きく拡大しており、今後は銀行融資に代わる有効な資金調達手段になる可能性があるでしょう。
今は「手数料が高い」「悪徳業者が存在する」などのデメリットがあるファクタリングですが、今後メジャーになるにつれ、そのようなデメリットがなくなり、さらに多くの事業者が利用しやすくなることが期待されています。