企業が倒産する大きな理由の1つが資金繰りです。
企業は赤字で倒産するのではなく、資金繰りが悪化して支払いができなくなることによって倒産します。
企業にとって資金繰りは収益管理以上に大事になることもあります。
企業の資金繰りを改善する方法について解説します。
自社の状況と照らし合わせて資金繰りが悪化する原因と、その解決策についてみていきましょう。
資金繰り悪化の5つのリスクと改善策
資金繰りが悪化してしまうと、支払いができなくなってしまいます。
そして支払いができなくなるということは具体的には以下の5つのリスクを生じさせてしまう可能性があることを頭に入れておきましょう。
資金繰りが困窮した時のリスクは様々ですが、支払えないことに対するリスクの大きさは順に以下の通りです。
- 小切手や手形が不渡りになる
- 従業員に給与を支払えない
- 取引先に仕入資金を支払えない
- 借入金を返済できない
- 黒字倒産を引き起こす
企業が資金繰りができなくなることの5つのリスク、そして資金繰りに困窮した状況において何を優先して支払うべきなのか、またそれぞれの改善策について詳しく解説していきます。
小切手や手形が不渡りになる
資金繰りの悪化によって小切手や手形が不渡りになってしまうリスクもあります。
小切手は手形を発行しているのであれば、倒産を避けるために小切手は手形を決済させることを優先させるようにしましょう。
資金繰りの悪化によって当座預金残高が不足すると、すでに発行している小切手や手形の取り立てがあった時に決済することができずに不渡りになってしまいます。
小切手や手形は一度の不渡りで社名が公表されるので、この時点で銀行から融資を受けることは難しくなりますし、すでに借りている借入金の期限の利益を喪失させられる可能性大です。
また、半年以内に2度目の不渡りを起こすと、銀行取引停止処分となり、これは実質的に企業継続ができなくなるので倒産に追い込まれてしまいます。
小切手や手形を振り出している企業は特に資金繰りに注意して絶対に不渡りを発生させないようにしてください。
緊急で資金が必要になった時には手形割引やファクタリングによってすぐに資金調達する必要があります。
改善方法①手形割引を利用する
手形での決済が多い企業は手形割引を利用しましょう。
手形割引とは受取手形を銀行に割り引いてもらい、早期に資金化する方法です。
手形を担保に銀行からお金を借りるという言い方をしてもよいでしょう。
受取手形は支払サイトが1ヶ月先から3ヶ月先程度になっていることが多いですが、手形割引を利用することによって数日程度で資金化することができます。
販売先が代金を手形で支払う場合には、手形割引の利用を銀行へ相談してください。
改善方法②ファクタリングを利用する
ファクタリングを利用することでも資金繰りは大きく改善します。
ファクタリングとは売掛金などの売掛債権をファクタリング会社へ売却して早期に資金化する方法です。
売掛金も支払期日になるまで資金化することはできない資産ですが、ファクタリングを利用することによって、期日前でも早期に資金化することができます。
手形割引よりも手数料は高いですが、手元に請求済み未入金の売掛金が多いという場合にはファクタリングを利用して、現金に換えるのもよいでしょう。
従業員に給与を支払えない
資金繰りが悪化すると従業員へ給料を支払うことができなくなってしまう可能性があります。
従業員へ給料を支払うことができなければ従業員は生活が成り立たず、その家族まで困窮することになってしまうかもしれません。
熟練した従業員が退職してしまうようなことになれば、事業の継続は非常に困難になってしまうでしょう。
従業員にとって、給料の支払いを期日通りに求めるということは最低限の権利ですので、給料の支払いを1日でも遅延してしまうと、経営者としての信頼は大きく失墜することになってしまいます。
例え1日でも給料の支払いに遅れるべきではありませんし、遅れてしまうと会社経営に大きな支障が生じます。
基本的に経営者は従業員とその家族の生活だけは守っていかなければなりません。
取引や銀行に対して支払いができないのであれば、頭を下げて待ってもらうこともできるかもしれませんが、従業員の給料だけはそのようにはいきません。
資金繰りに困窮し、限られたキャッシュしかないのであれば従業員への給料は優先して支払うべきでしょう。
改善方法:ビジネスローンやファクタリングで即日資金調達の検討を
従業員への給料は基本的には何がなんでも支払いをしなければなりません。
どうしても従業員への給料を支払う資金が手元にない場合には、ビジネスローンやファクタリングで資金調達する方法を検討してください。
これらの方法であれば、最短即日で資金調達することができるので、そうしても給料を支払う資金がない場合でも必要なお金を用意することができます。
取引先に仕入資金を支払えない
資金繰りが悪化してしまうと、仕入先などに仕入代金を支払うことができなくなります。
仕入ができなくなってしまうと、商品を販売したり製造することは不可能です。
結果として事業の継続は困難になってしまうでしょう。
さらに、後になって業況が回復したとしても、一度代金支払が遅延した取引先に対して再び信用を構築することは難しいのが実情です。
その後も当該取引先と取引することが難しくなり、事業の継続が困難になってしまう可能性があります。
取引先との関係を悪化したいのであれば、資金繰りが悪化した際に取引先への支払いを優先することになるでしょう。
改善方法①仕入先に支払サイトの延長を交渉
取引先への支払いに悩んでいるのであれば、取引先との関係を見直すことも重要です。
仕入先に支払サイトの延長を交渉してみましょう。
例えば、従来は1ヶ月先に支払いだったものを2ヶ月先に延長してもらうことで資金繰りは非常に楽になります。
例えば販売先からの入金サイトが2ヶ月先であれば、仕入先への支払サイトも2ヶ月先とすることで手元に資金がなくても支払いをすることが可能です。
仕入先への支払サイトは長ければ長いほど自社の資金繰りは円滑になるので、できる限り支払サイトを長くなるよう、仕入先企業と交渉するようにしてください。
改善方法②販売先に入金サイトの短縮を交渉
販売先に入金サイトの短縮を交渉してみましょう。
例えば2ヶ月先に入金になる取引先に対して「サイトを短くしてほしい」と交渉し、1ヶ月先の入金になればその分資金繰りは楽になります。
仕入先に対する支払いが1ヶ月先、売掛先からの入金が1ヶ月先であれば手元に資金がなくても資金繰りは可能になります。
販売先には入金サイトを早くし、仕入先に対しては支払サイトを短くする交渉をすることにしよって資金繰りを非常に楽にすることが可能です。
借入金を返済できない
資金繰りが悪化すると借入金を返済することができない可能性があります。
借入金を返済することができないと、銀行は一括返済を請求されることも。
一括請求をされて支払うことができないと、財産の差し押さえまで至ってしまう可能性があります。
また、一括返済請求までいかなくても、以後銀行からの借入は難しくなってしまうので、現実的には事業の継続は難しいでしょう。
借金を抱えている場合には、資金繰りの悪化によって借入金を返済することができないリスクがあります。
ただし、資金繰りに困窮し、支払うべきところが銀行以外にも多数あるのであれば、銀行への支払いは最も後回しにしてしまってもよいかもしれません。
しっかりと事情を話せば期限の利益を喪失するようなことはないので、本当に資金繰りが厳しい時には銀行への返済は後回しにしてもよいでしょう。
改善方法①銀行へ相談
借入金を返済できないという事情を話せば銀行は理解してくれ返済を持ってくれることが一般的です。
翌月以降は円滑に返済することができるようにリスケジュールの相談にも乗ってくれます。
今は金融庁の方針もあり、リスケジュールの対応は100%に近い確率で応じてくれます。
返済が難しいのであれば、返済は後回しにして、先に他の支払いを行なった上でリスケジュールの相談をしてみましょう。
基本的に1つに借入につき1回までであれば銀行はリスケジュールに応じてくれます。
改善方法②税金の延納等の手続きをする
借入金の返済ができないのであれば、税金の支払いも先延ばしにしてしまいましょう。
税金の支払等で資金繰りが圧迫されているのであれば、延納等の手続きを行い支払いを先に延ばしてしまいましょう。
特に今はコロナの関係で売上減少企業に対しては地方自治体は積極的に延納等に応じてくれます。
税金の支払いが厳しいのであれば延納等の交渉をして納税を先延ばしにするようにしてください。
資金繰りが悪化すると黒字倒産を引き起こす
資金繰りが悪化したことによって黒字倒産になる可能性があります。
黒字倒産というのは損益計算書上では利益が出ているのに、資金がないために支払いができずに倒産するケースです。
例えば50万円で仕入れた商品を90万円で販売すれば利益は40万円です。
しかし、販売先が90万円の代金をいつまでも支払ってくれず、自社が不渡りを起こしてしまった場合、利益が出ているのに倒産してしまうことになります。
このように、倒産は利益が出ているのにも関わらず起きてしまうことです。
赤字だから倒産するのではなく、支払うべきところに支払うことができないから倒産は発生します。
収益に管理と同じくらい資金繰りに対しては厳格に行いましょう。
改善方法①不要な在庫を処分する
資金繰りが慢性的に悪化して、黒字倒産の危機にある企業というのは不要な在庫を抱えている傾向があります。
不要な在庫を処分し、必要最低限の在庫しか持たないという方法でも資金繰りを改善させることができます。
在庫があればあるほど、その仕入コストがかかってしまいますし、倉庫などの管理コストを馬鹿にはできません。
また、在庫は古くなれば劣化します。
資金繰り管理だけでなく収益管理のためにも不要な在庫はできる限り処分してしまいましょう。
改善方法②抜本的な経営改善を図る
資金繰りだけでなく、収益も出ていないのであれば抜本的な経営改善を図って収益が出る構造へと改革する必要があります。
人件費を圧縮する、仕入コストを削減する、売上を向上させるために販路を開拓するなどの努力によって経営改善を図るようにしてください。
自社で経営改善が不可能であるならば、税理士やコンサルタントなどの専門家へ依頼するようにしましょう。
資金繰りの悪化を招く最大の要因は顕在化するリスクに対し、「まあ、どうにかなるさ」と楽観すること。経営者のメンタルには良いかもしれませんが、事業廻りの数値が自然に改善していくことはありません。また大型の売上案件を願うものですが、そのような危機時には落ち着いた営業をする余裕は無く、売上も成立し難いもの。何よりもここに書いてあるような実直な改善と出血(支出)の抑制が大切なポイントになります。
資金繰り悪化の6つの原因
そもそも資金繰りはなぜ悪化してしまうのでしょうか?
資金繰りが悪化する原因は様々ですが、主なものとして以下の6つを原因として考えることができます。
- そもそも収益が足りていない
- 借入金の返済金が多い
- 売掛金・受取手形のサイトが長い
- 売上が急増して支払いが多くなった
- 設備投資・規模拡大によって資金流出が多い
- 在庫が増加した
資金繰り悪化の原因についても、自社の状況と照らし合わせて理解しておきましょう。
そもそも収益が足りていない
そもそも収益が足りておらず、赤字になっている場合には資金繰りに困窮してしまいます。
赤字というのは単純に売上よりも経費の方が多い状態ですので、売上を超える経費の分は必ずお金が足りなくなります。
例えば売上が50万円しかないのに、経費が80万円であれば確実に30万円はお金が足りません。
このような時には売上拡大か経費圧縮のいずれかの方法で経営改善を図る必要があります。
借入金の返済金が多い
借入金の返済が多いことでも資金繰りは悪化します。
借入金の弁済は支出ではありません。
そのため、いくら借入金を返済しても収益が圧迫されることはありませんが、確実に資金は流出します。
つまり借入金の返済が多い企業は黒字なのに資金繰りが圧迫されていることになります。
こちらも黒字倒産の大きな原因となってしまうため、黒字であるにも関わらず資金繰りが苦しい企業は以下のいずれかの方法で、毎月の返済金を圧縮させる努力をしましょう。
- 期限の延長
- 複数の借入金をおまとめによって1本化
黒字であるならば、上記いずれかの方法で返済金額を減少させれば資金繰りは改善できます。
売掛金・受取手形のサイトが長い
売掛債権の入金サイトが長いことによって、先に支払いで資金が流出して資金繰りは苦しくなります。
例えば毎月の支払いが100万円ある企業の売掛債権の入金が3ヶ月後であるならば、その企業は最低でも3ヶ月分の運転資金300万円を手元に持っていないと運転ができません。
逆に売掛債権の入金サイトが2ヶ月であれば200万円、1ヶ月であれば100万円だけを手元に持っていればいいことになるので、サイトは短ければ短いほど資金繰りは楽になります。
売上が急増して支払いが多くなった
売上が急増したことによって支払いが多くなるケースでも、資金繰りが厳しくなることもあります。
急な受注が入ったことによって売上が拡大すると、その分仕入等の運転資金の支払いは多くなります。
売上が入金になるのは後、増加した支払いの方が先になるので、その分支払いは厳しくなってしまいます。
ただし、このような増加運転資金は会社にとってプラスになる運転資金の増加です。
銀行に相談すれば快く融資に応じてくれる可能性が高いのでまずは銀行へ相談してみましょう。
設備投資・規模拡大によって資金流出が多い
設備投資や規模を拡大したことによって資金流出が多くなったというのも資金繰りが悪化する原因です。
設備投資や規模拡大によって現金が流出すればその分資金繰りは苦しくなります。
また、借入金によって設備投資や規模拡大をした場合には返済金によって資金繰りは苦しくなります。
このパターンの資金繰りの悪化は企業が倒産する典型的なパターンの1つです。
設備投資や規模拡大の際には失敗した場合のリスクまで慎重に検討した上で意思決定をするようにしてください。
在庫が増加した
在庫が増加したことによっても資金繰りは悪化します。
在庫の仕入れ資金で資金は流出しますし、在庫の管理コストも馬鹿にはなりません。
売れない在庫は収益も資金繰りも悪化するので、在庫管理を徹底し、出来る限り不要な在庫を持たないことが大切です。
資金繰り悪化の原因はBS(貸借対照表)が原因の売上・支出の問題と、CF(キャッシュフロー)が原因となるものに分かれます。前者は経営者も気づきやすい点ですが、後者は実際に資金繰りを回さないとわからない部分があり、軽視してしまいがちです。可能なら1000円単位のキャッシュフロー表を作成して随時確認するようにしましょう(経理部から不足の連絡が来る段階では打てる手も少なくなってしまいます)。
ファクタリングが資金繰りに寄与する理由
ファクタリングが資金繰り改善方法として注目されています。
ファクタリングは売掛債権を早期資金化することができるので資金繰り改善に直接的に寄与します。
また、手形の流通量が劇的に減っていく中でファクタリングが果たす役割は非常に大きいと言えるでしょう。
ファクタリングは売掛債権の資金化
ファクタリングは売掛債権を早期に資金化する方法です。
例えば2ヶ月先が支払期日になっている売掛債権は2ヶ月先まで現金化することができません。
しかし、ファクタリングによってこの売掛債権を売却することで期日を待たずに資金調達することができます。
ファクタリングそのものが、売掛債権の入金サイトを短縮させるものだと理解しておきましょう。
2社間ファクタリングは最短即日資金化可能
また、2社間ファクタリングであれば最短即日で資金化することが可能です。
2社間ファクタリングとは、自社とファクタリング会社だけで契約するものですので、審査通過後すぐに契約手続に入ることができます。
そのため、最短で申込日に即日資金化することができます。
ファクタリングは売掛債権の入金サイトを圧縮して資金繰りを楽にするという効果だけでなく、即日資金化によって「急いでいる時にすぐにお金が必要」というニーズにも対応することができます。
ファクタリングは黒字倒産を解決する最良の方法です。支出と売上のあいだに生じる「タイムラグ」を支払の代替により解決することが出来ます。最近は銀行が主催するものや手数料が抑えられたものもあり、多様化しています。まずは実際の利用期の前に、手段のひとつとして検討してみましょう。
まとめ
資金繰りを悪化させる原因としては以下のようなものかあります。
- そもそも収益が足りていない
- 借入金の返済金が多い
- 売掛金・受取手形のサイトが長い
- 売上が急増して支払いが多くなった
- 設備投資・規模拡大によって資金流出が多い
自社の資金繰りがどのような原因で悪化しているのかまずは原因を究明し、それぞれの原因に見合った改善策で資金繰りを改善させましょう。
資金繰りは収益管理と同じくらい大切です。
黒字でも資金繰りの悪化によって倒産してしまうケースは多々ありますので資金繰り管理を怠らないようにして下さい。
せっかくビジネスが順調でもキャッシュフローの悪化により会社経営が危機になっては、とても勿体ないことです。まずは現状の会社経営がどうなっているか、顕在化してみましょう。BSやPLはすぐに作成できるものの、なかなかキャッシュフロー表を作る機会はありません。Excelによる簡単な図でもいいので、作成して自社財務を客観視してみましょう。今まで思いつかなかった経営改善策も見つかります。