個人事業主であっても、事業資金が足りずに外部から資金調達をしなくてはいけないことはあり得ます。

しかし、法人の場合とは違い、事業規模が小さいことから、コツを押さえて対応しないと思うように資金調達ができないかもしれません。

この記事では、個人事業主が外部から資金調達する方法について詳しく解説していきます。

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個人事業主におすすめの資金調達方法①ビジネスローン

個人事業主が外部から資金調達する方法として、ビジネスローンはおすすめできます。

ビジネスローンとは

消費者金融やクレジットカード会社などのノンバンク(銀行以外の金融機関のこと)が提供する、事業資金の融資を行うための商品です。

審査にかかる時間は個々の企業によって異なりますが、申し込みの時間・混雑状況により審査に時間がかかる場合もあります。本当に必要になってから慌てないよう、多額のお金が出ていく予定があるなら、あらかじめ申し込んでおくと良いでしょう。

ただし、比較的審査難易度が低い反面、金利は安くない点に注意が必要です。具体的な金利は個々の企業により異なりますが、貸金業法における上限金利(10万円から100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%)に近い金利での貸し付けになるのも珍しくありません。

総量規制の対象外

貸金業法における重要な規制の1つに「総量規制」があります。簡単にいうと「年収の3分の1を超える借り入れはできない」という決まりのことです。

参照:日本貸金業協会「貸金業法について」

しかし、個人事業主の事業資金に関しては、以下の条件を満たせば総量規制の適用を受けません。

  • 事業を営んでいて、事業資金を調達するために借入れを行う
  • 確定申告書や借入計画書に事業計画・収支計画・資金計画を記載して提出する
  • 借入金額が返済能力を超えない範囲であると認められる

ビジネスローンのメリット

ビジネスローンの個人事業主に対する審査の視点は個人信用情報が主になります。

銀行のプロパー融資や信用保証協会付融資では個人信用情報はチェックしませんが、ビジネスローンは個人信用情報をもとに審査を行います。個人信用情報は、確定申告書と異なり本人が恣意的に手を加えることが一切できない情報です。

早く正確な審査を行うために、ビジネスローンでは事業内容とは無関係の個人信用情報をメインに審査を行なっています。そのため、事業内容に関わらず個人信用情報に問題がない個人事業主はビジネスローンを借りることができます。

法人には個人信用情報がないため、個人事業主に対してしか融資を行なっていないビジネスローンも多数存在します。個人信用情報が良好であれば、個人事業主はビジネスローンで比較的簡単に資金調達できるのがメリットと言えるでしょう。

ビジネスローンのデメリット

一方で、開業したばかりだとビジネスローンは使いづらいというデメリットもあります。ビジネスローンを利用する際、一般的には、以下の書類の提出が求められます。

  • 申込書
  • 運転免許証などの本人確認書類
  • 確定申告書・決算書
  • 事業計画書、資金繰り表、収支計画表
  • 借入計画書

このうち、確定申告書や決算書は、少なくとも1事業年度を終えていないと作成できません。事実上、開業してまもなくや、開業準備中の個人事業主がビジネスローンを使うことはできないと考えましょう。

個人事業主におすすめの資金調達方法②日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、資金調達が困難な個人事業主や中小企業の経営者に対し融資を行う金融機関です。国が100%出資している政府系の金融機関であるため、銀行などの民間金融機関に比べると、利用するハードルは低くなっています。

これからビジネスを始めるという場合は「新創業融資制度」、事業資金を調達したい場合は「一般貸付」を利用するのが一般的です。

なお、実際に利用する際は、日本政策金融公庫へ事前相談してから申し込みましょう。相談は専用ダイヤル(0120-154-505)や商工会議所等での対面相談(予約制)で承っています。

参照:日本政策金融公庫「個人企業・小規模企業の方」

日本政策金融公庫のメリット

日本政策金融公庫のメリットは次の2つです。

  • 金利が低い
  • 民間金融機関とは別枠で借りられる

日本政策金融公庫の融資は金利が1%台〜2%台と非常に低く、低コストで資金調達できるのが大きな特徴です。

ビジネスローンなどの金利が10%を超えることがあることと比較すると、日本政策金融公庫の金利が低いのはメリットだと言えます。

また、日本政策金融公庫は無担保・無保証で行われるので、信用保証協会の保証がありません。

民間金融機関が中小企業へ融資する際には、ほぼ必ずと言っていいほど利用される信用保証協会の保証が不要なので、民間とは完全に別枠で融資を受けることができます。

銀行や信用金庫から「保証協会の保証が得られなかった」という理由で審査に落ちた人でも、日本政策金融公庫であればお金を借りられる可能性があります。

日本政策金融公庫のデメリット

日本政策金融公庫で融資を受けるデメリットは、融資までのスピードです。

日本政策金融公庫の審査はそれほど早くないので、申し込みをしてから融資を受けるまでには3週間〜1ヶ月程度の時間がかかるのが一般的です。

ビジネスローンであれば最短即日、銀行や信用金庫であれば最短で1週間程度で借りられることがあることを鑑みれば、日本政策金融公庫は融資を受けるまでに時間がかかるのがデメリットだと言えるでしょう。

日本政策金融公庫への融資申し込みは時間に余裕を持って行うようにしてください。

個人事業主におすすめの資金調達方法③制度融資を銀行や信用金庫を通じて利用する

信用金庫とは、その地域に住む人たちの相互扶助を目的とした協同組織の金融機関の1つです。その地域の中小企業や個人事業主が、円滑に事業を営めるよう、事業資金の融資も行っています。

民間企業が経営している銀行とは違い、相互扶助=助け合いを目的として設立されているため、審査にも比較的通りやすいのがです。しかし、日本政策金融公庫から融資を受ける場合に比べると、金利が高いことが多々あります。

また、同じ銀行であっても都市銀行ではなく、地方銀行であれば、個人事業主であっても融資を受けられる可能性があります。企業としての経営方針の1つに「地域経済の進行」を掲げている地方銀行も多いためです。

加えて、地方銀行や信用金庫は制度融資を利用する際の窓口にもなります。

制度融資とは、地方自治体や金融機関、都道府県の信用保証協会や商工会議所・商工会が連携・協力して運営されている融資制度の1つです。資金調達が難しい個人事業主や中小企業の経営者が、スムーズに資金を調達することを目指しています。

制度融資のメリット

主なメリットは、以下の3点です。

  • 金利が低い上に、全期間固定金利であることが多い
  • 長期間の借入ができる
  • 担保・保証人はいらない

制度融資も、地域経済の発展のために行われていることが多いことから、低金利かつ固定金利で借りられることが多くなっています。

一般的には1%〜2%程度の非常に低い金利が適用されるので、資金調達のコストを抑えて利用することが可能です。

また、借入期間も長く5年〜10年程度の長期の借入をすることができます。

返済期間を長く設定できるので、毎月の負担を可能な限り少なくして低コストで調達できるのがメリットです。

また、制度融資には信用保証協会の保証が付くので担保や保証人なしで利用できるのも特徴です。

価値のある不動産や連帯保証人を用意できない人でも、低コストで資金調達できます。

制度融資のデメリット

制度融資のデメリットは次の通りです。

  • 保証協会の保証が得られないと借りられない
  • 複数の金融機関から同じ制度を利用することはできない
  • 融資までに時間がかかる

制度融資は信用保証協会の保証して、金融機関が融資するというスキームです。

金融機関は信用保証協会からの保証によってリスクがないからこそ、積極的に融資を行うことができます。

そのため信用保証協会の審査に落ちたら制度資金を利用することはできません。

また、制度融資は制度の内容は自治体によって決まっており、保証するのは地域に1つしかない信用保証協会です。

そのため、どの金融機関へ申し込んでも同じ自治体や信用保証協会が審査をすることになるので、1つの金融機関の審査に落ちたからと言って別の金融機関へ申し込んでも結果は同じです。

複数の金融機関から同じ資金を借りることはできませんし、金融機関は変わっても借入枠は同じですので、複数の金融機関を利用したからと言って借入枠が増えるわけでもありません。

また、制度融資は金融機関および都道府県の信用保証協会の審査により融資の可否が決定されます。このため、申し込みから融資実行までは時間がかかる点に注意が必要です。

制度融資は申し込みから借入まで3週間程度の時間がかかるので一般的ですので、時間に余裕をもって申し込みを行いましょう。

個人事業主におすすめの資金調達方法④補助金や助成金

補助金、助成金とは国や地方公共団体、民間の団体が事業の支援のために支給するお金のことです。助成金と補助金の違いを簡単にまとめました。

補助金 採択件数、金額があらかじめ決まっていることが多いため、申請しても必ず受給できるとは限らない
助成金 「所定の様式に従って申請を行う」など、条件を満たせば受給できる可能性が高い

参照:独立行政法人中小企業基盤整備機構「補助金・助成金の違いや補助金活用における注意点について教えてください」

実際は補助金と銘打っていても助成金に近い性質を有しているものや、その逆のものもあります。利用したい補助金、助成金がある場合は、以下の点を綿密に調べ、手続きを進めていきましょう。

  • 受給を受けるための条件
  • 応募できる期間
  • 必要な書類
  • 実際に受給される時期
  • 必要な事後処理

補助金・助成金のメリット

補助金や助成金のメリットは、なんと言っても「返済不要」という点です。

国や自治体から政策目的にあった事業をする際やなどに補助を受けるものですので、受給したお金は返済する必要がありません。

借入金のように「資金調達した後に返済に追われて資金繰りが苦しくなってしまう」ということがないので、受給することで資金繰りが安定したり、格安で設備などを導入できます。

補助金・助成金のデメリット

補助金や助成金のデメリットは次のとおりです。

  • 後払いなので最初は資金流出がある
  • 全額を受け取れるものは少ない
  • 申請や報告が面倒

補助金や助成金の大半が後払いです。

例えば、会社に機械を導入する際に補助金や助成金を利用する場合には、最初の設備導入時には自己資金や借入金を利用して設備代金全額を支払わなければなりません。

その後、設備導入代金の一部または全部について補助を受けるという流れになります。

そのため、一時的には資金繰りが大変ですし、借入金を利用しなければならない場面も多々あります。

また、一般的に補助金は対象経費の一部しか補助されません。

全額が補助されるわけではないので、一部の持ち出しをしなければならない点には注意しましょう。

さらに補助金を申請する際には融資よりも多くの書類の提出が必要になるのが一般的ですし、補助金を受け取った後数年間は毎年行政への報告などが必要になります。

個人事業主におすすめの資金調達方法⑤クラウドファンディング

クラウドファンディングとは「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語のことです。つまり、Web上でやりたいことを表明し、賛同してくれた人から資金を集める仕組みと考えましょう。

最近は、地方自治体や公益財団法人、認定NPO法人なども、活動資金を募るための方法として利用しています。

クラウドファンディングのメリット

クラウドファンディングで資金を集めるメリットとして挙げられるのは、自身の考え・ビジョンに共鳴してくれる人から幅広く出資を募れることでしょう。共鳴してくれた人をビジネスパートナーとして迎え入れたり、何か新しいことをやろうとしたりするチャンスも生まれるかもしれません。

そして、やはりクラウドファンディングも融資型を利用しない限りは返済不要ですので、資金繰りは安定します。

また、クラウドファンディングは補助金と比較すると、利用した後の報告などが面倒ではありません。

クラウドファンディングのデメリット

一方で、デメリットもあります。クラウドファンディングで資金を集める際は、サービス会社に対し手数料を支払わなくてはいけません。また、賛同者があまりに少ないと目標額に届かない可能性もあります。

さらに、目標額に届き、実際に資金を受け取れたとしても、事業報告は適切に行わなくてはいけません。適切な事業報告を怠ったことが原因でトラブルに発展するおそれもあるので注意しましょう。

また、クラウドファンディングは出資を受けた後に、出資をしてくれた人に返礼品を送ったり、事業報告をするなどして、つながりを持続しておくべきものです。

人によってはつながりを煩わしいと考えている人も多いでしょうが、このような人にとっては「クラウドファンディングは資金提供を受けた後が面倒」と感じてしまうかもしれません。

個人事業主のおすすめの資金調達方法⑥VC・投資家からの出資

ベンチャーキャピタル(VC)や投資家から出資を受ける方法でも、資金調達はできます。出資とは、投資家から資金の提供を受け取るのと引き換えに、株式を交付することと考えましょう。

また、VCとは高い成長が見込める未上場の新興企業に出資して株式を取得し、将来的にその企業が株式上場までこぎつけた際に株式を売却することで、大きな値上がり益の獲得を目指す投資会社・ファンドのことを指します。

個人事業主のうちは現実的ではないかもしれませんが、ゆくゆくは利用できるかもしれない方法の1つとして覚えておきましょう。

VC・投資家からの出資のメリット

ベンチャーキャピタルから出資を受ける方法のメリットは次の3つです。

  • 返済義務がない
  • 大きな資金を調達できる
  • 経営ノウハウや人脈なども得ることができる

出資は借入ではないので、ベンチャーキャピタルや投資家から出資を受けることは元本の支払い・利子の返済も生じないのが大きなメリットです。

ただし、株式を発行するので配当金の支払いはしなければなりません。

ベンチャーキャピタルは非常に大きな資金力を持っているので、数億円を超えるような巨額の資金調達をすることもできます。

銀行融資などでは借りることができないほどの大規模な資金調達ができるので、大きな資金を調達して事業を一気に拡大したいと考える方には最適です。

ベンチャーキャピタルは出資した企業を大きくして、出資した企業を上場させることを目的としていますので、会社の成長のために必要な人脈やノウハウの提供などにも非常に協力的です。

独力では得れらないような強力な人脈も、ベンチャーキャピタルから出資を受けることによって得ることができるでしょう。

VC・投資家からの出資のデメリット

ベンチャーキャピタルや投資家から出資を受けることのデメリットは次の2点です。

  • 経営の自由度を奪われる
  • 株式の希薄化が起きる

出資を受けるということは、会社の株式をベンチャーキャピタルや投資家へ売却するということです。

つまり会社の所有権の一部をベンチャーキャピタルや投資家へ譲渡するということですので、経営に口を出される可能性は十二分にありますし、ベンチャーキャピタルなどはかなりうるさく経営に口を出すこともあります。

せっかく起業したのに、自由に経営できなくなる可能性が高いという点は、ベンチャーキャピタルや投資家から出資を受けるデメリットだと言えます。

また、出資を受けるにあたって新株を発行するのが一般的ですので、これまで創業者が持っていた株式の保有割合が下がることになります。

保有割合が下がれば会社の決定権に及ぼす影響度も低下するということですので、1株の価値が低くなってしまい既存株主の利益を損なってしまう可能性があります。

個人事業主のおすすめの資金調達方法⑦ビジネスカード

直接お金を借りる方法ではありませんが、法人や個人事業主向けのビジネスカードを利用することでも資金繰りすることができます。

クレジットカードは手元にお金がない時でも決済手段として利用でき、支払いは翌月以降ですので、「今は手元にお金がないけど、翌月以降だったら工面できる」という場合に最適です。

ビジネスカードのメリット

ビジネスカードのメリットは次の通りです。

  • 手元にお金がなくても決済できる
  • 経費の支払いをまとめて管理できる
  • ポイントが貯まる

クレジットカードは手元にお金がなくても支払いができるので「今月はキャッシュが厳しい」というような場面で使用すれば、現金がなくても仕入れなどを行うことができます。

また、経費をまとめて管理でき、明細を見れば何にいくら使ったのかを容易に確認できるので経理の管理が非常に簡単になります。

会計ソフトによって、クレジットカードの利用データをそのまま取り込んで仕訳を行なってくれるものあります。

さらに、クレジットカードは使用することによってポイントが貯まるのも現金や振込にはないメリットでしょう。

法人は経費の規模も大きいので、ただ経費を支払っているだけなのに、大きなポイントを貯めることも可能です。

ビジネスカードのデメリット

ビジネスカードのデメリットは次の3点です。

  • 分割やリボ払いは手数料が高い
  • 本質的に資金繰りは改善しない
  • 使いすぎてしまうリスクがある

クレジットカードの支払方法には分割やリボ払いがあります。

しかし3回以上の分割払いやリボ払いを選択すると10%を超えるような高額な手数料が取られてしまいます。

また、クレジットカードは今支払うべき支出を翌月以降に繰り越しているだけですので、本質的に資金繰りが改善するわけでも、新たに資金調達できるわけでもありません。

手元に現金がなくても、限度額の範囲内でどこまででも利用することができるのがクレジットカードですので、使いすぎてしまうリスクには十分注意する必要があります。

個人事業主におすすめの資金調達方法⑧ファクタリング

融資や補助金などでも資金調達できない場合や、クレジットカードを利用しても資金繰りが改善しない場合には、ファクタリングを利用して資金調達するという方法もあります。

ファクタリングとは売掛債権を売却して、資金調達する方法で、比較的新しい資金調達方法です。

しかし国も売掛債権を活用した資金調達を推奨していますので、ファクタリングの特徴やメリットデメリットについて詳しく理解しておいた方がよいでしょう。

ここからは、ファクタリングについて詳しく解説していきます。

ファクタリングとは

ファクタリングとは、個人事業主が保有する売掛債権を専門の業者(ファクター)に売却して資金調達する方法です。売掛債権さえあれば、資金調達することができます。

また、利用にあたっては審査が必要となりますが、あくまで「取引先の支払能力」に重きを置いたものです。自分自身に信用がなくても、取引先に信用があれば、資金調達できる可能性が出てくるのも、大きなメリットでしょう。

具体的にどれぐらいの額の売掛債権を買い取ってくれるのかは、ファクターによっても異なります。個人事業主が利用する場合は「少額からの利用も可能」「個人事業主向け」というスタンスを打ち出しているファクターを選びましょう。

なお、一口にファクタリングといっても、取引先への承諾・通知の有無によっても大きな差があります。簡単にまとめると以下の通りです。

  • 2社間ファクタリング:取引先への承諾・通知は行わない
  • 3社間ファクタリング:取引先への承諾・通知を行う

これらの違いは、個人事業主がファクタリングを利用する際の難易度にも大きく関連してきます。詳しく解説しましょう。

原則2社間ファクタリングは難しい

2社間ファクタリングを個人事業主が利用することは難しいのが実情です。売掛先への同意が必要ない2社間ファクタリングには、納入企業がファクタリングによって売却した債権を他のファクターへ二重で譲渡してしまうリスクがあります。

そもそも、売掛金には形がありません。そのため、すでにファクターAに売却している売掛金を、別のファクターBに対して「すでにA社に売却済み」であることを隠して二重に譲渡してしまう可能性があります。

このようなことがないように、ファクターは対抗要件というものを備える必要があります。対抗要件とは、例えばファクターBに対して二重譲渡された売掛債権を「それはすでに当社が譲渡を受けたものだ」と主張できることです。

この対抗要件を得るための登記が債権譲渡登記です。

売掛金への同意が必要ない2社間ファクタリングでは基本的に債権譲渡登記が必須になります。債権譲渡登記がないと、ファクターは二重譲渡に対抗することができなくなってしまうためです。

しかし、債権譲渡登記は法人しか行うことができません。

つまり個人事業主に対して2社間ファクタリングをすることは、対抗要件なしで債権の買取をしなければならない、ファクターにとってはリスクの大きすぎる行為です。

個人事業主は債権譲渡登記をすることができないので、2社間ファクタリングでの資金調達が難しくなっています

最近は債権譲渡登記なしのファクタリングが増えている

最近は個人事業主に対しても2社間ファクタリングによって即日資金化に対応している業者も増えてきています。

債権譲渡登記がなくても、二重譲渡の心配がないと判断できる個人事業主であれば審査に通過できることもあります。

審査は厳しく、手数料も債権譲渡登記ができない分高くなる傾向にありますが、個人事業主が2社間ファクタリングを利用したい時にはまず相談してみるとよいでしょう。

オンライン完結型で「最短即日入金」と謳っている、クラウド型のファクタリング会社であれば、債権譲渡登記なしでファクタリングを利用することができるのが一般的です。

債権譲渡登記には時間もコストもかかるので、低コストかつスピードを重視しているクラウド型のファクタリング会社は債権譲渡登記なしで融資を行なっています。

スピードを重視したファクタリング会社を探したい方は以下からベストなファクタリング会社を探してください。

 

3社間ファクタリングは債権譲渡登記なし

3社間ファクタリングは売掛先に「債権が譲渡された」ということを通知するので、債権譲渡登記なしで利用できます。

そのため3社間ファクタリングであれば個人事業主でも利用することができます

3社間ファクタリングは売掛先の同意が必要なファクタリングです。売掛先がファクターに債権を譲渡したということを把握しているため、3社間ファクタリングには二重譲渡のリスクはありません。

そのため債権譲渡登記をすることができない個人事業主でもファクタリングを利用することが可能になります。ただし、売掛先には「債権をファクタリングした」ということを知られてしまいます。

売掛先との立場が弱い個人事業主は売掛先にファクタリングをしたことを知られてしまうと、「資金繰りが危ない企業」などと判断され、今後の取引に悪影響してしまうリスクがあることに注意しましょう。

また、売掛先の同意を取得するまでに時間がかかるので、急ぎの場合には対応することができません。ただし、手数料は2社間よりも安くなるのはメリットと言えるでしょう。

なお、ファクタリング会社の中には「3社間ファクタリングは売掛債権の金額が高額でなければ取り扱わない」という業者も多数存在します。

その場合は事業規模の小さな個人事業主は3社間ファクタリングを利用できないので注意しましょう。

個人事業主が2社間ファクタリングを利用するためのポイント

個人事業主がファクタリングで資金調達するポイント

個人事業主でも2社間ファクタリングの審査に通過できる場合もあります。

そのためには以下のポイントを抑えておく必要があります。

  • まとまった金額の債権があること
  • 売掛先が優良先であること
  • 事業内容が良好であること

これらのポイントを抑えることで、債権譲渡登記ができない個人事業主でも売掛先に秘密に最即日で資金化することができる2社間ファクタリングの審査に通過できる可能性が高くなります。

審査の通過のポイントについて、詳しく理解しておきましょう。

まとまった金額の債権があること

ある程度まとまった金額の売掛債権があると審査には通過しやすくなります。まとまった債権があるということは、それなりに規模の大きな仕事ができる証拠ですので、企業の安定感に繋がるためです。

また、まとまった金額の債権はファクターにとっても大きな手数料収入かま見込めるためメリットがあります。個人事業主でも100万円を超えるような債権がある場合には審査に通過できる可能性も大きくなるでしょう。

売掛先が優良先であること

ファクタリングにおいて審査されるのは自社よりも売掛先です。

そのため、売掛先が上場企業などの大企業であれば納入企業が個人事業主でもファクターにとってはリスクが低くなり、審査には通過しやすくなります。

複数の売掛債権を保有している場合には、優良な売掛先に対する売掛債権を売却しましょう。

事業内容が良好であること

そして、個人事業主が2社間ファクタリングを利用するにあたって最も重要な点は自社の事業内容です。債権譲渡登記ができない2社間ファクタリングにおいては、自社の事業内容が良好でない限りは売掛債権の二重譲渡のリスクを排除することができないためです。

決算書などから「この個人事業主は資金繰りがそれほど苦しいようには見えないから二重譲渡のリスクはない」と判断することができなければ、いくら売掛先が優良企業であってとしてもファクターは安心できません。

個人事業主が2社間ファクタリングをするためには、何よりも個人事業主自身の与信状況が重要になり、赤字が継続している状態などでは審査に通過することができない場合もあります

ある程度安定して利益を出しており、売掛金の規模も大きく、優良売掛金を保有しているのであれば、個人事業主でも2社間ファクタリングの審査に通過できる可能性があります。

最終的にはファクターの判断次第ですので、まずは相談してみるとよいでしょう。

個人事業主のファクタリングに関するよくある質問

個人事業主は絶対に2社間ファクタリングを利用することができませんか?
絶対に利用できないとまでは言い切れません。ファクターによっては債権譲渡登記なしで2社間ファクタリングを取り扱うこともあります。このような会社では個人事業主でも2社間ファクタリングを利用することができます。
個人事業主はビジネスローンとファクタリングをどちらが利用するのがよいでしょうか?
どちらも最短即日で資金調達でき調達コストも大きいので、「どのように支払っていくか」という観点で選択するとよいでしょう。ビジネスローンは分割での返済が可能ですが、ファクタリングは一括払いのみとなります。一括での支払いが難しい場合にはビジネスローンを利用することがおすすめです。
個人事業主はファクタリングで調達したお金を生活費に回すことはできますか?
ファクタリングによって得た資金に資金使途は特に決まっていないので生活費に回すことも可能です。

個人事業主が銀行融資の審査に通りにくい理由

個人事業主が銀行融資の審査に通りにくい理由事業資金の調達方法として、銀行融資を考える人は決して少なくありません。しかし、個人事業主は銀行融資の審査に通りにくいと言われています。特に、地方銀行より都市銀行でその傾向が顕著です。

その理由としては、主に以下の4つの理由をあげることができます。

  • 小規模で不安定
  • 事業と生活が混同している
  • 確定申告書の所得が低い
  • 貸借対照表を作成していない

それぞれのポイントを理解しておくことで、個人事業主でも審査に通過できる可能性は十二分にあります。

個人事業主はなぜ審査に通過しにくいと言われるのでしょうか?

小規模で不安定

まず、個人事業主の事業規模が小規模で不安定であるということが挙げられます。個人事業主は個人で商売をしているため、実働しているのが経営者1人という人も少なくありません。

また、個人事業主は仕事を発注してくれるのが1社か2社しかないというケースも多く、このような場合には取引先から仕事を切られてしまったら収入源を絶たれてしまうこともあります。

こよような理由から個人事業主に対して多額の融資を行うことは銀行にとってはリスクの高い行為であるため、審査に通過することは簡単ではありません。

事業と生活が混同している

個人事業主は事業と生活が一体化しているケースが少なくありません。自宅で事業を営んでいる人の自宅兼事務所の家賃は、どこまでが事業用でどこまでが生活費なのかの区分は曖昧です。

事業資金は事業に必要な資金を融資するものであって、借りたお金を生活費に使用することはできません。

しかし、そもそも事業と生活が一体化している個人事業主においては、事業資金として借りたお金を結果的に生活費として流用してしまうリスクが高くなります。しっかりと生活と事業の区別ができていないと審査に通過することが難しいのです。

確定申告書の所得が低い

多くの個人事業主の所得は意図的に低くされています。これは、個人事業主の多くが生活のために使用している飲食代なども経費として計上して節税を図っているためです。

銀行融資では確定申告書の決算内容をもとに審査を行います。そして「返済可能かどうか」を判断するための基準が、確定申告書の所得です。

節税のために所得を低くすれば、審査では「返済していくだけのお金がない」という判断になります。節税のために所得を低くしすぎてしまうと銀行融資の審査に通過することが難しくなってしまうので十分に注意しましょう。

貸借対照表を作成していない

個人事業主は確定申告の際に必ずしも貸借対照表を作成する必要がありません。個人事業主は65万円の青色申告控除を受ける場合以外には貸借対照表を作成する必要がありません。

そもそもあまり利益が出ていない個人事業主は65万円の控除を受ける必要がないので貸借対照表は作成していないことが多いのです。

貸借対照表は、事業者の総資産の内訳を示したもので、銀行が企業を分析する上では欠かすことができない財務書類です。貸借対照表がなければ、銀行は個人事業主の財務分析をすることができず、安全な事業者か否かを知ることができません。

一般的には貸借対照表がなければ、銀行で格付けを得ることができません。格付けを得ることができなれば、銀行から借りることができる資金は著しく範囲が限られることになります。

個人事業主は貸借対照表を作成していない事業者が非常に多いことも銀行から融資を受けることが難しい理由の大きな1つです。

まとめ

個人事業主は資金調達手段が限られます。

銀行融資は審査に通過しにくく、ビジネスローンは個人信用情報に問題がなければ資金調達可能ですが、過去の金融事故などの問題があれば借りることはできません。

個人事業主はファクタリングでも資金調達することができますが、取引先に秘密で資金調達することができる2社間ファクタリングは債権譲渡登記をすることができない個人事業主では借りることが難しいのが実情です。

しかし、今は個人事業主の資金調達に対応しているファクターも増えています。

自社の信用度を向上させていけば個人事業主でも2社間ファクタリングに応じてもらえる可能性は決して低くありません

2社間ファクタリングで資金調達したい場合には、まずはファクターへ相談してみましょう。