企業経営をしていると「いくら売上がある」「いくら利益がある」と、売上や利益にばかり目を奪われてしまう人が多いようです。
確かに、企業経営において売上や収益管理は非常に重要です。
しかし、売上や収益以上に重要になるのが実は資金繰りです。
資金繰りが上手くいっていないということは、企業の手元にキャッシュが少ないということです。
そのため資金繰り管理を怠ると資金ショートして倒産してしまう可能性もあります。
会社は赤字では倒産しませんが、資金ショートすると倒産します。
そのため、資金繰りは企業経営において最も重要と言っても過言ではありません。
この記事では資金繰り管理の概要や重要性を解説するとともに、企業の資金繰りを改善することができる23の方法を詳しくご紹介していきます。
今や資金繰りは収益管理と同じくらい重要なものとして企業評価の重要ポイントになっています。
資金繰りを改善する方法を把握して、自社でもすぐにできることがないかどうか確認しましょう。
資金繰りの仕組みとは?
資金繰りとは、会社のお金の入出金の管理のことです。
企業活動は売上があれば代金が現金として入金になり、また、仕入れや人件費や水道光熱費などの経費の支払いのために現金が流出するというお金の流れの繰り返しです。
そのため、時には支払いのためのお金が不足することもあります。
企業経営者や財務担当者は、支払いのためのお金が不足しないよう現金の過不足を調整しなければなりません。
そして現金の過不足を調整することを資金繰りと言います。
企業にとって非常に重要な資金繰り管理ですが、まずは資金繰りの仕組みや重要性について詳しく解説していきます。
未入金でも売上は計上される
会計上、たとえ売上先から入金がながったとしても売上は計上されます。
日本の会計は発生主義で行われるためです。
発生主義とは、売上の収入や費用の支出額が確定した時点で、売上や支出を帳簿上に計上することです。
例えば、取引先に商品を収めた時点で売上は計上されます。
この時点では以下のように仕訳が行われます。
例)取引先に掛けで10,000円の商品を販売した。
借方 | 貸方 |
---|---|
売掛金 10,000円 | 売上 10,000円 |
日本の商慣習では、売上や支出が発生した時点で、すぐに現金のやり取りが行われることはほとんどなく、上記のように売上が発生した時点では、売上が増えたのと同時に、売掛金という資産が増えたことになります。
企業同士の取引であれば、1ヶ月単位など、まとまった単位で請求を行い、後から支払いをするのが一般的です。
そのため、いくら売上があってもすぐには手元の現金は増えません。
売上の発生と、売上代金の入金のタイミングがずれるので、損益計算とは別に資金繰り管理もしっかりと行う必要があります。
企業は資金がないと支払いができない
当然ですが、企業は資金がないと支払いができません。
企業は赤字で倒産するのではありません。資金がないから倒産するのです。
資金がないと会社の経営を存続するために必要不可欠な次のような支払いができません。
- 従業員への給料支払い
- 取引先への支払い
- 借金の返済
- 税金の支払い
- 事務所賃料の支払い
例えば、資金不足によって振り出した手形の取り立てができなければ、手形は不渡りとなり、銀行取引停止処分が課せれられ、実質的には倒産します。
このように資金がなければ、会社経営ができず支払いができないため、会社は倒産します。
そのため、赤字でも手元に資金が豊富にある企業は倒産しません。
倒産を防ぐために支払いに必要な資金をどのように確保するのかも、資金繰りにとって非常に重要なポイントです。
資金繰りが悪化すると黒字倒産する可能性も
資金繰りが悪化すると、黒字倒産するケースもあります。
黒字倒産とは損益計算書上では利益が出ているのに、資金繰りが上手くいかずに支払不能になり倒産することです。
掛け販売で売上があると次のように仕訳が行われます。
借方 | 貸方 |
---|---|
売掛金 | 売上 |
売上があれば、売上勘定は増えていき収益も大きくなるかもしれません。
しかしその対価として得ている売掛金という資産は「将来お金を受け取る権利」というだけで、支払いなどには一切使用できません。
いくら売上ばかりが増えても、売掛金が支払い可能な現金に変わらない限り、企業経営は苦しいままです。
実際に、東京商工リサーチの調査によると、2022年の倒産のうち約6割が赤字ですので、残りの4割は黒字倒産ということになります。
参考:東京商工リサーチ|2022年「倒産企業の財務データ分析」調査
資金繰り管理を怠ると、企業に収益が出ているのに、倒産するリスクも十分にあります。
資金繰り管理は非常に重要です。
資金繰りの3つの意味
資金繰りを健全にすることには企業にとって次の3つの意味があります。
- 財務が安定化する
- いざという時に経営危機を回避できる
- 企業の信用力が向上する
会社経営が安定し、危機対応時にも安心です。
また、企業の信用力が向上するので外部からの評価も高まります。
企業が資金繰りを健全に保つことの3つの意味について詳しく解説していきます。
財務が安定化する
資金繰り管理を厳格に行うことによって財務が安定します。
財務とは予算管理の他に、資金管理や資金調達を行う仕事です。
手元に資金があれば、外部からの資金調達をする必要がなくなるので負債が増えることはありません。
また、手元に資金が潤沢にあれば、企業は様々な成長分野へ投資を行うことも可能です。
資金繰りが円滑になれば、企業の財務が安定するため、支払いに支障がないのはもちろん、投資活動が活発になり、企業はさらに成長できるでしょう。
いざという時に経営危機を回避できる
資金繰り管理を厳格に行い、企業に潤沢な資金があれば、いざというときに経営危機を回避できます。
企業経営においては急に現金が必要になることは日常茶飯事です。
場合によっては取引先の倒産によって、数百万円単位の資金の不足が急激に生じる可能性もあります。
このような緊急時には、銀行融資を待っていたら間に合いません。
銀行融資には2週間程度の時間がかかるためです。
手元に資金があれば、融資などの外部からの資金調達に頼らなくても、危機に対処できます。
会社経営の危機対応としても、資金繰りを厳格に行い、手元資金の確保に努めることは非常に重要です。
企業の信用力が向上する
資金繰りが安定していることによって外部からの企業の信用力も向上します。
企業が外部に決算内容を公開する財務諸表には、貸借対照表、損益計算書のほかに「キャッシュフロー計算書」というものがあります。
キャッシュフロー計算書は、期間中の現金の増減と、その内訳や原因を表す書類です。
企業が外部から評価される際には、損益計算書でいくら利益が出ていても、キャッシュフロー計算書で現金がマイナスであれば「資金繰りが上手くいっていない」と評価されます。
企業が外部の金融機関や取引先から評価されるためには、キャッシュフロー計算書の内容も非常に重要です。
資金繰りが円滑になることによって、企業に対する外部からの信用が向上し、投資のための資金調達なども円滑に進められるでしょう。
資金繰りとキャッシュフローの違い
資金繰りと似た言葉としてキャッシュフローという言葉があります。
資金繰りとキャッシュフローはどちらも「現金の流れ」という視点では同じですが、将来に向けたものなのか、過去の実績なのかの違いがあります。
資金繰りとキャッシュフローの違いについて、詳しく解説していきます。
資金繰りは「将来に向けた資金の予測と管理」
資金繰りは「将来に向けた資金の予測と管理」です。
将来のいつの時点で、いくらの支払いが発生し、支払いのために必要な現金はあるか、入金はいつあり、入金後の残高はいくらで、支払いのための現金は過不足ないかということを予測します。
そして、資金が不足するのであれば、不足分の資金をどのように調達するのかを検討し、必要な資金調達を行うことも資金繰りの重要なミッションです。
資金繰りは「将来予定されている支払いに現金が不足しないよう、入出金の予定を予測して、不足があるのであれば、資金調達を検討する」ことが主な目的です。
端的に言えば、将来の支払いが円滑にできるよう、予測と調達を行うことがも主な仕事になります。
キャッシュフローは「過去のある一定期間の資金の流れをチェックすること」
キャッシュフローは過去のある一定期間の資金の流れをチェックすることです。
例えば、昨年1年間はいくらの入金があり、いくらの現金の流出があったのかをチェックし、実際に現金が増えたのか減ったのかを確認します。
またキャッシュフローは次の3つにキャッシュフローへ細分化されます。
- 営業キャッシュフロー:商品やモノを販売し、営業活動に必要な支出を支払ったことによる現金の流れ
- 財務キャッシュフロー:借入金や出資などの財務活動によって生じた現金の流れ
- 投資キャッシュフロー:固定資産の売買などの投資活動によって生じた現金の流れ
キャッシュフローがプラスでも、営業キャッシュフローがマイナスの場合には、借入金が増えたり資産の売却によってキャッシュが増えているだけの可能性があり、企業経営にとってよいこととは言えません。
また、収益が出ているのに営業キャッシュフローがマイナスということは、売掛金が回収できていない可能性が非常に高いため、取引先との関係を見直すことも検討すべきでしょう。
このように、キャッシュフローは過去の一定期間において現金が増えたのか、減ったのかを確認を行い、経営分析や経営改善を行うための指標です。
将来の資金を予測して過不足の調整を行う資金繰りとは根本的に異なります。
倒産を回避するために資金繰り管理は非常に重要
資金繰りは倒産を回避するためには最も重要です。
資金が不足して支払いができないと、企業は倒産する可能性が非常に高くなります。
単に赤字というだけであれば、手元に現金があれば支払いはできるため、企業が倒産することはありません。
しかしいくら黒字であっても、売上が入金にならずに売掛金が増えるばかりでは支払手段としては活用できません。
資金繰りを徹底し、将来の現金の流れや残高を詳細に予測し、過不足を調整することで、「支払いができない」という経営危機を乗り越えられるでしょう。
倒産を回避するために資金繰りは経営の中でも最も重要な仕事です。
資金繰りが悪化する理由
企業の資金繰りが悪化する理由は様々ですが、主なものとしては次の7つの理由を挙げることができます。
- 取引先の倒産
- 売上の急激な増減
- 入金サイトが長い
- 支払いサイトが短い
- 不良在庫を抱えている
- 赤字
- そのほかのトラブル
取引先の倒産や売上の減少など、社会的情勢に左右さえるものも原因として挙げられますが、入金や支払いサイトの問題によって資金繰りが悪化することも十分にあります。
何が原因で資金繰りが悪化するのかを詳細に把握することによって、資金ショートを未然に防ぐことができるでしょう。
企業の資金繰りが悪化する7つの原因について詳しく解説していきます。
取引先の倒産
資金繰りが悪化する原因の1つが取引先の倒産です。
例えば、売掛金が残っている取引先が倒産した場合、その売掛金は回収できず不良債権化するため、企業の資金繰りは一気に悪化します。
また、親会社が倒産してしまったら、企業の運転資金の全てが入金にならない可能性もあります。
取引先が突如倒産して資金繰りが悪化することをあらかじめ防げるよう、次のような対応をしましょう。
- 取引先の与信管理を徹底する
- 業況の悪い企業との取引は縮小
- 業績の悪い企業との取引現金での取引のみとする
- 保証ファクタリングを利用する
保証ファクタリングとは、売掛債権の保証をファクタリング会社から得ることで、万が一売掛債権がデフォルトした場合には、その代金をファクタリング会社が補償してくれるというものです。
保証ファクタリングを利用しておけば、取引先が急に倒産しても安心です。
このように、普段から取引先の急な業況悪化に備えてリスク軽減に普段から努めることが重要です。
売上の急激な増減
売上が急激に増えたり減ったりすると資金繰りが悪化します。
売上が急激に増えると、仕入れや人件費など、その分の運転資金も多く必要になるためです。
また、売上が急激に減少すれば、入金額が減少するものの固定費の支払いは変わらないため、やはり資金繰りは悪化します。
売上の増減をあらかじめ予測して、増減に対応できる資金をしっかりと確保しておくことが資金繰り管理には非常に重要です。
最近では注文書を売掛債権と見做して資金化する注文書ファクタリングも普及しています。
注文書ファクタリングを利用すれば、取引先から発注があった段階で、注文書の一部を資金化できるので、売上増加による運転資金の不足を防ぐことができます。
増加運転資金に不安がある場合には、注文書ファクタリングの活用も検討しましょう。
入金サイトが長い
入金サイトが長いと資金繰りは悪化します。
入金サイトとは、売掛金や受取手形などの売掛債権の発生から回収までの時間です。
売掛債権の入金サイトが1ヶ月先であれば、手元に1ヶ月分の運転資金だけを確保しておけば企業運営は可能です。
しかし入金サイトが3ヶ月先の場合には、手元に3ヶ月分もの運転資金を確保しなければ企業運営ができません。
このように、入金サイトが長くなると、企業は手元に多くの資金を確保しなければならないため、入金サイトは資金繰りに大きく影響します。
販売先に対する売掛債権の入金サイトが長いと資金繰りが悪化するため、できる限り入金サイトが短くなるよう交渉することも重要です。
また、ファクタリングや手形割引を利用すれば未入金の売掛債権を最短即日で資金化できます。
入金サイトの長期化によるキャッシュ・インの減少によって資金繰りが悪化しているのであれば、ファクタリングや手形割引を活用して、売掛債権を早期資金化する方法も検討してみましょう。
支払いサイトが短い
支払いサイトが短いことも資金繰りが悪化する大きな原因の1つです。
支払いが1ヶ月先であれば、手元には1ヶ月しか資金が滞留しませんが、3ヶ月先であれば手元に3ヶ月分資金を滞留させられるので資金繰りには余裕が生まれます。
あまりにも支払いサイトが短い仕入先と取引するのは避けた方が資金繰りにはプラスです。
少なくとも、支払いサイトと入金サイトは同じになるよう、仕入先や販売先と交渉した方がよいでしょう。
また、支払いサイトに余裕を持たせ、支払事務を楽にするためには一括ファクタリングを利用するという方法もあります。
一括ファクタリングとは、金融機関との間であらかじめ契約を締結し、取引先への支払いを金融機関が行い、利用企業は後からまとめて代金を金融機関へ支払う方法です。
この方法であれば、短期的な支払いは金融機関が行ってくれるので、自社から資金が流出する日を遅らせることができます。
また、同じように支払い.comのようなクレジットカードで取引先への支払いを済ますようなサービスを利用すれば、取引先への支払いをクレジットカードの支払日まで遅らせることが可能です。
支払いサイトが短い場合には、金融機関や決済代行会社のサービスを利用することで、資金繰りを改善するできるので、利用方法を検討しましょう。
不良在庫を抱えている
不良在庫を抱えている企業も資金繰りが悪化する傾向があります。
不良在庫を抱えているということは、仕入のための費用を支払ったものの、支出分を回収できていないということです。
不良在庫も「棚卸資産」として資産計上されるので、不良在庫をどれだけ抱えても損益計算書ではマイナスになりません。
しかし、不要な仕入れをおこなった分だけ確実に資金繰りは悪化していくため、在庫管理は徹底し、不要な在庫をできる限り抱えないことが資金繰りには非常に重要です。
不良在庫を抱えている場合には、早めに処分するか、在庫を現金化できる次のようなサービスを活用しましょう。
- 金融機関でABLを借り入れる
- 商品在庫ファクタリングを利用する
ABLとは流動資産担保融資のことで、商品在庫を担保として資金調達を行う方法です。
ABLを借り入れることによって、会社が抱えている在庫を資金化できるので、企業の資金繰りは安定します。
また、ファクタリング会社の中には、商品在庫を資金化してくれる業者も存在しますので、不良在庫を早めに処分したいのであれば利用を検討しましょう。
赤字
企業が赤字の場合も資金繰りが悪化します。
赤字とは、支出の方が売上よりも多い状態です。
つまり、入金金額よりも流出金額の方が多いため、手元資金は枯渇してどこからのタイミングが資金が足りなくなってしまいます。
業績不振の際に企業が銀行から融資を受けるほとんどの理由が、赤字によって入金額よりも支出額が大きくなり、手元に現金が不足するためです。
資金繰り管理のためには収支管理も重要になります。
取引先の経営悪化、社会的な不況などを原因として、赤字になって資金が不足するのであれば、金融機関から長期借入金を調達することで、赤字による資金流出分を賄えるでしょう。
長期借入金は返済を数年に渡って長期で行うので、毎月の負担を少なくでき、経営改善するまでの時間を稼ぐことが可能です。
そのほかのトラブル
そのほか、企業の手元からお金が不足する原因としては次のようなものがあります。
- 従業員の横領
- 盗難
- 商品やサービスの不具合や事故に対する補償
- 銀行融資がストップした
- 取引先から予定していた入金が入らない
不測の事態によって、急に現金が流出するような場面や、予定していた入金が入らない場合などは資金繰り悪化の原因になります。
不測の事態で資金繰りが悪化しないよう、日頃から資金繰り表を作成し、手元現金や通帳残高の確認も怠らないようにしましょう。
また、企業経営においては不測の事態で急に資金が枯渇することは決して珍しいことではありません。
急にお金が必要になっても、新たに銀行融資を受ける場合は2週間程度の時間はかかってしまいます。
またファクタリングは即日資金調達できますが、そもそも売掛債権を保有していなければなりませんし、調達額も売掛債権の金額の範囲内です。
そのため、事業性カードローンを保有しておくとよいでしょう。
事業性カードローンは事業資金に利用できるカードローンで枠だけ作成しておけば、いつでも追加借入ができます。
急にお金が必要になった時も、即日資金調達できるので、突然資金が流出した場合に活用できます。
資金繰りを円滑にする3つの基本原則
企業活動において資金繰りを円滑にしたいのであれば次の3つの原則は常に頭に入れて、資金繰りや取引先との交渉を経営管理を行いましょう。
- 売掛金を確実かつ早期に回収する
- 不要な在庫を持たず棚卸資産を圧縮する
- 仕入債務の支払期限は短く
売掛債権と仕入債務の管理は非常に重要ですし、在庫管理も徹底することで資金繰りに余裕が生まれます。
経営者が頭に入れるべき資金繰りに関する3つの基本原則を詳しく解説していきます。
売掛金を確実かつ早期に回収する
売掛金は確実に回収しましょう。
いくら売上があっても売掛金のまま回収できないのであれば、企業にとっては意味がありません。
むしろ売上原価や経費の分だけマイナスになってしまうので、売掛金は確実に回収しましょう。
また、売掛金の回収サイトがあまりにも長いと、それだけ資金繰りは厳しくなります。
入金が3ヶ月先の売掛金で販売した場合には、その分の資金を3ヶ月分手元に持っていなければ、企業は運転できません。
売掛金を確実に回収するため、営業担当者に改修に対しても責任を持たせ、最初の契約時にできる限り短い入金サイトを設定することを心がけましょう。
不要な在庫を持たず棚卸資産を圧縮する
できる限り不要な在庫を持たないことも重要です。
あまりに多くの在庫を抱えると次の2つの理由で資金繰りは悪化します。
- 仕入に伴い現金が流出するが売上で回収できない
- 倉庫などの管理コストが上昇する
在庫を仕入れる際には、当然ながら対価として現金を支払っているはずです。
しかし、この在庫が販売できていないということは、仕入れの際に支払った現金がただ流出しているということですので、資金繰りは悪化してしまいます。
また、どこかの倉庫などを借りて在庫を管理している場合は、在庫の分だけ管理コストも上昇し、管理コストの増大とともに資金も流出します。
さらに、過大な在庫を多く抱えると、経年劣化などによって不良在庫になる可能性もあるため、収益も悪化する可能性があるでしょう。
このように、不要な在庫を多く抱えることによって、資金繰りも収益も圧迫するため、できる限り費用な在庫を持たないことが非常に重要です。
仕入債務の支払期限は長く
買掛金などの仕入債務の支払期限を長くすることでも資金繰りは改善します。
相手先への支払いを先延ばしにすれば、その分だけ企業内部には多くの資金が滞留するため資金繰りにはプラスになります。
仕入先との取引を始める際の基本契約を締結する際に、できる限り支払期限を先に伸ばすよう交渉してください。
できれば、売掛債権の入金サイトと仕入債務の支払いサイトを同じにするのがよいでしょう。
こうすると、取引先からの入金分から支払いができるので、企業内部に資金を滞留させなくても円滑に支払いができます。
資金繰りを改善する方法23選
資金繰りを改善するためには、次のような方法があります。
- 売上が増加時の支出に注意する
- 資金繰り表を作成する
- 税金対策のための支出をやめる
- 売掛金の回収管理の厳格化とサイトの交渉
- 売掛債権にはファクタリングを利用する
- 受取手形には手形割引を活用する
- 支払サイトの長期化交渉
- クレジットカードで経費を支払う
- 複数の借入金を一本化する
- 不要在庫の管理や廃棄
- 予算と実績の比較を毎月実施
- 費用対効果のない経費を削減する
- 外注やアウトソーシングを活用し効率化する
- 利益率の高い製品の販売や製造だけに特化する
- 営業マンの評価基準を売上から利益へ変更する
- 売掛債権回転機関が早い製品や取引先への販売に特化する
- 前年度より業績悪化時に仮決算をして中間納税額を減額させる
- 営業キャッシュ・フローの範囲内で投資を行う
- リースを活用する
- 不要な資産を処分する
- 赤字から脱却する
- 長期借入金を調達する
- 借入金の金利や返済方法を交渉する
- 役員の私財を売却して会社を守る
- 貸付金・仮払金を解消する
ほとんどの方法が企業努力や経営改善、また取引先との交渉によって比較的簡単に試せるものです。
それぞれ、具体的にどのような方法で改善していくのか、詳しく解説していきます。
①売上が増加時の支出に注意する
売上が増加した時こそ、支出の増大に注意する必要があります。
売上が増加した時には、増加した分の仕入れ資金や人件費などのコストが増えるのが一般的だからです。
このように売上増加に伴い増える経費を「増加運転資金」と言います。
増加運転資金に考慮せずに売上拡大に邁進すると、いざ仕入れや製造を行う段階になって、資金が思った以上に多く流出して資金が不足してしまうことがあります。
売上が増加した時には、売上増加に伴い増加する増加運転資金を把握した上で、「資金繰りに問題ない」という状態を確保して営業活動を行いましょう。
また、あらかじめ、増加運転資金が不足することが分かっているのであれば、銀行からの借入金を利用するなど、資金の準備をした上で製造や仕入れを行いましょう。
また銀行からの融資を引き出すことができないのであれば注文書ファクタリングなどを利用しましょう。
②資金繰り表を作成する
資金繰り表を作成し、日々、自社の資金繰りを管理することは非常に重要です。
資金繰り表とは、資金の入金と流出を日々管理して、「現在の残高はいくらか」「どんな支出や入金が発生するのか」「月末の資金の残高はどの程度」を把握するものです。
売上や仕入があっても、その場で現金が動くわけではないので、収支管理と資金の動きは同じではありません。
そのため、売上や経費を計上する損益計算とは別に資金繰り管理を行わなければなりませんが、多くの企業で資金繰り管理までは詳細に行なっていないのが実情です。
たとえ面倒でも日々資金繰り表を作成し資金繰り管理を行なっておくことで、資金の流れや月末に予想される残高をあらかじめ知ることができます。
資金が足りないことを迅速に把握できれば、借入などの資金調達によって手当を行うこともでき、資金ショートを未然に防げるので資金繰り表はできる限り日次で作成するようにしてください。
なお資金繰り表には次の4つの収支があります。
資金繰り改善のためには4つの収支の意味を理解しておくことが重要です。
- 営業収支
- 財務収支
- 経常収支
- 経常外収支
それぞれの収支の意味を詳しく解説していきます。
営業収支
営業収支とは
営業活動による現金の推移を示すものです。
商品やサービスを販売すれば営業収支はプラスになりますし、営業活動に必要な仕入れなど支払いを行うと営業収支はマイナスです。
つまり営業収支とは「本業によってどの程度現金が増えたのか」を示しています。
営業収支がマイナスということは、本業を頑張ってもむしろ現金は流出しているということですので、何かしらの経営改善をする必要があります。
財務収支
財務収支とは、財務活動によって現金が増えたのか減ったのかを示すものです。
財務活動とは借入金の増減、出資による現金増など、主に外部からの資金調達を示します。
借入金によって現金が増えた場合も、財務収支はプラスになるので、財務収支がプラスになることは必ずしもいいことではありません。
むしろ営業収支がプラスで財務収支がマイナスであれば、「本業で儲けたお金で借金を返済している」と判断できるため、企業活動は健全だと判断できます。
資金繰り全体がプラスでも、実は借入金が増えただけで財務収支以外は全てマイナスという可能性もあるため、資金繰り表は詳細を分析することが非常に重要です。
経常収支
経常収支とは企業の経常活動の中で資金がプラスになったのか、マイナスになったのかを示すものです。
営業活動は商品を販売するまでですが、経常活動には利息などの支払いや受け取りなど、本業とは無関係なものの、経常的におこなっている活動まで含まれます。
簡単に言えば「企業の日常的な活動の中で現金が増えたのかを減ったのかを示すもの」と言えるでしょう。
経常収支がプラスであれば、通常の活動の中で現金が増えているということです。
また、営業収支がマイナスでも経常収支がプラスであれば、本業のマイナス分をその他の経常的な活動で補っていると判断できます。
経常外収支
経常外収支とは、突発的に発生した収入や支出まで含めて現金が増えたのか減ったのかを示すものです。
経常外収入には次のようなものがあります。
経常外収入 |
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---|---|
経常外支出 |
|
キャッシュフロー全体がマイナスになっていても、経常外収支だけがマイナスの場合には「偶然大きな投資をした」「突発的な資金の流出があっただけ」と判断できるので、営業収支や経常収支がプラスであれば大きな問題はありません。
一方、キャッシュフローがプラスでも、経常外収支だけがプラスになっているのであれば、「本業での赤字を資産の売却によって賄っただけ」と判断でき、来季以降は資金が不足する可能性があります。
本業以外のところで、どれだけ現金の増減があったのかを経常外収支で知ることで、資金繰りの実態を把握できます。
資金繰り表で将来的な資金の増減を予測し、過不足を調整するとともに、詳細に分析し経営改善にも寄与させるよう心がけてください。
③税金対策のための支出は慎重に
税金対策で車を買ったり、社員旅行に行ったりしている企業も多いのではないでしょうか?
確かに、車両購入や福利厚生費への支出を行うことによって利益を圧縮することができるので、節税対策になることは間違いありません。
しかし、資金によほど余裕がある状態を除いて、このような税金対策はあまり推奨できません。
このような支出は税金対策にはなっても、確実に資金繰りは圧迫されるためです。
例えば車両購入のために500万円支出した場合には、車両の耐用年数が5年の場合、毎年車両代金の20%の100万円は減価償却費として経費計上することは可能です。
しかし、車両を購入した年に500万円の現金は会社から流出し、その500万円を節税によって回収することができるまでには車両の耐用年数である5年間かかってしまいます。
これは資金繰り的に見れば明らかにマイナスになるので、よほど手元に資金が潤沢にある場合意外には、安易に取るべき方法ではありません。
④売掛金の回収管理の厳格化とサイトの交渉
売掛金の回収管理を厳格に行うことも重要です。
売掛金の管理は以下のように厳格に行なってください。
- 期日通りに必ず入金を受ける
- もしも遅れた場合には厳しく督促する
- 支払いに遅れた取引先との取引の継続を検討する
得意先だから「遅れてもまあ仕方ない」という態度であれば、その取引先からの遅れが慢性的なものになり、結果的に自社の資金繰りを大きく棄損する可能性があります。
また、入金までの期間が長い売掛先に対しては、「もう少し早く支払ってほしい」など、入金サイトの短縮を交渉するようにしましょう。
例えば2ヶ月先に入金になる売掛先のサイトを1ヶ月先へ変更することができれば、1ヶ月分自社に資金が早く入金になるので、資金繰りは1ヶ月分改善することになります。
売掛先に中で、サイトの長い取引先に対しては交渉を行なってみましょう。
⑤売掛債権にはファクタリングを利用する
売掛債権を手元に保有しているのであれば、ファクタリングを利用することを検討しましょう。
ファクタリングとは、入金期日前の売掛債権をファクタリング会社へ売却して早期に資金化することです。
ファクタリング会社の中には、申込日当日に資金化に応じてくれる会社も存在するので、資金繰りが苦しい時には大いに活用できます。
また、自社の信用ではなく売掛先の信用で審査を受けられるので、自社の業況が悪く、銀行融資の審査に通過すできない場合でも資金調達可能です。
手数料が高いため、慢性的な利用はおすすめできませんが、万が一の際の資金調達手段としては、ファクタリングも頭に入れておくべきでしょう。
また、取引先の中に入金サイトが遅い会社がある場合には、取引先と交渉して3社間ファクタリングを利用すれば、低い手数料で売掛債権を早期資金化できます。
3社間ファクタリングは回収事務をアウトソーシングできるメリットもあるので、入金サイトが遅い取引先に対しては「ファクタリングを利用したい」と伝え、3社間ファクタリングへ切り替えることを検討してください。
ファクタリングについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
⑥受取手形には手形割引を活用する
取引先から受取手型で代金を受け取っている場合には、手形割引を活用しましょう。
手形割引とは企業が保有する受取手形を銀行で割り引いて資金化する方法です。
簡単に言えば、受取手形を銀行に買い取ってもらうイメージです。
金利が1%〜5%程度と安く、手形発行企業の信用で審査を受けられるため、業況の悪い企業でも銀行から資金調達できる方法です。
また、事前に銀行へ手形割引枠を作成しておけば、申込日当日に資金化できる可能性もあり、緊急時にも活用できます。
受取手形は期日が3ヶ月先とか6ヶ月先など、売掛金よりも長いサイトが設定されることが多い売掛債権です。
期日まで待っていると資金繰りは圧迫されます。
手形割引はファクタリングよりも資金調達コストも低いため、手形を保有している場合には手形割引を積極的に活用して資金繰りを改善しましょう。
ただし、手形割引は償還請求権ありで取り扱われます。
償還請求権とは、万が一手形がデフォルトした際に、申込企業に請求する権利のことです。
手形割引後に手形振出企業が倒産などして手形がデフォルトした場合には、自社が銀行に対して手形代金を支払わなければならないため注意しましょう。
この点は償還請求権なしで行われるファクタリングとの大きな違いです。
⑦支払サイトの延長交渉
自社の仕入先に対して支払いサイトの延長を交渉するのも、資金繰り改善のために有効な方法です。
例えば「1ヶ月先の支払い」と決まっている仕入先に対する支払いを「2ヶ月先」とすることができれば、自社には資金が1ヶ月長く滞留することとなります。
資金繰り円滑化のポイントは「1日でも長く自社に資金を確保する」ということです。
あまりにも支払サイトが短い買掛先に対しては「もう少し支払サイトを長くできないか」などと交渉してみるとよいでしょう。
買掛先に対しては自社は「お客様」ですので、無理のない範囲で多少強気に交渉するのも1つの方法です。
取引先との交渉が難しい場合には、銀行と一括ファクタリングの交渉をするなどして、支払いサイトの延長を検討してください。
⑧クレジットカードで経費を支払う
経費をクレジットカードで支払うことでも資金繰りは改善します。
クレジットカードの支払いは月末締め翌月末払いなどと決まっており、カードで使った代金はすぐに引き落としにはなりません。
経費を現金で支払うよりもクレジットカードでの支払いの方が、1ヶ月〜2ヶ月間支払いが後になるため、その分資金繰りは楽になります。
また、クレジットカードで支払った方が、使った経費が一覧化されるので、無駄な経費の支出がないかどうかの管理が容易になります。
さらに会計処理も簡易にすることが可能です。また、最近では会計ソフトと連動して自動的に会計処理をしてくれるソフトもあります。
現金で経費を精算するよりも精算事務が楽になり、不正が生じる可能性も低くなります。
さらにクレジットカードで利用した経費の金額に応じてポイントも貯まるので、金銭的なメリットもあります。
クレジットカードの中には年会費がかかるものも多いですが、費用対効果は高いため経費の支払いはクレジットカードで行うとよいでしょう。
また、最近では支払い.comのように、取引先への支払い代金を業者へクレジットカードで支払うと、業者が取引先への支払いを代行してくれるサービスもあります。
このようなサービスを活用すれば、取引先がクレジットカードでの支払いに対応していなくても、取引先に対する支払いをクレジットカードで行えます。
できる限り取引先へ現金以外の方法で支払いを行い、企業から現金が流出することを防ぎましょう。
⑨複数の借入金を一本化する
複数の借入金があるのであれば、複数の借入金を一本化することでも資金繰りが改善することがあります。
一般的に複数の借入金を1つにまとめて借入本数を少なくすることで金利や返済額が下がるためです。
借入金を一本化することによって、借入残高の少ない借入金も多い借入金も1つにまとめることができます。
これによって、毎月の返済額が低減することが多いので、その分資金繰りは楽になります。
ただし、借入金の一本化は銀行などに相談し、一本化の審査に通過できなければ利用することができません。
まずは、銀行などに「借入金を1つにまとめたい」などと相談しましょう。
また、返済期間が延びることで毎月の返済額が軽減するものの、結果的に利息負担額は借入後の方が多くなることもあるので、注意してください。
⑩不要在庫の管理や廃棄
不要な在庫を抱えていると資金繰りは悪化します。
売却できない不要な在庫を仕入れたことによって資金が流出することに加え、管理コストなどでも資金は流出するためです。
そのため、不要な在庫を抱えているのはあればできる限り早期に売却するか、どうしても売却できないのであれば廃棄も検討ましょう。
処分することによって倉庫などの管理コストは削減できますし、もしも売却できれば多少なりとも現金が入ってくるので資金繰りには寄与します。
できる限り不要な在庫を抱えないように、日常から在庫管理を厳格に行い、仕入は必要最小限に留めるようにしてください。
⑪予算と実績の比較を毎月実施
経費に関して、予算と実績の比較を毎月行いましょう。
「1年間の経費は〇〇万円」と決めておきながら、細かく管理をしていないことによって予算を超えてしまうということは珍しいことではありません。
「経費は〇〇万円」と決めたら、それを1ヶ月あたりの予算として割り振り、実績が予算を超えていないかどうかを月次で管理しましょう。
もしも超えていたら「翌月分の予算は削る」などの対処ができるので、結果的に1年間を通じて経費の支出を予算内に抑えられます。
資金繰り管理というと、将来の資金の入金や流出の予測や過不足の管理ばかりを気にしてしまいます。
しかし、予算に対して「実績がどうだったのか」という実績管理も非常に重要です。
予実管理をしっかりと行うことで従業員のコスト意識も向上するので、売上だけでなく経費でも月次で予算と実績の管理を行うようにしてください。
⑫費用対効果のない経費を削減する
費用対効果の少ないと思われる経費は削減することを検討しましょう。
節税目的だけの車両の購入や、不必要な保険、新聞広告など「昔から続けてきたから」というような理由だけで支出しているような経費は見直しを検討する必要があります。
経費とは、基本的に収益を向上させるために必要な支出であるべきものです。
そのため経費1つ1つについて「どの程度の費用対効果があるのか」という視点で確認し、費用対効果が認められないのであれば削減を検討しましょう。
⑬外注やアウトソーシングを活用し効率化する
外注やアウトソーシング活用して、業務を効率化することも重要です。
自社の仕事の1部を外注やアウトソーシングに依頼することによって、自社で当該業務に係る人件費をかける必要がなくなります。
人を雇ってしまうと簡単に解雇することはできなくなりますし、福利厚生費なども必要になるので、固定費は大幅に増大します。
外注やアウトソーシングであれば必要な時だけ支出すればよいので、固定費にはならず収益的にも資金繰りも楽になります。
自社の業務の中で「社員が行う必要がない」と判断できるような業務については外注やアウトソーシングに回し、自社の人的資源は営業活動など売上拡大に注力することで、収益力が高く資金繰り円滑な企業体質を作ることができます。
なお、ファクタリングというと資金調達手段として多くの人が認識していますが、実は3社間ファクタリングでは売掛債権回収のアウトソーシングとしても活用可能です。
3社間ファクタリングでは売掛先企業がファクタリング会社に対して代金を支払うため、回収に伴う事務はファクタリング会社が行います。
入金の確認、残高の確認、遅れた場合の督促など、売掛金回収に関する事務は非常に手間がかかります。
3社間ファクタリングを利用すれば、このような面倒な回収事務をアウトソーシングできるので、資金繰りの円滑化だけでなく、経営効率化も実現できるでしょう。
⑭利益率の高い製品の販売や製造だけに特化する
商品やサービスの販売を利益率の高いものへ集中させることでも資金繰り改善に寄与します。
自社の商材の絞り込みを行うということで収益力は強化されますし、資金繰りの円滑化につながります。
複数の商品やサービスを販売しているのであれば、収益力の高い商品やサービスに特化して営業活動をしましょう。
利益率の低い商材を販売することによって、販売コストの分だけ支出は増え、現金の流出も増大します。
同じコストをかけるのであれば利益率の高い商材を販売した方がよいでしょう。
また、利益率の低い商品を販売するのであれば、「将来的には伸びる見込みがある」「会社が主力商品のブランディングのため」など、さらなる収益拡大へと繋がるものを販売する必要があります。
まずは自社の商材の利益率をそれぞれ洗い出しましょう。
その上で「選択と集中」を行い、利益率の低い商材の販売から利益率の高い商材の販売へと転換を図ることで収益も資金繰りも向上します。
⑮営業マンの評価基準を売上から利益へ変更する
自社の営業マンの評価基準を売上ベースから利益ベースへと変更することで、収益と資金繰りが改善することがあります。
売上ベースの評価基準になると、営業マンが自分の評価を上げるために収益力の低い商材を販売したり、大幅な値引きをすることがあり、結果的に「コストの割には利益が出ない」ということになってしまいがちです。
また、支払能力のない会社へ販売し、売掛債権が不良債権化することによって会社にむしろ損害を与える可能性もあります。
つまり、売上ベースの評価基準は営業マンの頑張りが会社の利益につながらないことがあるのです。
しかし利益ベースの評価基準へと変更することによって営業マンは評価を得るために利益獲得を目指すようになるので、収益も資金繰りも向上します。
営業マンの評価基準を利益ベースへと変えるだけで、自動的に営業マンが収益が上がるように動いてくれるので、売上ベースの評価基準を敷いている会社は変更を検討するとよいでしょう。
また、資金繰りのため、営業マンの獲得分としてカウントするタイミングを「販売先から入金があったとき」とすることで、営業マンが販売先の入金管理も行うようになるため、資金繰り改善につながります。
⑯売掛債権回転機関が早い製品や取引先への販売に特化する
売掛債権回転期間とは、売掛債権が資金化するまでどのくらいの時間がかかっているのかという考えで「売掛債権残高÷売上高×365日」で算出します。
回転期間が短い方が早く資金化するということで、資金繰りには回転期間が短い方がプラスになります。
取引先ごとの売掛債権回転期間を算出し、回転期間が短い取引先との取引を特化することによって資金繰りが改善することになります。
また、製品や商品ごとの回転期間を計算し、回転期間の短い製品や商品の販売に特化することでも企業の資金繰りは改善します。
まずは、「取引先ごと」「商品ごと」の売掛債権回転期間を算出し、特化すべき取引先や製品を特定してみるとよいでしょう。
⑰前年度より業績悪化時に仮決算をして中間納税額を減額させる
前年度よりも業績が悪い時には仮決算をしてしまいましょう。
これによって短期的に資金繰りを楽できます。
前年度に一定程度の税金を支払った企業は翌年に税金の中間納付(前払い)が必要になります。
中間納付は次の2つの方法から選択できます。
- 仮決算して中間納税額を算出
- 前年度の支払額を基準として中間納付額とする
当年度の業績が昨年よりも悪化していた場合には、前年度の納付額を基準として中間納付するよりも、仮決算を行なって中間納付した方が納税額が少なくなります。
中間納付の際には「仮決算」と「前年度の支払額」のどちらが得になるのかを検討し、納付する金額が少なくなる方法で納税することで資金繰りの悪化を防ぐことができます。
⑱営業キャッシュ・フローの範囲内で投資を行う
投資を行う際には、営業キャッシュフローの範囲とした方が投資が失敗した場合のリスクを最小限に抑えられます。
営業キャッシュフローとは、会社の「モノを売った」「仕入れた」などの本業の営業活動の中から生み出された現金のことです。
営業活動から得られるキャッシュから投資を行うことによって、借入に頼る必要がないので、例え投資が失敗しても企業の財務状態へ与えるリスクは最小限に留めることができます。
「無理のない範囲の投資」に留めることができるのが、営業キャッシュフローの範囲内の投資です。
投資をする際には「営業キャッシュフローで賄うことができるか」という点を1つの基準とするとよいでしょう。
また、投資額を判断する際にも「営業キャッシュフローの範囲内か」と判断することで、自社の規模に見合った投資かどうかを把握できます。
⑲リースを活用する
リースを上手に活用することでも資金繰りを円滑化できる場合があります。
資産を購入するのではなく、リースを活用することによって資金繰りの大幅な悪化を防ぐことができるためです。
リースを活用することによって手数料の支払いは確かに増えます。
しかし、資産の一括購入をすることによる数百万円・数千万円の多額の現金が一気に流出することを防ぐことができるので、資金繰りの悪化を防ぐことが可能です。
また、車両をリースすれば、車検や自動車税や保険料やメンテナンス代もかからないので、むしろ所有するよりも低コストになるケースもあります。
「資産を購入したら手元の資金が枯渇してしまう」という場合には、リースを活用して資金の流出を防ぐようにしてください。
⑳不要な資産を処分する
不要な資産を処分することは資金繰り円滑化の基礎的な方法です。
処分することによって管理コストはかからなくなりますし、売却代金も手にできます。
特に資産を保有することによって管理コストが必要になり、支出が増えるため資金繰りだけでなく収益まで圧迫します。
例えば車であれば、保険料や車検代や自動車税などが必要す。
不動産も同様に固定資産税などの管理コストによって現金を流出させることになります。
そのため、企業の営業活動にとって必要ない資産はできる限り処分しましょう。
会社の資産目録から本当に必要な資産だけを洗い出し、不要な資産は処分することを検討してください。
また、今は不要な資産や負債はできる限り持たず貸借対照表は小さくする「貸借対照表のオフバランス化」が評価される時代です。
不要な資産を売却することで、外部からの評価が高まるので、資金調達などが容易になる可能性もあるでしょう。
㉑赤字から脱却する
赤字であれば資金繰りは悪くるなります。
支出の方が収入より多くなるため当然と言えば当然です。
会社が赤字であれば、赤字から脱却する方法を考えましょう。
赤字から脱却する方法は基本的には次の2つです。
- 売上を拡大する
- 支出を圧縮する
赤字から黒字に転向することはそれほど簡単ではありません。
しかし、基本的に企業は黒字でなければ事業を継続することはできません。
売上の詳細や支出の詳細を洗い出し、売上を拡大する方法や、削れる支出はないか検討してください。
取引先の金融機関や税理士や会計士へ相談するのもよいでしょう。
㉒長期借入金を調達する
資金繰りを円滑するために、長期借入金を調達するのも有効な方法です。
長期借入金とは、返済期間が1年超で分割で返済していく借入金です。
毎月少しずつ借入金を返済していくため、返済による資金繰りへのダメージを最小限に抑えられます。
短期借入金は、期日が到来したら一括で返済しなければならないため、資金繰り改善には寄与しませんが、長期借入金は資金繰り改善に寄与します。
会社の赤字などが原因で資金繰りが悪化したのであれば、長期借入金を調達し、調達資金が手元にある間に経営改善を行い、その後は少しずつ返済しておきましょう。
ただし、長期借入金は調達したお金が枯渇したあとは、返済がだけが残るので、長期的には返済金の分だけ資金繰りは苦しくなります。
長期借入金によって調達したお金が企業に滞留している間に、売上を拡大するなどの経営改善を行うことを心がけましょう。
長期借入金の調達によって経営改善ができない場合には、資金繰りはさらに悪化するリスクが高いという点に十分注意してください。
㉓借入金の金利や返済方法を交渉する
すでに金融機関から融資を受けているのであれば、金利の引き下げや返済期間の長期化などの交渉を行いましょう。
金利が下がれば利息負担が軽減するため、その分の現金流出を抑えられます。
また、利息負担は営業外費用ですので、経常利益向上にも貢献します。
返済期間を長期化できれば、毎月の返済額が少なくなるので、その分資金繰りは楽になります。
借入金を利用している場合には、金利や返済方法の交渉を金融機関と行いましょう。
ただし、返済期間を延ばすことは「条件緩和」という扱いになり、銀行にとっては「経営状態が苦しい事業者」と判断されます。
条件緩和中の借入金がある間は、追加の借入をするのが著しく厳しくなる点には注意し、よく銀行と相談した上で手続きしてください。
資金繰り改善のためのおすすめ資金調達方法5選
資金繰りを改善するめの方法として、外部からの資金調達がありますが、おすすめの調達方法は次の5つです。
- 金融機関からの融資
- 補助金・助成金
- 出資
- 少人数私募債の発行
- ファクタリング
それぞれの資金調達方法の特徴やメリットデメリットについて詳しく解説していきます。
金融機関からの融資
銀行や日本政策金融公庫から融資を受ける方法です。
銀行や信用金庫は地元自治体と連携して制度融資を取り扱っており、制度融資は信用度の低い中小事業者に対しても1%台〜3%台という非常に低い金利で融資を受けられます。
また、日本政策金融公庫は国が出資する金融機関で、中小企業の資金繰り円滑化が目的です。
そのため、中小企業に対して無担保無保証で低金利融資を行なっています。
金融機関から融資を受けることのメリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・金利が低い ・経営指導やアドバイスを受けられる ・開業前でも融資を受けられる |
・融資までの期間が長い ・審査が厳しい ・税金滞納があると借りられない |
金融機関からの融資はとにかく金利が低いのがメリットです。
また、担当者の知識が深く、借入残高がある間は決算書を提出するため、経営アドバイスを受けられますし、開業前でも開業に必要な資金の借り入れが可能です。
その一方で、融資までに2週間〜3週間程度の時間が必要になりますし、審査が厳しいので赤字や債務超過では審査通過が難しくなります。
また、税金滞納があると融資を受けられないため注意しましょう。
補助金・助成金
国や地方自治体が実施している補助金や助成金を受けることでも資金繰りが改善します。
補助金や助成金には制度の目的があり、その目的を達成するために必要な条件を具備した企業だけが受給できます。
返済が必要ないのでメリットしかないように思える補助金や助成金ですが、デメリットもあるため、メリット・デメリットをしっかりと理解しておきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
・返済の必要がない | ・採択されなければ受け取れない ・所得として課税される ・赤字を補填する補助金はない ・後払いなので自己資金が必要 ・申請は報告が非常に面倒 |
返済の必要がないという点が、補助金や助成金の最大のメリットです。
しかし、そもそも採択されなければ受け取れませんし、補助金によっては採択率は10%以下のものもあり、非常に高いハードルをクリアしなければ受け取れません。
また、受け取った補助金は所得として課税されるので、補助金を受けたことによって所得が大きくなってしまう点にも十分注意しましょう。
さらに赤字を補填する補助金はないので、赤字によって資金繰りに苦しんでいる事業者の方は活用できません。
なお、ほぼ全ての補助金が後払いです。
最初に事業に必要な経費の全てを事業者で支出して、後から補助割合に応じた補助金が入金になる仕組みです。
自己資金が借入金が最初に必要になるので注意してください。
補助金や助成金を受け取るには申請が非常に面倒です。
申請のためのコンサルを依頼し、コンサルへの報酬で100万円以上というケースも珍しくありません。
また、補助を受けた後にも報告が必要になるため、補助金は事務コストも膨大です。
補助金や助成金は大型の投資をする際には活用すべきものです。
しかし単純に「資金繰り改善のため」という目的で使用することには不向きかもしれません。
出資
出資とは、投資家に会社の株式を売却して、出資を受ける方法です。
株式は会社の所有権ですので、出資を受けるということは会社の所有権の一部を売却することです。
出資されたお金は資本金になるので、自己資金となり返済も必要ありません。
出資のメリットとデメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・返済不要 ・バランスシートが改善する |
・経営の独立性が損なわれる |
出資金は自己資金ですので返済の必要がありません。
また、出資を受けた金額だけ資本金が増加するので、自己資本比率(総資産に占める自己資本の割合)が高くなり、バランスシートが改善します。
返済の不要がない自己資金が増えるというメリットがある一方、出資を受けるということは会社の所有権を売却することにもなるため、経営の独立性が損なわれます。
株主から経営方針などについて口出しされる可能性もあるため注意しましょう。
少人数私募債の発行
少人数私募債とは、募集対象となる投資家の数を、50人未満に限定して、一般の投資家にも債券を発行できる社債です。
通常、社債を発行するには「募集対象が適格機関投資家」でなければならなかったり、法律の厳格な基準をクリアしなければならないため、一般の中小企業は発行できません。
しかし少人数私募債であれば、厳しい発行条件がないので基本的にはどんな中小企業でも資金調達できる可能性があります。
メリット | デメリット |
---|---|
・長期の安定した資金調達 ・金利が低い ・対外的信用がアップする |
・募集するのが難しい |
少人数私募債は償還期間が2年から12年の範囲で企業が自由に設定できます。
最長12年もお金を借りることができ、その間は利息の支払いだけですので、長期間安定した資金調達ができます。
金利は企業が設定できますが、一般的には1%〜5%程度と低めです。
資金調達コストが低いのも少人数私募債のメリットだと言えます。
さらに、少人数私募債を引き企業などが引き受ければ、その発行元の企業には「信用がある」という対外的な証明になります。
地元の銀行が引き受ける少人数私募債は、企業の信用力アピールのために発行されていることが一般的です。
ただし、業績がよい企業でないと発行しても引き受ける人が現れないため、財務状態の悪い企業が資金調達するのは非常にハードルが高いと言えます。
ファクタリング
ファクタリングとは売掛債権をファクタリング会社へ売却して、資金調達する方法です。
売掛債権は期日になるまで資金化できない資産ですが、ファクタリングを利用することで期日を待たずに売掛債権相当額を資金化できます。
ファクタリングは資金調達スピードや審査の面でメリットの大きな資金調達方法ですが、コストの面などデメリットの大きな資金調達手段でもあります。
ファクタリングのメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
メリット | デメリット |
---|---|
・売掛先の信用で審査を受けられる ・最短即日で資金調達できる |
・手数料が高い ・売掛債権の範囲内しか資金調達できない ・売掛債権を持っていないと利用できない |
ファクタリングは売掛先企業の信用で審査を受けられるので、申込企業が赤字や債務超過で融資を受けられない場合も資金調達できる可能性があります。
さらに2社間ファクタリングであれば最短即日で資金化できるので、急いで資金が必要な場合も活用できます。
その一方で、手数料が2社間ファクタリングの場合には10%〜20%と非常に高いので、融資と比較した資金調達コストは非常に大きくなります。
また、資金調達できるので売掛債権の金額までですので、高額な売掛債権を手元に持っていないと利用はできません。
融資を受けられない場合や、緊急で資金が必要な場合にファクタリングを利用しましょう。
資金繰り改善に関するよくある質問
- 短期資金よりも長期借入金の方が資金繰りが悪化すると言われる理由はなぜですか?
- 短期借入金とは、短期間の運転資金の穴だけを埋めるもので、例えば「A社の売上が入金になるまでA社からの受注分の経費の支払資金を借りる」というように、該当する支払い先を限定した借入金です。
そのため、A社からの入金があった時点で一括返済するので金額的にも借入期間的にも無駄な借入が一切ありません。
しかし、長期借入金は借入金の返済を分割で長期間かけて行なっていくので、借入金が手元から枯渇した後は返済金の分だけ確実に手元から資金が流出してしまいます。そしてまた資金繰りのために借入をすると返済金がさらに増えて資金繰りはより苦しくなる・・というような悪循環になるリスクもあります。
銀行は長期借入金を勧誘する傾向がありますが、長期借入金は長期的に企業の資金繰りを悪化させるため、できれば運転資金は短期で借りておいた方がよいでしょう。
- 手元の資金に余裕がある時でも資金繰りの改善には注意する必要がありますか?
- 資金繰りは手元の資金に余裕がある時ほど改善のために努力する必要があります。
資金的に余裕がなくなった後になって、改善しようとしてもすでに現金がないのですから外部からの資金調達を行うくらいしか取るべき方法がありません。
常に手元の資金に余裕を持たせておくことが資金繰りのポイントですので、手元の資金に余裕がある時も不要な資金流出がないように、資金繰り管理を徹底するとともに改善を検討してください。
- 資金繰り改善を相談できる専門家を教えてください
- 資金繰りの改善は資金繰り改善の専門家である資金繰りコンサルなどへ相談するとよいでしょう。
ただし、資金繰りコンサルに相談すると顧問料などがかかるので、最初から資金繰りコンサルを利用することは慎重に検討する必要があります。
メインバンクや顧問税理士やファクタリング会社など、日常から取引のある専門家へ相談することで無料で財務分析や資金繰り改善のためのアドバイスを受けることができる場合もあるので、まずはこれらの無料相談できる専門家を活用するとよいでしょう。
まとめ
資金繰り改善の方法は多数ありますが、いずれの方法も基本的には「経営にとって無駄なものを省いていく」「取引先からは早く現金を受け取る」などの方法です。
これらを意識して経営改善をすることによって資金繰りは円滑になります。
長く企業経営を続けていけばいくほど企業経営には無駄なものが増えていくことは事実です。
資金繰りを円滑にするため、不要な資産は売却するとともに、取引先との関係も「1日でも長く自社に資金が留まるように」入金や支払いの交渉をすることを心がけましょう。