企業の資金調達方法として、売掛金を期日前に売却して資金化するファクタリングが一般的になっています。
しかし「ファクタリングと銀行融資の使い分け方法が分からない」という方や「銀行融資と比較してどんな点にメリットがあるのか分からない」という人も多いのではないでしょうか?
ファクタリングには早期資金化や審査の面で銀行融資よりもメリットがあります。
しかし、高額な手数料などのデメリットも理解して適切に使い分ければなければ、金銭的な損失が生じることもあるので注意が必要です。
初めてファクタリングを利用する方のため、ファクタリングのメリットとデメリットを詳しく解説します。
ファクタリングを上手に活用することによって資金繰りの改善に繋がるだけでなく、外部からの評価が向上したり、より効率的な経営ができる可能性もあります。
ファクタリングのメリットをしっかりと理解して、ファクタリングを活用した企業経営の向上に繋がるようにしましょう。
ファクタリングとは?ファクタリングの5つの特徴
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社という、売掛債権を買い取る業者へ売却して早期に資金化する方法です。
ファクタリングには主に次の5つの特徴があります。
- 売掛債権を売却して資金調達
- 審査の対象は売掛先企業
- ノンリコースで貸し倒れリスクを排除できる
- 2社間と3社間の2つの契約形態が存在する
- 最短即日で資金調達
ファクタリングの5つの特徴について詳しく解説していきます。
売掛債権を売却して資金調達
ファクタリングとは売掛債権の売却です。
売掛金などの資産を売却して、現金という資産と交換しているだけですので、会計的には会社が保有する不動産や有価証券を売却して資金化する行為と全く変わりません。
融資のように負債を新たに発生させて資金化する訳ではないので貸借対照表で負債が増えるわけではないのがメリットです。
そのため、ファクタリングは取引先に対する売掛債権さえ手元に持っていれば資金調達できる可能性があります。
審査の対象は売掛先企業
ファクタリングで審査の対象になるのは売掛先企業です。
ファクタリングは売掛債権という「期日になるとお金を支払ってももらえる権利」と売却する行為です。
そのため、売掛先企業が期日通りに資金を支払えるかどうかが、ファクタリング会社にとって「資金を回収できるかどうか」という点で重要なポイントになります。
売掛先企業が大手企業や優良企業であれば非常にスムーズに審査に通過できますし、これまで取引の中で支払いに遅れのない企業であれば高い確率で審査に通過できるでしょう。
申込企業はそれほど高いウェイトで審査されないので、赤字や債務超過で融資審査に通過することが難しい企業でも審査に通過できる可能性があります。
ノンリコースで貸し倒れリスクを排除できる
ファクタリングがノンリコース(償還請求権なし)で融資されます。
償還請求権とは、債権を売却後に履行されなかった(期日通りに支払われなかった)場合、債権をもともと保有していた申込企業へ代金を請求できる権利です。
そのため、ファクタリングが償還請求権ありで行われるのであれば、ファクタリング後に売掛先企業が倒産すると申込企業がファクタリング会社へ代金を支払わなければなりません。なお手形割引は銀行との間でウィズリコース(償還請求権あり)で行われる債権譲渡です。
ファクタリングはノンリコースで行われるので、ファクタリング後に売掛先企業に万が一のことがあってもファクタリング会社への支払義務は生じません。
売掛債権には未回収リスクがつきものですので、ファクタリングで売掛債権を売却すれば、売掛債権の未回収リスクまで一緒に売却できるのはファクタリングだけの特徴です。
2社間と3社間の2つの契約形態が存在する
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという2つの契約形態が存在します。
2社間ファクタリングは申込企業とファクタリング会社だけで契約します。
一方、3社間ファクタリングは申込企業と売掛先企業とファクタリング会社の3者で契約するファクタリングです。
2社間ファクタリングは売掛先企業が契約に介在しないので、売掛先企業にファクタリングを利用したことを知られません。その代わりに売掛債権期日に売掛先企業から代金が入金になったら自社でファクタリング会社へ返済しなければなりません。
3社間ファクタリングは最初から売掛先企業の同意を得て3者で契約するファクタリングです。
売掛債権の期日になると売掛先企業がファクタリング会社へ代金を支払うので、申込企業は資金調達後は何もする必要がありません。期日の支払手続きが簡単なのが3社間ファクタリングです。
売掛先企業との関係性や資金が必要なタイミングに合わせて、契約形態を選べるのもファクタリングの特徴です。
最短即日で資金調達
ファクタリングは最短即日で資金化できる場合があります。
通常、企業が資金調達する際には、数週間程度の時間がかかるのが一般的です。
しかし、ファクタリングは売掛債権の売却という非常にシンプルな資金調達方法ですので、審査に時間がかかりません。
特に申込企業とファクタリング会社の2社だけで契約を締結する2社間ファクタリングは最短即日で入金できるファクタリング会社も多数存在します。
ファクタリングを融資などの他の資金調達方法と比較した場合のメリットについて詳しく解説していきます。
メリット①自社に信用がなくても資金調達ができる
ファクタリングのメリットとして1つ目にあげることができるのは自社に信用がなくても資金調達ができるという点です。
銀行融資はもちろん、ノンバンクのビジネスローンでさえ、審査されるのは自社の業況です。
審査基準の違いはあるものの、融資では自社に信用がなければ資金調達をすることは不可能です。
しかし、ファクタリングは審査の基準が融資とは全く異なります。
自社に信用がなくても売掛先の信用次第で資金調達ができる可能性があるのです。
審査されるのは売掛先
ファクタリングで主に審査されるのは自社ではなく売掛先企業です。
自社とファクタリング会社の取引は売掛金の売買だけです。
売掛金の期日になったら売掛金を支払うのは自社ではなく売掛先であるため、ファクタリング会社にとっては自社の信用よりも売掛先企業の信用が重要になります。
そのため、売掛先企業に信用があれば資金調達できますし、売掛先企業に信用がなければ資金調達ができません。
ファクタリングは売掛先企業の審査が重要になります。
銀行融資を断られても資金調達の可能性がある
ファクタリングは銀行融資を断られても資金調達できる可能性があります。
ファクタリングでは自社の信用よりも売掛先の信用が重視されます。
銀行融資やノンバンクの融資では、自社の信用が重要ですので、赤字や債務超過などの場合には融資審査に通過できないことがあります。
融資では、自社に信用がないとお金を借りることができませんが、ファクタリングでは自社に信用がなく融資を売れることができない企業でも、売掛先に信用さえあれば資金調達が可能です。
銀行や日本政策金融公庫などで資金調達できない場合でも、ファクタリングであれば審査に通過して資金調達できる可能性があります。
税金の滞納があっても資金調達の可能性がある
ファクタリングは税金の滞納があっても審査に通る可能性があります。
ファクタリング審査では税金の滞納があるかどうかは確認されないことが多いためです。
銀行融資では税金の滞納があると、まずお金を借りることはできません。
このため、税金の滞納前に融資申込をする必要があります。
ファクタリングは税金の滞納があっても資金調達できるので、滞納している税金の支払手段としてもファクタリングは活用することができます。
ただし、一部のファクタリングでは納税証明書の提出が必要になるため、税金滞納がある場合に審査に通過できないことあるので注意しましょう。
メリット②資金繰りが改善する
売掛金の期日前に資金化する行為がファクタリングですので、売掛金という期日にならなければ使い道のない資産を資金化することができるのは大きな魅力です。
ファクタリングは短期的に見れば企業の資金繰り改善に寄与するというのはやはりメリットと言えるでしょう。
売掛金は期日になるまでは活用できない
売掛金は将来的にお金を受け取れる権利というだけであって、期日になるまでは支払手段として活用できない資産です。
一方、同じく売掛債権である手形は裏書譲渡によって取引先への支払手段として活用することができますが、売掛金は期日になるまで活用方法がありません。
そのため、利益がある会社でも売掛金が多い会社は資金繰りが悪化しているケースを珍しくありません。
ファクタリングによって現金になり資金繰りは改善
ファクタリングは支払手段として活用方法がない売掛金という資産を活用できる有効な手段です。
ファクタリングは売掛金を期日前に売却する方法ですので、期日前であってもあらゆるところへ支払い可能な現金という資産に換えることができます。
短期的には企業の資金繰りは大きく改善することになり、資金ギャップを埋めるために銀行借入をする必要はなくなるでしょう。
ただし、ファクタリングの高額手数料負担によって収益が圧迫されるので、長期的には資金繰りが悪化する可能性があるという点には十分に注意する必要があります。
メリット③取引先に秘密で資金調達できる
ファクタリングは取引先に秘密で資金調達できる点もメリットです。
ファクタリングは売掛金を売却することですので、「ファクタリングを利用して資金調達することが取引先に知られてしまうのでは?」と心配する人も多いでしょう。
しかし2社間ファクタリングであれば取引先に秘密で資金調達できるので、自社の信用を落とす心配もありません。
ただし2社間と3社間でこの点は大きく異なり、3社間ファクタリングを利用する場合は、取引先の同意があらかじめ必要になるので注意しましょう。
2社間ファクタリングは取引先への通知なし
2社間ファクタリングは取引先への通知が必要ありません。
2社間ファクタリングは売掛金代金が売掛先から自社へ振り込まれ、自社がファクタリング会社へ送金するため、取引先企業はファクタリング契約に介在しないためです。
ファクタリングをしていることが取引先へ知られてしまうと「資金繰りに困っているかもしれない」と自社がネガティブに判断されてしまい、今後の取引に悪影響してしまう可能性があります。
2社間ファクタリングは取引先に知られずにファクタリングができるので、このような心配はありません。
3社間ファクタリングは取引先の同意が必要なので要注意
ファクタリング全てが取引先に秘密にできるわけではありません。
3社間ファクタリングは取引先の同意が必要です。
3社間ファクタリングは、あらかじめ売掛先企業の同意を得て、申込企業・売掛先企業・ファクタリング会社の3者で契約するファクタリングです。
そのため、売掛金期日になったら売掛先が直接ファクタリング会社へ売掛金代金を支払ういます。
売掛先の同意なしでは契約ができないので、必ず売掛先に知られてしまうことになります。
3社間ファクタリングは2社間ファクタリングと比べて手数料は低いですが、売掛先に秘密にできないので注意しましょう。
メリット④銀行に秘密で資金調達できる
ファクタリングは銀行や投資家などの外部の利害関係者に秘密で資金調達することが可能です。
銀行や投資家は「ノンバンクなどからお金を借りている」と分かると、「この会社は資金繰りが相当苦しい」と判断して格付けを下げることもあります。
しかし貸借対照表に計上されることがない資金調達であるファクタリングは銀行などの外部の人に利用を知られにくいのです。
外部の評価が下がりにくいという点もファクタリングのメリットです。
バランスシートには記録されない
ファクタリングをしたことはバランスシート(貸借対照表)には記録されません。
借入の場合にはバランスシートの「借入金の明細」によって、どこからいくら借りたのかを詳細に知られてしまいます。
しかし、ファクタリングは売掛金を現金に変えるだけですのでバランスシートには記録されません。
よほど詳細に決算書を分析しない限りはファクタリングをしたことを知られることはありません。
外部から資金調達したことが決算書から分かりにくいというのもファクタリングのメリットです。
ビジネスローンは銀行の評価が下がることも
借入を行うと明細がバランスシートに記録されるので、銀行などに「どこから借りているのか」ということを知られてしまいます。
この際にノンバンクのビジネスローンの借入があることを銀行や投資家に知られてしまうと企業の格付けが下がってしまうことがあります。
銀行はノンバンクから借入があることを知られてしまうと「資金繰りが苦しい」「経営状況が相当悪い」「どこかの銀行から融資を断られた」などと著しく評価が下がってしまうケースがよくあります。
貸借対照表に計上されず、負債が増えないファクタリングであれば、利用したからと言ってネガティブな評価をされることはありません。
ビジネスローンで資金調達をするよりもファクタリングの方が企業評価が下落しないというメリットがあります。
メリット⑤オフバランス化によって評価アップ?
ファクタリングは貸借対照表のオフバランス化にも寄与します。
オフバランス化とは不要な資産と負債を持たずに効率よく経営するということで、最近ではできる限り貸借対照表が小さい経営をしていることが評価されています。
借入ではないファクタリングは負債が増えないので借入金よりもオフバランス化になるのです。
また、オフバランス化に伴い自己資本比率やROAなどの経営指標も向上するという効果も期待できます。
ファクタリングは資産も負債も増えない
ファクタリングは売掛金の売却です。
このため、資産も負債も増えません。
100万円の売掛金を手数料10万円で90万円で売却する場合には以下のような仕訳になります。
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 90万円
売上債権売却損 10万円 |
売掛金 100万円 |
現金も売掛金も資産です。
そのため、資産と資産を交換しているだけですので、資産も負債も増えまん。
一方、100万円を借りたのであれば仕訳は以下のようになります。
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 100万円 | 借入金 100万円 |
借入の場合には借入金という負債が増えるので、この分だけ貸借対照表は大きくなってしまいます。
このように、借入よりもファクタリングの方が貸借対照表のオフバランス化に寄与することになるのです。
自己資本比率が借入よりも向上する
また、ファクタリングは借入で資金調達するよりも自己資本比率が向上するというメリットもあります。
自己資本比率とは、資産のうち何%が自己資本で形成されているのかということを示す指標で、高ければ高いほど「安全な企業」と評価されます。
自己資本比率=自己資本÷総資産
という計算式で計算します。
例えば、総資産1,000万円、自己資本500万円の会社の自己資本比率は以下のようになります。
自己資本500万円÷総資産1,000万円×100=50%
・ファクタリングで資金調達した場合
手数料10万円を支払って100万円の売掛金をファクタリングをした場合には以下のようになります。
自己資本490万円(500万円−手数料10万円)÷総資産990万円(総資産1,000万円−手数料分10万円)×100=49.5%
・借入で資金調達した場合
100万円を借りた場合には総資産は100万円増えて1,100万円になり、自己資本比率は以下のようになります。
自己資本500万円÷総資産1,100万円×100=45.5%
このように、同じ金額を調達するのであれば、借入よりもファクタリングの方が自己資本比率は向上します。
ROAが借入よりも向上する
ファクタリングは借入よりもROAが向上するというメリットもあります。
総資産利益率は総資産からどれだけの利益を生み出すことができるのかという指標で、高ければ高いほど、会社の資産を活用して効率的な経営ができているということになります。
利益200万円、総資産1,000万円の会社のROAは以下のようになります。
200万円÷1,000万円×100=10%
・ファクタリングで資金調達した場合
10万円の手数料を払って100万円の売掛金をファクタリングした場合には、利益は190万円、総資産990万円になりROAは以下のようになります。
190万円÷990万円×100=19.2%
・借入で資金調達した場合
100万円を借りた場合を考えましょう。
利益は変わりませんが、総資産は1,100万円になり、ROAは以下のようになります。
ROA=200万円÷1,100万円×100=18.2%
このようにファクタリングの方がROAが向上するので効率のよい経営ができていると評価される可能性が高くなるのです。
メリット⑥与信管理をアウトソーシング
企業にとって取引先の与信管理は重要ですが、ファクタリングをすることによって審査のプロに与信管理をアウトソーシングすることが可能です。
また、新規取引先ともファクタリングを活用することによって安心に取引することができます。
ファクタリングを活用することによって企業が与信管理に割いていた経営資源の効率化を測ることができ、新規取引先も積極的に開拓することができるというメリットがあります。
初めて取引する会社はリスクが高い
企業にとって初めて取引する会社への評価をどうするかは深刻な問題です。
もしも、業況が悪いために既存取引先から取引を切られた会社と取引してしまったら自社は損失を負う可能性が高いためです。
そのため、新規取引先に対しては審査をしっかりと行う必要がありますが、審査ノウハウがない企業が正確な審査ができているとは言えません。
また、審査にかかる時間やコストも軽いものでもありません。
同じく、既存取引先に関しても継続的に審査を行い、急に業況が悪化しないように企業は審査を管理を行う必要があります。
ファクタリング会社が取引先の審査をしてくれる
ファクタリングを利用すれば、ファクタリング会社が「回収に問題ない業者かどうか」を審査してくれます。
自社で行なっていた審査の事務をアウトソーシングしていることになり、自社が取引先や新規取引先の審査を行うよりも正確な審査を行うことができるようになります。
ファクタリングには審査をプロにアウトソーシングできるメリットがあります。
初めて取引をする企業には活用できる
新規で取引を開始する企業とは、最初に取引する時だけはファクタリングをすることで安心して取引を行えます。
ファクタリング会社が「回収に問題ない」と判断すれば、2回目以降も取引を継続できる取引先ということです。
資金繰りに困っていないのであれば、2回目以降はファクタリングを利用する必要もありません。
このように、ファクタリングは審査をアウトソーシングする方法としても有効に活用することができます。
メリット⑦売掛金管理をアウトソーシング
ファクタリングで売掛金の管理もアウトソーシングすることも可能です。
ファクタリングは売掛金を売却することですので、ファクタリングをしてしまえば、売掛金を管理する必要はなくなるためです。
売掛金の回収は事務的な手間が非常に多くなるので、売掛金の管理コストに頭を悩ませている企業も多いのではないでしょうか?
ファクタリングを利用することで売掛金管理コストから解放されることになり、より前向きな仕事に経営資源を傾けることができるようになります。
売掛金の管理は手間とコストがかかる
経理担当者は営業担当者であれば経験があるかと思いますが、売掛金の管理は非常に面倒です。
取引先ごとの台帳を作成し、入金額の確認と残高を管理して請求を出し、場合によっては督促や集金に行かなければなりません。
ファクタリングを利用すれば、回収管理はファクタリング会社が行うのでこのような管理からは解放されることになります。
また2社間ファクタリングは償還請求権がないので、もしも売掛先が代金を支払わない場合でも自社には損失は何も生じません。
余った経営資源を収益事業へ
売掛金管理に使っていた人的資源や時間やコストはファクタリングによって節約ができます。
売掛金の管理に割いていた経営資源をより利益の出る分野へ回すことができるのでファクタリングによって企業がより前向きな方向へ転換を図ることができるのです。
ファクタリングの3つのデメリット
ファクタリングは非常に多くのメリットのある資金調達方法ですが、デメリットも大きいので理解した上で利用する必要があります。
- 融資と比較して手数料が高額
- 売掛債権の金額までしか資金調達できない
- 掛目が発生するので額面金額全額の資金調達は不可能
高額な手数料が発生する上で融資と比較して資金調達額はかなり限られます。
ファクタリングの3つのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
融資と比較して手数料が高額
ファクタリングは融資よりも手数料が割高になるという点が大きなデメリットです。
ファクタリングの手数料相場は以下の通りです。
- 2社間ファクタリング:10%〜20%程度
- 3社間ファクタリング:2%〜8%程度
ファクタリングは1ヶ月先に期日になる売掛債権でも上記の手数料が発生します。
たった1ヶ月の資金調達のために例えば10%もの手数料が発生するのであれば、年利に換算すると120%もの高額な手数料がかかるということです。
融資であればいくら高くても年利15%〜18%程度ですので、ファクタリングの資金調達コストは融資の10倍程度になってしまいます。
ファクタリングの手数料は営業外費用ですので、あまりにもファクタリングの手数料が高い場合には、経常利益が圧迫されます。
資金調達コストが非常に高くなるという点は、ファクタリングの大きなデメリットです。
売掛債権の金額までしか資金調達できない
ファクタリングで資金調達できるのは売掛債権の金額の範囲内が限度です。
融資であれば月商の何倍もの金額の調達ができますが、ファクタリングでは売掛債権の金額を超える調達は絶対にできません。
そのため、ファクタリングで高額な設備資金などの調達を行うことは不可能でしょう。
ファクタリングでは多くても1ヶ月分程度の運転資金の調達しかできない点に注意しなければなりません。
掛目が発生するので額面金額全額の資金調達は不可能
ファクタリングでは掛目が発生します。
掛目とは、売掛債権のうち何割を買い取るのかという割合のことで、ファクタリングを実施すると「売掛債権金額×掛目ー手数料」で計算された金額が入金になります。
例えば、100万円の売掛債権を掛目70%、手数料10万円でファクタリングする場合には、「100万円×70%ー10万円=60万円」が入金になり、残りの30万円は売掛債権の代金が支払われたタイミングで入金になります。
ファクタリングで高額な売掛債権を売却したとしても、掛目が存在することによって売掛債権の全額は資金化できないので注意してください。
2社間ファクタリングのメリット・デメリット
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングは「売掛債権を売却して早期資金化する」という点以外は異なる点が多くなっています。
そのため、2社間、3社間のメリット、デメリットを理解して適切に使い分けることが重要です。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングのメリットとデメリットを詳しく解説していきます。
2社間ファクタリングのメリット
2社間ファクタリングのメリットは主に次の2点です。
- 取引先にファクタリング利用を知られない
- 最短即日で資金化できる
取引先に知られることなく、最短即日で必要な資金を調達できます。
3社間ファクタリングと比較した場合の2社間ファクタリングのメリットについて詳しく解説していきます。
取引先にファクタリング利用を知られない
2社間ファクタリングは取引先企業にファクタリングを利用したことを知られない点が大きなメリットです。
2社間ファクタリングは売掛先企業とファクタリング会社の2社だけで契約し、売掛債権期日になると売掛先企業から申込企業へ入金があり、そのお金を申込企業がファクタリング会社へ送金します。
そのため、期日通りに代金を支払いさえすれば、売掛先企業へファクタリングの利用を知られることはありません。
ファクタリングを利用したことを売掛先企業に知られてしまうと、「資金繰りが悪化している」「経営に不安がある」などと自社をネガティブに判断されて、取引先との取引継続に悪影響する可能性があります。
2社間ファクタリングであれば、取引先企業へファクタリング利用を知られる心配がないので、取引先との関係悪化を危惧する心配なく資金調達できます。
最短即日で資金化できる
2社間ファクタリングは最短即日で資金化できるのが大きなメリットです。
契約当事者が申込企業とファクタリング会社だけですので、2社間ファクタリングは契約手続に時間がかかりません。
さらにオンライン完結型のファクタリングであれば、審査時間も30分〜2時間程度で完了し、契約もWEB上で完結するため、当日中に契約が終了し、当日中に自社の口座へ振り込みを受けられます。
3社間ファクタリングでは資金化できるまで1週間〜2週間程度の時間がかかり、融資と資金調達スピードは変わりません。
2社間ファクタリングであれば、最短即日で資金調達できるので急いで資金が必要な場合も活用できるでしょう。
2社間ファクタリングのデメリット
2社間ファクタリングを利用する際には次の2点に注意しましょう。
- 手数料が高い
- 個人事業主が利用できないことがある
高額な手数料が発生し、個人事業主では利用できないことがあるので注意が必要です。
2社間ファクタリングの2つのデメリットについて詳しく解説していきます。
手数料が高い
2社間ファクタリング最大のデメリットが手数料の高さです。
2社間ファクタリングの手数料相場は10%〜20%程度で、手数料が安いとされるクラウドファクタリングでも10%前後の手数料が発生します。
100万円の売掛債権を手数料10%で売却する場合、10万円もの手数料が発生します。
もしも利益率が10%の商品やサービスを販売しているのであれば、ファクタリングの手数料分で利益が全て失われてしまうことになります。
銀行融資であれば1%台〜3%台の金利で資金調達できるため、融資と比較するとファクタリングの資金調達コストは非常に大きくなります。
個人事業主が利用できないことがある
2社間ファクタリングは個人事業主が利用できない可能性があります。
ファクタリング会社の中には、2社間ファクタリングの際に債権譲渡登記を設定する企業が存在します。
売掛先企業の同意を得ずにファクタリング契約を行うため、2社間ファクタリングには二重譲渡や架空の売掛債権を売却するリスクがあるためです。
しかし債権譲渡登記は法人しか行うことができません。
個人事業主は債権譲渡登記を設定できないため、債権譲渡登記が必須になっているファクタリング会社では、個人事業主はファクタリングを利用できません。
3社間ファクタリングのメリット・デメリット
3社間ファクタリングの2社間ファクタリングと比較した場合のメリットとデメリットについても解説していきます。
3社間ファクタリングのメリット
3社間ファクタリングのメリットは主に次の3点です。
- 手数料が低い
- 返済作業がない
- 売掛金回収のアウトソーシング
低コストで資金調達でき、返済時の手間もかかりません。
3社間ファクタリングのメリットを詳しく解説していきます。
手数料が低い
3社間ファクタリングのメリットは手数料は低い点です。
3社間ファクタリングの手数料相場は2%〜8%程度で、手数料が特に低い銀行系のファクタリング会社では2%を切るような手数料が設定されることもあります。
100万円の売掛債権をファクタリングしたとしても、手数料が2%であれば資金調達コストは2万円ですので、これであればいくら利益率が低い売上だとしても利益が手数料で相殺されてしまうことはありません。
「ファクタリングは資金調達コストが高い」というイメージがありますが、3社間ファクタリングであれば資金調達コストを限りなく低くできるのが最大のメリットです
返済作業がない
3社間ファクタリングでは売掛債権の期日になったら、売掛先企業が直接ファクタリング会社へ支払いを行います。
そのため、3車間ファクタリングでは返済作業がありません。
3社間ファクタリングでは、資金調達した後には申込企業は何もすることがないので、2社間ファクタリングよりもファクタリング利用に伴う手続きは簡単です。
2社間ファクタリングでは売掛先企業から支払われた代金をファクタリング会社へ送金しなければなりません。
しかし3社間ファクタリングは売掛先企業とファクタリング会社が直接やりとりしてくれるので返済に手間がかからないのはメリットです。
売掛金回収のアウトソーシング
3社間ファクタリングは、売掛債権売却によって資金調達した後、売掛債権の回収作業がありません。
売掛債権の回収や督促は全てファクタリング会社が売掛先企業に対して直接行うので、売掛金回収事務からは完全に解放されます。
売掛金の回収作業は、請求金額の確認し、残高の確認し、入金の有無の確認、未入金先への督促など、手続きが非常に煩雑です。
3社間ファクタリングを利用すれば、請求書発行後は何もすることがないので、売掛金回収にかかる非常に煩雑な手間をアウトソーシングできます。
回収から解放された社内のリソースを別の分野へ傾注させることもできるため、3社間ファクタリングは社会の経営改善にも活用できます。
3社間ファクタリングのデメリット
3社間ファクタリングには次の2つのデメリットもあります。
- 取引先にファクタリング利用を知られる
- 入金までに時間がかかる
取引先にファクタリングの利用を必ず知られますし、入金までは時間がかかる点にも注意しなければなりません。
3社間ファクタリングの2つのデメリットをご紹介していきます。
取引先にファクタリング利用を知られる
3社間ファクタリングはあらかじめ売掛先企業の同意を得て行うファクタリングです。
そのため、必ずファクタリングの利用を売掛先企業へ知られることになります。
売掛先企業がファクタリングについて知識や理解を持っていないと、自社の経営悪化を懸念されて、今後の取引にマイナスになることもあるでしょう。
3社間ファクタリングは必ず取引先企業の同意が必要になるので、どの企業でも利用できるわけではなく、自社との信頼関係がしっかりと構築されており、ファクタリングについて理解のある企業としか利用できません。
入金までに時間がかかる
3社間ファクタリングは入金までに時間がかかる点もデメリットです。
契約する際には売掛先企業の同意がないと手続きが進まないため、売掛先企業にファクタリングの利用を理解してもらい、売掛先企業とファクタリング会社の契約事務にかかる時間も必要です。
また、手数料が低く銀行系が取り扱うため審査に時間もかかります。
そのため、ファクタリング会社によっては申込から入金までに2週間以上の時間がかかることも珍しくありません。
2社間ファクタリングが最短即日で資金調達できることと比較すると、この点は3社間ファクタリングの大きなデメリットだと言えるでしょう。
急いで資金が必要なタイミングでは3社間ファクタリングは活用できません。
事業者がファクタリングを利用すべき場面とは?
資金調達コストが融資よりも高くなるファクタリングをあえて利用すべき場面としては次の4つのケースが考えられます。
- 急いで資金が必要なとき
- 融資審査に通過できないとき
- 売掛先の与信状況を知りたいとき
- 売掛債権の入金ギャップを埋めたいとき
これらの状況では銀行借入などよりも融資を利用した方がよいでしょう。
事業者がファクタリングを利用すべき4つの場面について詳しく解説していきます。
急いで資金が必要なとき
急いで資金が必要なタイミングではファクタリングが活用できません。
- 手形や小切手の引き落としの代金が不足してこのままだと不渡りになる
- 取引先から予定されていた入金が「遅れる」と急に連絡があった
- 盗難によって用意していた従業員の給料の支払いができなくなった
このように、会社を経営していれば、緊急でお金が必要になる場面など多々あります。
融資であれば申込から入金までに2週間程度の時間がかかるため、緊急の資金繰りにはほぼ活用できませんが、ファクタリングであれば最短即日で資金調達できるため活用できるでしょう。
融資審査に通過できないとき
融資審査に通過できない場合もファクタリングが活用できます。
ファクタリングの審査は売掛先企業に対して行われるため、売掛先企業の業況に問題がなければ自社の業況に関わらず審査に通過できる可能性が高いためです。
融資であれば申込企業が赤字や債務超過であれば、審査に通過することは困難です。
しかしファクタリングであれば申込企業が赤字や債務超過であっても、業況に問題のない企業の売掛債権さえ持っていれば資金調達できるでしょう。
融資を借りられない場合の代替手段としてもファクタリングは活用できます。
売掛先の与信状況を知りたいとき
取引先の業況が安全なのかどうかの与信状況を知りたい時にもファクタリングは活用できます。
自社が取引先企業の信用を審査することは非常に困難です。
一般の企業は審査のノウハウなどは持っていないためです。
しかし、取引の是非や取引量の確認などのため、取引先の与信状況を定期的に調べることは企業にとって非常に重要です。
このようなタイミングでファクタリングを利用すれば、取引先企業の与信を確認できます。
問題なくファクタリング審査に通過できるのであれば、取引を拡大しても安全ですし、ファクタリングの審査に通過できないよな企業であれば、取引の開始や継続は再検討した方がよいかもしれません。
売掛債権の入金ギャップを埋めたいとき
売掛先企業の中に、請求から入金までの期間が長い取引先が存在するのであれば、そのような取引先に対する売掛債権についてはファクタリングした方が資金繰りにはプラスです。
ファクタリングは売掛債権を売却して期日前に資金化する行為です。
そのため、ファクタリングを利用することで、本来であれば数ヶ月後でなければ入金されない売掛債権が前倒しで入金になります。
売掛先企業の中に、入金までの期日が長い企業があるのであれば、当該売掛先企業と交渉して、手数料の安い3社間ファクタリングで資金調達することで売掛債権の入金ギャップを埋められるでしょう。
ファクタリングのメリットに関する良くある質問
- ファクタリングをすることによって必ず銀行からの評価が向上しますか?
- 必ず評価が向上するというわけではありません。そもそもファクタリングを利用するということは赤字などの事情があるため、根本的な問題が解決しない限りは評価が向上しないこともあります。ただし、ROAが向上するなどのメリットがあることは間違いありません。
- 2社間ファクタリングは絶対に売掛先にファクタリングがバレませんか?
- 期日を守ってファクターへ支払う限りは絶対にバレることはありません。期日に遅れるとファクターが回収のために売掛先に連絡をすることがあるので期日を流すことがないように十分に注意してください。
- 自社に信用がなくても絶対にファクタリングの審査には通過できますか?
- 2社間ファクタリングは資金が納入企業を通過するので、あまりにも納入企業に信頼がないと審査に落ちることもあります。資金が納入企業を通過しない3社間ファクタリングは納入企業に信頼がなくても高い確率で審査に通過できます。
- ファクタリングのデメリットを教えてください。
- 手数料が高いこと、悪徳業者多いことなどをあげることができます。
まとめ
ファクタリングには借入金を利用して資金調達を行うことと比較して次のようなメリットがあります。
- 自社に信用がなくても資金調達
- 資金繰りが改善する
- 取引先に秘密で資金調達できる
- 銀行に秘密で資金調達できる
- オフバランス化に寄与する
- 与信管理をアウトソーシングできる
- 売掛金管理をアウトソーシングできる
資金調達が簡単で、資金繰りを改善できる上、企業内部の経営効率化を図ることも可能です。
その一方、ファクタリングは手数料が高いので、借入金によって資金調達するよりも収益が圧迫されることは間違いありません。
そのため、ファクタリングのメリットとデメリットもしっかりと理解し、できる限りメリットのみを享受できる場面でファクタリングで資金調達を行いましょう。