建設業はあらゆる業種の中でも最も資金繰りが厳しい業種の1つです。

工事完了までには時間がかかり、工事完了までに売上の全額が入金になりません。

そのため、一定程度の現金を手元に持っている企業でないと、常に資金調達の問題を抱えて経営しなければなりません。

手元に現金を持っていない建設業はどのような方法で資金調達をするのがよいのでしょう?

建設業が抱える資金調達に関する問題点や、建設業に最適な資金調達方法について詳しく解説していきます。

工期の長い工事でも万全の資金調達によってしっかりと受注できるようになりましょう。

 

建設業で資金調達が厳しい5つの理由

建設業で資金調達が厳しい5つの理由

建設業に資金調達や資金繰りの問題が起きる原因は主に以下の5つです。

  • 多額の初期資金
  • 売掛金回収までの時間
  • 連鎖倒産のリスク
  • 人件費
  • 薄利体質

多くの理由が建設業が抱える構造的な問題で、最近は高齢化によってコストが増大しているということも原因として挙げられます。

建設業の資金調達が厳しい5つの理由について詳しく解説していきます。

工事に多額の運転資金

建設業は工事の最初の段階で多額の資金が必要になる業種です。

例えば、建設資材の仕入れ資金、重機のリース代金等、工事を始める前に多額の支払いをしなければなりません。

このような工事に必要な資金を手元に持っているのであれば経営上大きな問題はないかもしれません。

しかし、多くの企業が工事の前段階で必要になるこのような資金を手元に持っているわけではないので、外部から資金調達をする必要があります。

建設業は工事に取り掛かる前段階で多額の現金が必要になるので資金調達の問題に直面しやすい業種です。

工事を受注する時には工事に必要な予算の確保も同時に行う必要があります。

売掛金回収の支払いサイトの長さ

建設業は工期がそれなりに長くなってしまうことが一般的です。

1か月や2か月で完了する工事などそれほどなく、多くの工事で数か月程度の時間がかかり、長い場合には1年以上になることも珍しくありません。

建設業は一般的に工事が完了するまでは売上の入金がありません。

そのため、長い工期の工事を請け負う場合には、工事完了までの運転資金を支払うお金を確保しておかなければなりません。

人件費や資材や重機に支払うお金を手元に持っていなければ工事を完遂できないため、ここで資金調達の問題が発生します。

建設業は工期が長いことから、売上の入金になるまでも長くなり、その間の運転資金の問題が生じてしまうのです。

連鎖倒産のリスク

建設業は他の業種と比較して最も連鎖倒産のリスクがある業種の1つだと言えます。

建設業は元請け、下請け、孫請け、孫孫請けなどど、仕事を請け負っている会社の構造が何重にもなっていることが多い業種で、大きな工事であればあるほどこのように業種が何重にも絡んでいます。

そのため、どこかの会社が工事の最中に倒産した場合には、その会社から仕事を請け負っていた会社は、これまで行なった仕事の代金を回収できない可能性が生じてしまい、連鎖倒産が起きやすい状況が生まれることになります。

建設業には業界特有の連鎖倒産のリスクがあるので、このようなリスクを排除するために資金調達方法を工夫したり、売掛債権に保証をつけておく必要性などが生じます。

人件費の高騰

建設業の人件費が高騰しているというのも建設業が資金繰りの問題に直面する理由の1つです。

建設業の職人は若い人があまり入ってきません。

そして、技術の高い職人は高齢化しており、熟練の職人の数がどんどん少なくなっている状況です。

このような状況下で職人の人件費が高騰しており、建設業は以前よりも人件費率が高くなっています。

この人件費の高騰を全て請負価格に転嫁することができれば建設業者の経営には何も問題はありません。

しかし元請けや親会社から仕事を請け負っている会社は、人件費の高騰を請負価格に転嫁することができるわけではないため、人件費の高騰はそのまま企業の収益や資金繰りを圧迫することになり、この分を外部からの資金調達に頼らざるを得ないのが実情です。

多重下請構造と利益率

元請けや親会社から仕事を得ている下請けや孫請けの業者は利益率がそれほど高くありません。

人件費や材料費が高騰しようとも、元請けや親会社の言い値で仕事を受けざるを得ないのが立場の弱い下請けの実情です。

あまり儲からない仕事でも資金繰りのためだけに受けている側面があるので、小さな建設業者は資金繰りがそれほど楽ではありません

そのため、銀行借入などによって資金調達をしなければならないのです。

建設業で利用できる資金調達方法

建設業が外部から資金調達する方法としては以下の2つです。

それぞれ、借りる方法と売掛債権を売却する方法になり、メリットとデメリットが大きく分かれます。

建設業が銀行融資とファクタリングによって資金調達することのメリットやデメリットについて詳しく解説していきます。

銀行融資

銀行から事業資金の融資を借りる方法です。

最もメジャーな資金調達方法ですが、建設業にとってはメリットとデメリットがはっきりと分かれています。

メリット 金利が低い
デメリット 審査が厳しい
融資までに時間がかかる
担保を要求されることが多い

建設業においては工事完了予定日までの手形貸付で融資されることが一般的です。

しかし、この貸付を行う場合には、担保が必要になり、担保を用意することができない建設業者はお金を借りることが難しくなってしまいます。

ファクタリング

ファクタリングとは、ファクターと呼ばれる会社に売掛債権を売却する方法です。

建設業は工事受注の際には必ず売掛債権が発生するので、この売掛債権を資金化するファクタリングは建設業においてよく利用される資金調達方法の1つです。

メリットとデメリットは以下のようになります。

メリット 最短即日資金化
売掛先の信用で審査を受けられる
連鎖倒産を回避できる
売掛先に秘密にできる
デメリット 手数料が高い

ファクタリングは資金化までの時間が早く、連鎖倒産を回避できるなどのメリットがあり、建設業には非常に向いている資金調達方法だということができます。

一方、ファクタリングは手数料が高いのが唯一と言っていいほどのデメリットです。

2社間ファクタリングの手数料が10%〜20%、3社間ファクタリングの手数料が3%〜10%程度ですので、年利2%前後で借りることができる銀行融資と比較して資金調達コストは膨大になってしまいます。

建設業の資金調達に銀行融資が不向きな理由

建設業の資金調達に銀行融資が不向きな理由

建設業の資金調達には銀行融資はあまり向いていません。

  • 工事引当資金の審査の厳しさ
  • 長期運転資金の審査の厳しさ
  • 融資までの時間長さ

これらの理由によって、銀行は喜んで建設業に融資を行うわけではありませんし、建設業も長期分割の運転資金を借りて返済することができる業種ではないので、どちらかと言えば、銀行融資と建設業はあまり相性がよくないということもできるかもしれません。

建設業の資金調達に銀行融資が不向きな理由について詳しく解説していきます。

工事引当資金の審査

建設業が特定の工事のための資金を借りる融資を工事引当資金などと言います。

以前は例えば公共工事などの契約書を銀行に持っていけばすぐに融資をしてくれましたが、最近では工事引当資金の融資は厳しくなっています。

工事引当資金は基本的にプロパーの短期資金で融資されます。

銀行は、担保を用意することができない企業に対してプロパー融資を行わないので、工事引当資金は担保を用意できる企業でないと借りることが難しくなってしまいます。

以前と比較して、工事引当資金がサクサクと銀行から融資されなくなったので、建設業者が工事の必要な資金を銀行から調達することが簡単ではなくなりつつあります。

長期運転資金の審査

建設業者は長期運転資金の審査にも通りにくいと言えます。

長期運転資金は運転資金として借りたお金を数年間かけて毎月分割で返済していくものです。

しかし建設業は毎月安定的に工事があるわけではないので、毎月定額の運転資金を返済していくということに不向きな業種です。

信用保証協会の保証付融資はじめとして、今は銀行の運転資金融資は長期資金がトレンドになっています。

しかし、建設業者は長期運転資金の審査に通りにくい業種ですので、銀行から借りることができる手段が少なくなってしまうというのも建設業が銀行から資金を借りにくい大きな理由の1つです。

融資までに時間がかかる

銀行の借入は融資までに時間がかかります。

運転資金の借入であっても融資までには2週間程度の時間がかかってしまいます。

建設業は急な仕入れや重機の故障などによって、急に高額なお金が必要になることが多い業種です。

このような時に融資までに2週間もの時間がかかる銀行融資を待っていたら、本当に資金が必要なタイミンングで資金が間に合わない可能性も十分に考えられます。

突然に資金需要が発生することが多い建設業にとって、融資までに時間がかかる銀行融資はそもそも不向きだというのも、建設業と銀行融資の相性が悪い理由の1つと言えるでしょう。

ファクタリングが利用しやすい5つ秘密

ファクタリングが利用しやすい5つ秘密

建設業の資金調達にはファクタリングが向いています。

  • 最短即日資金化
  • ノンリコースで連鎖倒産リスクがゼロ
  • 元請け先の与信で審査
  • 保証ファクタリング
  • 国がファクタリングを推奨

資金化までに早く、ノンリコースで行われるので建設業で最も怖い連鎖倒産のリスクがないというのがファクタリングが向いている最大の理由です。

また国も建設業に対してはファクタリングを推奨しています。

建設業にファクタリングが向いている5つの理由を詳しく見ていきましょう。

最短即日資金化

ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがありますが、2社間ファクタリングであれば最短即日で資金化することができます。

2社間ファクタリングはファクターと自社だけの契約です。

契約に売掛先が関与しないので、即日で審査に通過できれば即日契約して即日資金化が可能になります。

例えば「急に重機が壊れた」というような緊急で資金が必要なタイミングでも、ファクタリングであれば即日で資金化することができるので、急ぎで資金調達が必要になることが多い建設業に最適な資金調達方法だと言えます。

なお、手数料が低い3社間ファクタリングでも1週間程度では資金化することができるので、3社間でも銀行融資よりは早く資金調達可能です。

ノンリコースで連鎖倒産リスクがゼロ

ファクタリングはノンリコースで行われるので、ファクタリングをしておけば連鎖倒産のリスクがなくなります。

ノンリコースとは、万が一売掛先が倒産しても、その損失はファクターが背負うので自社には責任が及ばないということです。

前述したように、建設業界は連鎖倒産のリスクが非常に高い業界です。

しかし、売掛債権を事前にファクタリングしておけば、万が一元請け先や親会社が倒産しても連鎖倒産を心配する必要はありません

連鎖倒産のリスクが高い建設業界だからこそ、ノンリコースのファクタリングが非常に向いていると言えるでしょう。

元請け先の与信で審査

ファクタリングで審査されるのは自社の与信以上に売掛先の与信です。

ファクターにとっては「期日通りに売掛債権の代金を支払うかどうか」ということが最も重要になるためです。

そのため、ファクタリング審査では自社ではなく売掛先の信用が重点的にチェックされます。

建設業者が保有する売掛債権は元請け先や親会社が債務者となっていることがほとんどです。

このような売掛債権をファクタリングするということは、自社よりも大きな企業の信用で審査を受けることができるということです。

規模が小さく業況が不安定な会社であっても、建設業者はファクタリング審査に通過できる可能性がかなり高くなります。

規模が小さく業況が不安定な会社が銀行融資を受ける場合には、どうしても厳しい目線で審査されてしまいますが、ファクタリングであれば自社よりも規模が大きな元請け先や親会社の信用で審査を受けることができるので、審査に通過できる可能性は銀行融資よりもファクタリングの方がかなり高いと言えます。

保証ファクタリング

ファクタリングには保証ファクタリングという種類も存在します。

保証ファクタリングとは売掛債権の保証をファクターが行うというものです。

売掛債権に万が一のことがあった時に、ファクターが代金を保証してくれますが、一般の買取ファクタリングのように早期資金化をすることができるわけではありません。

そのため、保証ファクタリングの方が買取ファクタリングよりも手数料は低くなります。

先ほどから説明しているように、建設業界は連鎖倒産が非常に多い業界です。

「手元に資金はあるけど、売掛債権のデフォルトが怖い」という場合には保証ファクタリングを利用することによって手数料を抑えつつデフォルトリスクを排除することができます。

資金調達手段以外にもファクタリングは活用できるので、この点でもファクタリングは建設業に向いていると言えるでしょう。

国がファクタリング利用を推奨

国は建設業のファクタリングの利用を推奨しています。

国は「下請債権保全支援事業」を行なっており、ファクタリングにかかるコスト面の負担を補助しています。

下請債権保全支援事業とは、中小・中堅下請建設企業等がファクタリングを利用する際の手数料を補助するというものです。

実にファクタリングを利用する業界の40%程度が建設業界と言われており、建設業界は国の後押しもあることから多くの建設業者がファクタリングを活用しています。

建設業の資金調達でよくある質問

個人事業主の1人親方ですが、ファクタリングは利用できますか?
個人事業主でもファクタリングを利用することはできます。
ただし、ファクターの中には法人しか取り扱っていないところもあり、個人事業への取り扱いを行うのはOLTAやビートレーディングなどの大手がメインになります。申し込む前には個人事業主でもファクタリングすることができるかファクターへ確認するとともに、できる限り規模の大きなファクターへ申し込んだ方がよいでしょう。
個人の住宅建設でファクタリングは利用できますか?
ハウスメーカーなどの下請けで住宅建築を請け負っているのであれば売掛先はハウスメーカーになるのでファクタリングを利用することは可能です。
しかし、個人と直接契約を結んで住宅を建築する場合にはファクタリングを利用することはできません。
ファクタリングによって売却することができる売掛債権は法人のものだけで、個人に対する売掛債権を売却することは不可能です。
そのため、個人と直接契約の場合には当該売掛債権をファクタリングで資金化することは不可能です。
工期が長く支払いサイトが数ヶ月先の売掛債権もファクタリングしてもらえるのでしょうか?
期間が長くても、売掛先の経営状態に問題がなければファクタリングすることは可能です。
ただし、一般的にサイトが短い方が手数料は低くなり、サイトが長い方が手数料は高くなる傾向があります。
そのため、工期が長く支払いサイトが長い売掛債権のファクタリングは手数料が高くなってしまう可能性があります。
できる限り手数料を下げるためには売掛先の同意を得て、3社間ファクタリングを実施するなどの工夫をした方がよいでしょう。
経営者が信用情報ブラックですがファクタリングは利用できますか?
ファクタリングでは経営者の個人信用情報とは無関係に審査を受けることができます。
そのため、経営者が信用情報ブラックだったとしても売掛債権の信用に問題がなければ審査に通過することはできるでしょう。
ファクターは個人信用情報機関に加盟しているわけではないので、審査では個人信用情報がブラックかどうかすら分かりません。
信用情報に自身がない方も気にせずファクタリングに申し込むことができます。
審査に通りやすい工事はどんな工事なのでしょうか?
できる限り売掛先が信用できる方が審査には通過しやすくなります。
そのため、公共工事や大企業からの受注などの方が「期日通りに代金を支払う」と判断されるので審査には通過しやすいでしょう。
また、元請け先が大きな企業であればあるほど、期日通りに支払う信憑性が高くなので手数料が低くなる傾向があります。
複数の売掛債権を保有しているのであれば、規模の大きなところから受注した工事にかかる売掛債権の方が審査に通過しやすく手数料も低くなります。
3社間ファクタリングを利用しても元請け先との関係は大丈夫でしょうか?
元請け先がどのように判断するのかによって左右され、元請け先によっては「ファクタリングを利用するということは資金繰りが苦しく倒産のリスクがあるかもしれない。心配だから今後の取引を再検討しよう」などと悪く判断する可能性もあります。
しかし、ほとんどの建設業はファクタリングに対してそのようなネガティブイメージを持っていません。
建設業界ではファクタリングはかなりメジャーな資金調達手段ですので、多くの元請け先がファクタリングに対してポジティブなイメージを持っています。
そのため、ファクタリングを利用しても自社がネガティブに判断される心配はほとんどないでしょう。
元請け先がファクタリングに理解があるのであれば手数料の低い3社間ファクタリングを利用した方が得策です。

まとめ

建設業は工期が長く売上の入金までに時間がかかり、複数の業者が絡んでいるので連鎖倒産が発生しやすいなどの特殊事情があるので、資金調達の課題に直面しやすい業界です。

これらの建設業界の課題の多くを解決することができるのがファクタリングです。

ファクタリングは最短即日資金化できるというスピードに加えて、ファクタリングによって売掛債権のデフォルトリスクを排除することができるという大きな特徴あります。

急に資金が必要になり、連鎖倒産のリスクに常に晒されている建設業の課題をファクタリングであれば解決することができます。

ただし、ファクタリングは銀行融資と比較して手数料が圧倒的に高くなってしまうのが大きなデメリットです。

3社間ファクタリングであれば手数料を大きく引く下げることができるので、元請け先の理解をしっかりと得た上で手数料の低い3社間ファクタリングを利用するのが得策でしょう。

上手に活用して、建設業が抱える資金調達の課題を解決するようにしてください。