売掛先企業に秘密で資金調達できる2社間ファクタリングは、手数料の高さがデメリットです。

しかしながら、最短即日に売掛債権を資金化できるので、急ぎで事業資金を必要とする企業にとってはメリットが多分にあります。

そんななかで、偽装ファクタリングと言われるように「2社間ファクタリングは違法なのではないか?」と指摘されていることをご存知でしょうか?

2社間ファクタリングによる資金調達において利用方法を誤ると、自分も違法行為をしてしまうケースがあるため注意が必要です。

2社間ファクタリングが違法と言われる理由をはじめ、違法業者の特徴・違法行為を犯してしまうケース・それぞれのリスクについて詳しく解説していきます。

ファクタリングには法律のルールがないからこそ、違法業者に引っかかることも法律を犯してしまうことにも注意しましょう。

 

2社間ファクタリングが違法と指摘される理由

結論から述べると、2社間ファクタリングは違法ではありません

「2社間ファクタリングは違法なのでは?」と指摘される背景には、利息制限法弁護士法が関与しています。

2社間ファクタリングが違法だと疑われる理由について、詳しく見ていきましょう。

利息制限法違反

2社間ファクタリングが利息制限法に反していると指摘されるのは、20%を超えるような高い手数料が設定されているからです。

利息制限法では、貸付の際の上限金利を以下のように定めています。

  • 10万円未満:20.0%
  • 10万円以上100万円未満:18.0%
  • 100万円以上:15.0%

2社間ファクタリングでは、審査結果によって上記の金利を超える手数料が設定されるケースもあるため、違法性を指摘されているのです。

弁護士法違反

「2社間ファクタリングは弁護士法に違反している」という指摘もあります。

  • 弁護士法第72条:報酬目的で訴訟事件や非訟事件などの法律事務を行ったり、周旋したりしてはいけない
  • 弁護士法第73条:訴訟や交渉によって譲渡債権を行使する業務を行ってはいけない

弁護士法は弁護士の業務を定めた法律で、弁護士法72条・73条では弁護士以外の者が債権回収に関する法律事務を行ってはならないと定めています。

ファクタリングとは、まさに弁護士法で弁護士だけの業務とされている報酬目的で債権回収の事務を行う行為であるため「弁護士法違反なのでは?」と言われているのです。

2社間ファクタリングは違法ではない

弁護士以外に債権回収ができる業者

2社間ファクタリングに前述したような指摘があるのは間違いありません。しかし、ファクタリングは違法ではなく、企業の資金繰り問題を解決に導く合法的なサービスです。

  • 利息制限法:ファクタリングは貸付ではなく売買であるため利息制限法の適用対象外
  • 弁護士法:ファクタリング会社が有する債権は債権管理業における特別措置法によって特定金銭債権に該当する

前提として、ファクタリングは貸付ではなく売買取引です。

ファクタリング会社に売掛債権を売却する際には回収リスクも一緒に売却しているため、ファクタリングの手数料は金利ではなく、リスクに対するコストと解されています。

また、債権回収は基本的に弁護士でなければ行えません。ただ、法務大臣の認可を受けた特定金銭債権であれば弁護士以外も回収できるという法律があります(=債権管理業における特別措置法)。

この法律では、ファクタリング会社が有する債権も特定金銭債権に含まれているため、弁護士法違反とならないのです。

このように、2社間ファクタリングには利息制限法違反や弁護士法違反という指摘がありますが、いずれも違法にはあたりません。

ファクタリング会社が売掛債権と回収リスクを一緒に買い取っている以上は、合法行為です。

 

2社間ファクタリングが違法になるケース

2社間ファクタリングが違法になるケース

ファクタリングは、売掛金の回収リスクをファクタリング会社が買い取っているからこそ、利息制限法を超える手数料を設定できます。

そもそもファクタリング会社がリスクを負っていなければ、弁護士法に規定されている譲渡債権を行使することもできません。

上記4つのケースのように、ファクタリング会社が売掛金の回収リスクを負わない場合には、違法行為と判断される可能性があります。優良なファクタリング会社は、違法行為が疑われる取引は行いません。

つまり、このような取引を行う業者は違法業者というわけです。

違法業者が行う2社間ファクタリングでの違法行為について、具体的に解説していきます。

売掛債権の一部だけを買取

売掛債権の一部しか買取に応じず、利息制限法を超える手数料を取っている場合は、違法行為になる可能性があります。

ファクタリングとは、全ての売掛金の回収リスクを負うものであるべきで、ファクタリング会社の都合によって一部しか買取に応じないことは、売掛債権の回収リスクを負っているとは言えません

このようなファクタリングは実質的に融資と同じと判断され、利息制限法を遵守すべきとみなされる可能性が高くなります。

買取金額の全額を支払わない

債権譲渡時に買取金額の全額を支払わない業者が利息制限法を超える手数料を設定している場合も、違法行為になる可能性があります。

違法業者のなかには、債権譲渡の際には代金の一部だけを支払い、残りは債権回収の後とする場合があります。この場合も、やはり債権全額の回収リスクを負っているとは言えません。

実質的な貸付と同じと判断されますし、何より利息制限法を超える手数料には合理性がありません。このような違法業者との取引は絶対に避けましょう。

ファクタリングと称した貸付

ファクタリングと称して顧客に近づき、実際には融資を行う業者が存在します。これは、違法業者がファクタリング業者を偽装しているケースです。

「ファクタリングは利息制限法を超える手数料だから」と高金利を設定し、買取ではなく融資を行うのが実態です。

ファクタリングの請求書買取だと思い込んでいても、危険な違法業者から知らずにお金を借りてしまったら執拗で脅迫的な督促に苦しむことになり、手を切るのも容易ではありません。

利用前に買取なのか貸付なのかをファクタリング会社に確認し、買取であれば納得したうえで申し込みましょう。貸付なら違法業者の可能性が高いので、絶対に利用してはなりません。

償還請求権があるのに利息制限法を超える手数料

償還請求権とは、売掛債権がデフォルトしたときにファクタリング会社が自社に売掛金代金を請求する権利です。

ファクタリングは回収リスクも一緒に売却しているので、一般的には償還請求権なし(=ノンリコース契約)が普通です。

償還請求権なしのファクタリングでは、債権譲渡後に売掛債権がデフォルトしてもファクタリング会社が損失を被ってくれます。

しかし、償還請求権あり(=ウィズリコース契約)の場合にはファクタリング会社が回収リスクを負っているわけではなく、自社が償還請求権を負っています。

売掛債権とともに回収リスクを売却しているわけではないので、償還請求権ありのファクタリングは実質的に売掛債権担保融資と変わりません

実質的な融資でありながら手数料が利息制限法を超えている場合には、違法業者です。償還請求権ありの契約にもかかわらず、手数料が高い業者と取引をしてはなりません。

違法なファクタリングの事例

前述したファクタリングが違法になるケースについて、具体的な事例を見ていきましょう。

とある事例では、2021年2月に、一般社団法人「ハートフルライフ協会」の幹部ら男性6名が貸金業法違反および出資法違反で逮捕されました(参考:朝日新聞)。

おもに中小企業を狙って高利貸付を行っていたとされ、回収した売掛金を期日までに返済しないと法外な利息を求めるとともに、督促状を執拗に送っていたようです。この事例は、ファクタリングを称した貸付に該当します。

また、ほかの事例では、2019年9月に都内のコンサルティング会社社長ら男性11名が逮捕されています(参考:朝日新聞)。この事例も、貸金業法と出資法に反していたようです。

実質的には債権を買い取らず担保にして融資を行なっており、高額な手数料を搾取していました。この事例は、売掛債権担保融資にあたります。

2社間ファクタリングの法外な手数料は違法ではない

ファクタリング業者が20%を超える手数料を設定するのは違法?

2社間ファクタリングの一般的な手数料相場は、10〜20%程度となっています。

しかし、ファクタリングの手数料は法律によって決められているわけではありません。業者が独自に設定できるので、違法業者のなかでは20%を超えるような手数料を設定する業者も存在します。

とはいえ、手数料が高いだけで違法行為になるわけでもありません

前述した違法になるケースに該当しないファクタリングであれば「実施的な貸付である」とは判断されないため、安心して利用しましょう。

以下の条件を満たしているファクタリングであれば契約は有効に成立し、超高額な手数料であっても支払う必要があります。

  • 売掛債権全額を買い取る
  • 買取時に代金は一括で払う
  • 償還請求権がない(ノンリコース契約)

違法行為と判断されないファクタリングは、違法業者の法外な手数料でも合法で成立してしまいます。

ファクタリングは業者選びが非常に重要ですので、複数の業者から見積もりをとるようにしましょう。

2社間ファクタリングで自社が違法となる4つのケース

自分が違法となる4つのケースに要注意

2社間ファクタリングは手数料が高いので、違法行為と判断されるような違法業者が混じっています。

しかし、売掛先の同意が不要な2社間ファクタリングでは、自社も違法行為を犯してしまうリスクもあるため、細心の注意が必要です。

お金を手に入れるために思わず犯してしまいそうな行為ですが、これらの行為は必ずファクタリング会社にバレます。

自社が違法となる上記4つのケースについて詳しく見ていきましょう。

申込時の虚偽申込

虚偽の情報や内容でファクタリングに申し込むと、違法行為となってしまう可能性があります。

これは、嘘の申込によってファクタリング会社からお金を拠出させたことになり、詐欺に該当する可能性が高いためです。

ファクタリング会社は帝国データバンクや東京商工リサーチなどの情報を参照して審査を行なっています。

申込時に過去の決算状況などを偽っても、これらのデータから虚偽申込かどうかはすぐに分かってしまうので、虚偽申込にはデメリットしかないことをよく理解しておきましょう。

債権の二重譲渡

悪いことを考える人のなかには「ファクタリングした売掛金を別のファクタリング会社に売却したら、受け取れるお金が2倍になるのでは?」という人もいるかもしれません。

このような行為を債権の二重譲渡と言います。

2社間ファクタリングは売掛先の同意が必要ありませんが、いくら債権の二重譲渡をしようとしても、2社間ファクタリングでは不可能な仕組みが導入されています。それが、債権譲渡登記という法的な手続きです。

債権譲渡登記とは、法人の債権が譲渡されたことを公示するものです。

債権譲渡登記を行うことによって、売掛債権が二重譲渡されたときに、二重譲渡先に対して「この債権はウチのものだ」と主張できる対抗要件を得ることができます。

二重譲渡しても、債権譲渡登記を二重譲渡先が行おうとしたときに当該債権にはすでに債権譲渡登記が行われていることに気づくため、二重譲渡は必ずバレるようになっています。

入金額の横領

2社間ファクタリングでよくあるケースが入金額の横領です。

通常、2社間ファクタリングでは売掛先が自社へ売掛金を振り込み、その後に自社がファクタリング会社へ支払いを行います。

このとき、ファクタリング会社へお金を支払わずに「他の支払い先へお金を払う」「お金を持ち逃げしてしまう」といったケースがあります。

そもそも、高い手数料を支払って2社間ファクタリングを利用する企業は、資金繰りに困っているケースが少なくありません。

このような会社は、ファクタリング会社へお金を支払わずに資金を持ち逃げしてしまうことが多いのです。

売掛債権はすでにファクタリング会社へ譲渡されているのですから、入金額を横領してしまえば「横領罪」が成立します。最悪の場合は刑事告訴の可能性も生じるので、絶対にやってはいけません。

架空債権でファクタリングをする

ファクタリング会社が最も懸念している違法行為が、架空債権でファクタリングをする行為です。

ファクタリングの根拠となる売掛債権は、請求書などによって存在を証明します。

企業にとっては、存在しない売上の請求書を偽造するのは非常に簡単です。

お金に困って架空の請求書を作成し、その請求書でファクタリングを行うケースが実は多いのです。

また、上記3つの違法行為と異なり、架空債権によるファクタリングが2社間契約で行われた場合、ファクタリング会社が裏を取ることも難しくなります。

というのも、2社間ファクタリングは売掛先への同意が不要で、売掛先に秘密で行うファクタリングだからです。

もしも架空債権であることが発覚した場合は「私文書偽造罪」および「詐欺罪」など重い刑罰が課せられることになります。

なお、架空債権のファクタリングによって手に入れたお金はファクタリング会社へ返却する必要があり、返却できない場合には財産の差し押さえなどが行われる可能性もあります。

2社間ファクタリングで違法行為をするリスク

前述した違法行為をすると、ファクタリング会社と取引が停止になるのはもちろん、刑事罰が課せられたり売掛先にバレたりするリスクがあります。

基本的にこれらのペナルティが課されると会社の運営は不可能になりますので、絶対に違法行為に手を染めてはなりません。

違法行為を行うとどうなるのか、以下3つのリスクについて詳しく見ていきましょう。

  • ファクタリング会社と取引停止になる
  • 刑事罰に問われる
  • 売掛先にバレて信用を失う

ファクタリング会社と取引停止になる

どのような違法行為であっても、違法行為が発覚するとそのファクタリング会社とは取引できなくなります

また、当該情報が他のファクタリング会社の耳に入る可能性もあるため、その場合には多くのファクタリング会社と取引できなくなるかもしれません。

違法行為をした企業は、今後一切、ファクタリングという資金調達手段が失われるリスクがあるのです。

刑事罰に問われる

ファクタリング会社に対して違法行為を行うと、刑事罰に問われる可能性もあります。

二重譲渡の場合には「詐欺罪」、入金額の横領の場合には「横領罪」、架空債権の場合には「私文書偽造罪」で逮捕されるかもしれません。

これらの違法行為には刑事罰が適用されますので、以下のような罰則が適用される可能性があります。

  • 詐欺罪:10年以下の懲役
  • 横領罪:10年以下の懲役
  • 私文書偽造罪:1年以下の懲役または10万円以下の罰金

このように、刑事罰の罰則が適用されると懲役刑が課せられる可能性があります。

会社の存続はもちろん、その後の人生にも私生活にも大きく影響するので、絶対に2社間ファクタリングにかかる違法行為に手を染めてはなりません。

売掛先にバレて信用を失う

二重譲渡や架空債権の場合には、ファクタリング会社へ代金を支払うことができないと、ファクタリング会社は何が何でも代金を回収しようとします。

例えば、売掛先に秘密で取引できる2社間ファクタリングであっても、代金が支払われない場合にはファクタリング会社は秘密を守ってくれません。

売掛先に「売掛金の存在はあったのか」「売掛金の代金を支払ったのか」などを確認するので、売掛先にファクタリングを行なったことや、売掛先の名前を悪用して違法行為を行なっていた事実が発覚します。

売掛先との関係は壊れてしまうため、やはり事業継続は難しくなると考えたほうが良いでしょう。

2社間ファクタリングで違法行為をしたときの解決方法

2社間ファクタリングにおける違法行為は、代金を支払うことで解決するケースが多い傾向にあります。

二重譲渡や架空債権であっても、期日になってファクタリング会社へ代金を支払いさえすれば、問題は解決するのが一般的です。

万が一、違法行為を行なってしまった場合には、絶対に代金の支払期日を超えないようにしてください。

もちろん、ファクタリング会社のなかには代金が回収されたとしても刑事告発するケースも十分に想定できるため、常識として絶対に違法行為に手を染めないようにしましょう。

2社間ファクタリングの違法性に関するよくある質問

Q.「2者間」と「2社間」に違いはありますか?
A.「2者間」と「2社間」に大きな違いはありません。どちらも取引先が関与しない、利用者とファクタリング会社の双方のみで契約するファクタリングを指します。ただ、ファクタリング会社によっては、法人の場合に「2社間」フリーランス・個人事業主の場合に「2者間」と使い分けているケースもあります。
Q.「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の違いを教えてください。
A.「①取引先への通知および承諾の有無」「②債権譲渡登記の有無」「③手数料」「④資金調達スピード」の4つが大きな違いです。2社間ファクタリングの場合、取引先への通知・承諾が不要なので工数が減り、資金調達のスピードも早くなります。ただ、債権譲渡登記を必須とするケースが多く、手数料も高くなりがちです。一方の3社間ファクタリングでは、取引先への通知・承諾が必要であり、手続きも多くなることから、最短即日の資金調達が難しくなります。しかし、債権譲渡登記の手間がなく、手数料を大幅に抑えられる利点があります。
Q.3社間ファクタリングにデメリットはありますか?
A.3社間ファクタリングのデメリットは、取引先への通知・承諾を必須とすることから、売掛先に対して資金繰りに苦しんでいる事実がバレてしまうことです。ファクタリングの利用が売掛先に知られると「経営がうまくいっていないのでは?」と疑われ、今後の取引に影響を及ぼす可能性があります。また、手続きに時間がかかる傾向にあり、スムーズな資金調達が困難なのもデメリットです。急ぎの資金調達が必要な場面における利用には向いていません。
Q.違法業者の特徴を教えてください。
A.対応が悪い、契約書がない、事務所を構えていない、連絡先が携帯電話のみという場合は違法業者である可能性が高いと言えます。
Q.違法業者を回避する方法を教えてください。
A.複数の業者から相見積もりをとる方法が有効です。複数の業者から見積もりをとって1社だけ手数料が高いのであれば、その業者は違法業者の可能性が高いと言えます。心配な場合には、取引の前に必ず複数の業者から見積もりをとるようにしてください。
Q.ファクタリングの手数料が利息制限法を超えていることは違法ではないのでしょうか?
A.ファクタリングの手数料はファクターが背負う回収リスクに対するリスクプレミアムとして設定されています。ファクターが回収リスクに見合った手数料を設定しているのであれば、利息制限法を超えていたとしても違法性はないと判断できます。ただし「償還請求権あり」で回収リスクを負っていないのに利息制限法を超える手数料を設定している場合は、違法の可能性が高いと言えます。

まとめ

2社間ファクタリングは法律による詳細な決まりがなく、利息制限法も適用されません。そのため、利息制限法を超える高額な手数料が設定される場合があります。

このような高額な手数料を設定しておきながらも、売掛債権の回収リスクをファクタリング会社が背負っていない場合には、違法行為になる可能性があります。

また、2社間ファクタリングは自社も違法行為を行いやすい取引です。特に、資金繰りに困っているときには魔が差してしまうこともあるかもしれません。

しかし、2社間ファクタリングで違法行為を行なってしまうと、懲役刑が適用される可能性があるだけでなく、取引先からの信用も失われてしまい、事業の存続はほぼ不可能になります

このような事態にならないよう、違法行為には絶対に手を染めないようにしましょう。

自社もファクタリング会社も法律を守って、信頼できる取引をするよう心がけてください。