ファクタリングは即日資金調達、借入不可能な企業でも資金調達可能などのメリットばかり強調されていますが、ファクタリングにはデメリットもあります。
デメリットも理解しておかないと、悪徳業者に騙されたり、企業収益を悪化させる可能性もあります。
「よく分からないからファクタリングは怖い」と思っている人でもデメリットを理解することによって、ファクタリングのメリットを享受しつつデメリットを避けることができるようになります。
今回はあえてファクタリングのデメリットを解説していきます。
ファクタリングのデメリットを理解して、効率的な資金調達ができるようになりましょう。
デメリット①手数料が高い
ファクタリング最大のデメリットは手数料の高さです。
銀行融資の金利が2%前後であることと比較するとファクタリングの手数料はその数倍になり、企業の収益には大きな負担になってしまいます。
ただし、手数料相場は2社間ファクタリングと3社間ファクタリングで大きく異なるので、ケースバイケースで2社間と3社間を使い分けることが重要になります。
2社間ファクタリングの手数料は借入利息よりも高い
2社間ファクタリングの手数料の相場は10%〜20%程度です。
ファクタリング会社によっては20%以上の手数料を設定する業者も存在し、2社間ファクタリングの手数料は高額になります。
借入の金利の上限は利息制限法という法律によって定められていますが、ファクタリングは借入ではないので手数料は借入金利よりも高くなってしまうことが一般的です。
また、ファクタリングは債権の回収リスクをファクターが負うので、リスクプレミアムの分だけ回収リスクがない借入よりも手数料が高くなってしまいます。
銀行から借入をすることができない企業でも資金調達することができるファクタリングですが、その分手数料負担が大きくなってしまうことが多いのです。
手数料を抑えたいなら3社間
手数料負担を抑えたいなら2社間ファクタリングではなく、3社間ファクタリングがよいでしょう。
3社間ファクタリングの手数料は5%〜10%程度で、利息制限法の範囲内に収まっていることが一般的だからです。
ただし、2社間ファクタリングは売掛先に秘密で取引をすることができますが、3社間ファクタリングは売掛先の同意が必要になるので秘密にすることはできません。
ファクタリングをする時には「高い手数料を払って2社間ファクタリングを行う」か「売掛先の同意を得て3社間ファクタリングを行う」かを決める必要があります。
デメリット②売却したい債権ほど手数料が高くなる
企業にとって安全な売掛金ほどファクタリングする必要はありません。
安全な企業の売掛債権はデフォルトリスクがないためです。
多くの企業にとってファクタリングしたい債権は「期間が長い債権」か「中小企業の債権」ではないでしょうか?
このような債権はすぐに資金化することができないか、回収リスクが高いのでファクタリングで売却してしまいたいと考えるものだからです。
しかし、このような売掛債権はファクターにとってもリスクが高いので、企業が売り払ってしまいたい債権ほど手数料負担は高くなってしまう傾向にあります。
どのような売掛金が手数料が高くなるのかを把握して、できる限り少ない手数料でファクタリングができるようになりましょう。
期間が長い売掛金は手数料が高くなる
期日までの期間が長い売掛金は手数料が高くなる傾向にあります。
期間が長ければ長いほど、回収できないリスクが高くなるので手数料が上がってしまうのです。
企業にとっては「期間が長い売掛金はファクタリングによって早く現金に換えてしまいたい」と考えるものかもしれません。
しかし、このような売掛金ほど「リスクが高い」と判断され手数料は高くなってしまいます。
手数料を抑えたいのであれば、必ずしもファクタリングする必要のない期間の短い売掛金からファクタリングした方がよいことになるという矛盾があるのです。
中小企業の売掛金は手数料が高くなる
中小企業などの業況が不安定な売掛金ほど手数料が高くなる傾向があります。
企業からしてみれば、確実に回収できる売掛金よりも回収が不安な中小企業の売掛金ほどファクタリング会社に売ってしまいたい債権と言えます。
しかし中小企業の売掛債権はファクタリング会社から見てもリスクが高いので、ファクタリングの際の手数料は高くなってしまうのです。
やはり、この点でも「企業が売ってしまいたい債権ほど手数料が高くなる」というジレンマがあると言えるでしょう。
デメリット③ファクターの中には悪徳業者が存在する
ファクタリングには違法な行為をするグレーな業者が多いのが実情です。
ファクタリングは認可や登録が必要ないため、どのような業者でも参入できるためです。
違法な可能性のある業者の手口をしっかりと理解しておきましょう。
ファクタリングには参入規制がない
銀行業であれば銀行法、消費者金融であれば貸金業法という法律があり、銀行や消費者金融はこれらの法律に則って業務運営をしています。
しかし、ファクタリングには特別な法律はありませんし、事業を営むにあたって国や地方自治体の許認可や登録が一切不要です。
ファクタリングはどんな人でも参入することができてしまいます。
そのため、業者の中には悪徳業者も相当数混じっています。
ファクタリンングは悪徳業者が存在するので、業者選びがとても重要になります。
グレーな業者の2つの手口
違法性の高いグレーな業者に引っかかってしまうと以下のような被害にあってしまう可能性があります。
- 法外な手数料を取られる
- ファクタリングと称して闇金からお金を貸しつけられる
悪徳業者の手口についてもう少し詳しく解説していきたいきます。
法外な手数料を設定する
悪徳なファクタリング会社は売掛債権のリスク以上の法外な手数料を設定します。
悪徳業者は30%を超えるような手数料を設定し、さらに買取代金を一括で支払わない、売掛債権全てを買い取らないなどすることがあります。
高い手数料を払わなければならないばかりか、資金繰りにも寄与しないので悪徳業者とは絶対に取引をしてはなりません。
複数の業者から見積もりを取ることによって悪徳業者に引っかかるリスクを軽減することができます。
ファクタリングと称した闇金
ファクタリングだと思っていたら闇金からお金を借りてしまっているというケースもあります。
「貸付ではなくファクタリングだから手数料は高くなる」と言って法外な手数料を設定し、後から返済を迫るというパターンです。
闇金からお金を借りてしまったら脅迫的な取り立てが行われます。
また、自分だけでなく家族はもちろん職場の人も督促の被害に遭うことになります。
ファクタリングと称した闇金には十分注意しましょう。
デメリット④自社の業況が悪いと審査に落ちることもある
ファクタリングは「売掛先の信用で資金調達できるので自社の業況が悪くても問題ない」と考えている人が多いのではないでしょうか?
確かに銀行融資と比較して自社の信用は重視されません。
しかし、2社間ファクタリングでは自社の与信も重視されるので注意が必要です。
2社間では自社の与信も重要
2社間ファクタリングは自社の業況もチェックされます。
2社間ファクタリングでは売掛金代金が一度自社の口座に振り込まれ、自社がファクタリング会社に送金します。
この際、自社の業況が悪ければ「振り込まれたお金をファクタリング会社に払わずに他に使ってしまうかもしれない」と懸念されてしまいます。
このため、あまりにも自社の業況が悪いと、優良企業の売掛金を持っていたとしてもファクタリングの審査に落ちてしまうこともあります。
一方、3社間ファクタリングでは資金が自社を経由しないので自社の業況が悪くても審査に通過しやすいと言えます。
デメリット⑤収益を圧迫する
ファクタリングは手数料負担が大きいので収益を圧迫することが大きなデメリットです。
また、「ファクタリングは資金繰りの改善に寄与する」と言われますが、必ずしも長期的に見れば資金繰りが改善するわけではありません。
将来的に入金になる売掛債権を手数料を負担して前倒しにしているだけですので、将来的には入金がなくなってしまうからです。
「ファクタリング=資金繰りの改善」と必ずしもなるわけではないことに注意が必要です。
高額な手数料は収益の負担になる
ファクタリングは手数料負担が大きなデメリットです。
確かにファクタリングによって売掛金を資金化することができれば短期的には資金繰りは円滑になると言えます。
しかし、10%から20%もの手数料が発生するという点は大きなコストと言わざるを得ません。
100万円を10%の手数料で売却した場合には、これだけで10万円もの営業外費用が発生することになります。
あまりにもファクタリングを繰り返すと、ファクタリングの手数料負担が増大して経常赤字になってしまうリスクがあります。
長期的には資金繰りが悪化する
短期的には資金繰りが円滑になるファクタリングですが、長期的に見れば資金繰りは悪化してしまいます。
100万円の売掛金を手数料10%でファクタリングすれば、確かにすぐに90万円のお金が入金になります。
この会社が毎月同じように手数料10%でファクタリングすれば、毎月90万円のキャッシュが入ります。
しかし、ファクタリングせずに売掛金期日を待てば、毎月100万円入ってくることになります。
ファクタリングを利用した方が資金繰りが円滑になるのは、売掛金の期日が到来するまでの短期間だけです。
売掛金の期日を待つことができるのであればファクタリングをしない方が長期的に資金繰りを安定化させることができるでしょう。
デメリット⑥分割払いができない
ファクタリングは分割払いができません。
ファクタリングで売却した売掛債権の期日がきたら、一括で支払いをしなければなりません。
借入金のように、分割で返済して資金繰りの悪化を防ぐということはファクタリングでは不可能です。
そのため、売掛債権の期日が来たら、再度資金繰りが悪化する可能性もあります。
なお、分割で返済することが認められているのは融資のみです。
貸金業者登録をしていないファクタリング会社が分割払いを認めることは無登録の営業として貸金業法違反となる可能性が非常に高いため、「分割払いOK」としている業者とは絶対に取引をしないようにしてください。
デメリット⑦売上規模を超える資金調達は不可能
ファクタリングで資金調達できる金額は売掛債権の金額の範囲内です。
そのため、売上規模を超えるような資金調達を行うことは絶対にできません。
設備投資などの際には、売上の数年分もの借入をすることもありますが、ファクタリングでは売上を超える資金調達は不可能です。
銀行融資と比較してファクタリングは資金調達できる金額が、非常に限られているのは大きなデメリットだと言えます。
デメリット⑧債権譲渡登記が必要な場合がある
ファクタリングでは債権譲渡登記が必要になる場合があります。
債権譲渡登記とは、債権を他者へ譲渡したことを登記することで、この登記によって、万が一債権の譲渡人が他の人へも債権を二重譲渡したとしても、最初の譲受人は「自分がすでに譲渡されている」と対抗することができます。
2社間ファクタリングにおいては、二重譲渡のリスクがあるので債権譲渡登記をファクタリング会社から求められるケースも少なくありません。
債権譲渡登記は1件につき7,500円の登録免許税と、司法書士報酬が数万円発生するので、手数料が高額になることがあります。
デメリットを排除してメリットだけ得る3つの方法
ファクタリングには多数のデメリットがあるのも事実です。
しかし、銀行融資と比較して多くのメリットもありますので、重要なことはデメリットをできる限り避けてメリットを多く得ることです。
デメリットを避ける方法としては以下のようなことが考えられます。
- 2社間は急いでお金が必要な時だけにする
- 取引先の同意を得て3者間を活用する
- 運転資金に余裕を持たせて与信管理のアウトソーシングだけに利用する
ファクタリングを賢く活用する方法について詳しく解説していきます。
2社間ファクタリングの利用は急いでお金が必要な時だけにする
2社間ファクタリングは手数料が非常に高いファクタリングです。
このため、緊急でお金が必要な場合のみ利用した方がよいでしょう。
2社間ファクタリングは最短即日現金化にも対応していますので、急いでお金が必要になった時に最適です。
しかし、急ぎでもないのに2社間ファクタリングを利用してしまうと不要に高い手数料を負担するだけになってしまいます。
2社間ファクタリングは緊急時のみ利用することで、収益の悪化を予防することができるようになります。
取引先の同意を得て3者間を活用する
できる限り取引先の同意を得て、3社間ファクタリングを利用するようにしましょう。
3社間ファクタリングは2社間ファクタリングよりも手数料が非常に低く設定されています。
また、ファクタリング会社から信用を得れば銀行借入並の手数料になることもあるためです。
取引先を回って「売掛金回収業務の効率化のためにファクタリングを利用することにした」などと説明を行い、できる限り3社間ファクタリングを利用できる環境を整えましょう。
運転資金に余裕を持たせて与信管理のアウトソーシングだけに利用する
運転資金に余裕を持たせておけば、運転資金の調達にファクタリングを利用する必要はありません。
しかし、ファクタリングは取引先の与信管理を行うことができるメリットがあります。
このメリットを生かすためには、新規取引先と最初に取引する時だけにファクタリングを利用する方法が有効です。
信用できるかどうか分からない新規取引先の売掛債権をファクタリングに回せば、審査のプロが新規取引先の与信管理をしてくれ、信頼できる取引先かどうかを知ることができます。
手数料の高いファクタリングは運転資金調達のために恒常的に利用するのではなく、売掛金管理、与信管理のアウトソーシングとして利用すれば、デメリットを排してメリットだけを享受することができるようになります。
手数料の低いファクタリング会社を利用する
ファクタリング最大のデメリットが高い手数料です。
2社間ファクタリングにおいては手数料が10%を超えることも珍しくありませんが、期日が1ヶ月先の売掛債権を手数料10%支払ってファクタリングした場合、年利に換算すると120%もの高額な手数料になります。
できる限り手数料負担を抑えるため、手数料の低いファクタリング会社と取引しましょう。
なお、手数料の低いファクタリング会社を選ぶのであれば、オンライン完結型のファクタリング会社を選択するのがおすすめです。
また「売掛先に知られてもよい」「資金調達まで急いでいない」という場合には、2社間ファクタリングと比較して手数料が低い3社間ファクタリングを選択することも検討しましょう。
複数の売掛債権を同時に売却する
複数の売掛債権を同時に売却して、ファクタリングする売掛債権の総額を少なくすることでも手数料が低くなる可能性があります。
ファクタリング会社にとっては買取を行う売掛債権の金額が大きければ、低い手数料率であっても多くの手数料を手にすることができるためです。
できる限り1度にファクタリングする金額を大きくするため、複数の売掛債権を同時に売却しましょう。
メリットを得られるファクタリング会社の選び方
ファクタリングのメリットを多く得られるようにするためには次の2点を重視してファクタリング会社を選択することが重要です。
- 手数料が低いファクタリング会社を選択する
- 入金スピードが早いファクタリング会社を選択する
メリットを多く得られるファクタリング会社を選ぶ基準を簡単にご説明していきます。
手数料が低いファクタリング会社を選択する
ファクタリングのネックは借り入れと比較してもかなり高額になる手数料です。
そのため、可能な限り手数料が低いファクタリング会社を選択しましょう。
一般的に店舗型のファクタリング会社よりもオンライン完結型のクラウド型のファクタリング会社の方が手数料は低くなります。
上限手数料が10%以下と設定されているようなファクタリングか会社を選択してください。
入金スピードが早いファクタリング会社を選択する
ファクタリングのメリットの1つが「最短即日で資金化できる」という点です。
せっかく高い手数料を支払ってファクタリングをしても、資金化までに時間がかかってしまってはメリットを得られません。
「最短即日」と謳っているファクタリング会社は多数あるので、できる限り入金までのスピードが早いファクタリング会社を選択しましょう。
なお、オンラインで契約まで完結できるファクタリング会社であれば、申込日当日中に資金化できる可能性が高いので、契約方法が非対面かつオンラインに対応しているかについて、事前に確認するようにしてください。
ファクタリングのデメリットに関するよくある質問
- 資金調達以外にファクタリングのメリットはありますか?
- 取引先の与信管理、売掛金請求事務をアウトソーシングできます。また、ファクタリングは借入ではないのでファクタリングによって資金調達してもバランスシートが悪化しないというメリットもあります。
- ファクタリングの手数料を下げるには他にどんな方法がありますか?
- 同じファクターと取引を継続することで、ファクターからの信頼が向上して手数料が下がることがあります。
- 収益を圧迫させずにファクタリングを利用する方法を教えてください。
- 利益が出ているタイミングでは、ファクタリングをすることによって節税ができます。ファクタリング手数料は全額経費にできるのでその分利益を圧縮でき、税金の支払いを節約することができる場合があります。
まとめ
ファクタリングのデメリットは以下の通りです。
- 手数料が高い
- 売りたい債権ほど手数料が高くなる
- 悪徳業者が多い
- 自社の業況が悪いと審査に落ちることがある
- 収益が圧迫させる
- 長期的には資金繰りにマイナス
このようなデメリットをできる限り排除して、メリットを得るためには、2社間ファクタリングは緊急時だけに使用することや、運転資金として恒常的に利用しないことが有効です。
ファクタリングはメリットとデメリットがはっきり分かれているため、デメリットもよく理解して活用しましょう。