(買取)ファクタリングを「契約に関与する当事者の数」で分類すると、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングに分けられます。
いずれも売掛債権を買い取ることには変わりありませんが、細かい部分での違いがかなりあるため注意が必要です。
違いを押さえておかないと、手数料が想定よりかかったり、取引先とのトラブルの原因にもなったりします。
そこでこの記事では、さまざまな角度から、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いについて解説します。
違いを正確に理解し、自社に合ったファクタリングを利用できるようになりましょう。
ファクタリング手数料の違い
ファクタリングを利用するにあたって、手数料は必ず払わなくてはいけません。
具体的にどれだけかかるかは個々のケースによっても異なりますが、一般的には2社間ファクタリングのほうが3社間ファクタリングより高くなっています。
最初に、手数料相場の違いについて詳しく解説しましょう。
2社間ファクタリングの手数料の相場
2社間ファクタリングの手数料の相場は、10%~20%といったところです。
しかし、取引先が上場企業や官公庁など、回収可能性の高い債権を売却する場合はこれより低い手数料が提示される可能性もあります。
一方、取引先の経営状況に疑念があるなど、回収可能性が低い場合はこれより高い手数料を提示されるかもしれません。
相場よりあまりに高い手数料を提示された場合は「その手数料を提示する根拠」をファクター(ファクタリング会社)の担当者に説明してもらいましょう。
要領を得ない説明に終始していたらその場では契約せず、他のファクターも検討したほうが無難です。
3社間ファクタリングの手数料の相場
一方、3社間ファクタリングの手数料の相場は、5%~10%と2社間ファクタリングに比べるとかなり低いです。
条件によっては2%台になるケースも珍しくありません。
3社間ファクタリングは、最終的には取引先がファクターに直接支払いを行います。
そのため、ファクターが売掛債権を回収できないリスクは2社間ファクタリングに比べると格段に低いです。
このような背景があるため、手数料も低くなっています。
資金調達までの速度の違い
資金調達までの速度も、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングとではまったく異なります。
2社間ファクタリングでは即日資金調達が可能な場合もあるのに対し、3社間ファクタリングではやや時間がかかるのが特徴です。
なぜ、このような違いが生じるのか理由を説明します。
即日資金調達が可能なのは2社間ファクタリング
2社間ファクタリングであれば、即日資金調達が可能な場合も多々あります。
理由を一言でまとめると「取引先の同意がなくても利用できるから」です。
取引先で稟議を通す必要もなく、あくまで自社・自身の判断だけで利用できます。
銀行や取引先への支払期限が迫っているなどの理由で、どうしてもその日のうちに資金調達をしないといけない場合は、2社間ファクタリングを使うのが前提になるでしょう。
3社間ファクタリングは1週間程度かかるので要注意
一方、3社間ファクタリングの場合、資金調達までに早くても1週間程度時間がかかるので要注意です。
そもそも、3社間ファクタリングを使う場合、取引先の承諾が得られていなくてはいけません。
小規模な取引先であれば早い段階で承諾が得られる可能性はありますが、上場企業やそれに準ずる規模の企業の場合、社内での稟議が完了するまでにそれなりに時間がかかります。
取引先からの同意が得られるまで早くても1週間程度、遅ければ2週間以上はかかるかもしれません。
緊急で資金調達をしなくてはいけない場合に向いている方法とは言えないのも事実です。
取引先への秘匿性の違い
「ファクタリングを利用したことを取引先に知られるか」に関しても、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングとでは扱いが異なります。
取引先との関係性によっても、どちらの方法を使うべきか決まってくるかもしれません。
違いを詳しく解説します。
2社間ファクタリングなら取引先に秘密にできる
取引先に秘密にしたいなら、2社間ファクタリングを選びましょう。
取引先からの同意がなくても利用できるためです。
ファクタリングは何ら違法性のない資金調達方法ですが、まだまだ日本での知名度はそう高くありません。
その上、銀行(銀行法)や消費者金融(貸金業法)のように特別法が存在しないため、規制も緩いのが現状です。
このような背景から、ファクタリングに対し「怪しい」「使ってはいけない」などネガティブなイメージを持つ人も一定数います。
取引先の担当者がそのような考え方をする人だった場合は「この会社はもしかしたら経営が傾いているのでは?」と訝るかもしれません。
取引先との関係への影響を危惧するなら、2社間ファクタリングを使ったほうが無難です。
3社間ファクタリングは取引先からの同意が必須
一方、3社間ファクタリングは取引先からの同意がないと利用できません。
これは、本来の支払期日になったら取引先からファクターに支払いを行うという流れが関連しています。
当然、取引先がファクターに支払うことを関知していないといけないため、知られずに進めることはほぼ不可能です。
取引先でもファクターの口座に振込をしたり、売掛金台帳への記帳など追加での経理手続きが生じるため、理解が得られないと利用は厳しいかもしれません。
しかし、ファクターの担当者がに自社・取引先の双方にマイナスにならないよう、説明を進めてもらうこともできます。
このあたりはファクターの担当者の力量や取引先との関係性にもよるため、一度相談してみましょう。
ファクタリング利用にあたっての登記の必要性
ファクタリングの利用にあたっては、登記(債権譲渡登記)が必要なケースもあります。
このあたりの扱いも、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングとで全く異なるため、詳しく解説しましょう。
2社間ファクタリングでは債権譲渡登記が必要なケースが多い
2社間ファクタリングを利用する場合、債権譲渡登記が必要になるケースが多くなっています。
債権譲渡登記とは債権の譲渡の対抗要件を登記する手続きのことです。
この登記を行うことで、ファクターは「この売掛債権は自社のものだ」と主張できるようになります。
ファクターが所有している売掛債権を勝手に譲渡されないためにも重要な手続きです。
なお、債権譲渡登記は社外の司法書士に依頼するのが一般的となっています。
その際の報酬や登録免許税などの諸費用がかかるのも、2社間ファクタリングの手数料を高くしている一因と考えましょう。
3社間ファクタリングでは債権譲渡登記は不要
一方、3社間ファクタリングの場合、債権譲渡登記は行いません。
売掛先企業が同意していれば、その債権をどこかに譲渡することは不可能である以上、債権譲渡登記を行う必然性がないためです。
>司法書士への報酬や登録免許税などの費用もかからないことから、手数料も2社間ファクタリングに比べれば安くなっています。
個人事業主のファクタリング利用の可否
個人事業主であっても、ファクタリングを利用すること自体は可能です。
ただし、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングとではやや扱いが異なるため注意しましょう。
2社間ファクタリングの場合はファクターごとに扱いが異なる
2社間ファクタリングの場合はファクターによって扱いが異なります。
扱いが異なる理由として指摘できるのは、債権譲渡登記の扱いです。
2社間ファクタリングを利用するにあたっては、債権譲渡登記を求められるケースが多くなっています、
しかし、債権譲渡登記をするには、法人の登記事項証明書が必要です。
このため、個人事業主の場合、債権譲渡登記は行えません。
このような背景があるため、個人事業主が2社間をファクタリングを利用できるかは、会社ごとの判断にゆだねられます。
あくまで、債権譲渡登記は、対抗要件を具備するためのものです。
つまり、第三者に「この売掛債権はうちの会社のもの」と主張するための手続きに過ぎません。
個人事業主が利用する場合は債権譲渡登記を行わないことを前提に、2社間ファクタリングの利用を認めているファクターもあるので、事前に確認してみましょう。
3社間ファクタリングは問題なく利用可能
一方、3社間ファクタリングであれば、個人事業主であっても特段問題なく利用できます。
利用にあたり、債権譲渡登記をする必要はないためです。
ただし、ファクターによっては、信用力を厳密に調査することが難しいなど別の理由から、個人事業主の利用を断っているケースもあります。
このあたりの扱いは、ファクターによっても異なるのが実情です。
審査における利用者のウェイト
ファクタリングの審査において非常に重視されるのは、取引先の信用です。
仮に売掛債権を回収できなかった場合、ファクターが損をすることになるため「売掛債権を回収できるかどうか」が厳しくチェックされます。
これに対し、利用者の信用がどれだけ重視されるかは、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングとでやや事情が異なる点を理解しましょう。
2社間ファクタリングでは利用者の信用も重視される
2社間ファクタリングの審査にあたっては、自社の信用も重視されます。
2社間ファクタリングでは、売掛債権の本来の回収期限が到来した場合、まず取引先が利用者に支払いをします。
それを受けて、利用者がファクターに支払いをしなくてはいけません。
しかし、利用者の業績が芳しくなかったり、資金繰りが厳しかったりした場合は、ファクターへの支払いを行わない可能性も十分に考えられます。
ファクターにとっては、回収ができず損失を被るリスクが増大するため、審査においては利用者の信用を厳しくチェックせざるを得ません。
3社間ファクタリングでは利用者の信用はそれほど重視されない
一方、3社間ファクタリングでは、利用者の信用は(2社間ファクタリングに比べれば)重視されません。
3社間ファクタリングでは、売掛債権の支払期限が到来したら、直接取引先がファクターに支払いを行います。
そのため、自社が資金を他に回したり、持ち逃げするリスクが3社間ファクタリングにはありません。
赤字が出ていたり、税金の滞納があったりなど、利用者に問題があったとしても、取引先の経営状態に問題がなければ利用できる場合も多々あります。
銀行からの融資を受けられないほど経営状態が芳しくないときであっても、利用できる可能性はあるでしょう。
ただし、実際に利用できるかは赤字や税金の滞納に至るまでの経緯を踏まえ、ファクターが個別に判断します。
100%利用できるとは限らない点に注意してください。
ファクターは吟味して選ぶべき
2社間ファクタリング、3社間ファクタリング共に特徴や長所・短所は異なるため、自社・自分に合ったファクターを使うのが何よりも重要です。
しかし、ファクターは銀行や消費者金融と違い、違法業者が混じりがちという特殊な事情があります。
なぜ、このようなことが起きるのか、そして、ファクターはどうやって選べばよいのかについて解説します。
なぜファクターに違法業者が混じりがちなのか
ファクターに違法業者が混じりがちな理由を一言でまとめると「規制が緩いから」です。
日本の場合、金融サービスを提供する会社には、特別法による規制が設けられています。
- 銀行:銀行法
- 消費者金融や信販会社:貸金業法
- 質屋:質屋営業法
しかし、2023年3月現在、ファクタリングを直接規制する特別法はありません。
つまり、基本的に誰でもファクターを開業できる上に、何かトラブルが生じた場合は民法や刑法といった一般法に照らし合わせて判断します。
銀行や消費者金融などに比べるとはるかに規制が緩いため、明らかに違法性が疑われる運営をしているファクターも存在するのが実情です。
ファクターは何を基準にして選ぶべきか
ファクタリングを安全に使うためには、ファクターを吟味するのが非常に重要です。
その際に考慮すべき基準や選び方、おすすめのファクターについては、以下の記事で詳しく解説しています。
また、電話やメールの応対、担当者との相性も重視しましょう。
快適にファクタリングを使う上では非常に重要です。
2社間・3社間ファクタリングに関するよくある質問
- すぐに資金が必要になった場合には2社間と3社間のどちらを選択すべきでしょうか?
- すぐにお金が必要な時には資金化までに時間がかかる3社間を選択すべきではありません。
即日資金化に対応した2社間ファクタリングを選択しましょう。
- 2社間も3社間も面談が必要でしょうか?
- 2社間ファクタリングは面談不要でファクタリングできる業者が多いようです。3社間ファクタリングは売掛先も関係するので面談が必要になるファクターが多くなっています。
- 3社間ファクタリングの手数料が低い理由を教えてください。
- 3社間ファクタリングは債権譲渡登記が不要で、売掛先がダイレクトにファクターへ代金を支払うので2社間よりも回収リスクが低いという2点から手数料は低くなります。
まとめ
2社間ファクタリングと3社間ファクタリングは「共通しているのは売掛債権を期日前に売却することだけ」と言っても過言ではないほど違いが数多くあります。
違いをまとめると以下のようになります。
項目 | 2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング |
---|---|---|
手数料の目安 | 10%~20% | 5%~10% |
資金調達までの速度 | 最短即日 | 1週間程度 |
取引先への秘匿性 | 秘密にできる | 秘密にできない |
債権譲渡登記 | 必要な場合が多い | 不要 |
個人事業主の利用 | ファクタリング会社による | ファクタリング会社による |
自社の審査ウェイト | 比較的高い | 比較的低い |
これらの点を踏まえ、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがどんな人・会社に向いているかをまとめましょう。
まず、2社間ファクタリングの場合、以下の条件に当てはまる人・会社に向いています。
- 取引先に秘密にしたい
- できるだけ早く資金調達をしたい
- 手数料は多少高くても許容できる
一方、3社間ファクタリングの場合、以下の条件に当てはまる人・会社に向いています。
- 取引先に知られても問題ない
- ある程度時間的猶予はある
- できるだけ手数料を抑えたい
それぞれの違いを理解した上で、上手にファクタリングを使いましょう。