個人事業主や自営業、フリーランスが資金調達の必要に迫られたとき、最初に考えられる手段が取引のある銀行からの融資です。

しかし、売上が安定しづらく、決まった給料日などがない個人事業主・フリーランスは「継続的で安定した収入が見込めない」という理由で、融資を断られることが少なくありません。

今すぐまとまった資金が必要な方は、ファクタリングで資金調達を検討してみてはいかがでしょうか?

法人の利用に比べると若干ハードルは高くなりますが、「開業間もないため実績がない」「赤字決算や税金滞納で融資が受けられない」とお悩みの方でも、支払い前の優良債権があれば利用できます。

今回は個人向けのファクタリングについて、利用する際のポイントやおすすめのファクタリング会社をご紹介します。

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この記事を監修した専門家

西岡 秀泰

西岡社会保険労務士事務所

国内の保険株式会社に25年勤務後に、社会保険労務士事務所を開設。
社労士として労働保険・社会保険に関する企業サポートを行うとともに、FPとしてお金に関するアドバイス業務、日本年金機構の年金相談員を兼務。
経営資源としての「人」と「お金」の有効活用をテーマに、お役に立つ情報を提供してまいります。

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[この記事へのコメント]

フリーランス(個人事業主)が初めてファクタリングを利用するときは、会社の口頭説明だけに頼らず、自分で契約書の内容を確認しましょう。
チェックポイントの1つが「償還請求権」です。償還請求権とは、売掛先が債権を支払えない場合、債権譲渡した個人事業主に代金を請求できる権利のことです。
一般的には、売掛先が債務不履行になっても個人事業主は返済不要ですが、償還請求権がついていれば返済リスクを負うことになります。リスク回避を含めて高い手数料を払ったのに、これでは高利の貸付を返済するのと変わらなくなります。
初めて利用するときは、評判のいい大手のファクタリング会社を選択するのが無難でしょう。

個人事業主にファクタリングで資金調達をおすすめする理由

個人事業主にオススメする理由

個人事業主・フリーランスは法人と比べ、融資の審査では非常に不利となります。

ファクタリングは「銀行がお金を貸してくれない!」というときにこそ、利用をおすすめしたい資金調達方法です。

最短即日で資金調達が可能

一般的な銀行融資では、申込みから融資実行まで2週間~1ヶ月の時間がかかります。

「支払いが間近に迫っている」「大きな取引の前に準備金が必要」といった急を要する場合、期限までにまとまった資金が調達できない可能性もあります。

しかし、2社間ファクタリングを利用すれば、最短即日の資金調達も可能です。

即日入金には「午前中までに申し込み」「必要書類を事前に準備しておく」といった条件があります。ファクタリングに必要な書類は次のとおりです。

  • 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
  • 売掛先からの入金が確認できる通帳(Web明細可)
  • 入金予定の売掛金が確認できる書類(請求書、見積書、契約書など)

ファクタリング会社によって必要となる書類が異なる場合がありますので、事前に問い合わせて確認しておくようにしましょう。

売掛先に知られずに資金調達が可能

個人事業主の方がファクタリングの利用でもっとも懸念することは、「取引先や発注元に債権譲渡を知られてしまうのではないか?」ではないでしょうか。

ファクタリングは経産省も利用を推奨するまっとうな資金調達方法ですが、まだまだ一般に浸透しているとは言い難い状況です。

売掛先がファクタリングを知らない場合、債権を売却する行為が「借り入れができないほど経営がひっ迫しているのか?」などと疑われ、取引の見直しが行われたり、取引自体がストップしたりといったリスクが懸念されます。

2社間ファクタリングを利用すれば、売掛先や金融機関に一切知られることなく債権譲渡、資金調達が可能です。

ファクタリング業者によっては、契約時に必要な債権譲渡登記も行わずに済む場合があります。

融資を断られていても利用できる

ファクタリングは銀行や消費者金融等から融資を断られていても利用できます。

その理由は次のとおりです。

  • ファクタリングは融資ではない
  • 利用者より売掛先の信用力が重要

ファクタリングは「債権を買い取った対価として金銭を支払う」契約であり、法的には売買契約、債権譲渡にあたります。

一方で、融資は「将来の弁済を約束した上で、金銭を消費するために借り入れる」契約であり、法的には金銭消費貸借契約にあたります。

ファクタリングの審査では利用者の信用情報や返済能力よりも、売掛先の信用力が重視されます。

個人事業主であることや、赤字決算、債務超過、税金滞納など融資の審査で不利となる条件があっても、優良な売掛債権があればファクタリングを利用できるのです。

資金繰り改善のサポートが受けられる

ファクタリング業者の中には、利用者に資金繰り改善・事業再生を目的とした財務コンサルティング・サービスを提供しているところもあります。

そもそもファクタリングで資金調達せざるを得ない利用者は、資金繰りに窮していることがほとんどです。

ファクタリングでまとまった資金を調達できても、一時的なつなぎ資金でしかありません。

根本的な財務体質の見直しを行わなければ、ふたたびファクタリングを利用せざるを得ない状況が続きます。

そのような利用者の状況を鑑み、財務のプロであるファクタリング業者のコンサルタントが、資金繰り改善策や新たな資金調達先の提案などさまざまなサポートを提供しているのです。

金子

個人事業主向けのファクタリングは、審査に通りやすく手数料の低い3社間取引がおすすめですが、事業規模が大きくないだけに、債権譲渡の事実を売掛先に知られて会社の信用が落ちるリスクもあります。
初めて利用する際は、メリット・デメリットをしっかりと検討しましょう。

金子

最近では、個人事業主の資金調達に特化したファクタリングサービスや、請求書買取サービスも登場しています。オンライン完結で資金調達ができる、2社間・登記不要でも10%以下の手数料で利用できるなど、従来のファクタリングよりも優遇される場合があります。

ファクタリング会社を選ぶポイント

ファクタリング会社を選ぶときには、以下のポイントに気をつけて選びましょう。

  • 手数料の上限が設定されているか
  • 少額債券の買取に対応しているか
  • 資金が必要なタイミングまで入金が間に合うか
  • 債権譲渡登記なしの対応となっているか

上記について詳しく解説していきます。

手数料の上限が明記されているか

手数料を見るうえで重要なのは上限額です。

ファクタリング会社の手数料の記載方法として「1%~」として上限を記載していないケースもあります。

「手数料が1%だと思って申し込んだら、15%取られてしまった」といった事態も起こり得るため、手数料の上限額は相談時に確認しておいた方が安心です。

特に個人事業主やフリーランス、初回利用の場合は上限まで手数料が引き上げられることも覚悟しておかなければなりません。

手数料は業者によってさまざまなため、複数の業者に見積もりを依頼して比較検討するようにしましょう。

少額債券の買取に対応しているか

利用したい売掛債権が、ファクタリング会社が指定する買取限度額を満たしていなければ、取り扱ってもらえません。

特に個人事業主やフリーランスの場合は、数十万単位の比較的小さな額の売掛債権が多くなることが多いため、少額債券の買取に対応しているかはファクタリング会社を選ぶ重要なポイントとなります。

たとえば、買取下限額が100万円にしていされている場合、30万円の売掛債権は取り扱ってくれません。

ファクタリング会社としても回収リスクを背負って資金化しているため、下限額を下回る売掛債権ではリスクに対する報酬が小さいとみなされるのです。

ファクタリングを利用する際は、買取可能額を満たしている売掛債権を用意するか、少額買取に対応している会社を選ぶようにしましょう。

資金が必要なタイミングまで入金が間に合うか

入金スピードはファクタリング会社によって異なるため、資金が必要なタイミングに入金が間に合う会社を選ばなければなりません。

2社間ファクタリングであれば、利用者とファクタリング会社間で完結し、審査が短く完了するため最短即日~数日で資金化できます。

一方で、3社間ファクタリングは売掛先へ説明・承諾を得る等の工程を挟むため、1~2週間程度かかることもあります。

早急に資金が必要であれば2社間ファクタリング一択となり、時間的余裕があるなら手数料が安い3社間ファクタリングも選択肢になるでしょう。

また、ファクタリング会社の中には来訪不要でオンラインで完結できるファクタリングサービスを行う会社もあります。

オンライン完結のため、書類の送付や対面での審査が不要となり時間短縮につながります。

よりスピーディーな資金調達を希望する場合は、利用を検討してみましょう。

債権譲渡登記なしの対応となっているか

債権譲渡登記は法人のみの制度で、個人事業主・フリーランスはそもそも登記の概念がなく当該制度の対象外となります。

債権譲渡登記とは、金銭債権の譲渡を第3者に証明できるようにするための登記です。

利用者による二重譲渡の防止や対抗要件となる効力があるため、2社間ファクタリングを行なうには債権譲渡登記することを条件とする業者も少なくありません。

ただし、債権譲渡登記をするには、買取手数料とは別に費用が発生します。

債権譲渡登記の費用には「登録免許税」と「司法書士報酬」を合わせて数万~数十万となり、これらはすべて利用者負担となります。

売掛債権額が比較的小さい個人事業主・フリーランスにとっては、上記の費用も痛手となるでしょう。

業者を選ぶ際には、債権譲渡登記なしの対応となっているかを確認して取引をするようにしましょう。

「個人事業主OK」のファクタリング会社10選

個人事業主でも利用できるファクタリング会社をご紹介します。

金子

情報量の少ない個人事業主が初めて利用するとき、最適なファクタリング会社を選択するのは難しいでしょう。
公式サイトや口コミでの実績や評判も重要ですが、全てを把握できるわけではありません。初めて利用する際は、多少条件に差があっても大手の安心できるファクタリング会社をおすすめします。

ビートレーディング|ファクタリング業界のリーディングカンパニーの安心感

ビートレーディングはファクタリング業界のリーディングカンパニー的存在で、月間400件以上の取引実績からも信頼性の高さがうかがえます。

全国出張対応、業界最安基準の手数料という手厚いサービスで、早期の資金調達が可能です。

利用者は支払いサイトが比較的長い建設業や製造業が多く、個人事業主との取引実績も公式サイトで公表されています。

初めてファクタリングを利用する個人事業主・フリーランスは、ビートレーディングを選択すればまず間違いありません。

2社間/3社間/診療報酬/介護報酬/Beトレペイメント
資金調達スピード 即日~
手数料 【3社間】2%~

【2社間】5%~

利用条件 特になし
所在地 【東京本社】東京都港区芝大門一丁目2-18 野依ビル 3F
【仙台支社】宮城県仙台市青葉区本町1-12-7 三共仙台ビル3F
【大阪支店】大阪府大阪市北区堂山町1番5号三共梅田ビル903号室
【福岡支店】福岡県福岡市博多区博多駅東1-1-33はかた近代ビル8階F号室

ベストファクター|2社間ファクタリングの取引実績が豊富

ベストファクター

ベストファクターは最短即日スピード入金のファクタリングを業界最安水準の手数料2%~で提供しています。

ファクタリング利用者には無料の財務コンサルティングサービスも提供しているため、つなぎ資金の調達のみならず、会社の資金繰りを根本から改善することも可能です。

「できるだけ早く現金が必要」と「資金繰りを根本から見直したい」という2つの悩みを解決するなら、ベストファクターの利用をおすすめします。

取扱いサービス 2社間/3社間/診療報酬/介護報酬
資金調達スピード 即日〜
手数料 2%~20%
利用条件 契約時要面談
所在地 【東京本社】東京都新宿区山吹町261 トリオタワーノース4F
【大阪支社】大阪府大阪市中央区島之内1丁目13-28 ユラヌス21ビル1F

OLTA|2社間・登記不要のファクタリングを2%~9%の手数料で

OLTA(オルタ)は、非対面でオンライン完結の「クラウドファクタリング」を提供するファクタリング会社です。

クラウドファクタリングは売掛先に知られずに契約できる2社間取引で、なおかつ債権譲渡登記が不要なため、個人事業主やフリーランスでも利用できます。

さらに、オンライン完結型の契約にすることで省コスト化が図られており、2社間ながら2%~9%という低い手数料が強みです。

ただし、初めて利用するときにOLTAの事前審査とアカウント登録が必要です。事前審査は結果が出るまでに1日以上かかる場合があるため、当日中の資金調達を希望する方は注意しましょう。

取扱いサービス 2社間(非対面)
資金調達スピード 即日〜
手数料 2%~9%
利用条件 事前審査およびアカウント登録
所在地 https://www.olta.co.jp/

株式会社ウィット|500万円以下の小口専門・非対面契約

WIT(ウィット

株式会社ウィットは「500万円以下の小口専門」を掲げるファクタリング会社です。

「本業が忙しくて面談や書類集めの時間がない」「近隣にファクタリング業者がない」という個人事業主・フリーランスでも利用しやすいように、来社・面談不要の非対面のファクタリングサービスを提供しています。

同社は過去に「最小30万円を95%で買取」の実績があり、「最初は小口でファクタリングを試したい」という方はウィットを選んでおけば間違いないでしょう。

取扱いサービス 2社間(非対面)
資金調達スピード 即日〜
手数料 5%~
利用条件 特になし
所在地 https://witservice.co.jp/

日本中小企業金融サポート機構|非対面OKで手数料1.5%~

日本中小企業金融サポート機構は、業界では珍しい一般社団法人・非営利のファクタリング業者です。

完全非対面のファクタリングサービスは、面談や契約にかかる時間、担当者の出張費といった各種コストを削減、手数料1.5%~という驚異的な低手数料を実現しています。

2社間または3社間から契約方法を選ぶことができ、個人事業主の利用にも対応しています。

取扱いサービス 2社間/3社間
資金調達スピード 即日〜
手数料 1.5%~
利用条件 個人事業主利用可
所在地 https://www.chushokigyo-support.or.jp/lp04/0b/

【独立系】アクセルファクター|「原則、即日振込」の圧倒的なスピード感

アクセルファクターは独自のスピードスキームで「原則即日で対応」のファクタリングサービスを提供しています。

たとえば、「急ぎで資金が必要なったため、資料を準備する時間すら惜しい」という事情でも、メールFAXでの受け取り対応や、代替書類の案内など、柔軟対応でどこよりも早く資金難を解決します。

さらに、同社は経営コンサルタントも兼業しています。資金繰りに関して相談することで、ファクタリングに限らない打開策となる資金調達方法を提案してくれることでしょう。

取扱いサービス 2社間/3社間
資金調達スピード 即日〜
手数料 2%~
利用条件 特になし
所在地 【東京本社】東京都新宿区高田馬場1丁目30-14コルティーレ高田馬場1F
【仙台営業所】宮城県仙台市青葉区本町一丁目12-12 GMビルディング3F
【名古屋営業所】愛知県名古屋市中区丸の内2-17-13 NK丸の内ビル2F

ペイトナーファクタリング|個人事業主・フリーランスに特化!手数料10%のファクタリング

ペイトナーファクタリング(旧:yup)は、個人事業主やフリーランスを対象とした非対面の請求書買取サービス(ファクタリング)です。

申し込みから最短60分で審査結果がメールで返信され、利用者が承諾するとすぐに入金を確認できます。

入金は審査完了と同時に行われるため、待ち時間はほとんどありません。

初期費用や月額費用はかからず、資金調達コストはサービス利用料10%のみとなっています。

取扱いサービス 2社間(非対面)
資金調達スピード 即日〜
手数料 10%
利用条件 アカウント登録
所在地 https://paytner.co.jp/factoring/

けんせつくん|大工さんや一人親方の資金調達におすすめ!

けんせつくんは、建設業の資金調達支援に特化したファクタリングサービスです。

さまざまな業種の売掛債権の買い取りに対応しているファクタリング会社は多いですが、同社は専門を掲げるだけあって、建設業者に対してきめ細やかな資金繰り支援サービスを提供しています。

全国どこからでもスマホやパソコンから申し込みができ、最短2時間、手数料5%~で資金調達ができます。

建設業界経験のある専門スタッフが相談に対応、大工さんや一人親方の資金調達におすすめです。

取扱いサービス 2社間
資金調達スピード 即日~
手数料 5%~
利用条件 制限なし
所在地 http://www.xn--y8jd4aybzqd.jp/

freee 請求書ファイナンス|freeeの会計ソフトに登録中の方におすすめ

freeeの請求書ファイナンスは、同社の会計ソフトや確定申告ソフトに登録中の方が利用できるファクタリングサービスです。

請求書ファイナンスに申し込むと、freeeに登録されているた財務データや売掛債権データをもとに、買取可能性の高い売掛債権が自動試算され、買取可能な売掛債権のオファーを受け取ります。

利用者が買取に承諾すると、24時間以内に売買が成立します。

買取手数料は3~9%と、オンライン完結ならではの低コストを実現しています。

取扱いサービス 2社間(非対面)
資金調達スピード 即日~
手数料 3%~9%
利用条件 freeeのソフトに登録中
所在地 https://www.freee.co.jp/finance/invoice-finance/

フリーナンス|個人事業主・フリーランス向けのお金と保険のサービス

フリーナンスfreenance

FREENANCE(フリーナンス)はフリーランスと個人事業主を対象としたお金と保険のサービスです。

ファクタリングサービスとしての「早払い」は手数料10%から始まり、利用者の与信やサービス利用回数によって手数料が下がる仕組みとなっています。

早払いを利用するには、フリーナンスのアカウント登録と専用口座を開設、売掛金の振込先をフリーナンスの専用口座に指定する必要があります。

取扱いサービス 2社間/3社間/診療報酬/介護報酬
資金調達スピード 即日~
手数料 3%〜10%
利用条件 アカウント登録、フリーランス振込専用口座の開設
所在地 https://freenance.net/sokujitsu

個人事業主向けの2種類のファクタリング

個人事業主が利用できる債権譲渡のファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。

両者は利用の流れ、手数料の相場、入金までのスピードが異なります。

金子

個人事業主向けのファクタリングは、審査に通りやすく手数料の低い3社間取引がおすすめですが、事業規模が大きくないだけに、債権譲渡の事実を売掛先に知られて会社の信用が落ちるリスクもあります。
初めて利用する際は、メリット・デメリットをしっかりと検討しましょう。

もとむら

2社間と3社間では「手数料」「振込までにかかる時間」「取引先(クライアント)の関与の有無」が異なります。なるべく調達コスト(手数料)を抑えたいのか、とにかく急ぎで資金が必要なのか、取引先に内緒で資金調達したいのか、自社の資金ニーズに合わせたファクタリングを選ぶ必要があります。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングは、契約主体が「利用者」と「ファクタリング業者」の2社間で交わされる債権譲渡契約です。

手数料相場10%~20%

2社間ファクタリングを利用した場合、売掛先は一切関与しないため、売掛金は通常どおり売掛先から利用者の口座に振り込まれます。

万が一、利用者が売掛金を自社の資金繰りに使い込むなどした場合、ファクタリング会社に売掛金が支払われない貸し倒れリスクが生じます。

このような事情から、3社間ファクタリングよりも手数料が高めに設定されています。

 

売掛先に一切知られることなく資金調達が可能

売掛先を通さずに契約できるため、債権譲渡の事実を売掛先に知られることが一切ありません。

2社間ファクタリングであれば「債権譲渡を知られて信用不安を招きたくない」という個人事業主・フリーランスのニーズに応えることができます。

債権譲渡登記を行う(法人のみ)

債権譲渡登記とは、債権がだれからだれに対し、いつ譲渡されたものかを公的に証明する手続きです。

売掛先が一切関与しない2社間ファクタリングでは、すでに他の業者に売却されている売掛債権を買い取ってしまう「二重譲渡リスク」や、売掛金の使い込みリスクに備える「対抗要件の具備」のために、原則として債権譲渡登記によるリスクヘッジを行います。

債権譲渡登記は法務局で概要記録事項証明書の交付請求をすれば誰でも閲覧できてしまうため、登記から債権売買の事実が漏れてしまう可能性があります。

また、債権譲渡登記は法人を対象とした手続きであり、個人事業主は登記ができません。

このことから、個人事業主へ2社間ファクタリングを提供しない(3社間のみ可)ファクタリング会社もあります。

最短即日入金が可能

利用者とファクタリング業者の2社間で契約するため、売掛先に債権譲渡を通知、承諾の返答をもらう手間が省略されます。

「平日の午前中に申し込む」「必要書類をあらかじめ揃えておく」という条件をクリアすれば、最短即日の入金も可能です。

売掛金の回収は利用者が行う(集金代行業務委託契約)

2社間ファクタリングを利用した場合、売掛先からの入金は利用者の口座へ支払われます。

当該の売掛債権はすでにファクタリング会社が買い取っていますので、利用者が回収した売掛金をファクタリング会社へ送金することでファクタリング契約が完了します。

この一連の流れは集金代行業務委託契約を結ぶことで、本来ファクタリング会社が行う集金業務を利用者が代行する形となります。

 

3社間ファクタリング

3社間ファクタリング

3社間ファクタリングは、契約主体が「利用者」「ファクタリング業者」「売掛先」の3社間で交わされる債権譲渡契約です。

手数料相場1%~9%

3社間ファクタリングでは、債権の売却について売掛先の承諾を得て、なおかつ売掛金はファクタリング会社の口座に直接入金されるため、2社間ファクタリングよりも貸し倒れリスクの発生率が低くなります。

さらに、1回あたりの契約金額(買取金額)が大きくなる傾向にあるため、手数料が低めに設定されています。

債権譲渡に売掛先の承諾が必要

債権譲渡契約を結ぶにあたり、売掛先の承諾を得る必要があります。

どうしても売掛先に債権譲渡を知られたくない事情があれば2社間を選択すべきですが、信用不安を招くおそれがなく、承諾を得られるようであれば、手数料が低くて済む3社間がおすすめです。

ただし、売掛先に債権譲渡の事実を伝え、承諾を得るまでに1~2週間ほどの時間がかかる場合もあります。

売掛金の回収はファクタリング業者が行う

3社間ファクタリングでは、債権がファクタリング会社に譲渡された時点で回収・取り立て業務、リスク等も全てファクタリング会社に引き継がれます。

利用者は債権回収業務を行う必要がないため、ファクタリングで調達した資金を使って本来の業務や資金繰り改善に注力できます。

審査に通りやすい

3社間ファクタリングは貸し倒れリスクが小さいことから、2社間に比べると審査に通りやすくなります。

2社間と3社間は結局どちらがいい?

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングは、資金が必要なタイミングや売掛先との関係性、手数料負担の可能額などを比較して決めましょう。

両者の特徴をまとめると以下の通りです。

2社間ファクタリング 3社間ファクタリング
契約主体 利用者・ファクタリング会社 利用者・ファクタリング会社・売掛先
手数料 約10~20% 約1~9%
売掛先への同意 不要 必要
審査通過率 低め 高め
おすすめの利用場面 すぐに資金化したいとき・売掛先に知られずに利用したいとき 手数料を安くおさえたいとき

2社間ファクタリングは「売掛金の入金日がまだ先で、別会社へ支払いが間に合わない」「売掛先との関係性がまだ浅いからファクタリング利用を知られたくない」といった、とにかく急いで資金が必要な場面や売掛先に秘密でファクタリングをしたいときに選択するといいでしょう。

一方で、3社間ファクタリングは、手数料を少しでも安くおさえたいときの利用がおすすめです。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングはどちらもメリット・デメリットが存在するため、自社の現状に合わせて利用しましょう。

 

個人事業主がファクタリングを利用する際の注意点

個人事業主・フリーランスがファクタリングを利用する際は、法人に比べて条件が厳しめに設定される場合があります。

以下にあげる注意点をよく確認し、慎重に債権の売却先を選びましょう。

金子

個人事業主がファクタリングを利用するときの条件は法人と比較して厳し目ですが、売掛先が個人事業主だと審査に通らないこともあります。
取引先が自社と同じ個人事業主が中心ならば、ファクタリングは難しいと考えておいたほうがいいでしょう。

金子

ファクタリング会社の多くは「法人向けの売掛債権のみ」を買取対象としています。個人事業主向けの売掛債権も買取可能とするファクタリング会社は、ごく少数です。

条件付きで個人利用OKとするファクタリング会社もある

何らかの条件付きで個人事業主・フリーランスの利用を可とするファクタリング業者もあります。

よくある条件が「3社間ファクタリングのみ対応」というものです。

3社間ファクタリングは売掛先へ債権譲渡の通知および買取の承諾が必須という前提があるため、信用不安を招きたくない利用者にとっては不利な条件となります。

個人事業主・フリーランスOKとしている業者でも「契約金額100万円以上」「年商5,000万円以上」などの条件が設定されている場合もありますので、利用前によく確認しましょう。

少額利用は手数料が高め

ファクタリングは少額利用ほど手数料が高めに設定されます。

その理由は明白で、ファクタリング業者の利益は手数料で確保されているためです。

たとえば、売掛金30万円と300万円を一般的なファクタリング業者に2社間ファクタリング(手数料率10%)で買い取ってもらう場合を想定します。

業者にとって、300万円の売掛債権なら30万円の報酬が受け取れるものの、30万円の売掛債権なら3万円の報酬しか受け取れません。

ファクタリング業者にとって現金化に要する手間は同じなため、少額の売掛債権には手数料率を高めに設定しなければ利益が確保できないのです。

手数料が高すぎると手元に残るキャッシュが少なくなり、厳しい資金繰りを余儀なくされます。

そのため、少額利用ほどファクタリング業者は慎重に選びましょう。

債権譲渡登記ができない

債権譲渡登記は法人を対象とした手続きであり、個人事業主は登記ができません。

個人事業主へ2社間ファクタリングを提供しない(3社間のみ可)ファクタリング会社がある一方、手数料を引き上げる代わりに、債権譲渡登記の手続きを省略した2社間ファクタリングを提供してくれるファクタリング会社もあります。

2社間ファクタリングを希望する個人事業主・フリーランスは、債権譲渡登記は省略可能か、その場合はどれだけ手数料が引き上げられるかを、事前に確認しましょう。

違法な業者の存在

ファクタリング業者の中には、個人事業主・フリーランスの厳しい資金繰り事情につけ込む違法な業者も存在します。

違法な業者の手口は巧妙で、低手数料をうたっておきながら契約時に高い事務手数料を請求したり、本来のファクタリングには必要のない遅延金・違約金を請求したりして、大切な売掛債権を騙し取ろうとします。

手数料の安さや即日スピード入金といった好条件だけで売却先を決めるのではなく、公式サイトや口コミサイトで過去の実績や利用者の評判をよく確認してから検討しましょう。

 

 

会社員の「個人」を対象とした給料ファクタリングは違法

事業者ではない一般的な会社員の「個人」が、給料の前払いでファクタリングを利用することは違法行為にあたります。

本来、ファクタリング業者が買い取る債権は「売掛債権」であり、必然的に売掛債権が発生する法人または個人事業主が利用対象です。

しかし、なかにはファクタリング業者を装った違法な業者が「給料ファクタリング」として、会社員が保有している給与債権(賃金債権)を買い取ろうとするケースがあります。

給料ファクタリングは、毎月の給料日に会社から支払われる前の給料を「債権」と捉え、ファクタリング会社が買い取って現金化する仕組みを取っていますが、この仕組みは「貸金業」にあたり、行政・司法の両者から違法判断が下されているのです。

違法な業者と取引をしてしまうと、高い手数料を請求されたり悪質な取り立てにあったりと、さまざまなリスクを負うこととなります。

事業者ではない個人向けに給料ファクタリングを提供する業者とは、絶対に取引しないようにしてください。

金子

個人向けのファクタリングを行っている会社があったとしてもそれは違法です。高額な手数料を取られるリスクもありますが、そもそも法律に違反した行為なので個人向けファクタリングの利用は厳禁です。

金子

業として、個人(労働者)が使用者(雇用者)に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業に該当します。貸金業にあたらないファクタリング業者が、賃金債権を売買する給与ファクタリングを行うと貸金業法違反となります。

確定申告におけるファクタリングの仕訳方法

個人事業主・フリーランスがファクタリングを利用した場合の仕訳方法にお悩みの方もいるかもしれませんが、ポイントを抑えておけば難しいことはありません。

実際に仕訳を3ステップに分けて考えていきます。

ここでは、100万円の売掛債権を買取手数料15%でファクタリングを利用した場合を想定します。

1. 売掛金が発生したとき

取引先との間で、100万円の売掛金が発生したとします。

売掛金が発生したときは特別な仕訳は不要で、取引先へ請求書を発行し、以下の通りに仕訳をします。

借方 貸方
売掛金 100万円 売上 100万円

2. ファクタリング契約をしたとき

ファクタリングを契約し、現金の入金を待っている段階では以下の通りに仕訳をします。

現金が入金されていない状況のため、借方に「未収入金」を記載し、売掛金を相殺します。

借方 貸方
未収入金 100万円 売掛金 100万円

3. 現金が入金されたとき

ファクタリング会社から入金されたら「普通預金」と「売上債権売却損」を記載し、未収入金を相殺します。

売上債権売却損は、買取手数料に当たる勘定科目です。今回の例だと手数料15%のため、15万円が売上債権売却損として計上されます。

借方 貸方
普通預金 85万円 未収入金 100万円
売上債権売却損 15万円

現金が即日入金された場合

ファクタリング契約と同時に現金が即日入金された場合は、以下の通りに仕訳をして完了です。

未収入金は発生せず、普通預金と売上債権売却損によって売掛金を相殺します。

借方 貸方
普通預金 85万円 売掛金 100万円
売上債権売却損 15万円

ファクタリングをご検討されているフリーランスの方へ

近年では、個人事業主・フリーランス向けのファクタリングサービスも増えており、どの会社を利用すべきか迷ってしまう方も多いでしょう。

ファクタリング会社を選ぶうえで重視すべきは手数料です。

即日資金調達が可能でも手数料が高ければ手元に残る現金は少なくなり、引き続き厳しい資金繰りを余儀なくされます。

資金調達が急を要する場合でも、複数のファクタリング業者に見積もりを依頼し、手数料と条件を比較検討しましょう。